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  3. ドルシネア・ダイアリィ 第四部・目次

Last Modified : 27 JULY 2004


家具の落とし穴

宅配に託していた最後のマロングラッセは、返送されず、無事に受け取られたようだった。以前には必ず届いていた感想のメッセージは、しかし今回は届くことは無かった。受け取って貰えただけでも良しとしなければならないのかな。安堵のような、後悔のような。複雑な思いが心を漂う。

ジュノで買って来たのは「防具箱」という家具だった。折角家具に収納という新たな機能が備わったのだ。これまでの様にベッドしか無い、寂しい部屋のままで終わらずに、ある程度家具を設置した「部屋らしい部屋」をドルシネアに残してやりたいと思った。

以前購入して設置した「チェスト」には、二つのアイテムを入れられるようだ。別の家具にはもっと入れられるに違いない。そう考え競売所の品揃えを確認すると、この防具箱が結構売れているのに気が付いた。相場、約8,000ギル。安い物ではない。四、五個はアイテムをしまうことが出来るんじゃないだろうか。チェストばかり並べても詰まらないので、これを買うことにした。サンドリアの競売所には売られていなかったので、ジュノまで買いに行ったという訳だ。

ウィンダスに帰郷し、早速購入した防具箱を自宅に設置する。これでぐんと収納個数が増えたに違いない。そしてレイアウトメニューから「収納家具」で収納可能個数を確認してみると……期待を大幅に下回る、三つしか収納できないことに気が付いた。うっそ。遥かに安いチェストですら二つ入れられたのに、8,000ギルする防具箱には一つしか入れられないってか。大損じゃあないですか。

激しく落胆し、気晴らしに競売所でチェストを二つ、追加購入してきた。これを設置すれば+2×2で四つ増え、計七つの収納個数になる筈だ。モグハウスに戻りチェストを設置。収納可能個数を確認すると……五個にしかならなかった。んな馬鹿な。予想外の状況に当惑するドルシネア。

丁度ログインしていた赤魔道士タルタルのNmさんに、この異常事態をTell形式で報告する。するとNmさんは次の様に説明してくれた。公式のバージョンアップ情報で書かれているのだが、今回のバージョンアップによる「収納」機能の実装は、部分的な機能のみ加えた暫定的なものなのだという。それ故現在は、全ての家具が一律で一つしかアイテムを格納出来ないことになっているらしい。試しにチェストと防具箱を設置したり取り除いたりしてみると、確かに家具の種類に問わないで収納数が変化するのを確認できた。

だが、Nmさんの説明と食い違う点もあるのである。それはチェスト、もしくは防具箱を一つだけ設置すると、収納数が「二つ」になるという状態だ。つまり、箱を一つ設置すれば二、箱を二つ設置すれば三、以降四、五とアイテムを収納出来るのだ。これはつまり、最初の箱だけには二つ収納出来ると解釈出来るだろう。何だか複雑だが、現在の家具はそういった機能になっているようだ。それが私の結論だった。

しかしそうなると、何故防具箱はチェストの数倍にもなる値段になっているのだろう。これにもNmさんが説明をしてくれた。どうやら匿名掲示板近辺で、防具箱には多くアイテムを入れられるというデマが飛んでいるらしい。これを信じた人が防具箱を買ってしまい、そしてその売買履歴を見た私が「これは高いからいい物なのだ」と勘違いをして買ってしまったという訳だ。要するに、まんまと騙されたということである。

Nmさんに散々悔しがるドル猫。防具箱は全くの大損だった。この損失を回収するには、諸悪の根源の防具箱を出品して、自分と同様に誰かが騙されるのを待つという手があるだろう。だがそれは被害者をどんどん増やしていくということ。もしかしたら私が買ったのも、誰かが騙された物の損失補てんの結果なのかもしれない。だったらこれ以上、騙されの連鎖を続けるのは忍びない。この防具箱はドルシネアの部屋に留め、騙されの連鎖を断ち切ってくれよう。

……まぁもっとも、防具箱を「生産」している人がいたら、あまり事態は変わらないのだが。

さて、後日気が付いたことなのだが、「最初の箱だけには二つ収納出来る」という解釈すらも私の間違いだった。何故ならチェストと防具箱の前に、既に設置されている家具がドルシネアの部屋にはあったからだ。それは「ベッド」。設置出来る全ての家具に、収納能力は加えられていたのだ。それが例えベッドや、植木鉢や、筆記用具のような一見収納スペースが無いような物であっても。だからドルシネアはこれまでチェストに二つのアイテムをしまい込んでいるつもりだったのだが、実際はチェストに一つ、ベッドに一つ、分けて収納していたのである。ベッドにしまい込むって、アンタそりゃエッチな本かいな!とか思ったものである。

そして更に、サンドリアのNPCが経営する家具店を訪れた際、防具箱が6,000ギルを切る値段で売られているのを発見し、悔しさのあまり暫くそこで地団駄を踏んだドル猫である。


振り返る徒歩の旅・サンドリア編

ドルシネア、ウィンダスに起床。取りあえずパイ生地作りを始める。知り合い達へ最後に贈る料理の下ごしらえだ。その途中でまたMmさんのサブキャラであるエルヴァーン爺さんに出会った。私が風邪で寝込んでいた昨日の間に、全地域のツリーが倒されたという。十人、二十人程度では出来ることじゃあない。有志の方々が、頑張ったんだなぁ。Mmさんはいつもの様に、ドル猫のバザーからパイを買って食べてくれた。

メロンパイを作った後で、更に上級の「ロランベリーパイ」に初挑戦する。そうして出来たパイを、少し安めで自分のバザーに出品しておく。バザーコメントには「Goodbye Vana'diel Sale」と記した。

ある時、通りすがりのミスラがバザーからミスラ風山の幸串焼きを買ってくれた。彼女オリジナルの感情表現がログに流れる。
「○○ rubs her tummy」(○○はお腹をすりすりした)
どうやら満足していただけたようだ。

ウィンダスを出て、今日はサンドリアを目指す徒歩の旅に出掛けた。先日のバストゥーク行きは陸路だったので、今日は海路だ。マウラから船に乗り、セルビナへ。

セルビナの村を出ると、門の所にセルビナ警備隊を務めている冒険者が一人いた。「お疲れさま」とSay形式で声を掛ける。と、そこへトンボを二匹引き連れた冒険者が逃げ込んで来た。警備の人と一緒にこれを救助する。警備隊の人の方がドルシネアよりもずっとレベルが高い。自分の分のトンボを始末すると、まだ戦っているドルシネアに回復魔法を掛けてくれた。その場を発ちながら「援護ありがとうございましたー」と礼を言うと、その方は「がんばって〜」とドル猫を送り出してくれた。

ラテーヌ高原にて。立ち止まっている冒険者の脇を走り抜けていた時、そこに駆け寄ってくるチョコボが一騎。そしてそのチョコボの背に乗った人が一言。「まいど」「佐川急便です」 彼は何を届けに来たのだろう。気になる、気になる……。

サンドリアに着いて、早速バレリアーノ一座の新団員を確認する。「木の葉落としのノッキ」という裸のミスラ。Ccさんの言う通り、随分お喋りなヤツだった。

レンタルハウスに向かっていたら、ばったりと白魔道士ヒュームのRpさんに出会った。どうやら以前のリンクシェルメンバーが、イベントのためサンドリアに集まっているらしい。そういうことならお引止めしてはいけない。少しだけお話しをする。するとRpさんが記念写真を撮りたいという。そう言って着替えて来た彼女は、立派な白魔道士のアーティファクト(ジョブ専用装備)を身に纏っていた。

画像・Rpさんと。
赤い三角模様が独特な、白魔道士のアーティファクトを着たRpさん。

初めて会ったのは、Rpさんがセルビナでレベル上げに励んでいた頃だった。それが今や、立派な白魔道士のアーティファクトを身に付ける程になっているなんて、とても感慨深いものだ。「最後に見てもらいたくて」というRpさんの言葉がとても嬉しい。ロランベリーパイをお渡しし、最後にこれまで交換していなかったフレンド登録をお願いした。


Dulcinea the princess

サンドリアにて、アップルパイ作りに精を出す。アップルパイは数あるパイの中でも最も低級の物であるが、以前のバージョンアップでハイクオリティ品「アップルパイ+1」が追加されていた。これを知り合いの魔道士達に、最後の贈り物にしようと決めたのだ。今まで知り合いの前衛陣には、族長専用山の幸串焼などのハイクオリティ品をよく送っていた。だが後衛の知り合いには、せいぜい魔女の焼き串を送る程度で、あまりハイクオリティ品を送ることが出来なかったように思う。種類の少ないそれを、是非楽しんで欲しいと思うのだ。

ある程度作り込んでから、ノーマルクオリティのアップルパイやマロングラッセ等のお菓子をバザーに入れて、競売所から少し離れた場所に座り込んだ。そしてそのまま、競売所前の広場を行き来する人達をぼーっと眺める。時にはドルシネアをそのまま放置して、画面のこちら側ではテレビを見たりする。半分ほど、寝バザーになっているような感じだ。

画像・サンドリアでの寝バザー。
私はこの競売所前を、一体何回往復しただろうか……。

そういえばこの場所では、数日前にこんな出来事があった。北米冒険者二人によるSay形式の英会話が耳に入ってきたのだ。その内容は、タルタルがもう片方のエルヴァーンにお金をたかっているものだった。あまりにしつこいそのタルタルに、突然そのエルヴァーン男はShoutで叫んだ。
『誰か俺にお金を恵んでくれ! でないと一ヶ月の間、こいつの奴隷にされちまうよ!!』
なんでそういう発想になるんだ?と疑問に思うのと同時に、それを叫んでしまう彼の行動が可笑しくて、私はつい吹き出してしまったのだった。

バザーを見てくれる人はいるが、買ってくれる人は殆どいない。いきなり横にログインしてきたかと思うと、その場所から一歩も動かずに毒消しを作り始めるヒューム男なんてのもいた。彼は何故、こんな場所でログアウトしていたのだろう。レンタルハウスはすぐ近くなのに。おもむろに毒消し作りというのも不思議だ。その材料、あまり持ち歩く物でもないだろうに……。

場所を移し、レンタルハウス前の通路に陣取ってみるも、やはり売れ行きは芳しくない。バストゥークにいる北米冒険者から突然Tellが舞い込んだ。『競売所で物を買ってくれないか? お金はあるから』 ……面識もないヤツのそんな言葉、信用できるか! 無視を決め込む。多分彼は、サンドリアにいる人に片っ端からTellを送っているのだろう。まぁ、こんな変な人もたまにはいる。

バザーにも飽きたので、つるはしを持ってゲルスバ野営陣、ゲルスバ砦、そしてユグホトの岩屋に向かった。

画像・最後のユグホト。
最後の採掘を楽しみながら、久々のオーク狩りにも汗を流す。

ゲルスバも懐かしい。ノートリアスモンスターがいないか探しに行ったが、既に先客がやって来ていた。特に執着心はないのですぐに退散。宝箱を探しながら採掘ポイントにつるはしを振るう。つるはしはぽきぽき折れて、めぼしい物も掘り出せなかった。宝箱もさっぱり見当たらず。オークから獣人銀貨を盗んで、懐かしさに浸ったりした。これも随分集めたっけな……。

サンドリアへの帰途、ユグホトの洞窟の中でエルヴァーンの獣使いとミスラモンクの二人パーティを見掛けた。広場からオークを誘い込んで通路で撃破という狩りをしているようだったが、別のオークに見つかってしまった。ちょいとした危機に陥った彼等を回復魔法・ケアルで助ける。無事切り抜けた彼等とすれ違いながら「がんばりや〜」と声を掛けると、お辞儀をしながら「はあい」という返事が返ってきた。手を振り合って別れ、洞窟を抜け出した。ゲルスバを後にすると、気持ちのいい青空を被ったロンフォールの森が、ドルシネアを迎えてくれた。

再びパイ作りにサンドリアを奔走するドルシネアに、突然Tellによる声が掛けられた。
「ahh sweet sovreign of my captive heart」
「I like the name」
すぐに意味は分からなかったが、何かを尋ねるものでないことは分かった。悪いことは言っていない筈だ。そう判断し、取りあえず彼ににやりと笑って返した。その場でのやり取りは、これだけだ。サーチしたところ、彼はまだサポートジョブを有していないレベル13の戦士ヒュームであることが分かった。

例によって辞書ソフトを起動して、意味の分からない単語を検索する。「sovreign」は「sovereign」のtypo(タイプミス)であるようで、意味は「君主」といったところのようだ。ということは、この言葉の意味は大体こんなもんか。
『ああ、我が心を虜にする愛しき君主よ』
『私はその名前が好きだ』
……どうも、最初と次の言葉のテンションに違いを感じる。うまく繋がらない感じだ。

少し考えて、はっと思い出した。「ドルシネア」、その名。この日記の一番最初に紹介したが、元々私がオリジナルとして考え出したこの「Dulcinea」という名は実は実在しており、有名な小説にドン・キホーテと共に登場するのだ。その小説の中で「ドルシネア」とは、ドン・キホーテが妄想する理想の姫であるらしい。そう、お姫さま。つまり彼は最初にドン・キホーテを演じ、ドルシネアを姫として呼び掛けたのだ。「Dulcinea」という彼の好きな名前を持つキャラクター、我がドルシネアに出会った為に。

そんな彼に出会えておいて、とても良かったと思える。何しろドルシネアがこの世界に居られるのは、もう明日までなのだから。この巡り逢いもまた、何かに引き寄せられたものなのかも知れない。ならばこの機会に、私は出来ることをしよう。

金庫からミスラ風山の幸串焼をニダース持ってきて、宅配に彼への配達を依頼する。まだサポートジョブすら持っていない彼の段階なら、山串は充分過ぎる程の高級品だろう。その価値が分かるかどうかは分からないが、大事に使ってくれることを祈ろう。

そしてもし出来るならば……覚えていて欲しいのだ、ドルシネアのことを。二日後には居なくなるけれど、「Dulcinea」という名のミスラがこの世界に確かに居たということを、出来ればこれからも忘れないでいて欲しい。……忘れるなよ、君の大事な姫の頼みだ。愛しい姫の手料理まで食べられるんだからな。姫を悲しませる薄情な真似を……するんじゃあないぞ、我が騎士よ。

最後に彼と言葉を交わしておきたかったが、それは結局叶わぬままとなった。


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