Last Modified : 30 JUNE 2004
From Dulcinea's diary Part.4 "March for the Dulcet Wind".
短いログイン時間で過ごす日が続く。ドルシネアから送られる串焼きをジュノのヘブンスコープで受け取り、競売所に出品。その売上げを宅配を利用してドルシネアに送り返す。ヌナイは保存していた装備品や裁縫関連の素材を競売所で処分し、やはりその代金をドルシネアに送る。トパーズトパーズは栽培の管理。必要な物はドルシネアに送る。そしてサンドリアに滞在しているドルシネアがそれらを受け取り、調理に励む。そんな毎日だ。プレイ時間三十分から一時間では、町の外に出ることすら叶わない。
料理のスキル上げで作るのは、変わらずナヴァランだ。少しずつ上がる。ナヴァランの素材にはワイルドオニオンがある。これが苦しい。オニオンはダース4,000ギル前後する比較的高価な食材だ。スキルを上げるためには一ダース程度じゃあ全然足りない、もっともっと必要だ。加えてオニオンは山串の材料でもある。本当はそちらに使ってお金稼ぎをしたいのだ。ナヴァランの競売における流通量は殆ど無い。だからNPCに売り捌くしかないのだが、それだと大したお金にならない。FFXIにおけるNPC売却値は極端に低く設定されているからだ。NPCに売って儲けなんて、出る筈も無いのだ。そこが苦しい。
前述の通り、お金稼ぎに作るのはミスラ風山の幸串焼き。結構な確立でハイクオリティ品の族長専用山の幸串焼きになる。昔、族長山串はさっぱり売れない外れアイテムであったが、今やジュノではどんどん売れる人気商品だ。やはり10,000ギルを切る値段に相場を下げさせたのは正解だった。正解だったのだが……私の付けた値段、9,500ギルより更に下がり、現在9,000ギルが相場になってしまった。しかもどうもこのまま定着しそうだ。9,500でも充分売れていたのに、どうして下げるんだくそう。ちょいと悔しい。
相場が下がっていく原因の一つには、「自分のを早く売り捌きたい」と考える出品者の存在が挙げられる。相場通り9,500で入札する者がいるとして、それを9,500と9,400でそれぞれ出品してした者がいた場合、例え前者の出品が先であったとしても、後者のより低い値で出品していた方が先に落札される。FFXIの競売はその様なシステムになっている。よって早く売り捌くには、値段を安く設定するのが一番だ。そしてこれが、相場を下げていく「重力」なのだ。
短いログイン時間の中でも、知り合いとお話し出来るのは嬉しい。サンドリア港の競売でばったり会ったヒュームのTkさんに、クエスト用の蜜蝋を送ったり。Tellで挨拶を送ってくれたタルタルのNmさんと、その知人のエルヴァーン・Vnさんに、魔女の焼き串を送っておく。翌日にはお二人からお礼のメッセージが入っていた。パールによる繋がりは失われたが、フレンドとしての付き合いは続いている。これも嬉しい。
競売所近辺には多くの冒険者がバザーを出している。それらを漁って、出来るだけ安く食材を集める。日本人を意識した北米冒険者のバザーもあれば、逆に北米ユーザの為に英語でコメントを記した日本人のバザーもある。中には「low price」と記しておきながらぼったくり価格を提示した、日本人のバザーもあった。なんだかなぁと、少し呆れる。
先日売り切れたバザーの毒消しを、補充するべく合成する。しゅばしゅばしゅばーっと派手なエフェクトを発して、ハイクオリティ品が出来た。もっとも毒消しにはハイクオリティ品としての特別なアイテムは存在しない。ノーマル品と同じ「毒消し」が出来るだけだ。だがこの時、その毒消しが二本出来ているのに気が付いた。おお、どうやらこの間のバージョンアップの折に、毒消しもハイクオリティ時の生成本数が増えたようだ。実にいいことだ。
トパーズトパーズでウィンダスの調理ギルドへ走る。開店直前だ。そこには既に開店を待つライバル達の姿があった。朝五時の開店と同時にどっと購入が殺到する。貴重な「マウラのにんにく」を何とか一ダース購入出来た。ガッツポーズ。これも山串の素材となるが、最近諸々の事情から調達がとても困難になっていた。
にんにくを抱いてモグハウスへ帰宅する途中、視界の中に「あの人」の姿を見つけた。立ち止まり、少し迷った末に感情表現コマンドで手を振ってみる。……だが、何の反応も返ってこなかった。やはり、駄目か。後悔の念に包まれながら、その場を後にした。
ようやく来た休日。まとまったプレイ時間を取れるだろう。今日もヘブンスコープの族長山串が三ダース売れた。素材の肉と一緒にドルシネアに売上げを送り、所持金はなんと193,192ギルにまで膨れ上がった。肉を購入していなければ、20万ギルを超えていただろう。早速こしらえた族長山串を丁度ログインしていたミスラモンクのStさんに送り、暫し二人で調理談義。在庫不足のにんにくを調達するために、栽培を利用しようかと共に検討する。
何故ここに来てにんにくが入手しにくくなったかというと、にんにくの原産地であるコルシュシュ地方が、獣人支配に陥ってしまったからである。コルシュシュはタロンギ大峡谷とブブリム半島、そしてシャクラミの地下迷宮からなる。レベル10代前半から後半になったウィンダス出身の北米冒険者達が、この辺りの狩りで死にまくってしまったのだ。
通常はコルシュシュ地方のNPC物産店がにんにくを安価に、そして大量に供給してくれるのだが、それを獣人支配で絶たれてしまった。こうなるとあとは、少々高めで少量しか入荷しないウィンダスの調理ギルドと、冒険者自身の栽培による供給でしかにんにくは流通しない。にんにくは山串の素材であり、山串はヴァナ・ディールの前衛冒険者殆どが口にする主食と言っていい。それ故にんにく不足は山串不足に繋がり、当然の様に山串の高騰へと繋がっていった。
ちなみにコルシュシュ地方の獣人支配は、北米ユーザが参入する以前にも起こっていた。それは、少数の冒険者が低レベルでそこまでやって来て、モンスターにわざと殺されまくるという自殺によって引き起こされていた。獣人支配でにんにくやヤグードドリンクの素材不足を誘発させ、自らの栽培による収穫物の販売でお金稼ぎを狙うプレイヤーが、そういった工作を行っていたという。
クリスタルとナヴァランの素材を買い込んで、ドル猫はサンドリアを出発した。町の外に出るのは久し振りだ。チョコボに乗ってウィンダスを目指す。いつもはウィンダスからサンドリアに来る際にチョコボを使い、逆のルートは黒魔法のデジョンを使ってワープしていた。今回は調理の利便性を考慮してサンドリアにホームポイントを設置したため、ウィンダスへはデジョン出来なかったのだ。
普段とは逆のルートをチョコボで移動、なんだか新鮮だ。その感覚を楽しんでいると、釣り師エルヴァーン・Ccさんが「久し振り」とTellで声を掛けてくれた。パーティ中だというのにわざわざ、有り難い。サルタバルタに入ったところでチョコボを降りた。故郷の風景を味わいながらのんびりウィンダスを目指していると、毒で死にかけている猫を発見。解毒魔法・ポイゾナで救出した。
ウィンダスの調理ギルドでナヴァラン作り。その帰りに町中を走っていると、バザーから毒消しが数個売れた。ぺこりとお辞儀をする。すると先方から、質問のTellが英語で届いた。
『どうしてそんなに安く毒消しを売っているんですか?』
言葉を選んでいたため少々時間が掛かってしまったが、『わしゃー昔、毒でよく死んだもんじゃったー』と返すと、『なるほど(笑)』と笑われた。早速毒消し売り仲間のStさんにやり取りを報告して、このエピソードを楽しんだ。
ヌナイがずっと着ていた装備をドルシネアに送る。ヌナイは久し振りの初期装備だ。しかしなんだろうね、この服は。エルヴァーンの初期装備。レオタードみたいなの。ファンタジー世界の衣装っぽくないなぁとずーっと思っているんだけれど。何製? 他の種族の服は生活観あるんだけれど、エルヴァーンだけはなぁ。
とか言いつつドルシネアで再ログイン。ヌナイから送られた装備を受け取り、久し振りに戦士にジョブチェンジ。レベルは14だ。料理を作ってばかりなのに飽きたので、ちょいと狩りに出掛けることにした。狩りの対象はホルトト遺跡のゴブリン達。大量に消費するワイルドオニオンをただでかき集めようという算段である。武器には両手剣・クレイモア。飛び道具として、以前Vnさんに貰ったライトクロスボウを装備。そういえば、私はまだクロスボウを使ったことがなかったな。
自分の食事用にナヴァランを作成。スキルが上がって74になった。更にMP回復用にパインを二ダース、競売で購入。久し振りにパインジュースを絞ろう。ゲートに立つNPCガードにシグネットを掛けてもらい、サルタバルタに出陣だ。
内ホルトト遺跡に到着し、早速ゴブリンにクロスボウの狙いを付ける。
射撃スキルのスキル上げになればいいなと思っていたのだが、当たりさえすれば一撃でゴブリンは撃沈だ。これはスキルを上げられないな……まぁ、銃をパンパン撃って既にスキルをそれなりに上げているから、しようが無いのかも。純粋にクロスボウを楽しむとするか。
ゴブリンから順調にオニオンを収集しながら、久し振りのホルトト遺跡の懐かしさに浸る。リンクしたゴブリン達に襲われるタルタルを救出。どうやらミッション遂行にやって来ていたようだ。低レベルのパーティを邪魔しないように奥へ進む。モンスターから獣人印章をゲット。これで50個、印章が貯まった。これはギデアスのバーニングサークルに行けますね。またギャンブルか……。
混み合って来たので、小一時間で遺跡を脱出。一度ウィンダスに戻ってから、今度はタロンギ大峡谷を目指した。あそこなら栽培用の種を収穫できる。サルタバルタを北上中、通りがかりの北米冒険者から回復を要求するTellが来た。見るとどうやら毒を食らっているらしい。念のため「poison?」と聞くと「yes」と答えたので、ケアルで回復を施した。レベルの低い戦士だとポイゾナを使えない。ちょいともどかしい。
タロンギに到着。Ccさんからセルビナの惨状を報告するTellが届いた。なんでも丸いオモチのようなリーチ(ヒル)が大量にリンクして、セルビナ出口に群れを成して飛び跳ねているらしい。襲われたパーティがセルビナに逃げ込む際に引っ張ってきたのだろう。ゴブリンやボギーがそこまで来るのはよく見るが、リーチというのは見慣れない。Ccさんはその珍しい光景を楽しんでいるようだった。
暫くの間、タロンギ南部でタマネギやハチ、ゴブリン等を狩り続けた。助けた北米冒険者にサポートジョブについて説明をしたのだが、どうもうまく話が噛み合わない。こんなこともあるさと、あまり気にしないことにする。周りには多くの北米冒険者がいて、Say形式で『パーティに入れてくれる?』『いいよ』とかいう声が聞こえてくる。こんなフレキシブルなパーティ編成も、あちらの冒険者の特長だ。
峠でタマネギを狩っていた時、「その人」が道を駆け下りてきた。それは同じパールを持っていた、元の仲間。今はもうリストにいない、元フレンド。無言のまま、その人はドルシネアの横を通り過ぎた。それをこちらも無言のままに、横目で見送る。
その後ろからやって来たのは、変わらぬ付き合いを続けているTkさんだ。Tkさんはドル猫を前に立ち止まり、ぺこりとお辞儀をしてきた。目に留まったのは、彼女の頭上に浮かぶリンクパール。私達が付けていた、あのパールとは色が異なる。「パール、変わったんですね」と声を掛けると、「はい^^;」と気まずそうな返事が返ってきた。
話を聞くと、リンクシェルを作り直したのだという。新しいメンバーも勧誘しているそうだ。以前のリンクシェルに刻んだ名前は、私が提案したものだ。私が抜けた今、それを持ち続けるのはあまり良い気分ではなかったのだろう。その気持ちは理解できる。少し話してから、ウィンダスに向かうTkさんを見送った。
タマネギ狩りの再開もせず、暫くその場に立ち尽くした。峠に風が吹き抜ける。地面の黄色とのコントラストが眩しい程に、タロンギの空が青い。頭上のそれを眺めながら、揺れ動く心を押さえ付けた。
……そうか、あれは無くなってしまったんだな。長い間身に付けて、多くの言葉をやり取りしたあのリンクシェルは。そしてもう誰の声も、あのパールを流れることはないんだな。そんな寂寥感を覚えた。そして私の提案したその名を捨てられたというところから、私の存在を否定されたような孤独感が、再び身を包みこんだ。
暫くしてからウィンダスへの帰路に就いたドルシネアの元に、CcさんのTellが届いた。ギデアスのバーニングサークルで当たりを引いたことを報告してくれた上で、お休みの挨拶を送ってくれた。
そうだ、忘れてはならない。声を掛けてくれる人がいるのだ。一人きりじゃあないのだ、決して。私がここで「孤独である」と思うのは、声を掛けてくれる皆を無視するということ、ないがしろにするということなのだ。それをしてはならない……。挨拶を返し、そう噛み締めながら、タロンギを立ち去った。