1. 番長方面
  2. Dulcet Wind
  3. ドルシネア・ダイアリィ 第四部・目次

Last Modified : 25 JUNE 2004


虚空に消える声

サブキャラクターのヌナイでも、金庫に貯め込んでいたアイテムの処分を進めた。彼女が担当しているのは、武器や鎧の装備類と裁縫の素材。その内後者を競売所へ売りに出した。絹糸、サルタ綿花等が売れていく。ヌナイには裁縫のスキル上げを少しずつやらせていたが、それを断念しての売却だ。彼女に申し訳なく思う。

ドルシネアはサンドリアに起床。リンクパールは付けずに行動する。パールを付けない時間はここ暫くで随分増えていた。静かなことにはもう慣れている。

既に記したことだが……例の外国人批判の発言に関する話を、前日ある方にしていた。だがどうやらそれは「するべきではない行動」であったようだ。その時その方は、私から逃げるように会話を打ち切った。一夜明け今日になって、その時の行動を詫び、しかし例の発言は流せないと説明するメッセージをその方に送った。だが丁度その時その方は、批判発言をした人と一緒に行動をしていたようだ。気が付かなかったとはいえ、間が悪かったかと舌打ちをする。先方からの返事は貰えなかった。嫌われてしまったか、と思う。

串焼きとサーモンのムニエルを作りながら、ミスラモンクのStさんとTellで調理&毒消し談義をして過ごす。

暫く時間が経った後、フレンドリストを見てリンクシェルの殆どのメンバーがジュノ港に集っているのに気が付いた。リンクシェルでのイベントだろうか。勿論私には何の話も来ていない。タロンギ大峡谷の時と同様に、蚊帳の外にされているのか。やがて彼らは飛空挺に乗り、カザムへと向かったようだ。あぁ、私が最初カザムへ向かおうとした時は、話も無しに行くのかとクレームを付けられたものだったが……。冷めた溜め息をふっとつく。

食材の調達をしていて、ミスラントマトが必要になった。トマトはカザムに売られているのが安くて良い。リンクシェルのメンバーは、未だカザムにいるようだ。ちょいとお願いしてみるか。

たまにお話して貰っているある人に、「トマトを買ってもらいたいんですが、よろしいですか?」とTellで呼び掛けた。少し待つが返事が無い。はて、どうしたかなと首を捻りつつ、もう一度Tellを送信する。返事は、いつまで待っても来なかった。

手が止まる。血の気が引いて、背筋が冷たくなる。まさか。この方にも私は無視されるのか。何故だ。接触を殆ど取らなくなった「あの人達」ならともかく、この方にそうされる理由が分からない。これまで問題は何も無かった筈だ。どうしてなんだ。もしかして、もう皆そうなのか。

衝撃の中、一縷の望みを託して、その場にいるであろう別の人にTellを送る。
「もう誰も話を聞いてくれませんか?」
ややあって、
「そんなことありませんよ〜^^」
という、いつもの調子の返事が返ってきた。

改めてトマトのことを頼みつつも、巨大な喪失感に包まれたままログアウトした。


おにぎりとスッポンのスープ

翌日、ポストには贈られてきたトマトが入っていた。ブブリム半島で海釣りをしているエルヴァーン・Ccさんと成り行き上、江戸っ子口調で会話。ブブリムで釣っていると良くシャル貝が引っ掛かるのだという。先日死んで取り損ねたシャル貝を注文した。

Ccさんから注文を受けていたスッポン料理。調理のスキルも充分上がったので、そろそろ挑戦してみることにする。どんぐりは以前拾ったものがある。競売で素材のオドリタケとがらを購入。だがジンジャーが無い。ヘブンスコープでログインしてジュノにて購入、ドルシネアへと送る。

全ての材料が揃ったところで、ドルシネアは移動魔法・デジョンでサンドリアからウィンダスへ。更に材料を抱えて調理ギルドに向かう。念のため、NPCの上級サポートを受けてスキルを上乗せしておいて調理開始! 無事に「スッポンスープ」を作り上げた。Ccさんが釣り上げた貴重なスッポン。失敗しないで本当に良かった。

水の区の調理ギルドからモグハウスへの帰宅途中、とんずらで突っ走っていると今抜き去ったかぼちゃ帽子のタルタルが、ドルシネアのバザーを覗き込んだ。開いたバザーはすぐに閉じられる。だがまた見始めたかと思うと、中からおにぎりを一つ買ってくれた。ドルシネアはそのまま疾走し、門をくぐってモグハウスの前へ。

そこで立ち止まり、振り返ってタルタルを待つ。たったかとやって来たタルタルにお辞儀を返し、横に並ぶようにしてモグハウスに足を向けた。感情表現コマンドでにっこりと微笑むタルタル。にやりとして見せるドルシネア。少し幸せな気分。反応があるっていいことだ。そのまま二人でモグハウスへと入った。

ポストにはCcさんから、シャル貝一つとおまけの海苔が三ダース。後者に悲鳴を上げつつ、お返しに族長専用山の幸串焼き半ダースとスッポンスープを送った。


海に還す

プレイ時間をなかなか取れない日が続く。トパーズトパーズによる植木鉢の管理と、ヘブンスコープによる競売所での売買だけを何とか済ませ、その合間に知人とのTellでの会話を軽く行う程度だ。栽培で炎のクリスタルが多く収穫できたのは幸運である。

釣りのスキルが「目録」まで上がったというCcさんは、忍術用の素材集めを行っていた。「自分でつくらんと気がすまんタイプなもので^^;」と語るCcさん。話によると、忍者用の食事にはウナギの料理がいいらしい。ただウナギはなかなか釣られないとのこと。時間があったら、ウナギ釣りに協力したいところだ。

翌日はジュノにてヘブンスコープでヒューム戦士のTkさんに会った。

画像・ヘブンスコープとTkさん。
いつもと違って高々度から見下ろしてみるTkさん。

競売に出品しようと持ってきていた族長山串をお裾分けする。数日後に、レベル上げで族長山串を食べた時のことを、「パーティメンバーに族長と驚かれます」と嬉しそうに報告してくれた。とても嬉しい気分になる。

更に翌日。今日は少し時間を取れそうだ。ポストを覗くと、エルヴァーンのVnさんから炎のクリスタルが一ダース届いていた。

屋外で山串を作っていると、『合成はどうやるんですか?』と英語で尋ねられた。『クリスタルを使うんですよ』と、手順を説明する。ローストコーンを焼き上げて、喜んでいた。焼き上げた族長山串半ダースを、お礼としてVnさんに送る。チョコボを借りて、港町・マウラへ。そして船に乗る。

半月前の、ギデアスにおける集団行動について。そしてハロウィンの夜の、タロンギ大峡谷における無反応について。リンクシェルの掲示板に意見や要望を書き込んだが、結局何も返答は得られなかった。先日の某氏の外国人批判の件は、リンクシェル内では特に問題にはなっていないようだ。翌日以降も普通に活動しているようだし、気分を害してパールを外した私に対しても、何のリアクションも無かった。だがそれらは予想の範疇であり、私が求めるもの、求める関係がそこに無いことの確認になった。

そしてイベントにも招かれず、更にメンバーに無視をされる状況にあることから、私の存在はメンバーの内少なくとも数名には疎まれるものであることも確認できた。私という者は、このリンクシェルにとってマイナスとなる存在なのであろう。

一方、リンクシェルの管理という立場から見たとき、その様な「マイナスとなる存在」を野放しにしておくことは良いことではないと私は考える。リンクシェルの管理者権限を有する者には、「キック」という操作を行う権利がある。それは指定したメンバーの持つパールを破壊する、即ちリンクシェルから追放する機能だ。「マイナスとなる存在」を放置するということは、リンクシェル内部の雰囲気、メンバーの関係を悪化させていくだろう。「マイナスとなる存在」は、相手にパールの放棄を求めるかキックをすることで、取り除かなければならないと考える。

だがどうも、私をキックする様子は見られない。これまでそうだったように、今後も無反応による放置を続けるのかもしれない。それは私が考える理想的なリンクシェルの管理ではない。だから私は、自分で自分自身をキックする……パールを捨てることに決めたのだ。

既にヘブンスコープとトパーズトパーズは、それぞれジュノの海とウィンダスの川へとパールを放棄していた。今日はドルシネアでパールを捨てる為、船に乗ったのだ。初めて間もない頃の思い出深い海へ、パールを沈めるその為に。


オレンジ色の海

マウラを出航した船。だが甲板に出るとそこはあいにくの雨であった。灰色の空の下、暗く濁った海に放つのも忍びない。船体後方に座り込み、晴れるのを待つことにした。雨が甲板を叩く音を聞きながら、何もしないで時を過ごす。ガルカの釣り師が竿を操り、時折折れた太公望の釣り竿を修理しているのが、ドルシネアの背中越しに見えた。

リンクシェルでの出来事を思い返すと、最初に浮かぶのはまだリンクシェルの無かった頃の出来事だ。仲の良い知り合い同士で行った、初めての船旅。このリンクシェルは、その時の事に由来する名前を付けられていた。だがそれも、もう遠い昔の出来事の様に思える。

何故このような、孤立した状態に陥ってしまったのか。幾つかの要因は思い浮かぶ。私自身、元々ソロプレイの傾向が強く、またレベル上げも止めてしまったために、メンバーと共に行動する機会が少なかったこと。言葉遣いや会話の内容に関する強い拘り。そしてそれらを公にする、この「ドルシネア・ダイアリィ」の存在……。

強い拘りや考え方を持つ私が、彼等に近づき過ぎてしまったのかも知れない。そしてそれ故、彼等に多くのものを期待してしまった、求めてしまったのか……。

だがそれとは逆の要素もある。以前、一ヶ月ほどパールを外していた時期があった。あの時にトラブルとなった相手との話を通して、価値観の大きな溝を感じた。ゲームに対する考え方の違いと、それを説明してもうまく伝わらない、理解して貰えない状況に、やがて私は諦めの感情を抱いた。それがその後、別の人への諦めに派生してしまったように思える。意見に対して反応が得られなかった時、それで伝えることを打ち切って精神的な距離を遠ざけた。……諦めるのが簡単過ぎやしなかったか。それは私自身が、相手を軽んじていたことになるのではないだろうか。

自分自身の行動を振り返りつつ、だがやはり許容出来ない相手の行動、発言も改めて確かめる。望ましくないと思うことがある。流せないことがある。正しいと思う方向へ向ける為には、行く為には、例え声を掛けてもらえなくなったとしても……。なぁに、言葉を発して絶交されたことならこれまでにもある。慣れているから、どうって事は無い。どうって事は無いんだ……。

マウラを出て十分ほど経ったところで、雨が止んだ。雲が薄くなり、空には青が広がった。腰を上げ、立ち上がる。手すりに近づき、鞄からリンクパールを取り出した。リンクパールを「捨てる」。

程なく船は、最初の船旅の時と同じように、セルビナに到着した。


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