Last Modified : 26 JULY 2004
From Dulcinea's diary Part.4 "March for the Dulcet Wind".
前日、ウィンダスでツリー退治に行く用意をしていた時に、偶然初期に知り合ったフレンドのYyさんに出会っていた。
もう随分長い間会っていなかった。特にTellで会話等もしていなかったが、フレンドリストにはいつも居場所が表示されていた為、「あぁ、今日はあそこでレベル上げかな」という風に「いること」はいつも感じていた。
本当に久し振りの会話を通して、あと数日でヴァナ・ディールを去ることを告げた。最後に会えて良かったと思う。
サブキャラクターのヌナイとヘブンスコープから、競売所の売上げをドルシネアに送る。もう売る物は無い、これが最後の送金だ。お疲れ様と声を掛ける。
ウィンダスのドルシネアでログイン。今日は思い出の各地を歩いて渡ってみようと思う。装備を整えて、ウィンダスを出た。
東サルタバルタを走っている最中に、昨日戦ったツリーの姿を見つけた。昨日程ではないが、今も何人かの冒険者が戦っている。ツリーの体力を見てみると、なんと残り二割程度まで減っていた。皆、頑張ったんだなぁ。「東サルタの木はだいぶよわってますね〜」と誰かがShoutで叫んだ。これに「もうちょいだね〜」とShoutで返した。
タロンギ大峡谷へのエリア切替を前に、ヒュームの白魔道士・Rpさんにばったり出会った。
タロンギに入り、峠を走る。普段は距離の短い西側ルートを取るのだが、今日は最初の頃によく使った東側ルートを久し振りに通った。前には最近この辺でよく見かける、タルタルの黒魔道士。先日「C.U. ^^」とか言ってくれた娘だ。サーチで調べると、黒魔道士レベル8。この辺はまだ厳しいかも。あまり無茶すんなよ……。タロンギ通過中に、バザーからミスラ風山の幸串焼きが一ダースと、毒消しが売れた。後者が売れるのは、とても嬉しい。
メリファト山地に入って、持って来た材料でダルメルステーキを焼く。ここではちょいと狩りをするつもりだ。北へ向かいながら、視界に入ったトカゲを狩る。三匹目で「双子石のピアス」を入手した。メリファトを象徴する、印象深いアイテムだ。これを左耳に装備して、先へ進む。相変わらずメリファトは人がいない静かな場所だ。この地に倒れたミスラ達の魂を鎮めるのには、ちょうどいい。エリア切り替え。
続いてのソロムグ原野は少々シビアだ。モンスターに絡まれる訳には行かないので、進み出す前に気合いを入れる。三体のゴブリンの間を抜ける。足の速いラプトル系のモンスター・Sauromugue Skinkが二体という厄介な場所も、その間をすり抜ける。次々に現れるモンスター達。ゴブリン、コウモリ、チーターのようなクァール、遺跡の周辺にはポルターガイスト系のEvil Weapon。緊張の中、通りすがりの冒険者がバザーからパイを四切れ買っていった。あ、売れた〜。途切れる、緊張感が途切れる……。
何とかジュノに到着。一休みだ。売れたパイを焼いてバザーに補充する。
ここも特別な印象を持つ場所だ。ぐずつきがちな空の下を警戒しながら走る時、BGMの物悲しい旋律が、最初にジュノを目指して走った二回の上京の記憶を呼び覚ます。それが何故だか、私を厳粛な気持ちにさせるのだ。歩くと長いロランベリーの道。最初はとても危なかしく思えたこの場所も、今はすいすいと走って渡る事が出来る。
次のパシュハウ沼では、いきなりゴブリンに絡まれた。苦し紛れに「ぬすむ」を敢行。しかし失敗だ。
お腹が空いたので、バザーから山串を一本取ってかぶりつく。久し振りにどーもくんこと、グーブーとも戦ってみた。調べると「楽な相手」なのに、結構強い。半ば辺りでまたゴブリンに絡まれた。再び「ぬすむ」、再び失敗。ああもう駄目だなぁと嘆いていると、もう一体のゴブリンが加勢にやって来た。焦るが何とか双方を始末。やれやれ、絡まれ過ぎだ。気合いが抜けているかな、危ない危ない。
コンシュタット高地を走っている辺りで、タルタルモンクのGzさんとTellでお話しをした。Gzさんはちょうど今ドルシネアが向かっているバストゥーク方面の、南グスタベルグにおいてツリーと戦っているそうだ。サルタバルタでは撃退までもう少しというところまで痛めつけられていたツリーであるが、グスタベルグでは戦っている冒険者が少なくまだまだというところらしい。
グスタベルグを駆け抜けて、ドルシネアはバストゥークに到着した。そこでまず、クリスマスの飾り付けが全然違うことに驚いた。
折角来たので、こちらのツリー退治にもちょいと係わってみることにした。前回は魔道士で後方支援に回ったが、こちらはそもそも戦っている冒険者が少ないらしい。支援も何もあったもんじゃあないので、シーフのまま殴りに行くことにする。レベル20に制限されるのだが、レベル20で着られる丁度いい防具は持っていない。だが、どうせ相手の攻撃力は強烈なのだ。防具をわざわざ新調する必要はないだろう。今現在来ているフィッシャ装備で行くこととする。流石に武器は要るだろうと、競売所で格闘用武器・クーガーバグナウを購入。食事用にステーキを焼くと、ハイクオリティ品のワイルドステーキが出来た。よしよし。
バストゥーク港から北グスタベルグに飛び出す。モーグリと接触し、イベント参加手続きを取る。そこから暫く走ると、Gzさんに合流できた。
Gzさんと喋っていると、そこに北米冒険者が走ってきた。何か話し掛けてくる。
『ツリーがまだぴんぴんしているんだが、戦力が全然足らないんだ』
『もっと人手が必要だ』
『でも私はもう落ちるから、バストゥークに戻らなくてはいけないんだ』
何かそんなことをべらべら喋っていたのだが、うまい返し方がすぐに浮かばない。仕方がないので「ok」「ok」「ok」と返事して、去っていく彼を「good luck」と送った。ログアウトする彼にグッドラックもないな、とか思った。
Gzさんと別れ、手分けをしてツリーを探す。ツリーを叩くも何も、まずその徘徊するツリーを見つけなければ話にならない。フィールドはえらく広いから大変だ。サルタバルタでやったときは、大勢が参加して連携を取っていたからまだ楽だったのだが……。
やがて、ぽつんと一人寂しく彷徨うツリーを発見した。戦っている冒険者の姿は、全く見受けられない。人手が足らないどころではなく、全く無かったのであった。Gzさんに場所を知らせつつ、武器を手に取って突撃を開始する。
ツリーに不意打ちを叩き付けて取りあえず満足。そのままツリーと一対一の勝負である。回復する暇なんて無いし、もうまるで敵わない。ツリーの向こうから、タルタルの援軍が一人やってくるのが目に入ったが、それが辿り着く前にドルシネアは地に伏した。
すぐさまホームポイントを設定していたバストゥークに復帰して、再びグスタベルグに走り出す。その頃、Gzさんも無事に単独攻撃を果たし、当然の様に撃沈したようである。TellでGzさんの声が届く。
「……思うに、私HPサンドw」
復帰でサンドリアに行っちゃうんですか!? こっちに戻って来られないんですか!? ダメじゃん!
ホームポイントへと戻るGzさんに別れを告げ、再び一人でツリーを探しに出掛ける。Gzさんから入電。ホームポイントはサンドリアですらなく、ジュノだったらしい。駄目だこりゃ。
その後ツリーを見つけられずに面倒くさくなり、ツリー退治を放り投げてバストゥークへと帰還した。
チョコボを借りて、バストゥークを出てジュノへ向かった。途中、いつも雨の降っているパシュハウ沼を走っていると、エリアを抜ける直前に雨がぴたりと止んだ。星でも見られるかとチョコボを留めて夜空を見上げたが、結局雲は晴れなかった。
先日ウィンダスで出会ったときに、釣り師エルヴァーンのCcさんと共に過ごせる最後の日が今日であることを、会話を通して二人で確認していた。私は年末大晦日いっぱいまでプレイする予定であるが、Ccさんは今日が年内最後のログインであるというのだ。年末年始である。帰郷などの理由でネット接続、およびネットゲームのプレイ環境を離れる人は多いだろう。
そのCcさんがジュノに現れていた。私もジュノに一つ用事がある。その用事を果たすため、そしてCcさんと最後に会うために、ドルシネアはジュノへ向かったのだった。
ジュノに到着して競売所で用事を済ませると、すぐにドルシネアはジュノの最上層、ル・ルデの庭に向かった。Ccさんは、競売所を少し離れたところに立っていた。手を振って挨拶を交わす。Ccさんはレベル上げのパーティに参加するべく、勧誘を待っているところだった。
カーネーションという花の新たな使い道。それは楽団・バレリアーノ一座に新たに加わった、裸のミスラが求めるのだという。Ccさんは、彼女は随分とお喋りで楽しいよ、と言った。また、先日のバージョンアップ以来、採掘で随分つるはしが折れやすくなったのだという。只でさえ少ないお金の稼ぎ口がまた潰された、とCcさんが嘆く。バレリアーノ一座は現在サンドリアを訪れているし、最後にもう一度、ユグホトの岩屋での採掘を体験しておきたい。再度サンドリアに行って、どちらも確認してみることにしよう。Ccさんにそう伝える。Ccさんとの会話はそういったいつもの通りの、日常的なものだった。
やがてCcさんがレベル上げに誘われて、そのパーティに加わった。まだ人数が揃っていないので、会話を続けても大丈夫だとCcさんは言う。だが知らない人同士で組むパーティは、それ故におざなりに接するべきではないと思うし、Ccさんにもそうして欲しくはない。私との会話でそうなることを避けるため、ここでお別れすることにした。
伝えなくては伝わらない。これまでのお付き合いに対する感謝の言葉を、はっきりと形にして表現しなければならない。キーボードに手を伸ばし、その言葉を打ち込むためにキーを押し込んだ。
ぱたっ、と胸元で音が鳴った。更にキーを押すと、もう片方の胸元でもぱたっという音が鳴った。最初、何だか分からなかったそれは、目からこぼれた涙だった。
(これは? どうして?)
キーを叩きながら驚き戸惑う私を置いてけぼりにして、次々と大粒の涙が目から溢れ落ちていく。その言葉を打ち始めるまでは、そういった兆候は全く感じられなかった。にも係わらず、文章を紡いでいくのに合わせて、涙は今や滝のように頬を流れていた。
(伝えなければ! 伝えなければ……!)
ただそれだけを思って、必死にキーを打ち続ける。溢れ出る涙でディスプレイが見えない。涙の向こうの画面に目を凝らし、その別れの言葉を繋ぎ合わせた。回線を通して送り出す。「最後までエンジョイしてね>FF」と言うCcさんの言葉に、「有り難う」と返すのが精一杯だった。
手を振り、Ccさんに背を向けて、ドルシネアはル・ルデの庭を走り出す。ジュノ上層へ降りる階段を目指した筈が、入り込んだ先はバストゥーク大使館だった。それはジュノの構造に慣れないが故の間違いか、それとも未だ流れる涙に対する混乱の為か。慌ててそこを出て、レンタルハウスを経由してジュノ港へと移動した。喘ぎながらチョコボ厩舎へと駆け込む。ドルシネアを背に乗せて、チョコボはジュノを飛び出した。
人も 街も 時も
うつろうけど
君のかわりなどいない
You're the only melody大事なものには かたちがなくて
不安だけど
耳をすましてみて
音がしてる
何ひとつ 失えない
You're the only melody「You're the only melody」(作詞・作曲:奥井亜紀、編曲:大村雅朗)より。
感謝はしていた。勿論。いつも私に声を掛けてくれる、同じような話題に花を咲かせられる、数少ない友人であることだって分かっていた。だけれど、これ程までに大切に思っていたなんて。これ程までに私の心の支えになっていたなんて。知らなかった。そして最後の最後で、初めて分かった。
声を上げて泣く私を乗せて、ソロムグの原野をチョコボが走っていった。