BUBARD(ビュバー)というものをご存知だろうか?
万年筆で書いた文字を乾かすために使う、インキの吸取紙のことである。
万年筆のムックで現在Vol.2まで出ている「万年筆スタイル」のVol.1に、このインキ吸取紙の特集がある(P104)
その昔、万年筆が全盛だった時代に、フランスの企業が広告媒体として使っていたようだが、このデザインが、またアンティークでいい雰囲気。
いつか入手してみたいと思っていたのだが、一体どこで売っているものなのか見当がつかない。
(ムックにも、古い物をモチーフにしたポストカードを扱う店の紹介は欄外にあったが、本物を取り扱うお店の紹介はない。)
銀座の裏路地あたりにある、アンティークものを取り扱う文具店を探してみたらありそうな気もするが、そこまでのパワーもないし、かつ、そこまでわたしを動かすほどの物欲でもない。
でも欲しい。
なんとも、微妙な物欲の刺激だ。
欲しいというより、実物をまずは見てみたいというのが、正確な表現かもしれない。
物欲リストからずっと消えることがなく、なんとなく頭の片隅にも残っていたこのインキ吸取紙。
ひょんなことから、年末の広島帰省でお目にかかることができた。
広島市内で手帳、カバン、文房具を求めて徘徊している時、いつもの巡回コースの広島パルコ新館5階のるブラックという雑貨屋に行くと、大量のインキ吸取紙がガラスケースの中にあるではないか!
このガラスケース、輸入物の時計がたくさん置いてあったので、最初はインキの吸取紙はディスプレイ用の品かなと思ったが、「部屋に飾ってもオシャレ」との小さな説明書きがあったので売り物と判明。
お店のお姉さんにお願いして、ガラスケースのカギをあけてもらう。
ラッピングされているものもあれば、むきだしのものある。
全部で20枚程度はあったのでは。
むきだしのものを手にしてみると、確かに吸取紙。
厚手で、毛足の長い画用紙のような、あの独特の手触り。
11月に、三宮のナガサワ文具センターで買ったエルバンン(これは新品)とも同じ手触りだ。
どれも、たっぷりとインキを吸取ってくれそうだが、だれも本来の目的では使わないだろう。
さっそく、一枚一枚手にとって眺めて見た。
その中で、一番気になったのが、Watermanの万年筆がデザインされたもの。
アンティークな雰囲気が出ていて、なかなか素敵。
でも、この時は買わなかったのだ。
一枚一枚、価格はバラバラだったが、ウオーターマンのものは1,400円だった。
どうも、紙切れ一枚に1,400円は高い気がしたからだ。
その日はそのまま、市中徘徊を続けて実家に戻った。
実家に戻って、ゆっくりしていると、いつもの物欲系の思考が頭をよぎってくる。
「今買わなかったら後悔するぞ!」というやつだ。
一時期、ハンズで買いあさっていた、60年代のアメリカの雑誌の広告の切りぬき。
額に入れてリビングにたくさん飾っているのだが、それが一枚1,000円だった。
それと比較しても、1,400円はそんなに高いものではないのではという結論に達した。
翌日も市中で買い物の予定だったので、もう一度パルコのルブラックに行って、まだ、ウオーターマンの吸取紙があったら買うことにした。
で、翌日いってみると、前日にわたしがガラスケースの中に戻したままの状態。
まあ、あれから誰一人として、お客が気にとめなかったということだ。
ラッピングは輸入された時にされていたりされていなかったり、バラバラということなのだが、このウオーターマンのラッピングはあまり綺麗なものでなかったので、あとでやりかえた。
(この、ラッピングがあまり綺麗でなかったのも、前日に買いに走らなかった理由。
でも、希少という二文字が勝った)
コラムのほうで紹介するが、後日、ハンズでフィルム、台紙の黒の画用紙は100円ショップで購入。
今は、書斎の机のガラスの下に飾っている。
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