1. 番長方面
  2. Dulcet Wind
  3. ドルシネア・ダイアリィ 第三部・目次

Last Modified : 20 JANUARY 2004


海岸の人々

チョコボを駆って買物にジュノへ。天晶堂まで行ってブラックペッパーを買う。胡椒は結構高く、貴重品だ。競売所ではトカゲの卵を三ダース落札。

港へ走り、飛空挺に乗ってカザムへ飛ぶ。到着するや否や、桟橋のカザム物産店へ。陳列物を覗き込んで……首を捻る。おかしい、ジンジャーがない。ジンジャーだけを買いにわざわざカザムまでやって来たのだが。おかしい、シナモンはある。さてはジンジャーとシナモンを間違えてしまったか。

仕方がないのでシナモンの値段だけをチェックして、今乗ってきた飛空挺に急いで飛び乗る。とんぼ返りでジュノへ。さて……一体この後何しよう。Tkさんの黒魔道士レベルアップ報告を聞きながら、少し途方に暮れる。

結局、呪符デジョンを使ってサンドリアにワープ、お金稼ぎのために串焼きを焼いてからセルビナに向かった。今日は釣りをすることにします。

一方その頃、リンクパールを通じてStさんの苦戦が伝えられていた。Stさんはセルビナ周辺の海岸でパーティを組んでいるのだが、そこに参加している一人の戦士に問題があるのだという。戦士というジョブは、敵の攻撃を一身に受ける「盾役」としての役割が期待される。防御の薄い仲間がダメージを多く受けるより、防御力も体力も豊富な戦士が攻撃を受ける方が、パーティ全体としての被ダメージ量が少なく済むからだ。

モンスターの攻撃を受けるためには、戦士の基本にして最も重要なアビリティ・挑発をうまく使うことが大切だ。数人の挑発持ちが交互に挑発し続けることにより、敵の攻撃を自分たちに回し続けるのである。そうすれば一人の盾役にダメージが集中し過ぎることもないし、回復魔法などで敵のヘイト(怒り)をかう白魔道士などに敵の攻撃が飛ぶことも防ぐことが出来るのだ。

Stさんのパーティはこの時、この盾役がうまく機能していなかった。戦士が挑発をしないらしい。盾の防御が甘いパーティは当然危険な戦いが続いてしまう。Stさんがその日二回目の死を体験したところにもなると、「それは戦士に忠告すべきだ」という意見がリンクパールに流れていた。心配になった私はチョコボを海岸の方へと向ける。

ドルシネアを乗せたチョコボがバルクルム砂丘の海岸まで到達する頃には、Stさんのパーティはうまく狩りを進められるようになっていった。Stさんがアドバイスをしたところ、その戦士さんは挑発を用いた盾役としての動きをするように改善されたという。チョコボの上から海岸を走るStさん達の姿を見届けて、私は改めてセルビナに向かった。その後、リンクパールからStさんの悲鳴が聞こえることはなかった。……伝えたからこそ、伝わったのだ。

セルビナにて、海岸に並ぶ釣り師達に混じって釣り糸を垂れる。糸の先にはCcさんに貰ったさびき針。釣り上げるときの水の音がそこかしこで聞こえる、釣り独特ののんびりとした時間が流れる。

そんな中、水の音に混じってバキリという乾いた音が一つ響いた。あー、やったか……。続いて隣のタルタルからSay形式で嘆きが漏れた。
「せっかくサンドリアまで戻って買いに行った釣竿が、一回目で折れるなんて……」
思わず感情表現コマンド「/comfort」でタルタルを慰める。ほぼ同時に、向こう隣の冒険者もタルタルを「/comfort」していた。気持ちが伝わると、距離も縮まる。それがきっかけとなって、しばし釣り師同士の会話が続いた。

やって来た船に乗り、ドルシネアはミンダルシア大陸へ。通りすがりのモンスターを狩りながら、ウィンダスへと帰郷した。


シーフの沽券(こけん)

翌日はコルシュシュ地方……タロンギ大峡谷、ブブリム半島、そしてマウラの一帯……で釣りや素材狩りをした後で、西サルタバルタで海釣りを楽しんだ。Ccさんも西サルタの別の場所で、Rnさんはウィンダス・石の区で釣りをしているらしい。折しも満月、釣りにはもってこいのコンディションだ。

画像・西サルタバルタの海岸にて。
釣り師・Ccさんに会いに行く。
画像・光曜日の月。
釣りの合間に見上げると、光曜日の月がとても綺麗に輝いていた。

その後、ギデアスへ草刈りに出掛ける。草を刈りつつ、ハチも獣人・ヤグードも狩る。丁度この頃、先日中止に終わった公式のイベントが再度開催されていたのだが、私はそれに参加する気にはならなかった。敵モンスターの強さなどは見直されていたらしいのだが、一匹の巨大モンスターを皆でタコ殴りにするという内容は変わっていなようで、それが楽しいとは思えない。イベントに参加する人達がいない隙を狙って、ギデアスの狩りを存分に楽しもうという魂胆である。きっと宝箱もゲットすることが出来るだろう。

程なく、意中の宝箱をギデアス最深部で発見した。ここはウィンダスのとあるクエスト以外では訪れる必要のない場所で、滅多に訪れる人はいない。結果として、ここに現れた宝箱は誰にも開けられず残っていることが多く、私自身よく期待して訪れる場所であった。狙い通りに事が運び、ほくそ笑むドルシネア。

鞄の中から出した鍵は「リビングキー」という生ける鍵である。どういう仕組みで生きているのかは知らないが、これをシーフが使うと高確率で宝箱を開けることが出来る。シーフ以外のジョブであると、これらの宝箱を開ける鍵は現地に巣くうモンスターからゲットしなくてはならない。鍵開けはシーフというジョブ特有の能力だ。だがこれを利用して、ダンジョン内の宝箱を独占し、反感を買っている冒険者もいたりする。それを知っているので、宝箱を開けることに少しばかり罪悪感を抱いてしまうのだが……まぁ、ギデアスの宝箱には大した物は入っていないから。いいでしょ?と自分を納得させる。

ドルシネアが手にしたリビングキーは、今まで使ってきたセットの最後の一つである。これらは以前Mmさんから戴いた物だ。これを貰っていなかったなら、私は宝箱を開けるという楽しみを知らないままであっただろう。感謝しつつ、ちょいと名残惜しいが最後の鍵を宝箱に使った。

……何も起こらない。首を傾げる。いつもなら、シャーンというきらびやかな音と共に箱が開いて、神々しい光が辺りに溢れる筈なのだが。操作を間違って、鍵を使い損ねたか? アイテム欄を確かめながらふとログウィンドウを見ると、そこには「開錠に失敗した」の文字が。一瞬、脳みそ真っ白。失敗? 開錠に失敗!? まさか! 今まで失敗したこと無かったのに!

確かめても鍵はカバンには無く、目の前にはピッタリと閉じた宝箱が居座っている。まさか……まさか最後の一個で失敗するとは。Mmさん、ごめんなさいぃ〜!

諦めきれない私はその場を離れ、気合いと共に族長専用山の幸串焼きをばくりと頬張る。攻撃力、大幅パワーアップ! ターゲットはヤグード! 正攻法だ、鍵を戴こうッ! シミターを振り上げ、ギデアスを駆け抜けるドル猫。

執念が実ったか、一発で鍵をゲットした。シーフ専用の鍵とは違い、モンスターから手に入れた専用の鍵は開錠に失敗することはない。改めて宝箱の鍵を開け、840ギルを得た。……頑張った割りには随分少ない報酬だった。


去り行く背中

ギデアスからの帰り道、公式イベントの参加者が多くいる西サルタバルタを横切る。冒険者の数が多いからだろう、少し動作が重い。考えてみたら、もしサルタバルタにもっと人がいたら私はこのエリアに入れなかったのかもしれない。そういえば前の失敗に終わったイベントの時も、ギデアスのバーニングサークルに行きたい人達が、西サルタバルタに入れないと苦しんでいたのを見掛けたっけ。危ない危ない、ギデアスに閉じ込められかねない状況だったのだ。

西サルタバルタの門からウィンダス・水の区へ。買い物を済ませてモグハウスへの帰途に付いていると、ばったりと赤毛のミスラ、Poさんに出会った。PoさんとはFlさん、Mhさんのフレンドで、私も以前に一度確かブブリム半島で会ったことがあった。

Poさんは、事情で暫くの間FFXIを引退するのである。そしてその日が今日であった。実は先程、西サルタバルタでPoさんの姿を見掛けていた。引退を知っていたので挨拶しておこうかとも思ったのだが、Poさんはその時、同じパールを付けた大勢の仲間達と一緒にいた。恐らく、最後の別れを惜しんでいるのだろう。一度顔を合わせた程度の私が出る幕ではない……そう思い、その場は立ち去ったのだった。

暫しの立ち話の後でPoさんに最後の挨拶をして、せめて記念の贈り物をとカバンを漁る。手に当たった物でめぼしい物は、族長専用山の幸串焼。これをPoさんにお渡ししてお別れする。あまり物流に乗っていないハイクオリティ品とはいえ、それにしても串焼きとは色気がない……もっといい物、記念になる物を送りたかった。後悔が残る。

記念になる物……それに相応しい物を、私は恐らくもう作れるようになっている。以前に触れたことのある菓子、「雪山のロランベリー」がそれである。ただ、それに必要な素材を揃えるのがちょっと面倒で、まだ手元に揃えられていない。そして、それを作るという決意が、私自身にまだ出来ていない。ミスランシミター、パイレートガン……最後に欲しい物は揃えた。雪山のロランベリーを作ることを渋っているのは、それは私が「最後までに作りたい」と目標にしていたものであるということ、FFXIのプレイにおける「最終的な区切り」を示すものであるからだ。

去っていくPoさんの背中を見送りながら、私は自分がいずれ去る日のことを、重ね合わせて考えていた。


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