Last Modified : 15 JULY 2004
From Dulcinea's diary Part.4 "March for the Dulcet Wind".
ようやく来た次の週末、ドルシネアはウィンダスに起床。所持金は97,231ギル。10万は切りたくないのだが、何しろログイン出来ないのだ、お金稼ぎも何もあったものじゃあない。取りあえず今揃っている材料でミスラ風山の幸串焼きを焼く。出来たそれを競売と自分のバザーに出しておく。
バザーには先日から雪山のロランベリーを980ギルで出している。一本200ギル程度の串焼きと較べると随分高い値段だが、これでも原価割れ、赤字である。そしてその効力の低さから狩りでは使えない為、赤字にしても売れない食べ物なのだ。山串やパイなど、実用的な物しか出さないのは何だかとても味気なく感じる。何というか、「豊かさ」を他人に、そして自分自身にアピールするために、このようなお菓子やおにぎりをバザーに出すことにしている。
帰って来られやすいようにウィンダスにホームポイントを移してから、チョコボを借りてサルタバルタに飛び出す。まずは用事があるジュノを目指すこととした。移動中は暇である。走りながら自分がいるエリアをサーチして、冒険者達のサーチコメントに目を通したりして過ごす。
メリファト山地に入ってサーチを掛けたとき、一覧の中にフレンドの髭ヒューム・Mmさんの名前を見つけた。これは奇遇。名前の表示に色が付いているのを見ると、どうやらパーティを組んでいるようだ。メリファト山地ではレベル上げの狩りは行われない。思うにこの地にある獣人・ヤグードの居城、オズトロヤ城に向かっているというところだろう。そんな風に推理しながらメリファトを駆け抜けた。
メリファトの先は朽ちた建物が点在するソロムグ原野だ。ここを抜ければジュノである。再びここでもサーチを掛ける。するとここでもMmさんの名前が表示された。これは意外、先程の推理は間違いだ。ドルシネアを先行し、ジュノ方面に向かっているようである。パーティ組んでジュノへ向かう、か。狩りが終わってジュノへの帰途にあるということか? いやいや、それだったらデジョンなどの移動魔法を使うだろう。では何の為にわざわざ徒歩、もしくはチョコボで?
そもそもどういうパーティなのだろう。そう考え、サーチ結果の一覧をざっと眺めた。……そもそもパーティを組んでいる人間が殆ど居ない。ソロムグで経験値稼ぎのパーティが狩りをするのは、今はそれ程盛んではないようだ。主にコカトリスの肉を得るために、大型の鳥を狩るソロの冒険者がいるくらいだろう。一覧で確認できたパーティ参加中の冒険者は、Mmさんともう一人、ランク1・レベル20の冒険者だけだった。ランク1、レベル20……? ぴんと来た。合流させてもらおう。チョコボの足を急がせる。
ジュノを目指しながら視線を左右に飛ばし、その先にMmさん達の姿を求めたが、それを見つけることは出来なかった。そしてドル猫が未だジュノに辿り着かない内に、ソロムグのサーチ結果からMmさん達の名前が消えてしまった。どうやらもうジュノに入ってしまったようだ。間に合わなかった。舌打ちしながらドルシネアもジュノに入る。さて、二人は何処かな? ジュノに来た目的を済ませ、港を走りながら考える。あぁ、そうだ。この場合、あそこしかあり得ない。階段を上って、ジュノの下層に移動する。そして「あそこ」を目指してたったか走る。
「あそこ」とは、チョコボ厩舎であった。レベル20になった冒険者は、ここでチョコボ免許を取るクエストを受けられる。それ故、それまで三国で過ごしてきた冒険者は……私自身もそうだったように……レベル20でジュノへ上京する。私がサーチ結果から推理したのは、Mmさんがその冒険者、女性ヒュームのRiさんを護衛してジュノへ連れて行く途中にあるということ。そして二人をチョコボ厩舎で見つけたことで、その推理が正しかったことが証明されたのだった。
お二人のパーティに入ると、Mmさんが私とRiさんをお互いに紹介してくれた。挨拶しつつ、ジュノ来訪を感情表現コマンド「/welcome」を交えて祝福する。更にすぐそばにある競売所で材料を揃え、目の前で雪山のロランベリーを作成。以前にも記したが、目の前で作ることで気持ちをより強く伝えられると考えるからだ。出来たそれに手持ちの数本の族長山串を添えて、Riさんへお祝いに贈呈する。と、これを見たMmさんがドルシネアのバザーから雪山のロランベリーを購入し、その場でぺろり。「ドルさんの料理はいつもおいしいです」なんてしれっと言ってのけるダンディーっぷりだ。
話し込んで現実の夜も随分更けた。チョコボクエストを始めるRiさんを応援してお別れし、バストゥークを目指してチョコボに乗った。
翌日、バストゥークのレンタルハウスにドルシネア起床。鉱山区に出るや否や、魔法スクロールの在り処を問う英語の言葉が聞こえてきた。発信源を見ると、どうやらタルタルの魔道士のようだ。魔法屋が商業区にあると伝えておく。所望の魔法があると良いけれど。
昨夜に引き続き、カモミールティーを煎れて調理のスキル上げ。だが成功率が低く、スキルもさっぱり上がらない。きついな……お金がどんどん減っていく。今や所持金は六万ギルを切っていた。ジュノでこのお茶の需要がある程度あることを確認していたが、しかし大した利益にはならなそうだ。あまりお金の足しにはならないだろう。困った、困ったぞこれは。
お金が減るのは仕方ないと諦めても、取りあえず消費した分調理のスキルが上がってくれないと意味がない。錬金術ギルドでカモミールを買い込み、黒魔道士にジョブチェンジ。移動魔法・デジョンでウィンダスに帰還する。ウィンダスを走っていると、レベル上げのパーティに誘われてしまった。「デジョン使うのに一時的に黒魔道士になっただけなんです」と説明し、これをお断りする。調理ギルドへ。
合成のスキル上げにおける基本として、ギルドのNPCにサポートを受けるというのがある。一時的にスキルを上げて、合成の成功率を上げるというものだ。無料のものもあるが、有料でこれを受けた場合、よりスキルの上がり幅が高くなる。私がサポートを受けるときは、必ず有料のものを受けるようにしていた。カモミールティーの合成がうまくいかない。基本に立ち返るために故郷に戻ってきたのだった。
お金を払い、上級サポートを受けてお茶煎れ再開。すると明らかにサポートの効果があった。成功率アップに伴い、スキルの上昇率もアップ。やがて調理スキルは81を超えた。これでお金が増える訳ではないが、取りあえずほっと一安心だ。
調理を終え自宅に戻り、出掛ける準備をする。金庫から取り出すは、草刈鎌、シーフツール、呪符デジョン、そしてコメットオーブ。貯まった50個の獣人印章を、昨夜ジュノ港のNPCに渡してオーブに取り替えていた。使う場はギデアス、バルガの舞台。バーニングサークルにて、いよいよ最後のギャンブルに挑戦である。
バーニングサークルに突入するのに必要な物はオーブだけであり、そこからの緊急脱出に必要なのは呪符デジョンだけだ。シーフツールも草刈鎌も必要はない。十月後半の大規模バージョンアップで採掘・伐採等に専用モーションがついたのは既に記したが、まだ草刈りのモーションを見ていなかった。ギャンブルの前にこれを確認しておこうと思ったのだ。シーフツールは宝箱見つけた時の為の、まぁ、シーフのたしなみだ。
ギデアスに向けて西サルタバルタを走る。途中の草むらに採集ポイントを見つけ、早速歩み寄る。わくわくしながら草刈りマクロを実行。するとドルシネアがその場にしゃがみ込み、左手で草を掴むようにして、そこで右手首をくっと曲げる。で、立ち上がって草刈り終了。……地味だ。凄く地味だ。つるはしを振り下ろしてカーン! まさかりをフルスイングしてコーン!と較べると、何だこのちまっとしてる感じは。いやまぁ、確かに草刈りってこんなもんだけれども。草刈り鎌を袈裟懸けにしてズッバァーぎゃははー!とかやったら確かに変だけれども。でもこれ、快感無いなぁー。ちょいとがっかりしつつ、ギデアスへ。
ギデアスをゆっくり進みながら、ハチを狙撃して蜂蜜を集める。これはカモミールティーの材料になる。ハチがよく落とす蜂の巣のかけらはいい値で売れる。いい敵だ。だがそれ故に、レベルの高い冒険者が乱獲していたりもする。射撃スキルが上がって30になった。区切りのいい値に、ちょいとした満足感を覚える。ヒューム戦士のフレンド・Tkさんが一人でコロロカの洞門越えにチャレンジしていたので、Tellで応援する。道中、宝箱は見付けられなかった。
怪しく光るバーニングサークルの前には、数人の冒険者が道を空けるように座り込んでいた。念の為Say形式で尋ねると、そちらの方々はまだサークルに入らないとの事。お先にどうぞと促されるまま、一人でサークルの上に足を踏み入れた。先客から寄せられた応援の言葉に礼を返しつつ、げん担ぎに雪山のロランベリーを食べてからオーブを使った。バーニングサークル突入!
サークルの向こう、松明に導かれた道の先には、禍々しい雰囲気に包まれたバトルフィールドが。そしてそこでドルシネアを待つ、大中小三つの宝箱。三つの内一つを選んで攻撃。このうちどれか一つだけが当たりで、戦闘無しにアイテムゲット。外れると宝箱は強力なモンスター・ミミックになってバトルに突入だ。これが三回目のチャレンジだ。今まで二回はいずれも当たりを引くことが出来た。果たして三度目もうまくいくだろうか。
ゆっくりと宝箱の後ろに廻り込む。別に後ろだろうが前だろうが同じなのだが、まぁそこはシーフとしての本能だ。さて、どうしようかな。これまではどの大きさを選んできたっけ。よく覚えていないな。どれを選ぼう、どう決めよう。三つの宝箱を前に、立ち止まって暫し考える。そういえば何で攻撃しようか。最初は不意打ち、二度目は銃で狙撃。何かシーフらしいものって他にあったかな……?
標的決定。攻撃を受けても避けられるように、二時間ジョブアビリティ・絶対回避を発動させる。結局、その瞬間の勘で「中」の宝箱に走り込んだ。外れたら呪符デジョンで脱出、呪符デジョンで脱出だ! 自分に言い聞かせながら、ドギュンと宝箱に右手を突っ込むドルシネア。「ぬすむ」だっ! 食らえっ、そして来いっ!
宝箱に突っ込んだ右手を何も掴まないままに引き抜くと、宝箱からの攻撃に備えてドルシネアは身を堅くした。瞬間、呪符デジョンのことも頭から抜け落ちていたかもしれない。だがそのドルシネアに、宝箱の攻撃が来ることは無かった。あれ?と顔を上げると、左右の宝箱がすうっと消え、そして目の前に宝の入った箱が一つ残されていた。ドルシネアは、また当たりを引いたのだ。
この時私は、喜びよりもずっと大きい落胆を感じていた。何だ当たってしまったのか、と残念に思っていた。何故なら今回は外れを引くつもりだったからだ。これまで二回に渡って当たりを引いてきた。まだミミックという物を見たことが無かった。知り合いには外れを引いて撲殺されてきた者が何人かいる。ちゃんとミミックは存在するようだ。だが私はまだ見ていない。これが最後のオーブを使ったギャンブルである。最後にミミックを見ておくつもりだったのだ。これまで使わなかった絶対回避を使っておいたのもその為だ。ミミックの強力な攻撃を絶対回避で避けながら、呪符デジョンで脱出するというスリルを味わうつもりだったのだ。
当たったものは仕方ない。折角なので宝箱からアイテムを取り出しておく。収穫は1,040ギル、ドレイクリング、雄羊の角。リングは竜騎士用の指輪のようだ。価値はよく分からないが、以前と違い最近はジョブ専用指輪の価値はだいぶ落ちていると聞く。恐らく大した額にはならないだろう。
ウィンダスの水の区に足を向けると、門の前に一人の冒険者の姿を見つけた。久し振りに素っ裸の彼女は、フレンドのエルヴァーン・Ccさんだ。ジョブを見ると、なんとレベル1の召喚士である。また新たなジョブを始めるのだろうか。話を聞くとそうではなく、これからギデアスまで行ってギャンブルに挑戦してくるのだという。死んでもいいようにレベルの低いジョブになり、途中のモンスターは姿を隠したりする隠密行動用のアイテムを使って避けていくつもりだとか。自分がちょうど行ってきた帰りだと報告する。ミミックを見られなかったと愚痴ると、当たったんだからいいじゃないと言われる。ごもっとも。Ccさんは外れて死んだ経験ありだものねぇ。
召喚獣を出している間はMPを消費する。エルヴァーンはMPが少ないのでちょいと不利だ。何度も召喚を繰り返して、その使い勝手を確かめるCcさん。ふと思い付いて一度モグハウスに行き、金庫に残っていたメロンを持ち出してきた。これを絞ってジュースに変えて、数本をCcさんに渡す。ジュースは徐々にMPを回復する効果を持つ。もしかしたら召喚獣を出していられる時間を増やせるかもしれないと考えたのだ。
いよいよギデアスを目指すというCcさんと手を振って別れる。ドルシネアはウィンダスに戻り、そのまま就寝。後日Ccさんに結果を尋ねたところ、バルガの舞台まで到達出来ずに死んでしまったそうである。それは残念でした。