Last Modified : 4 APRIL 2004
From Dulcinea's diary Part.4 "March for the Dulcet Wind".
バストゥーク・鉱山区よりツェールン鉱山に入る。炭鉱内部、NPCによって閉ざされた扉の向こうへ。そこは「コロロカの洞門」。四月に導入されたエリアだ。一度だけ、ほんの入り口だけを覗いたことがあった。今日はその先へ、ドルシネアは一人のエルヴァーンの女性と共に足を踏み入れていた。
リンクパールを通して、エルヴァーンのCcさんと話をしていた。釣りの先輩であるCcさんも、錆びたキャップの売値の高さを美味しく感じていたようだ。そしてそのCcさんから、ラバオへ行こうと誘われたのである。「ラバオ」とは砂漠にあるオアシスの町で、そのオアシスで魚やキャップが釣れるのだそうだ。折角のお誘いだ、これに乗ることにした。
ラバオはこのコロロカを抜けた先にある「アルテパ砂漠」にある。まずはこの洞窟を抜けなければならない。
このコロロカの洞門にも勿論モンスターはいる。この辺の敵の強さは、ジュノから行けるクフィム島のモンスターと大体同じくらいだそうだ。となるとレベル20辺りからの狩り対称となる。クフィム島が盛況だったように、このコロロカも多くの冒険者が狩りを行っていた。戦ったりやられて死体になっちゃったりしている冒険者の間を、Ccさんとドルシネアが走って通り過ぎていく。
暫く進むと敵もだいぶ強くなってくる。ミミズ、コウモリ、巨人。クモは初めて見た。強烈な一撃を持つモンスターと聞く。レベル29のドルシネアでは到底敵わない相手だ。勿論彼等に見つかると襲われるので、Ccさんに消音魔法であるスニークを随時掛けてもらって移動する。洞窟内部のモンスターは目が利かない代わりに、音で敵を察知するのだ。
スニークは既に掛かっているところに重ねて駆けることが出来ない。スニークが切れて少し経つと、立ち止まっていてもモンスターに襲われるようになる。音を立てない状態を継続させるには、スニークが切れたタイミングですぐにスニークを掛けてもらわなければならないのだ。とはいえ、自然にスニークが切れるのを待って、それを報告して掛け直しではなかなか難しい。そこで既に掛かっているスニークを「自発的に切る」必要があるのだ。ところがこういう魔法を使った隠密行動に私は慣れていない。何度もスニークを切るタイミングを誤り、スニークの切れた危なっかしい状態になる。Ccさんにも魔法を掛け直す手間を取らせてしまった。少ししょんぼりだ。
暗い洞窟だが中は結構広い。植物もそこかしこに生えている。小さな滝も見ることが出来た。ちょっと狭くなっている通り道で、大きな身体の巨人が道を塞いでいた。侍のCcさんがその刀で切り伏せる。巨人と一人で戦えるのか、すごいのう。
やがて洞窟の地面が硬い岩肌から細かな砂地へと変わる。そしてエリア切替え。濃紺の夜空が広がる、東アルテパ砂漠へと辿り着いた。我々二人を、長い首のキリン(ダルメル)が出迎えた。タロンギ大峡谷以外でキリンを見るのも、初めてだ。少し違和感。
砂漠では噂に聞いていた獣人を見ることが出来た。Final Fantasyシリーズでは度々登場しているという彼等は「サボテンダー」と呼ばれている。その名の通り、サボテン人間である。イメージとして昔のアニメで見たような、背丈の高い、太い幹のサボテンを想像していたのだが、実際の彼等はドルシネアの半分程しかない背丈の、細い身体を持って弱々しい容姿を持っていた。しかし油断はならない。シリーズを通して彼等が使う特殊攻撃・針千本は、攻撃対象にきっちり1,000ダメージを与えてくるという強力なものだ。ドルシネアなら二回死んでお釣りが来る。見つかるとえらいことになるだろう。
平坦だった砂漠は、やがて隆起の激しい砂の山越えとなっていった。所々に砂に埋もれた遺跡を見つける。このアルテパは、昔ガルカたちの居住地だったという。サボテンダーと共に徘徊するもう一種類の獣人、アリ人間・アンティカ。ガルカは彼等によりこの地を追われ、コロロカの洞門を通じてバストゥークへとやって来たのだ。この砂漠の環境が、ガルカの強靱な肉体を作り上げたのだろうか。
埋もれた遺跡の中に、紫色に光るゲートクリスタルを見つけた。これまでのゲートクリスタルは、それぞれメアの岩、デムの岩、ホラの岩という巨大な建造物の脇にあった。今回は砂にまみれた遺跡の通りの中、というところか。なんだかパッとしない。アンティカに囲まれたそこでゲートクリスタルを得る。ここでまた、スニークの掛け直しに失敗した。まったく生きる心地がしない。
隣のエリア、西アルテパ砂漠へ。同じく砂漠である。だが徐々に冒険者の姿が多くなった。Ccさんの話では、なんでもこの辺に狩り場があるのだという。ラバオに向かうと思われる冒険者の後に付いていくと、それは狩り場に向かう方々だった。慌てて方向転換、ラバオを求めて走る。そうして遂に我々は砂漠のオアシス、ラバオに辿り着いたのだった。
オアシスを中心に、様々な施設が点在するラバオの町。建物の多くは、木製の壁に恐らく厚い布で作られている屋根が張られている。テントのように紐でその屋根を引っ張って、地面に杭で打ち付けている。初めて見る独特の工法だ。そんな中宅配所で会った一人のミスラは、他の事務的な受け答えをする宅配の係員と違うおかしな口調だった。
カバンがいっぱいのときー!
冒険に必要なモノ以外は、ぱぱっとポストに
宅配で送った方がいいですにゃ!ラバオのNPC、Pakhi Churhebiの台詞より。
なんだこの娘は。ドルシネアと色違いの、格好いいと言える顔立ちなのにこのへんてこな台詞。でも面白いリズムだ、気に入った。あれだな。芸人コンビ「いつもここから」の、「悲しいときー!」に似ているかな。
とあるテントでは、いつもは敵であるゴブリンがメロンを売っていた。獣人の中で唯一、世界各地に広く生息するゴブリン。彼等の中は各獣人とうまく付き合うだけではなく、は人間達ともうまく付き合おうとしている者達がいる。ジュノにあるゴブリンの店なんかはその最たる存在だ。冒険者の持つカバンの容量拡充、各種族専用の装備の作成など、重要なクエストのキーキャラクターとして、数多の冒険者は彼等の世話になるのだ。取りあえずこのラバオのゴブリンからは、ゴブリンパンを買って食べておいた。
さて、ラバオを大体見て回ったドルシネアとCcさん。このオアシスにやってきたのは釣りをするためである。だがその前に、もう一つ別のことをすることにした。二人でチョコボを借りて、アルテパ砂漠に出る。この広い砂漠で、チョコボ掘りを試そうというのだ。
Ccさんはチョコボ掘りをしたことがないそうだが、最近流行っているらしいチョコボ掘りには興味を抱いていたようだ。色んなジョブ、色んな合成、なんでもやるCcさんらしい。しかもこのアルテパ砂漠では、他のエリアと比べていい物が出土する傾向にあると聞いている。二人ともやる気満々である。最初はラバオを出てすぐの場所を二人で、やがて思い思いの方向へ、我々はアルテパの砂漠に散っていった。
この巨鳥のように、アルテパにいるモンスター達はその強さを表すような、大きな身体を持っている。有翼の悪魔を思わせるデザート・マンティコアは、その側に行くと地面が揺れるほどである。でもチョコボに乗っている限り、その足下を掘っても襲われることはない。面白いといえば面白いのだが、不自然でもある。微妙なところだ。
Ccさんとお互いに四ダースのギサールの野菜をチョコボに食べさせて、三十分のチョコボ騎乗時間を消費した。ドルシネアの収穫はさっぱりだったが、Ccさんの方は一つなかなか高価なアイテムを掘り出した。ビギナーズラックというヤツだろうか。さて、いよいよ本題の釣りを開始するときがやってきた。
ラバオの泉は、他の地で見られない程の透明度を持つ。こんこんと湧き出るこの美しい水を、ラバオの住民は機械で汲み上げて使っているようだ。何と贅沢なことだろう。そんな泉に、私とCcさんは釣り糸を垂れた。私達だけではない。他にも数人の冒険者が釣りに興じているし、釣りをしているNPCまでいる程だ。このオアシスは、その美しさから多くの人を惹きつけている。
いつものように疑似餌を使う私であったが、Ccさんもいつものように自分で餌を作ってそれを使っていた。餌を使い切ると競売所か何処かまで買いに走っていく。糸が切れて疑似餌を一つ失った私にも、その手作りの生餌を分けてくれる。こだわりである。それはこの世界の、その人なりの暮らし方として、とても素敵なことだと思う。
釣りをしながら話をする中で、Ccさんはこの地を「パラダイス」と呼んだ。お気に入りの場所らしい。確かに釣り師にとって、こんなに気持ちのいい場所はそうないだろう。釣り上げた魚をパクリと食べてみる。「猫の本性むき出しだ」とか言われちゃう。
清々しく気持ちのいい泉なのだが、たった一つだけ難点がある。少々うるさいのだ。ラバオの近くに狩り場があることは既に記した。そこから帰還した冒険者達が、テレポなりデジョンなりの瞬間移動魔法で帰っていくのだ。そしてその冒険者の数が多い。オアシスに面した場所にジョブチェンジを行う場所があるので、すぐ側で黒魔道士なり白魔道士なりにジョブを替えてびゅんびゅん飛んでいく。ひっきりなしに呪文の詠唱音が鳴り響いているのである。これがなきゃあなぁと、少し残念に思う。
それにしても、このオアシスでは堀ブナがよく釣れる。他の土地ではうんざりするほどよく釣れる錆びた装備がさっぱり引っかからない。まぁ、これだけ美しい泉からそんな物が釣れては興醒めなのだが、私は錆びたキャップを釣りに来たのである。一攫千金なのである。奥の手、外道釣り用の特殊針・ローグ針を投入する。Ccさんと共に無機物釣りに集中すると、やがてCcさんがバケツを、ドル猫がカッパーリングを釣り上げた。喜ぶ二人。釣り師として、何かおかしい……。
徐々に調子が出てきた。バケツと一ギルが交互に釣れる中、遂に目的の錆びたキャップが引っかかった。ローグ針の本領発揮である。ローグ針を羨ましがるCcさんだったが、しかし競売所などで購入する気はないらしい。あくまで自分の手で作り上げたいようだ。流石Ccさん、こだわりの自作屋なのである。
順調にバケツを釣り上げるドルシネア。そんな中、Ccさんが見慣れない魚を釣り上げた。トレードして見せてもらう。「大鈍甲」という魚だ。名前を読めない。試しにかじりついてみたが、食べられなかった。大型の魚らしい。
現実時間も遅くなり、そろそろ終わりにしようということになった。Ccさんはキャップを釣り上げて最後としたい。私はバケツを五つ揃えて終わらせたい。そんな願望を話し合っていたら、ほぼ同時にお互い目的の物を釣り上げた。
パラダイスの一夜は、そんなオアシスの粋な演出で幕を閉じた。