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  3. ドルシネア・ダイアリィ 第四部・目次

Last Modified : 22 JULY 2004


メイド・イン・ヘブン

今日は平日、あまり時間に余裕は無いが……今日は12月24日、クリスマス・イブでもある。やはり何か作って送りたい。サブキャラクターを動員して各国の競売所に調理素材を求めるが、どこでも蟲の卵は売り切れていた。手持ちも切らしている。これでは雪山のロランベリーは作られないか。

ではあれにしよう。クリスマス・イブという特別な日に作るのも、いいかも知れない。

サンドリアのレンタルハウスにドル猫起床。金庫から闇のクリスタルを取り出し、久し振りにトリートスタッフ……ハロウィンで手に入れたコウモリの飾りが付いた杖……を背負って、南サンドリアに出た。競売前を通り過ぎて、門の正面にあるロンフォール特産店へ。

まずは葡萄を買ってグレープジュース作り。大抵のジュースは水のクリスタルで搾るが、グレープジュースは闇のクリスタルを用いる。水クリは「溶解」の属性を持つのに対し、闇クリは「腐敗」の属性を持つ。何だかジュースを通り越してワインになりそうな勢いであるが、ヴァナ・ディールではそこまで行かないらしい。……そういえば、ヴァナ・ディールにお酒の類はなかったっけ? ひょっとしたらジュースと名が付いているが、実はそうでもないのかもしれない。

グレープジュースが出来たら、今度は栗の実、ロンフォールマロンを二つ購入する。これにシュガーと先のグレープジュースを合わせて、再び闇クリで合成する。もうちょいと上げておくつもりだったが、今でもスキルは充分足りる筈。ドルシネアの手の間にぎゅーんぎゅーんと不気味に発生・収縮する紫と黒の光を、息を潜めてじっと見つめる。

画像・闇クリの合成。
ブラックホールを思わせる、重々しい合成エフェクトだ。

最後に紫がばっと煌くと、手の中にそれが一つ残されていた。「マロングラッセ」。サンドリアの青い空の下、目標としていた料理をドルシネアは遂に作り上げた。


ラ・パティシエール・ドルシネア

遂に出来た。遂に作ってしまった。嬉しさと寂しさがないまぜになって胸に去来する。最初の一つは自分で食べた。そしてその場でグレープジュース作りとマロングラッセ作りを続行する。たまに調理スキルがアップする。

画像・マロングラッセ。
マロングラッセを食べると、背後の三日月にも劣らない黄金のリングが身体を包み込んだ。

何ヶ月も前、確かまだ雪山のロランベリーを作られるようになったくらいの頃、私は知り合いにお菓子の話をしていた。ヴァナ・ディールには他にも色んなお菓子があって、今の目標はマロングラッセなのだ。そういうとその人は、「ドルさんはパテシエですね」と語ってくれた。パテシエとはパティシエとも呼ばれる、フランス語でお菓子職人を示す言葉だ。

その日以来、その言葉が私の目標となった。マロングラッセを作られた時、ドルシネアはパテシエを名乗ることが出来るのだろう。そう考えていた。

出来たてほかほかのマロングラッセを、早速知り合いに送ることにする。物産店から後ろを振り返ると、すぐに競売所がそこにある。たたたと走り、そこに立つ配送屋のNPCにマロングラッセを託した。本当は、何は無くともパテシエと呼んでくれたあの人に送りたい。だがその方とも、今は言葉を交わせない間柄になっていた。フレンドリストには残っているのだが……迷いつつ、取りあえず別の知り合いに先に送ることにする。宅配に渡すことの出来るアイテム数は限られていて、一度に全ての人へ送られない。また後で考えよう。

黒魔道士にジョブチェンジして、移動魔法・デジョンでウィンダスに戻る。金策の為にコカトリスの肉を購入し、そのまま競売所前でミスラ風山の幸串焼きを焼き始めた。すぐそばで、バブルチョコを作り続けている人がいる。自分とその方の合成模様を眺めていると、あちらの手の中で光が派手に輝いた。バブルチョコのハイクオリティ品、ハートチョコが出来たのだ。

ハートチョコはその形状から、やはり特別な目的で使われることもあると聞く。「ナイス・ハートチョコ^^」とその人にTellで伝えると、「あり♪」という嬉しそうな返事が返ってきた。その方のサーチコメントを覗いてみると、「メリークリスマス♪ 日頃お世話になってるあの方へ♪」と書かれてあった。

ウィンダスの水の区を歩いていると、偶然ダンディヒューム・Mmさんのサブキャラクターに出会った。以前にも出会ったことのある、老エルヴァーン氏である。

画像・Mmさんのサブキャラクター。
それにしてもMmさんはつくづく渋いキャラを選択するものだ。

挨拶を交わすとMmさんはおもむろに持っている花火を打ち上げた。「おおー」とドル猫が歓声を上げるのも待たず、次の花火を打ち上げる。更に次の花火、また花火、そして花火……! 何種類もの花火を行き着く暇も無く、十数発を乱れ撃ちして見せたMmさん。唖然である。そして驚き惚けるままのドルシネアのバザーを覗き込み、雪山のロランベリーを購入するとすぐにぺろりと平らげ、「相変わらず美味しいですね」とかいうのだから全く男前である。

競売所前にて、「beehive chip」の陳列カテゴリーが分からないと悩んでいる北米ユーザがいた。beehive chipって何だろう。beehive、beehiveねぇ……暫く悩んだ末、はたと気付く。bee-hiveかな。beeは蜂だ。蜂の何とかのチップ、ということになる。チップ……「かけら」? 「蜂の巣のかけら」のことか! 「hive」は「hide」に似ているな。「隠れ家」とか「巣」とかの意味を持つに違いない。蜂の巣のかけらなら、この近辺でも入手可能なアイテムだ。最近始めた人がこれを取り引きしようとする可能性は高い。

表現方法を悩んだ末、所謂「タブ変換」を使って「beehive chip : (素材)->(錬金術)」とSayを発して伝えた。

「タブ変換」とは、正式には「定型文辞書」といい、チャットの文字入力中にTabキーを押すことにより、FFXIに関する語句、定型分を入力する機能である。そしてここで入力された定型分は特別な記号で囲まれて表示され、FFXIの日本語クライアント上では日本語で、英語クライアント上では英語でそれぞれ翻訳されて表示されるのだ。北米版導入の際に、異言語間交流の為に追加された機能である。前述の私の発言の中では、括弧で囲んだ(素材)、(錬金術)の二つの部分をタブ変換で入力してみた。

うまく通じたのか、件の冒険者からは「(ありがとう) Dulcinea :)」というタブ変換を使ったSayが返って来た。にやりと笑って見せて、競売所を後にした。


走り終えて

翌日ログインすると、タルタルモンクのGzさんからメッセージが届いていた。
「おお! ついにマロングラッセではないですか〜♪ おめでとうございます〜!」
Gzさんには昨夜マロングラッセを送っておいた。私が以前からそれを目標にしていたことを、覚えていてくれたのだな。嬉しく思いながら……あぁ、Gzさんにも伝えていたんだっけ?と首を捻る。知り合いの多くに伝えていたのは確かだが、誰に言ったか言わなかったかをちゃんと覚えていない。私には元々そういう記憶の曖昧さがあって、同じ話を同じ人に繰り返してしまうこともある。いかん、いかんよなぁ、こういうの。

ドルシネア、ウィンダスのモグハウスに起床。いつもの様にポストを覗くと、お金が入っているのが見えた。競売所からの送金か。何か売りに出していたっけ?とまた首を捻りながらチェックすると、送金元は競売所ではなく赤魔道士タルタルのNmさんだった。いつも色々送ってくれるNmさん。はて、何かの代金だっけ?と更に首を捻りながらその額を確かめる。ゼロが一、二、三……四つ!? い、一万ギルだって!? たまげて思わず仰け反るドルシネア。

一万ギルと言えば人にもよるだろうが結構な額だ。普通の狩り二、三十分でぽんと稼げる額じゃあない。確かにNmさんにはこれまで色々貰ってはいるが、これはちょいと簡単には受け取れないぞ。取りあえずポストから出さずにしまっておく。そうすれば「返却」ボタンを押すことで、すぐに送り手に戻すことが出来る。受け取るか受け取らないかは、後でNmさんと話をして決めるとしよう。ああ、びっくりした……。

競売所まで行き宅配の状況を確認すると、大体の人にはマロングラッセを受け取って貰えたようだ。配達枠が空いたので、昨日送られなかった知り合いにもマロングラッセを送る。その場で立ったまま暫く考え込んだ末、パテシエと呼んでくれた人にもそれを送った。

今日もあまり時間は無い。ウィンダスから外には出られそうに無い。少し調理をするべく、モグハウスと競売所を往復した。とはいえ、調理の最終目標であるマロングラッセはもう作ったのだ。これ以上スキル上げをする必要は無い。あとはお金稼ぎと知り合いに作って配るくらいにしか、調理をすることも無いだろう。先月から少ないプレイ時間の多くを、調理のスキル上げに費やした。肩の荷が下りたような、それでいてちょっと寂しいような、複雑な心地だ。

鞄の中を覗くと、昨日Mmさんのサブキャラから貰った果物「パママ」が入っていた。これは要するに、ヴァナ・ディール版バナナであるようだ。一本食べておく。パママの説明文には、ミスラが好む栄養価の高い草の実、とあった。なんと、そうであったのか。うっきー。

バザーから調理素材を仕入れてモグハウスへと帰路に就いていると、こちらのバザーが覗かれ、山串十本と先日のギャンブルでゲットしたドレイクリングが売れた。後者はどうやらタルタルの竜騎士が買ってくれたようである。お役に立つと良いけれど。それともおしゃれ装備かな?

自宅にて海串を焼く。派手なエフェクトと共にハイクオリティ品の族長専用海の幸串焼きが六本焼き上がった。月齢を確認すると、ハイクオリティになりやすいと囁かれる光曜日であった。ナイス。これは売らずに取っておく。また知り合いにあげられるだろう。

長い間目指してきた目標は無事達成できた。あとはこの世界に別れを告げて、何処で去るかを決めるだけである。


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