主な改正内容
①限度時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を法定(25 %
以上)を超える率を定めることとされます(努力義務)
これまでは、法定時間外労働を行わせるためには、①1日②1日を超え
3か月以内③1年 のそれぞれについて、限度時間の範囲内で延長するこ
とができる時間を労使で協定しなければなりません(いわゆる36協定)でし
た。
改正後は、労使で36協定を結ぶ場合には、新たに
❶限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3か月以内の期
間、1年間)ごとに割増賃金を定めること
、❷その割増率を法定割増率以上(25%以上)にするように努めること
❸そもそもの延長することができる時間を短くするように努めること
が求められます。
(注意点)
◎一定期間について延長できる時間(限度時間)を、1か月に45時間、1年に360時間までと定めている場合、1か月に45時間を超えた場合だけでなく、たとえその月が45時間を超えなくても、年360時間を超えた場合は、新たに定めた割増賃金を支払う必要があります。 |
②1か月60時間を超える時間外労働について、割増賃金を50%以
上(現行25%)に引き上げられます。
(中小企業は当分の間、適用猶予)
今までは、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超える時間外労
働に対しては、使用者は25%以上の割増賃金を定めなければならないと
なっていました。
改正後は、1か月60時間を超える時間外労働の場合、割増賃金を50%
以上支払う必要があります。この時間帯が深夜(22時~5時)に及ぶ場合
は、さらに深夜割増(25%以上)を支払わなければなりません。また、法定
休日に行った労働は、1か月60時間の法定労働時間の算定には含まれま
せんが、法定休日以外の休日に行った労働は含まれます。
(注意点)
◎1か月に60時間を超える時間外労働が発生する可能性のある事業所は、法定休日とその他の休日(所定休日)の線引きを、はっきりと示しておく必要があります。 |
①②への対策
今回の改正に伴い、時間外労働が月45時間以内、月45時間超60時間以内、月60時間超の3パターンと、年360時間超における割増賃金率、深夜労働の割増賃金をを、労使で協定しなければいけません。
この際、事務作業の煩雑さを考慮すると、月45時間以内は現行の25%、月45時間超60時間以内と年360時間は25%超の同じ率(例えば)30%、月60時間超は50%の3つに分けるのが現実的です。
深夜労働(割増率50%とする)が発生する時は、別に記入するようにした方が楽だと思います。ちまり、月45時間以内の範囲で2時間の深夜労働をした場合は、月45時間以内の時間外労働の欄に2時間、深夜労働の欄に2時間と記入し、それぞれを月単位で集計して割増賃金を出す方法です。
可能ならば、月45時間超・年360時間超の時間外労働をなくす取り組みをしていくことが一番ですが、事業所によっては難しいのではないかと推察します。 |
③労使協定により、改正法による法定割増賃金の引き上げ分の割
増賃金 の支払いに代えて、有給休暇を取得することが可能になり
ます。
1か月60時間を超えて法定時間外労働をした場合、その月の末日から
2か月以内に労働者の健康を考慮し、割増賃金の代わりに有給休暇を与
えることができます。(限度時間を超えた法定時間外労働についても可能)
この制度を導入するためには、過半数組合、もしくは過半数代表者との間
で、下記の事項を含めた労使協定を結ぶ必要があります。
(労使協定で定める事項)
❶代替休暇の時間数の具体的な算定方法
(代替休暇を取得しなかった場合の割増率
-代替休暇を取得した時の割増率)×代替休暇の時間数
❷代替休暇の単位(1日、半日、1日または半日)
❸代替休暇を与えることができる期間(月末から2カ月以内)
❹代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払い日
(取得するか、それはいつか、その決定方法・通常の割増賃金の支払い日)
④労使協定により、1年に5日分を限度として年次休暇を時間単位
で取得することが可能になります。
(労使協定で定める事項)
❶時間単位年休の対象者の範囲
事業の正常な運営を妨げる場合は対象外とできます。取得目的によって
対象外にすることはできません。
❷時間単位年休の日数
前年からの繰り越しがあっても5日以内です。
❸時間単位年休1日の時間数
日によって所定労働時間が違う場合は、1年間における1日の平均所定労
働時間を基に決めます。
❹「1時間」以外の時間を単位とする場合はその時間数
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