1. 番長方面
  2. Dulcet Wind
  3. ドルシネア・ダイアリィ 第四部・目次

Last Modified : 23 JUNE 2004


淡々と、黙々と

トパーズトパーズ担当の栽培で炎のクリスタルを作ろうとして、失敗し取れてしまったローレル(月桂樹)が随分溜まった。このスパイスを使った料理の代表が、防御力を上げる「ゆでがに」だ。ゆでがにはパーティの盾となるナイト等に好まれるらしいが、先日のバージョンアップでこれにも新たなハイクオリティ品が設定されたらしい。試しに作ってみることにした。

今や主要な収入源となる「ミスラ風山の幸串焼き」を焼いてから、カニの肉を塩茹でする。そこそこの確立でハイクオリティ品「ボイルシザー」となった。さて、作ったはいいがちゃんと売れてくれるんだろうか。山串は一度の合成で一ダース出来る。だがゆでがには一度で一つにしかならない。一ダース揃えるには最低十二回の調理が必要だ。つまりそれだけ、高価な炎クリを消費することになる。ゆでがにはそれ程難しいレシピでもないので、作ったところでもう調理スキルは伸びない。スキルの上がらないレシピに貴重な炎クリを消費したくないのだ。やっぱり山串だけで行こうかなぁと思う。

以前、知り合いに調理についての構想を語ったことがある。ドルシネアの調理スキルを最高値まで上げられたら、その後必要スキル値の低い料理から一つ一つ、全てのレシピを作っていく。そんな目標を考えていた。今までドルシネアは色んなレシピに手を出して、他の人が食べないような物も口にしてきた。しかしそれでも、まだ作ったことのないレシピが多く残っていたのだ。出来ればそれをクリアしていきたい、そう思っていた。だがもうそんな時間は確保出来ない。お金稼ぎという切羽詰まった理由の為に、決まり切った料理の大量生産を行うことは、あまりにも不本意な状況だった。

モグハウスでごんごんと炎を上げて調理中、ミスラモンク・StさんのサブキャラからTellが届いた。リンクパールを付けずに行動するのは新鮮だというStさん。だがレベルの低いサブキャラで低レベル用冒険者の狩り場を歩いていると、困ったことになるという。周りが英語で溢れているというのだ。

確かに今低レベルな冒険者の多くは、先日から参入してきた北米ユーザになるだろう。Say形式による会話、そして自分への呼び掛けに、すっかりパニックになってしまうそうだ。英語で返答するのがとても難しく大変だ、とStさんが言う。私は以前のオンラインゲームで海外の方と遊んだことも少しあるので、今はパニックという程にはならない。しかし初めてのオンラインゲームで、普段英会話などする機会のない人間には、この現状結構きついのだろうなぁとは推測できる。

ジュノにてヘブンスコープ、意を決して「族長専用山の幸串焼き」の相場下降を図る。やはり幾らなんでも一ダース10,000ギル以上は高過ぎる。その大台を切れば少しはお得感が出る筈だ。9,600ギルで出品する。更にバザーで同じような値を道端に座り込む。そのままちょいと出掛けて「寝バザー」初挑戦。だがなかなか売れない。しばらーく経ってからようやく一ダース。最終的にバザーからは二ダースしか売れなかった。

ドルシネアはサンドリアに移動。サンドリアティーを煎れ続けて、やっと調理スキルが70になった。69から70へ上げるのにとても苦しんだ。長かった、実に長かった……。その後、売れ筋の料理の相場をメモに記録してから、デジョンでウィンダスへと帰郷した。


The whole new world

サンドリアのレンタルハウスに通じる路地にて、かぼちゃタルの死体を発見した。

画像・死せるかぼちゃタル。
なんつーか、ネタとして死んでるんじゃないかという位可愛い。

ドルシネアの向かいに位置した男ヒューム氏が蘇生魔法・レイズを使う中、「かわいい……」と呟きつつばっちり写真を撮る私。そして生き返ったタルタルに「写真撮りました」と告げる。「がーん」と驚くタルタルに、「しまった、取り損ねた」と惜しむヒューム氏。何でも、毒を食らってモグハウスに逃げ込もうとしていた(そうすれば毒が癒える)が、あと一歩及ばずということらしかった。むしろここで死んだ方がナイスプレイ、と言い切ろう。

翌日ヘブンスコープでログインすると、出品しておいた族長専用山の幸串焼きが二ダースとも売れていた。20,000ギル弱の売上げだ。やはり10,000ギルの大台を切ると買い手が付くのではないか。族長山串がコンスタントに売れるようになると、利益率の非常に高い収入源となる。期待だ。今後の動向に要注目。

ウィンダスのドルシネアでログインし直して、早速山串の作成。いきなり失敗、コカトリスの肉を失ってへこむ。な、なぁに、族長さえ売れればコカ肉の一切れや二切れ……くうぅ。作った山串を持って競売所へ。山串を出品し、シュヴァルサーモンを買い込む。出品額の微妙な調節が功を奏し、山串は出品直後に売れていた。

水の区の調理ギルドに向かう途中で、ゲームを始めたばかりの北米ユーザを見掛けた。何故それが分かったかというと、英語の会話がSay形式で周囲に流れていたからだ。数人のプレイヤーに、冒険者優待券のトレードの仕方を習っている。感情表現コマンド「/cheer」で応援して、その場を離れた。

調理ギルドにてバターを作ってから、買ってきた食材を使い「サーモンのムニエル」作り。調理スキルアップ! 釣り師・CcさんからTellが入電。炎のクリスタルの高騰に驚いている。炎クリは調理だけではなく、鍛冶や彫金などの多様な合成に用いられる。ハロウィンイベントに伴って高騰している炎クリ、多くの合成職人達の財布を痛めていることだろう。

ついでに作ったせんべいを持って、お化けの仮装をしたNPCに配り廻る。そしてやっとこさ「トリートスタッフ」をゲット。これさえあれば、シーフのままで遠出をした先からデジョンで帰還できるという訳だ。まぁ、今後遠出をする暇がそもそも確保できないんじゃあないかという不安な状況にあるのだが。既に11月。新たな業務に入っている。忙しくなりそうだ。

町の中を歩いていると、度々英語のSayやShoutが聞こえてくる。それらの多くは、NPCの居場所を尋ねるものだったり、かぼちゃ帽子やトリートスタッフの入手方法であるが、時には「金をくれ!」という物乞いや、「○○どこ行った?」という友人を呼ぶ声だったりする。質問にはなるべく答えてあげたいと思うのだが、頭の中で英語を和訳し、それの回答をまた英訳するという手順を踏んでいる時点で少々時間を食ってしまう。そして「これで伝わるかな……」「でももう遅いんじゃあないかな……」と声を出すのに二の足を踏んでいる間に、質問者の姿は消えてしまうのだ。もどかしい……一歩踏み出せない自分が。

トリートスタッフによるデジョン発動を体感すべく、サルタバルタへ散歩に出た。低レベル冒険者の狩り場であるその周辺には当然、駆け出しの北米冒険者達の姿が多く見られる。そんな彼らに回復魔法・ケアルを飛ばすと、「Thx!」「woohoo thanks-」と礼がSayで返ってきた。やはり英語は新鮮である。

画像・デジョン杖。
デジョンをすべく、トリートスタッフでイモムシを殴る。

暫くイモムシを叩いていると、いきなり画面が真っ黒になり、データがロードされたと思うとホームポイントのウィンダスにすっ飛んでいた。デジョン成功である。黒魔法のデジョンでは呪文の詠唱→発動→画面暗転といった手順を踏むが、このトリートスタッフの場合はそれらを飛ばしていきなり真っ黒だ。いつ発動するかも分からないので、少々心臓に悪い。

そのままウィンダスを歩き、数人の北米冒険者と会話をやり取りした。今日から始めたという人に魔法の買い方を教えたり、やはりトリートスタッフの入手方法を伝えたり。黒魔法・ポイズンが売られていないと困っている冒険者には、コンクェストとその影響による売店の品揃えの変わり方について説明をした。丁度この週、ウィンダスはコンクェストで最下位となり、品揃えが悪かったのだ。

北米冒険者との接触が楽しい。レベルが低いドルシネアでも彼らの力になれるというのもある。だが何より、英語での会話という普段行わないことに対して、頭をフル回転させるのが面白いのだ。なるべく早く、より適切な言葉で簡潔に。うまくいかなかった時はどう言えば良かったのかを反省し、次の機会にその言葉、その表現を試す。そういった試行錯誤が楽しくてしようがない。

それはオンラインゲームを始めた時の緊張感と高揚に似ている。「Phantasy Star Online」で初めてオンラインに入り、自分の隣に別のプレイヤーが立った時の高揚。「初オンライン」という名の部屋を作って一人プレイをしていた時に、別のプレイヤーが入って来た時の、微かな期待が混じった緊張感。それに似た感情をこのヴァナ・ディールで、北米プレイヤーに対して私は今抱いている。

ヴァナ・ディールは今、新たな世界に変わろうとしている。


Detractor

再びログインしてリンクパールを付けた時、私は以前抱いた懸念が実際に起こってしまっていることを知った。ある方の、北米ユーザに対する愚痴・中傷がパールを通して聞こえてきたのだ。

「礼も出来ないなんて、あいつらアメリカ人は礼儀を知らない」
言い放つ言葉の対象が余りにも広すぎる。
「いや、それはアメリカ人とか関係ないですよ」
フォローを入れるが、彼の言葉は止まらなかった。

「大体あいつら死に過ぎる」
「始めたばかりだからしようがないですよ」
「オークに何度も突っ込んでいく。学習能力ないんじゃないか」
「日本人だって最初はよく死んでいたんじゃないですか。私だって死んでたし」

うんざりしつつも、彼の自制を促そうと相手をしていたのだが、
「周りがあんなんで、低レベルの日本人が可哀相だ」
その言葉で、私の辛抱は限界を超えた。

「気分が悪いのでパールを外します」
そう言って私はパールを外し、彼の言葉を耳に自分の届かないようにした。はらわたが煮えくり返るのを堪えながら森の区・競売所前で調理をしていると、一人、二人とリンクシェルのメンバーがやって来た。人が集まる競売所である、別にパールを外した私の様子を見に来た訳ではないだろうが……ともあれ、やはり先程の話題になった。
「流せることと流せないことがある」
私はそう彼らに告げた。

話によると、先程の彼は北米の冒険者に数十分掛けて色々な説明をしたにも係わらず、一言のお礼も無しに去られたことに対して腹を立てていたのだという。その事については同情するが、しかしその後の北米ユーザ全体を対象にした言葉は暴言だろう。それを認めることは出来ない。それは私が接してきた人たちをも対象にするいわれ無き批判だからだ。

「日本人が可哀相だ」……そう言ったが、しかし彼は以前、競売で自分が利益を生み出していた品種を他の者が利用しだしたところで、その品種の相場を破壊すると言った人だ。「日本人が可哀相だ」と本当に思っているとは、私には信じられなかった。単に北米ユーザを非難するため、この時だけ「仲間」の範囲を自分に都合良く広げただけじゃあないのか。「日本人」という区切りを利用しただけ。そこに私が組み入れられるのはご免だ。

前者の怒りと後者の嫌悪がない交ぜになって、私の心を支配した。「気分が悪いのでパールを外します」……今にして思えば、これしか言えなかった、伝えられなかったのは、冷静さを少し欠いた私の失敗だろう。そして、彼とよく共に行動していたある方にその感情をストレートに伝えてしまったことも。私の気持ちを理解して貰いたいがために、Tellで、そしてメッセージでそれを告げ、説明したのだ。だがFFXIのプレイを通して私が後悔している事があるとすれば、多分に感情的であったその一方的な行動だ。

それ以来、その方から声を掛けられることも、手を振り返されることも、無くなってしまったのだから。


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