Last Modified : 20 JULY 2004
From Dulcinea's diary Part.4 "March for the Dulcet Wind".
ドルシネア、ウィンダスの自宅にて起床。まずは調理だ。ヴァナ・ディールの曜日は火曜日、調理に適している。早速調理ギルドに出向きカモミールティーを煎れると、スキルはめきめきと上がった。いい感じだ。
更に新たなレシピとして、パンプキンパイに挑戦する。材料のカボチャはジュノで手に入れられるから、ヘブンスコープで買いに行くことが出来る。バターやパイ生地を作るのが少々面倒だが、ヌナイがサンドリアにいてくれる為、この素材調達も楽になった。おまけにパイ生地作りではハイクオリティを連発し、一度に多くの生地を作ることも出来た。むしろ作り過ぎたくらいだ。カボチャのパイは魔道士の知り合いにプレゼント出来るし、競売所でもそれなりに売れる。実用的でスキルを上げながらお金になる、悪くは無いレシピだ。パイ作りでもスキルはぐんぐん上がった。
ウィンダスの町中で、周囲に獣人印章の使い方を問う英語のSayが聞こえた。簡単に説明出来る質問ではないが、頑張って答えてみる。
『ジュノでオーブに交換して使うんだ』
『オーブはバーニングサークルに対して使う』
『そうするとボスと戦える』
『オーブは50〜100個必要だ』
『レベルは高くないとボスとは戦えない』
ギデアスのギャンブルはちょいと特別だ。これについて説明すると、誤解を生んで面倒なことになりそうだ。そう判断して触れないでおく。細切れに説明すると、相手はそれなりに理解してくれたようだった。
『まだレベル20のジョブしかないや』
『でも集めておいて、頑張ってレベルを上げることにするよ』
「good luck」と応援して彼と別れた。
サーチ一覧からコメントを見ると、よく「JP ONLY」とか「日本語PT希望」とか、「I can't speak English」とか書かれているのを見掛ける。知り合いの中にも、酷く英語を怖がっている人がいた。いつもうまくいっている訳ではないが、私はそれなりにコミュニケーションを取っているので、そういうのを見るとちょいと残念に思う。勿体無いなとか思ってしまう。何故ならオンラインゲームでの英会話は、それ程構えて行うものではないからだ。
以前、そばで行われている英語のチャットを眺めていて、意外とシンプルな言葉のやり取りが多いことに気が付いた。更にスペルの打ち間違いや、本来大文字にするところを小文字のままで打ったり、アポストロフィ等の記号を打たずに済ませている人が多いのにも気が付いた。当人達でも決して完全なものを使っている訳じゃあない。つまり英会話では、英語の試験とは違い完璧な答えを求められるものではないのだ。考えてみるとそもそも相手は自分と同じ人間で……相手が稚拙な日本語を使ったときに我々がそうするように……理解しようと向こうも努力してくれるのだ。私自身そのことに気付いてから、言語の壁はだいぶ薄くなった。そしてそのお陰で得られるものは大きかった。頭をフル回転させて使い慣れない英語を使う、別の国の人との会話というのは、普段の生活には無いとても刺激的なものであった。
だが本当に英語が苦手な人がいることも、理解しなければならない。英語に対するセンスが無い人は確かにいて、それは仕方の無いことだ。Web上の文章とかでも、たまに酷いスペルの間違いをしているのを見掛けたりする。対して私は中学生の頃に、「ドルシネア」という音から「Dulcinea」という実在するスペルを作り出せた人間だ。最近では翻訳ソフトを使って英語の文章を読んだりもしている。そこには一緒くたに出来ない大きな差があるだろう。それを忘れてはいけない。自分と同じ感覚を他人に求めてはいけない。そう自分に言い聞かせる。
そもそも私はレベル上げしていないからいいけれど……そのパーティで戦略とか話し合うのは、大変だろうなぁと思う。連携の打ち合わせとか、英語を交えてやるのは大変だろう……北米版の発売前から、そう考えてはいた。以前プレイしていたネットゲームは出てくる敵を適当に倒していればいいだけだったから打ち合わせも何も無かったけれど、FFXIの戦闘はシビアだから。日英混在パーティは、ただそれだけで苦労してしまうのだろうと想像は出来る。もっと楽に遊べるゲームだったらねぇ……。
その後のパイ作りで調理スキルは82になった。パイをジュノの競売所に出品して、今週は終了。
翌週、ジュノのヘブンスコープでログイン。ポストから競売に出品していたお茶やパイの代金を受け取り、宅配を利用してそれをドルシネアに送る。その足でル・ルデの庭に走った。フレンドの赤魔道士タルタル・Rmさんがそこにいるからだ。彼のサーチコメントに、最後の限界突破クエスト……レベルの上限制限を外す難度の高いクエスト……をやっとクリアしたと書いてあったのだ。赤魔道士の最終限界突破は相当に難しいと聞く。Rmさんに直に会い、ドルシネアが焼いたパンプキンパイを渡してお祝いした。Rmさんのレベルは71、これは凄いね。
ドルシネアでログインし直して、今日も調理をしに出掛ける。調理ギルドに向かうため水の区を走り出すと、前方に大きくきらびやかな飾り付けが目に入ってきた。その派手さに思わず立ち止まって息を呑む。
これはまた、凄いことになっているのだな! 去年のクリスマスイベントといえば、町の数箇所に木のモンスターが元になったクリスマスツリーが置かれていただけだったのだが、今年は全ての木にぎんぎらぎんの装飾だよ。やれば出来るんだなぁ。
驚くだけ驚いてから、ギルドでパイ作り。スキルアップ! 一度だけハイクオリティ(HQ)品の「パンプキンパイ+1」も出来た。HQのパイは四枚だけ。知り合いに配るのはきついな、どうしようか。少し考えた末、普通のパンプキンパイ一ダースにHQ品を一枚おまけに付けて、赤魔道士の知り合い三人へ送りつけた。残ったHQ品一枚は、自分でぱくりと食べる。たまには自分でいいもの食べるのも、いいよね。
森の区に来ると、更に驚く羽目になった。
更にこの池の脇にはイベント用のモーグリが登場していた。彼に話し掛けると、以前のイベントと同様に花火が貰えるようだ。手に入れた花火を早速その場で使う冒険者もいる。それを見ると、どうやら今回は新作の花火が追加されているようだ。以前の花火には小さなゴブリンがパラシュートで降りて来る物があったが、今回の「エアライダー」という花火はゴブリンがサンタクロースのようにソリに乗って空中を滑り降りてくる。なかなか可愛らしい。地面に置いた箱が開いて打ち出されるのだが、ソリが最後に箱に戻って蓋が閉まるという辺り、芸が細かい。こういう細部の作り込み、FFXIは本当に素晴らしいと思う。
値下がりしている炎のクリスタルを買い込んで、パイと串焼き作り。パイの一部を、ダンディヒュームのMmさんに送る。するとすぐにメッセージ付きでお礼が送られてきた。炎クリ二ダースにゼラチン一ダース。毎度毎度、助かります。
パイを作り続けていたら、カボチャが切れた。ヘブンスコープでログインし直すのもいいけれど、町の中に閉じこもっているのもストレスが溜まる。時間もあることだしここは一つ、ドルシネアで買いに行こうか。そう考え、チョコボに乗ってウィンダスを後にした。
週末にしかログインできないまま、十二月はあっという間に過ぎていく。残された時間はもう半月を切った。今日の調理でスキルは83まで上げられたが、目標としていた90にはどうやら届きそうもない。残念だがそれも運命だろう。
先日、競売所前で調理をしていたとき、他人の合成のログがウィンドウに表示された。その名に目が留まる。それは以前のフレンドで、ある日突然呼び掛けに応えて貰えなくなった人のものだった。私の方に相手の名前が出ているということは、相手の方にも私の名前は出ているだろう。調理を続けながら、何とも言えない居心地の悪さを覚えた。
調理ギルドに行こうと立ち上がり、近場の転送NPCの元へと足を向けた。先客として、件の彼が立っていた。驚いて数歩前に足を止める。私の姿を知ってか知らずか、彼は静かに姿を消した。その後に続く気になれず、私はそこを立ち去った。
相手に、話し掛けられない。相手から、話し掛けられない。
一年を越えるこのヴァナ・ディールでの生活は、善し悪し含めて濃密な空間を作りだした。ドルシネアを通して、私は様々な感情を胸に抱く。
ジュノで使い古しのオーブを返却し、カボチャを買いにル・ルデの庭へ。カボチャ売りのNPCは他の売店のNPCとちょいと趣が異なる。
いらっしゃいー!
M&Pマート出張露天販売所なのにゃ。
かってくださいール・ルデの庭の花売り、Dabih Jajaliohの台詞より。
M&Pマートというのはジュノの別の場所にある雑貨店なのだが、このミスラの少女はそこの出張販売員らしい。売っているのは主に花。はっきり言って、大抵の冒険者には必要のない物だ。だが「趣が異なる」というのはここからだ。どうやら彼女の扱う商品は、売り上げによって増減するらしいのだ。そしてその増える品揃えの中に、オニカボチャ等の他ではあまり見られない物もあるのである。彼女の存在意義はここでぐっと大きなものになる。
花はそれ程高い物ではないので、売り上げを伸ばすため余裕のある者が花を買っていく。売り上げがある程度伸びて彼女の取り扱う品物が増えると、彼女がSay形式で発する呼び込みの内容も変化する。NPCがSayを発することも珍しい。子ミスラの可愛らしさもあって、彼女の存在感は私の中で結構大きい。あの、「かってくださいー」という語尾が伸びる喋り方がまたたまらんのじゃー! ぎゃあー!
移動魔法・デジョンでウィンダスに帰郷。競売所でネビムナイトとシャル貝を一ダースずつ買う。安い買物じゃあない。手持ちのお金が五万を切った。これらを使ってミスラ風海の幸串焼きを作る。ハイクオリティ品も出来た。よしよし。減った炎のクリスタルを補充。なんと1,200ギルで購入出来た。この値段で買えたのは一体何カ月振りだろう。
いつも赤魔道士のNmさんが、珍しくナイトになっているところに出会った。
話を聞くと、一人で遊ぶときはナイトになることがあるらしい。近接攻撃と魔法、両方が出来る赤魔道士とナイト。門外漢の私にはその違いが実感としてよく分からないが、Nmさんによるとナイトは「赤と比べて断然ダメージが少ない」のだという。パーティの盾として絶大の信頼を受け、機能するナイト。防御力が段違いということなのだろう。元々柔らかいタルタル、攻撃を受けてみると強く実感するものなのかもしれない。
赤魔道士エルヴァーンのVnさんとTellでお話しする。つい先程、Vnさんのサブキャラクターからメッセージを貰っていて、そのキャラの話題になった。Vnさんは現在レベル33なのだが、そのサブキャラも既にレベルが29まで上がっているのだとか。サブキャラがドルシネアと同じレベルとは、ずいぶんやり込んでいる。単なる倉庫代わりのキャラという訳でもないようだ。レベル上げの狩りを通じて、メインキャラ、サブキャラそれぞれで出会った知り合いがいて、プレイをどちらか一方だけと割り切れないと言う。
「愛されているキャラでいいじゃないですか」と言うと、「はい、みんな好きなので……」とVnさん。キャラクターに対する愛情を感じて、微笑ましい。普段はキャラクターを通してプレイヤー同士が交流している訳だが、プレイヤーが一人になったとき、そこにはプレイヤーとキャラクターの交流があると思っている。プレイヤーとキャラクター、二つの魂がパーティを組んで、このヴァナ・ディールに過ごしていくのだ。
ドルシネア達との生活も、残りあと僅か。残してある目的を含めて、どうすればこの世界をより良く生きていけるだろうか。