数年前、板坂元先生の名著「考える技術・書く技術」に影響されて、黄色のダーマトグラフを購入したことは、このサイトでも紹介した。
それまで、資料などへのマーキングは、蛍光ペンに頼っていた。
しかし、自宅のインクジェットでプリントアウトした資料に蛍光ペンを使うと、気持ちよいくらいにに滲むので、何か代替の良い方法がないかと悩んでいた。
そこに登場したのが、ダーマトグラフ。
この古典的文具を使うことで、滲みの悩みは一気に解決でき、以来、ダーマトグラフは、わたしのお気に入り文房具のベスト3内に常に入っている。
なので、トップページのタイトルを画像埋め込みタイプにしてからは、常に黄色のダーマトグラフが何らかの形で写っているのだ。
元々、鉛筆削りが不要な色鉛筆ということで、学生時代から赤は使っていた。
そこに、黄色の蛍光ペン取って代わった黄色を購入し、その後オレンジを加えた3色を常用にしている。
現在、赤と黄色は書斎で使い、オレンジはPCの前に常備している。
いずれもマーキングを主用途としている。
蛍光ペンと違い、連続で使用するときは、キャップをしないで机の上にコロンと転がして使えるのが便利。
線を引きたいと思った時に、キャップを外すというワンクッションがないのが良いのだ。
◇
この、ダーマトグラフ、「皮膚に書けるもの」という意味で、ワックス成分が濃厚で大抵のものにマーキングできる。
この記事を書いていて思い出したのだが、その昔、芝居をやっていたころ、舞台にあわせて、バックミュージックを編集して時間を調節する作業にもダーマトグラフを使っていた。
音楽の編集にダーマトグラフと聞いてピンと来る人は、中々のマニアだ。
芝居のある場面の、セリフの最初から最後までが3分30秒だったとする。
このセリフの時間にあわせて、バックに音楽を流したい場合、何らかの方法で音楽の時間を調整する必要がある。
資金があれば、その時間に合わせて音楽を演奏するのが贅沢だが、これはスポンサーがいないと難しい。
かといって、フェードアウトさせるのもみっともない。
では、どうすればよいか?
大抵の楽曲は、同じフレーズのくり返しで構成されているので、例えば3番まである曲などは2番をポッコリ抜き取ったり、くり返しの部分を省略編集して時間を調整するのだ。
現在であれば、PCを使って手軽に細かい編集ができる。
が、20年前にやっていたことは、完全手作業。
まず、オープンリールのテープに使う音楽をコピーして、時間を計る。
そして、抜き取る部分を決めたら、音楽を流しながら、その抜き取りの最初の部分でテープを止める。
オープンリールのデッキを実際に使ったことのある方はあまりいないだろうから、ピンとこないかもしれないが、カセットデッキのヘッドがむき出しになっている機械を想像してもらうと分かりやすいかも。
そのヘッドにあたっているテープ部分にダーマトグラフでシュッと線を引いてマーキングをする。
そして、また音楽を続けて再生して、同じように抜き取る部分の最後の所でテープを止めて、同様にダーマトグラフでマーキング。
あとは、テープを外して、印を付けたテープ2箇所をそれぞれハサミで斜めに切り取る。
そして、抜き取る部分を取り除いて、斜めに切り取った部分を専用のメンディングテープで貼り付けるとあら不思議。
1番から2番を飛ばして3番に、曲が綺麗につながってくれるのだ。
カセットテープと違い、オープンリールのテープ幅は、少し太めのセロテープ程度の幅があるので、こうした切ったり貼ったりの作業が簡単にできる。
このテクニックを応用すれば、キーが同じで似たような曲があれば、2つの曲をチャンポンにしたりという高度な遊びもすることができる。
ダーマトグラフはワックス成分が多いので、このようにテープなどの素材にも簡単にマーキングできるすぐれものなのだ。
◇
いつものように、長い前置き。
これからが本題。
書斎などで使うダーマトグラフは、使わない時にはペン立てに刺して収納している。
しかし、このダーマトグラフ、なんにでも書ける優れモノの反面、芯の部分に接触すると何にでも色が付いてしまいそうで怖い。
なので、収納時にはキャップをしたいと思うようになってきた。
そこで、まず目を付けたのが、月光荘の革製の鉛筆キャップ。
月光荘オリジナルの太軸鉛筆用みたいなので、ダーマトグラフにもあいそう。
ダーマトグラフの軸は、普通の色鉛筆に比べて太いので、市販の鉛筆キャップでは嵌らないのだ。
しかし、この月光荘の鉛筆キャップは、どうも本店まで行かないと入手できそうにないみたい。
実はまだ、月光荘の本店には行ったことがない。
理由は単純。
駅から遠いから、歩く気がおきないのだ。
あそこまでテコテコ歩いて行くのなら、まだ、その時間、伊東屋の中をブラついていたほうが良いという思考になり、なかなか足が銀座駅から西に向わないのだ。
今の所、銀座駅から西に向う限度は、銀座コアのBREEまで。
ということで、伊東屋の中をいつものようにブラついているときに発見したのが、写真のキャップ。
伊東屋でダーマトグラフが置いてあるのは、7階の製図・画材フロア。
このフロアは通常の鉛筆キャップなども置いてあるので、ダーマトグラフにあうキャップがないか探してみたらすぐに見つかった。
店頭ポップで、ダーマトグラフにもOKと書いてあったので、わたし同様に、ダーマトグラフにキャップを求める人がいるのだろう。
キャップがあればペンケースに入れてダーマトグラフを持ち歩くこともできる。
1個30円とお手軽で、見た目も価格とおりのものであるが、求めていた機能を満たしてくれるので大満足。
高級萬年筆から、こうしたお手軽グッズまで、なんでも置いてあるのがやっぱり伊東屋の魅力なのだ。
やっぱり、当分、銀座駅から西へは足が向いそうにない。
(07/04/22)
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