ペリカンのM800を、神田の金ペン堂で入手した。
透明軸の、デモンストレータモデルだ。
今年、2008年の梅雨ごろから、M800のスケルトンが出るという噂が、あちこちから漏れ聞こえてくるようになった。
その真意や如何に?
と様子を見守っていたら、ペリカンジャパンの内覧会があったらしく、小出しではあるがその様子が、だんだん明らかになってきた。
最初に情報キャッチしたのはアメ横。
マルイ商店で聞いた話では、パーツ名が彫られており、吸入機構の中の中まで見れるようになっているという。
中の中までっていったい・・・。
話に聞いても、今ひとつイメーヂがピンとこない。
でも、見たいという欲望だけがどんどん大きくなっていく。
だが、焦らされるように、現物は9月か10月にならないと入ってこないという。
そんな中、丸善で知り合いの店員さんと無駄話をしていたら、
「写真ならありますよ!」
とのこと。
で、喜んで、見せて!見せて!と見せてもらったのが最後。
思い切り物欲が刺激されてしまった。
想像力が貧弱なのか、単にでかいM205を想像していたのだが、これは想像以上にカッコイイ。
そのうち、あちこちのサイトでも、M800デモの紹介がされはじめ、書斎館のHPには、当初、国内500本限定などという表記もあった(現在は修正されているが)
欲しい×限定。
こうなると、買いモード突入である。
これが通常品であれば、あちこち回って最高の一本を探すという楽しみもあるが、限定品はそんな呑気なことを言っていたら消えてしまう。
加えて、どうも流通量があまり多くなさそうなので、一箇所で、大量の在庫の中から至高の一本を選ぶというのも難しそう。
さてさて、どうしよう?
と考えた結果、今回は初めて万年筆の予約注文というものをやってみることにした。
さっそく、神田の金ペン堂に足を運び、スケルトンの予約について相談をする。
店主(と呼んでいいのか?以下息子さんのこと)曰く、今回のデモンストレータは、かなりオススメですよと、思い切り背中を押してくれる。
ペン先を、BとMのどちらにしようと迷っていたら、今回はMとFしかオーダーをかけていないとのことだったので、自動的にMに決定。
注文したことで安心し、あとは10月ごろには届くかな?と思っていたら、金ペン堂からは以外にも、9月の中旬に「お渡しできる準備ができました」との連絡があった。
入荷ではなく、「渡せる準備ができた」という言い回しが嬉しい。
予約が早かったため、初回に数本入荷した中に、私の分も入っていたみたい。
ウキウキしながら取りにいくと、国内で最も早い入手になりますよ!と言われた。
ブツを手にした第一印象は、カッコイイ。
そして、インキ吸入するのがもったいないくらいに美しい。
もう一本購入か?
などとバカなことが頭をかすめてくるから怖い。
M205のスケルトンもそれなりに楽しいモデルだが、やはり金属パーツがみえるというのは、メカニカルな雰囲気がより強調されて、道具という感覚を強めてくれる。
本当はすぐににでもインキを吸入して、あれこれ筆記してみたいのだが、当初の計画どおり、このまましばらくは、未吸入の状態で眺めることにする。
当初の計画とは、2009年版の手帳を入手したら、それと一緒に未使用状態で写真を撮影し、こっそりHPのトップに掲載すること。
それが終わって、インキの吸入をすることとしたのだ。
◇
インキ吸入後のインプレッション。
金ペン堂では、購入時に付けペンで最終確認をするのだが、この時は、
「最初の吸入はあくまでお客様がお楽しみください」
とのことで、ペン先を水に付けて、その水を振り切ることを何度も繰り返すことで、ペン先に付着したインキの洗浄をしてくれた。
店頭での試筆インキの洗浄には、一切ピストンを上下させていない。
こういうところに、プロのプライドを感じさせられてしまう。
ちなみに、これまで金ペン堂で入手した2本の万年筆は、リリーフランキーと同じく、店主推奨のワラマンのブルーブラックを吸入している。
で、これがすこぶる調子が良いのだ。
なので、今回入手したデモをどうするか、かなり迷った。
というのも、金ペン堂では最終確認時に、どこのインキを使うかを確認させられるため、あらかじめ決意しておく必要があるからだ。
連絡をもらって、金ペン堂に向かう半蔵門線の中。
あれこれ悩んだ結果、スーベレンはペリカンのローヤルブルーでの統一路線を守ろうと決め、お店でもペリカンのローヤルブルーで試筆をお願いした。
ということで、今回、自宅で吸入したインキも、ペリカンのローヤルブルーである。
やはり、吸入式スケルトンモデルの楽しいところは、インキがタンクの中をユラユラと揺れるのを眺められることであろう。
これは、M205スケでも経験済みであるが、M800であっても、これは同じように楽しい。
M800の太い軸の中を、ペンを傾けるたびにインキがトロリと流れるのは、見ているだけで癒される。
ペン先については、今回入手したのは、細めのM。
店主曰く、使っていくうちにインキ流量が潤沢になってくるので、もう少し太くなるとのこと。
同じ金ペン堂で入手した万年筆で、M250のペン先Mを持っている。
このM250は購入時にできるだけ太めということで、太めの個体をさらに店頭で微調整してもらったものなので、おなじMといいながら、今回入手したM800の方が一段階細い感じがする。
しかし、Mでのメーカー研ぎ出しのため、細いといいながらもスタブ風の横細・縦太の感触はしっかり残されている。
これがFになると丸研ぎになってしまうため、見た目の字幅は同じでも、書いた感触が異なってくるので注意が必要だ。
実際に筆記してみる。
金ペン堂検品済みのため、とても気持ちよくスルスル書ける。
あまり好きではないのだが、M800クラスだとペン先をひっくり返しても書けるようにしてあるとのこと。
試してみるとこちらも、気持ちよく書ける。
(だけど、裏返しでは使わない)
なんだか、インキを入れたあとも使うのがもったいない気がするが、日常使いの一本として、じっくりと育てていきたい。
M800については、緑縞の太字をもう一本持っているので、そちらと比較してみると、デモンストレータの方が、軽く感じる。
多分、吸入の金属パーツが一部削り出されて、その内部まで見える構造になっているため、実際、その削り出しの分だけ軽くなっていると思う。
削り出しの部分は非常に小さいのだが、手にした感触はかなりの差があると私は感じた。
わたしはタイミングが良かったのか、運良く9月に入手できた。
このときは限られた数量で、多くのお店で完売状態となり、現在、店頭にはほとんど在庫が残っていない様子。
次に入荷するのは12月の予定と、どこのお店でも言われているので、これから、多くの方が、この楽しい万年筆を入手できるのではと思っている。
わたしは大満足の一本だが、家族に言わせると、透明は安っぽく見えると言っていた。
きっと、家族の目線が、冷静な第三者の視点だと思う。
なので、家族に購入価格は教えていない。
すでにM800を所有しておられる方ならば、趣味の一本として問題ないと思うが、はじめてM800をこのスケルトンでという方は、既存品と一緒に試筆して、持った感じや見た感じを、よく冷静に比較して選ばれることをお勧めする。
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