1. 番長方面
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  3. ドルシネア・ダイアリィ 第三部・目次

Last Modified : 22 JANUARY 2004


森の講習会

先のラテーヌ高原における狩りの中で、私は一つのミスをしていた。「するべきではない」と考えている行為をしてしまっていたのだ。それは「自慢」である。

以前にも記したことがあるが、私はリンクパールを通じて流れる知り合いの自慢に少々うんざりしていた。今の狩りで経験値を幾ら稼いだ、お金を幾ら稼いだ……たまに出るならそれに合わせることも出来よう。共にそれを喜ぶことが出来よう。しかし毎度のようにその言葉を流されると、流石にいい気分はしないものだ。それは共有されるために伝えられる喜びから離れてしまっているからだ。

仲間内にはなかなかパーティに誘われなかったり、ログインできずにお金稼ぎに四苦八苦している者もいる。彼等がそれを聞いてどのような気持ちになっているのか……それを思うと気分が少し憂鬱になる。もっとも以前言われたように、私が考え過ぎであるだけかも知れないのだが。そしてそれよりも、私自身が楽しい気分になっていない事実の方がより実感のある不満だ。

この不満を解消するための行動を、私は起こしていなかった。伝えなければ伝わらない、にも拘わらず。不満はどのように伝えればよいのか。難しい問題だ。「自慢が鬱陶しいから止めろ」……これでは角が立ち過ぎだ。その後どうなるか……目も当てられないだろう。

これらの自慢のような発言をする者のうちの一人には、以前に私の発言をたしなめられたことがあった。そのとき私は、その指摘を適切なものではないと考えたので、より本質的な問題であると考えた相手側の行動を示す反論を返事として送った。それに対する相手の反応はなかった。私の反論をどう捉えたのか分からない。反論も同意も示されなかったのだ。

それ以降、相手に対する私の距離感は遠のいた。私の声に対する反応がないのなら、何を言っても私にとって意味がないと思えたからだ。そしてその思いが、自慢に対する不満を相手に伝えることを億劫にさせた。自分にも仲間にも、相手にとっても良くないことであると思いつつも、黙り込んだままで続く自慢に苦虫を噛み潰し続けたのだ。

閑話休題。ともかく、黒魔道士でもっとも相性のいいモンスター・ミミズや狩人ゴブリンを相手にすると、とても高い経験値を得ることが出来る。その喜びをリンクパールに何度か流してしまったのだ。特にゴブリンを相手にソロでは破格の経験値・160を入手したときは、その喜びも頂点だった。まぁその直後に、自慢したことに対する自責の念に包まれた訳だが。

その私の自慢を聞いていたTkさんが、寂しげに呟いた。自分はそれほどうまく狩りができないと。Tkさんもドルシネアと同様にデジョン習得を目指して、最近黒魔道士のレベル上げを始めていた。順調にレベルを上げていくドルシネアに対して、確かにTkさんのペースは遅いようだ。何度も死に面しているようである。ドルシネア自身もよく死んではいるが、それ以上に経験値を稼げていた。Tkさんはそういっていないらしい。リンクシェルのメンバーからも、何故二人はこうも違うのかという声が上がっていた。

翌日、ドルシネアはサンドリアに起床。するとTkさんもサンドリアに来ているようだった。アップルパイを競売所で補充すると、急いでTkさんの元へ向かう。考えていたことがあるからだ。北サンドリアにあるウィンダス領事館で合流し、居合わせたRnさんと三人でパーティを組んでロンフォールの森へと出る。

画像・ロンフォールにて。
森に出て、講習会の開催です。

Tkさんにいつも行っている黒魔道士での狩りの方法を聞くと、案の定であった。Tkさんのメインのジョブは戦士で、サポートジョブにもモンクなどの前衛系ジョブを付ける。だから前衛系ジョブでの戦闘法が身に付いてしまっていて、黒魔道士でも主に打撃による近接攻撃で戦っていたのだ。武器による攻撃力も防御力も極めて低い黒魔道士では、それで戦うことの出来る相手は非常に弱い相手に限定されてしまう。勝てたとしても得られる経験値は50にも満たないのではないだろうか。

森のウサギを相手に、黒魔道士の戦闘法を説明しながら実践して見せる。遠目からバインド……相手を動けなくする黒魔法……を連打していき、射程距離に入ってバインドが掛かったらそのまま近付かずに攻撃魔法。ロンフォールのウサギは弱すぎて、その一発で死んでしまった。仕方ないので口頭で、魔法の連射について説明する。同じ魔法は続けて撃つことが出来ない。だから複数の魔法を交互に放つことで、なるべく短い間隔で攻撃魔法をうち続けるのだ。「MPが無くなってしまったら?」というTkさんの質問に、「MP切れまでに倒せない狩りは、失敗ということ」と説明する。限りある魔法で殲滅、それが黒魔道士に課せられた戦いの条件なのだ。

Tkさんにアップルパイを分け、二人と別れる。サンドリア港にあるエルヴァーン姉妹の魔法屋で新たな攻撃魔法・ファイアを購入、習得した。これでまた、殲滅速度が上がるだろう。後日Tkさんから、狩りがうまく進むようになったとの嬉しい報告があった。二人でデジョンまで頑張ろうと、励まし合った。


ヒツジの森・ウサギの森

サンドリアにて、火打石を削って彫金のスキルを上げてみる。なかなか上がらない……全然上がらない。結局0.1しか上げられなかった。彫金って、大変だな。シーフにジョブチェンジし、競売所にて銃の弾丸を99発購入。今日は射撃のスキル上げと行こう。銃を担いで、デルフラントペア……デルフラント地方の梨……をしゃりしゃりパクつきながら、ロンフォールの森へと出た。

森では主に羊を狩る。ロンフォールにおいて羊は結構強めの相手で、射撃スキル上げには最適の相手であった。パンパン撃っているとスキルがめきめきと上がっていく。快感だ。

画像・銃を構えて。
そんなに肉はいらないから、毛皮落とせ毛皮。

加えて羊は、倒すと毛皮を落とすことがある。これをサブキャラのヌナイに送るのだ。倉庫管理業務だけでは退屈だろうと、最近ヌナイには裁縫のスキル上げをさせていた。毛皮に風のクリスタルを当てると羊毛が手に入る。それで裁縫のスキルも上がる。ドルシネアのスキル上げがヌナイのスキル上げにも通じる。一石二鳥だ。

羊狩りの合間にも、周囲の警戒は怠らない。シーフのドルシネアにとっては脅威となる敵はいないロンフォールだが、他の低レベル冒険者にとっては話は別だ。夜に現れたホネに、サポートジョブの付いていないレベル8のシーフが絡まれていた。すかさず助ける。ある時羊と戦っていると、我々の横をゴブリンに追われたタルタルが駆け抜けていった。慌てて羊を放り出して追いかける。逃げるタルタルを追うゴブリン、それを追うドル猫に更にそれを追う羊という四両編成が出来上がる。いとおかし。まぁ、なんとかタルタルを助けられた。

やがて100発余りの銃弾を使いスキルも充分上がったので、サンドリアに帰ることにした。森の中を走りつつ左右に視線を振っていると、ターゲットしたモンスターの名前が見慣れない物であることに気が付いた。妙に長い。改めて確認する。……「Jaggedy-Eared Jack」、西ロンフォールに出現する、ウサギのノートリアスモンスターだった。驚いて周囲を見回す。特に誰も見当たらない。あ、あれは私が頂いていいんですねッ!?

Jackは「兎の護符」というアイテムを落とすことがあるのだ。それはシーフのジョブアビリティ「ぬすむ」の成功確率をアップさせるという効果を持つ。シーフにとっては憧れのアイテムなのだ!

慌ててJackに攻撃を仕掛ける。かちゃり……って、何銃を構えてるんだーッ! 発砲までに何秒かかると思ってるんだアホーッ! 慌てて突っ走り剣を振り下ろす。この時点でJackは私の物確定。ノートリアスモンスターらしく体力は多いものの、Jack自体は強くはない。問題なく勝利。出たアイテムは……肉一切れ。外れた、がっかり……。

肩を落とし、帰途に付こうとしたドルシネアの後方に、木陰からレベルの高そうな冒険者が姿を現した。もしかして彼、Jackを狩るためにこの周辺でウサギ狩りを続けていた人だったりして。せっかくJackが出たのに、通り掛かりの私がひょっこり頂いちゃったんだったりして。ノートリアスモンスター狩りにはありがちな風景であるとしても、何とも言えない空気が流れるものだねぇ……。

そんなことを考えつつも、知らんぷりしてサンドリアに帰った。後に知り合いに聞いた話だと、Jackは倒されても護符をなかなか落とさないらしい。そしてそれ故「兎の護符」は、競売でも10万ギル程度では到底落札できない、とても高価なアイテムであるらしい。いよいよもって欲しかったなぁ、護符。今度私も、Jack狩りをやってみようかしら。


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