代理店の存在する自動車保険か代理店のいない通販型自動車保険か その選択基準について

   


谷 州展


太郎 
まず、花子さんにお聞きします。ダイレクト・通販型自動車保険と国内損保・代理店型自動車保険との大きな違いはどこにあるんですか?

花子
 「代理店」が介在しているかいないかの違いです。

太郎 
そうですね。国内損保会社は、これまで一貫して、「代理店」を介して自動車保険を販売してきました。もっとも、今日では、子会社を通して通販型自動車保険を販売しているようですが…。
ところで、「同一商品内容で同一補償内容」の名の下に、安眠をむさぼっていた国内自動車保険業界に大変革のときが訪れたのは、いつのころだったか覚えていますか?

花子 
はい。国内損保業界に黒船がやってきたのは、平成10年(1998年)7月のことでした。

太郎 
そうですね。もう軽く10年が経過したんですね。その結果どういう変化が現れたのか。
各社独自の商品をつぎつぎと開発し、契約者のニ-ズに応えようと熾烈な戦いを続けることになり、それは現在も続いているわけです。市場に自由競争の原理を取り入れた効果は、消費者であるドライバ-に多大な恩恵をもたらしたということができると思います。

そして、 保険業界における大変革の象徴的な存在が、代理店を介さずに保険会社と直接契約する方式のダイレクト・通販型自動車保険だといっていいでしょう。この通販型自動車保険、各社がいかに多くの宣伝費用を投入しているか、連日のように放映されているテレビCM等を見れば明らかです。「充実したサ-ビス内容とこれだけ安くなる保険料」。こう宣伝文句でうたえば、少しでも保険料を節約しようとしているドライバ-が関心を寄せるのは当然のことだと思います。
通販型自動車保険は、代理店が存在せず、代理店に契約成立手数料を払わない分保険料を安く設定できる訳ですからね。

花子 
連日のように、新聞・雑誌・テレビで流される通販型各保険会社のCM。やたら多く、確かに目につきますね。
その対比において、私がふと疑問に思ったことは、国内損保自動車保険のCMがやたら少ないことです。どうしてこんなに少ないのか私には分かりませんが、素人的発想としては、通販型自動車保険の国内普及率に対してそんなに危機感をいだいていないということなのでしょうか。

太郎 
通販型自動車保険の国内普及率に関しては、ネット記事情報によると、2009年度実績による通販自動車保険8社が国内自動車保険業界全体の市場で占める売上高割合(占有率)は5%
とのことですが、そのためか国内損保は通販自動車保険をいまだ脅威的存在とは捉えていないということは確かだと思います。
だからこそ、この連日連夜の通販自動車保険の攻勢に、なんの反論をすることもなく静観を決め込んでいるのでしょうが、消費者側からみれば、この態度はただただ指をくわえてじっと見ているだけの無為無策の姿勢そのものとして捉えられ、通販自動車保険会社との対比において好対照的な動きとして消費者側に映っているのだと思います。

花子 
しかし、100年に一度といわれている今日の経済危機の中、消費に敏感になっている国民経済生活において、国内損保はそんなに悠長に構えてはいられないと思うのですが…。また、通販自動車保険業界で毎年売上一位の地位を確保し続けているソニ-損保の自動車保険に代表される通販保険の支持層は、特に若者や都市部在住のドライバ-を中心に毎年広がっていってますからね。

太郎 
「走る分だけの保険料」などといったその合理的な割安保険料が幅広く支持される要因となっているのだと思いますね。

花子 
ところで、国内損保及び代理店は、代理店を介して自動車保険を販売するという従来からの販売手法が、代理店の介在しない自動車保険に比べて大きなメリットがあるということを、もっと消費者であるドライバ-にアピ-ルすべきなにか具体的な動きをしてきているのでしょうか。

太郎
 
不思議なことに、これといった具体的な動きはないんですね。
損保会社は、代理店介在の自動車保険のメリットを、代理店のサポ-ト力や代理店のもつ独自サ-ビスにあるとして、これら「代理店の強み」を契約者にアピ-ルすべきであると、まるで他人事のように代理店に説明するにとどまり、代理店が契約者側に対してもつサポ-ト力やサ-ビス内容の具体的中味を明らかにして積極的に一般ドライバ-に働きかけていくといった姿勢は、見せる気配さえ示していません。

要はすべて代理店の営業努力任せ。一方、代理店は…。
一口に言えば、この代理店という存在はもの言わぬ集団であり、団結しない集団という特性を持っています(保険会社にとって、この特性はある意味都合がいいでしょうが…)。日々の業務に関しての問題点等をともに語り合い共有する場を持たないために、個々の代理店がどのような営業スタイルをとっているのか、また、どのような問題意識をもって営業活動を行っているのかということが全く見えてこないということです。

私が特にここで問題にしたいのは、「代理店を介しての自動車保険加入のメリット」という情報を消費者たる契約者側に提示するということは、たんに自らの存在をアピ-ルするだけではなく、契約者側に、「通販型」自動車保険か「代理店型」自動車保険かを選択する際の不可欠・重要情報を提供するのだという認識が、国内損保会社及び代理店側にまるでないという点なのです。

花子
 
なるほど。そこまで深くは考えていませんでした。
代理店はもの言わぬ存在なのですか…。
もの言わぬ集団が問題意識をもたない集団と同質なのは世の常ですから、そこから生じてくる弊害が契約者側にも波及してくるとなると、代理店だけの問題にとどまらないことになりますね。


ところで、保険会社が委託契約を結んでいる代理店。一口に代理店といっても様々な形態の代理店が存在するわけですが、これらの代理店をひとまとめにして、「代理店介在の自動車保険のメリット」と言ってみたところで、もともとそれは無理があるのではないでしょうか。

太郎 
痛いところをついてきましたね。
はっきり言って、
事故対応能力のない代理店・事故解決能力のない代理店は、存在感が乏しいだけではなく、万一の事故を想定せず、ただただ契約者の言うがままの申込み内容で契約を締結するということになると、むしろ契約者側に結果として不利益を与える存在となるのではないかということです。

事故の際役に立たない代理店の介在する割高な自動車保険と割安な通販自動車保険。誰だって通販保険を選びます。当たり前の話です。

たんに代理店の介在する自動車保険のメリット、という形では、つまり、「事故解決能力のある」代理店が介在する自動車保険のメリットという形でなければ、ドライバ-を納得させるだけの付加価値提供を訴えかけることができない。だから保険会社は、通販型自動車保険に対する積極的な反論CMを展開することができないのではないか、ということです。

国内大手保険会社は、販売資格をとった代理店を一律に扱い、事故解決能力を高めるための「代理店育成」に積極的な対策をほとんど採り入れることなく今日まで推移してきました。この状況はいまも変わりがありません。
このツケは、格安保険を積極的に販売する通販型自動車保険会社に、代理店介在自動車保険のメリットを強調した反論攻勢ができないという形で現出しているのではないか、ということです。

事故に強い、事故実践にたけた代理店の存在は、保険料の割安さよりもはるかにドライバ-のニ-ズ(要求・需要)の高い切実な問題であるにもかかわらず、そのニ-ズを満たす情報を保険会社は提供できない内部事情(事故解決力に格差のある各代理店を代理店委託契約に基づいて同等に扱わなければならないという社内事情)を抱えている存在なのです。

何の裏付けもない
「代理店事故解決能力の同一性」の幻想から脱却する手立てを組織的に考えない限り、この切実な問題に「代理店型」自動車保険会社が応えることはないでしょう。

事故解決能力のある代理店の存在。事故解決力のある代理店の介在する自動車保険は、明らかに代理店の存在しない通販型自動車保険に比べて、契約者に大きなメリットが出てきます。そのメリット分を保険料の格差とみることができます。
そのメリツト分を保険料の格差に見合うものかどうかということを最終的に判断するのは、あくまでも契約者自身なのです。

「事故解決能力のある代理店の介在した自動車保険は、代理店の存在しない通販型自動車保険に比べてこのように大きなメリットがでてきます」。

契約者が求めてやまないこの重要情報の提供。ネット上、星の数ほどある代理店のHPのどこを探しても掲載されていません。なぜ掲載されていないのか…?これについては代理店を責めるわけにはいきません。
実態は、載せたくても載せることができないのです。代理店のHPは、保険募集に関する募集文書とみなされて、監督官庁である「金融庁」の指導監督の下、主体性の希薄な…?保険会社の度を越すと思われるほどの厳しい内容規制にさらされているからなのです。
なんのための規制か。つきつまるところ、消費者たるドライバ-の利益保護のため。利益保護がかえって消費者の利益を妨げる結果となっている。完全なる自己矛盾の状態です。

それでは、はじめることにしましょう。
事故解決力のある代理店が契約者側に提供することのできる付加価値とは、具体的にはどのような内容のサ-ビス提供であるのか。
具体的に提示してみましょう。

メリット@
無過失主張事故における無過失交渉を代理店に代行してもらことが可能となる。

無過失主張事故においては、加入保険会社は示談交渉をやりません。
「示談代行サ-ビス付き」とあるではないかと反論される方がいると思いますが、これは至極当然のことであって、契約者の多くがそう信じて疑いのないところだと思います。しかし、事実は違うのです。

保険会社が契約上課されている義務は、契約者の過失責任賠償額を速やかに確定して相手に支払うということです。示談代行をするというサ-ビスは、契約者が相手方に支払わなければならない賠償額を確定するために行うのものであるということです。

ですから、逆に言えば、契約者が相手から支払ってもらえる賠償額を確定するために相手と交渉するということは、保険会社本来の仕事ではないということになり、せいぜい、契約者の支払うべき賠償額を確定する過程における付随的結果として、契約者が支払ってもらえる賠償額が確定されるに過ぎないということになります。

すなわち、契約者が相手からもらえる賠償額の確定という作業は、契約者が相手に支払わなければならない賠償額確定の作業過程において付随的に発生するものなのです。
このことから、純粋に、契約者が相手方から支払ってもらえる賠償額を確定する作業は、保険会社の本来の仕事ではないということになり、「お客様の無過失主張事故においては、当会社が全面的に前に出て交渉するということはありません。」という言葉になって出てくることになるわけです。

契約者が無過失を主張するということは、保険を使わないという意思表示をしたということになり、事故相手に、保険を使って損害賠償金を支払わないという意思表示を加入保険会社にしたということを意味することになるわけです。
ですから、保険会社が約款上の義務を果たすために、契約者の支払わなければならない賠償額を確定するという作業を積極的にしなければならない必要がなくなる、こういう流れになるわけですね。

そうすると、代理店の存在しない通販型自動車保険では、無過失主張事故において無過失を勝ち取るためには、相手保険会社と自らが直接交渉しなければならないことになりますが、保険知識に乏しい契約者が保険会社と対等に渡り合うことは事実上無理があるということは明らかです。

このようなとき、事故能力のある代理店で加入していれば、
代理店が契約者に代わって契約者の使者として交渉の前面に出て行くということになるわけです。もちろん、代理店は無報酬で行うことになるわけですが、これを金銭に換算したらどのくらいのものになるでしょうか。

余談になりますが、契約者の依頼により、契約者に代わって無償で代理店が保険会社に対して行う無過失主張交渉。弁護士法72条で禁止する
非弁行為に該当すると、確たる論拠を明らかにすることもなく居丈高に断定する人物を時々見かけますが、代理店の無償代理行為は、いまだ判例も存在せず未解決の問題であるということを指摘するにとどめてきます。

A代理店の話しによれば、保険会社は一社の例外もなくこの代理店の無償代行交渉を非弁行為のおそれがあるとして行わないように代理店に指導しているということですが、この無償行為が弁護士法72条の規定に違反する「非弁行為」に該当するという論理的根拠につき文書で代理店に提示するよう再三要求しているにもかかわらず、いまだ実現していないということです。

案外、法律違反の疑いをもたれるような危ない行為はするな、という低レベルなところで、この問題はとどまっているのかもしれません。曖昧模糊(あいまいもこ)<あやふやなこと>のまま推移しているのが、代理店の無償代理行為に関しての非弁行為問題の現状といっていいでしょう。


メリットA
事故実践にたけた代理店が介在すれば、過失責任割合の修正交渉が可能となる。

もし、貴方が裏通り住宅街を走行中、民家車庫から車が急に飛び出してきて衝突したという事故を想定してみてください。この事故を保険会社に任せると、判例タイムズという事故過失割合判定マニュアル本に機械的にあてはめられることによって、過失割合、20(貴方)対80(相手)という数値が瞬時的に導き出されてきます。
そして、この結果に異を唱えなければ、この数値のまま確定されて一件落着ということになるわけですね。

「なんで自分にも過失があるの?」。こう異を唱えれば、保険会社事故担当者と修正交渉をすることになるわけです。代理店の存在しないダイレクト保険では、まだ顔も見たこともない担当者と電話連絡の上、この担当者に相手事故担当者との交渉を任せることになるわけですが、立場が変われば、この担当者も常日頃、タイムズの機械的運用をすることによって、事故の迅速・簡潔処理の名の下に大量処理している人間です。かような人物に、発生した現実の事故を個別的・具体的に把握してきめ細かい過失修正交渉を期待するということは、しょせん無理があるというものです。
このような時、事故実践にたけた代理店が存在していれば、きめ細かい修正交渉が可能となり、交渉結果によっては、過失割合100ゼロという場合もありえることになり、結果として保険を使わない示談ができる場合もでてくるというわけです。


●メリットB
人身事故に対処できるのは、事故扱い刑事手続き実務経験のある代理店だけがなしえる特殊能力。この能力による付加価値サ-ビスの提供。

契約者が、人身事故の加害者の立場に立たされたとき、代理店のもつこの能力は大きくものをいってきますが、このメリットの恩恵を受けるためには、刑事手続き実務経験のある代理店での加入、という大きな制約が付くことになります。

いつなんどき人身事故の加害者の立場に立たされるかもしれないということは、車を運転しているドライバ-である以上誰もが避けて通ることのできないリスク(危険)です。不幸にして人身事故の加害者の立場に立たされたとき、事故後どのような流れにしたがって刑事処分を科せられることになるのか、そのことを考えると不安で仕方がないというのが多くのドライバ-に共通した悩みということになります。
現実の人身事故においては、交通課人身担当警察官が事故現場に臨場し事故状況の説明を求めた時から事故加害者(自動車運転過失傷害罪の被疑者)対捜査機関たる警察の戦いが始まっているのだ、ということを一体だれが教えてくれるというのでしょうか。

また、民事責任の分野にまで影響を及ぼす被疑者供述調書作成時における警察官への対処法など、事故実務経験のある代理店のみがなしえる特殊能力であってこの恩恵を受けることのできるドライバ-は、なんのアドバイスも受けることなく人身事故処理過程に一人で身をさらさなければならないドライバ-と比べて、いろんな面において大きな差が出てくるといっていいでしょう。
人身事故に対処できる代理店の存在。この付加価値を提供できる代理店の存在は大きいということです。

●メリットC
事故実践にたけた代理店が存在することによって、万一の事故に備えて、契約内容を充実した実効性のあるものにすることが可能となる。

年間保険料、わずか2,000円弱の「弁護士特約」。この特約を付けることのできなかったミスは、保険知識に乏しい契約者自身にあるというよりも、保険内容についてアドバイスを受けることのできない通販型自動車保険によく見受けられることです。
通販型自動車保険を選ぶ契約者は、保険料節約のため、可能な限り補償項目を削る方向に目がいってしまいがちですが、その結果、絶対に落としてはならないこの弁護士特約なども、節約の名の下に落とされてしまうことになるわけです。

事故実践にたけた代理店なら、この特約は不可欠のものとして理解していますから、付帯漏れなどということは絶対にありえません。契約時において、各特約の内容を分かりやすく説明する能力。この能力が代理店にあってはじめて契約者には、各種特約選択のための基礎資料の提示がなされたことになるのです。したがって、この提示説明能力のない代理店は、事故の際にも役に立たない代理店と理解してほぼ間違いのないところです。


●メリットD
人身事故における後遺障害等級認定申請を、メリットのある被害者請求とすることが容易となる

事故で負傷し医療機関で治療を始めた場合、必ず次のいずれかの状態を迎えることになり、保険的見地からの傷害治療は完了したことになって、対人保険等による治療費の支払いはストップするということになります。治療がうまくいき完治するか、症状固定(治療による症状の改善が見られなくなった状態)となるか。

症状固定の診断を医師から受けると、治療行為で治しきれなかった症状について、担当医に後遺障害診断書を作成してもらい、この診断書その他の医証(検査結果資料、レントゲン・MRI・CT等の画像)を、@
一括保険会社
(治療費等を、自賠責保険の分も任意保険と一括して支払っていた加害者が加入している任意保険会社)またはA自賠責保険会社(加害者が加入していた自賠責保険会社)に提出すると、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に送られ、これらの医証だけで後遺障害等級認定が行われるという流れになります。

@とAのいずれの保険会社に診断書等を提出しても、行き着くところは自賠責損害調査事務所。だったらどちらに出しても同じではないか。そう思うのは当然の話ですが、実は大きな違いが生じてくるのです。ちなみに、診断書等の医証を、@の加害者加入の任意保険会社に提出して調査事務所に申請する方法を「事前認定」と呼び、Aの加害者加入の自賠責保険会社に提出して調査事務所に申請する方法を「被害者請求」と呼んでいます。

どちらの方法が被害者にとってメリットがあるか。このことを明確に説明しているのが「交通事故110番」です。

事前認定では、「主治医の作成した後遺障害診断書に(保険会社)顧問医の意見書を添付し、等級を薄めにかかる?被害者の分からないところで公然と行われています。」と説明されています。

後遺障害等級の認定を受けたとき、「事前認定」では、示談が成立しない限り後遺障害保険金は被害者の手元に入らないが、「被害者請求」では、被害者の口座にすぐに入金されるという違いがあるなどということは、どの後遺障害サイトにも説明されていますからご存知の方も多いと思いますが、なんといっても一番の大きな違いは、自動車損害賠償保障法(自賠法)16条の4、16条の5規定適用の有無にあるのだと思います。
「事前認定」では適用されないが、「被害者請求」では適用されるということです。

このことを明確に指摘しているのは、私の知る限り、後遺障害サイト「事故110番」だけで、次のように記述しています。
「自賠責保険は、自賠法16条の4に基づき、遅滞なく、『支払わない場合の書面の交付』を行わなければなりません。それでも説明が不十分な場合、被害者は自賠法16条の5を発動、『書面による説明』を文書で求めれば、1ケ月以内に、理由の詳細を文書で通知しなければならないことになっています。……被害者はこの制度を有効利用しなければなりません。参考までに、事前認定では、この縛りは一切ないのです。」

後遺障害の申請は、必ず、「被害者請求」で…。このことを実践ないしはアドバイスしている代理店は意外と少ないのです。


●メリットE
被害事故による車両の格落ち損害(評価損)請求が、事故実践にたけた代理店の介在で容易となる。

事故によるクル自体の損害は修理することによって原状回復がなされるが、財産としてのクルマの損害(市場における交換価値の減少)は、修理によってもなお回復されない事故損害であるとの認識をもつ代理店で加入していれば、その損害回復請求交渉を担当代理店を通してすることが可能となるわけです。


●メリットF
車両全損被害事故時における原状回復諸費用請求が、事故実践にたけた代理店の介在で容易となる。

車両全損事故において保険会社は、当該車両の時価相当額を弁償すれば法律上の損害賠償義務を果たしたことになるというのが基本的な考え方です。しかし、所有権を侵害された者からすれば、侵害前と同じ状態に戻してもらわなければ事故による損害が完全に回復されたとは言えないという理屈になるはずです。

自転車は時価額相当額を支払ってもらえれば事故前の状態に戻るが、自動車は時価額相当額を支払ってもらっても各種の法定手続を踏まなければ事故前と同じように自由に車を乗り回せる状態には戻らない。判例も肯定する
この道理を理解する代理店なら、保険会社が原則認めないこの原状回復諸費用(代替え車購入諸費用)を事故による損害として請求することが容易となるわけです。


●メリットG
人身事故被害における慰謝料の裁判所基準における請求が、事故実践にたけた代理店を通して容易となる。

この慰謝料問題も、裁判所基準は何も特別の基準ではなく、国の認めた一般的基準との認識が広く浸透するに及んで、今後、この基準での請求が常態化してくるものとにらんでいます。
現に、「紛争処理センタ-」に持ち込めば、確実に裁判所基準での請求を認めてくれますので、紛争処理センタ-への示談斡旋申し立て手続きも、事故実践にたけた代理店なら、依頼者が弁護士事務所に来るのは当然のこととして、あいも変わらず旧態依然の武家商法をとり続けている弁護士
など相手にすることもなく、わざわざ弁護士事務所に出向かなくても、「弁護士特約」を行使して依頼者の自宅まで来てもらい、紛争処理センタ-まで斡旋申し立てのため代理人として出頭してもらうことが可能となる弁護士と委任契約を締結することが容易なこととなるでしょう。


●メリットH
事故被害による代車費用請求が、事故実践にたけた代理店なら容易となる。

各保険会社は、まるで判を押したように、100ゼロ事故以外は、代車請求を拒否してきます。この法律上何の根拠もない拒否回答に正面から取り組んでもらえるのが事故にたけた代理店の存在です。


●メリットI
代理店の存在する自動車保険なら、事故受付・事故対応が即同時に可能となる。

こんな事故を頭に思い浮かべてみてください。
日曜日の午後、信号機のない裏通り交差点。一時停止規制のある交差点で一時停止はしたが交差道路左右の安全確認が不十分だったために相手車と出会い頭衝突し、ともに車の前部が大破、走行不能となった。
相手は、貴方の一時停止違反が事故の直接の原因だと主張し、急ぎの用があるので代車をすぐ手配して欲しいと要求してきた。さて、貴方ならどうしますか…?

こんなとき、貴方に担当代理店がいれば、すぐ代理店に事故連絡し、相手の代車要求にも代理店が直接相手と電話で交渉し対応してくれるでしょうから、事故連絡と事故対応が同時に可能となるということです。

では、代理店の存在しない通販型自動車保険では、一体どういうことになるのでしょうか。
まず、事故現場から緊急の事故連絡を入れることになりますが、当然のことながら、この事故連絡を受理した人間が事故担当者となるのではなく、事故受付後一定の時間的間隔を経て事故担当者が決まり、この時点で担当者が事故相手と交渉を開始するということになるわけです。

つまり、事故受理と事故対応との間には、ある程度の時間的隔たりがあるということです。
このことをよく理解しておくことは、契約者側にとってとても重要なことです。

もっとも、事故現場での事故対応力という問題は、ある意味、通販型自動車保険の最大の弱点であるだけに、この問題については、通販型自動車保険各社は日々改善検討を加えていますから、加入前に必ず事故現場対応力ということを確認する必要があるでしょう。


事故解決能力のある代理店では、事故受付と事故対応が即同時となるが、代理店の存在しない通販型自動車保険では、事故受付と事故対応とを即同時に行うことができない場合が多い!!



もし、あなたが、代理店の存在する自動車保険か代理店の存在しない「通販型」自動車保険のどちらで加入するかその選択に迷った時は、上に述べた事故実践にたけた代理店だけが提供することのできる「付加価値サ-ビス」を保険料の格差と理解して、この付加価値サ-ビスの提供を受けるかどうかで判断すればいいと思います。この受けとる付加価値サ-ビスと保険料の安さとを比較検討しどちらを選択するか決断すればいいわけです。

単純に比較検討すれば、圧倒的に前者(付加価値サ-ビス)ということになりそうですが、ことはそう単純でもありませんね。何故なら、前者の多くは事故が発生したときに受けとるいわば不確定な「恩恵」ですが、後者(保険料の安さ)は事故の発生に関係なく必ず受けとることのできる「恩恵」だからです。

また、現実の問題として、「付加価値サ-ビス」を提供できる能力のある代理店かどうかを契約前に判断することもなかなか容易なことではありません。代理店がこの能力を有しているかどうかを事前にチェックする「知恵」をアドバイスしておきたいと思います。
次の質問をその代理店にぶつけてみてください。
以下のような回答が返ってきたら、その代理店はイザというときあまり役に立たない代理店と判断してほぼ間違いのないところです。

●質問⇒「無過失主張の事故が発生したときは相手保険会社と示談交渉してくれるのですか?」
■回答⇒「お客様に代わって示談交渉することは、「非弁行為」のおそれがあり弁護士法によって禁じられていますからできません。その場合にはご加入いただいている弁護士特約を使って頂くことになります。」


このように、そつのない型どおりの回答をよこす代理店を、なぜ役に立たない可能性の高い代理店と言わざるをえないのか。
事の本質(弁護士法の禁止する非弁行為の真の理解・代理店の存在意義・代理と使者の法的区別等々
)を十分に認識・理解しておらず、表面的形式的理解だけで判断・行動する代理店ではないかということがある程度の高い確率で推察されるからです。


契約者側に満足のいく付加価値サ-ビスを提供することによって、自らの存在価値をより高めていこうとする積極的な代理店なら、きっとこう回答するに違いありません。
あなたの使者として相手保険会社と接触し、その交渉過程で弁護士依頼事案とするかどうかをご相談の上決めていきたいと思います。

「スマ-トフォン」とは「賢い電話」のことらしいですが、事故のときに困らない「賢い契約者」となるためには、誰も言ってはくれないことですが、「保険料」だけを唯一絶対の選択基準としてはいけないということです。
(平成20年2月27日修正加筆)(平成23年5月7日修正加筆)