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Last Modified : 22 JANUARY 2004


明け方の売り込み人

現実時間は明け方、五時半になるところ。眠ることが出来なくてログインしていた。まとまった買物が必要で、まずはウィンダス・森の区の競売所にやって来たところだった。

出品されているアイテムの値段をメモに書き留めていると、珍しいSayによる売り込みが不意にあった。「クリスタル半額セールです」とのこと。試しにそのタルタルのバザーを覗いてみると、半額と言うだけあってかなり安い。ただ喉から手が出るほど欲しい炎のクリスタルは見当たらなかったので、取りあえずバター作りに使う氷のクリスタルを六つ購入した。いつものように、Tellでお礼を言っておく。「本当にお安いですね、ありがとう」。するとTellで返事がきた。「いえいえ、店売りするのもなんだからこの値段です」。

お辞儀をして……そのお辞儀は近くにいる人のログウィンドウにも表示されるので、宣伝の効果もあるかもしれないと思いつつ……その場を去る。次はウィンダス港でNPCのお店をチェックだ。港をたったか走るドル猫。

競売における相場と比べ、安い物はNPCのお店で買う。低いレベル用の防具や武器は、得てしてNPCのお店で売られている値段の方が安い。とはいえ獣人が落とす装備の場合はやはり競売の方が安かったりするで、これは競売で買うことにする。復路をたったか走るドル猫。

そのとき、先程のタルタルからTellが届いた。なんと売れ残ったアイテムを買い取ってくれませんかという。正直言って、いい印象を抱かなかった。しかも売れ残りは相当な数があるようで、それなりの用意をしてきて下さいとまで言ってくる。なんだかなぁ、へんなのに捕まったなぁと思いながら、それでいて知らんぷりも出来ないままにタルタルの待つ競売所を目指した。

競売所前でタルタルを前に、まずは鞄を空けるためにアイテムを宅配のNPCミスラに渡す。その様子を見て「ああ、すいませんー」と私に言いつつ、その間もタルタルは売り込みのSayを周囲に発していた。なんとか鞄を軽くして、どれどれじゃあ買い取るかとタルタルに振り向く。バザーを覗き込み、まずこのクリスタルを……と手を伸ばした瞬間、それが別の冒険者に売れる。あれれ、じゃあこれは……と思った瞬間やはりそれが別の冒険者に売れる。どうやら数人の冒険者が同時にバザーを覗き込んでいるようだ。同じバザーを利用している場合、誰が何を買ったかがログに表示されるのだ。最後は殆ど奪い合いのようにクリスタルを買い込む。二つの指輪を残して、ほんの数秒でバザーのアイテムは売り切れた。苦笑する私とタルタル。

別れようとすると、タルタルからトレードの申し込みがあった。売れ残りの指輪二つである。「お客様第一号だから、サービスです」という。自分の鞄の中を覗くと、調理で作ったボスティン菜のソテーが一つ残っていた。これを代わりにタルタルに渡す。その場でソテーを食べて、「ごちそうさまですー」と笑うタルタル。

途中で不信感を持ったけれど、決して損をした買物ではなかった。何より作った物を食べて喜んでもらえるのは、調理師としてとても嬉しいものだ。タルタルと別れ、良い気分でウィンダスを離れる。チョコボに乗って向かうのはバストゥーク。そこで新たなる挑戦が、ドルシネアを待っている。


デジョンを目指して

バストゥークにて、本当に久し振りにシーフ以外のジョブにチェンジする。黒魔道士、レベルは8。現在ドルシネアが就くことの出来るジョブの中で、レベルが最も低いジョブである。それだけ今まで力を入れなかったジョブだということ。ドルシネアは何故ここに来て、黒魔道士になったのか。それは黒魔法・デジョンの習得のためである。

黒魔道士のみが習得できる魔法、デジョン。これは術者自身をホームポイントに転送する効果を持つ、移動用の魔法だ。どんな遠くの場所からでもこれ一発で瞬時にホームポイントまで戻ることの出来る、広い広いヴァナ・ディールにおいてはとても便利な魔法だ。このデジョンを使えるようになりたいのだ。

調理をやっていると、やはりサンドリアに滞在する時間が長くなる。近場にあるゲルスバ野営陣にてオークを狩ることで豊富に入手される炎のクリスタル。それゆえサンドリアの競売所では、炎のクリスタルの相場は他所より若干低めである。南サンドリアにあるレンブロワ食料品店では豊富な食材が安価で扱われているし、大抵サンドリアが支配しているザルクヘイム地方の物産店では、よく使うセルビナミルクなどが安く購入できる。そして経験的に、サンドリアの競売所の方がウィンダスの競売所よりも全体的に安めで取り引きされている。これらの要因から、サンドリアに在住する日数がとても多くなっていた。

しかし母国はウィンダスである。リンクシェルの仲間内にもウィンダス所属の者が多く、彼等に会うためにすぐにウィンダスまで戻りたいことも時折ある。また、調理ギルドや漁師ギルドはウィンダスにあり、そこに用事があることだってある。サンドリアからウィンダスへチョコボで帰るには、三十分くらいの時間を要する。だから急ぎでウィンダスまで帰られるように、何処に出掛けてもホームポイントはウィンダスのままにしてあった。そしてデジョンが刷り込まれてある消費アイテム・呪符デジョンを使用することにより、これまでは帰還していたのだ。

呪符デジョンはお金で購入することが出来ない。経験値の得られるモンスターを倒したり、補給物資配達クエストをこなすことで得られる戦績ポイントと交換することで入手できる特別なアイテムだ。レベル上げを止めたドルシネアにとって、戦績ポイントを稼ぐのは容易なことではない。事実上、これまでに貯めたポイントを消費するしかできない状況だ。これまでに使った呪符デジョンのおかげで、既に戦績ポイントを相当失っていた。残りの戦績ポイントでは、呪符デジョンをあと七枚程度しか手に入れられないだろう。もう気軽には使えない。

そこでやはりデジョンを習得することにした。デジョンを使えるようになる黒魔道士のレベルは17。現在の黒魔道士のレベルが8。つまりあと9、レベルを上げればよいのである。レベルが低い内はレベルアップに必要な経験値は低いし、また一人でも(相対的に)強い敵とも戦える。レベル28のシーフでは「楽な相手」と戦うのがわりと精一杯な感じだが、レベルが一桁なら「同じ強さの相手」でも戦えるだろう。獲得できる経験値が多く、必要な経験値は少ない。これなら一人でもぐんぐんレベルを上げていける筈だ。

黒魔道士用の食事として、アップルパイをバストゥークの競売所で購入する。パイ系の食べ物はMPの上限を増やし、加えて攻撃魔法のダメージ量に関係するINT(知力)の値にボーナスが付く。黒魔道士にはうってつけの食べ物だ。自分で作るには素材を集めるのが面倒だったので他人の作った物を買ってしまった訳だが、たまにはそれもいいだろう。

バストゥークを出て、グスタベルグへ。シーフとは全く違う黒魔道士の戦いが、この灰色の荒野で開幕した。

画像・黒魔道士のドル猫。
臥竜の滝をバックに久し振りの魔道士装備で。

Stand a chance

グスタベルグに出るとすぐに「楽な相手」と表示されるモンスターに出会う。つまり相手が好戦的(アクティブ)な場合は、見つかると絡んでくるモンスターだ。最近はずっとレベルの高いシーフで行動していたから、ウィンダスなどの三国を出てすぐのフィールドで絡まれるなんて有り得ない状況だった。レベルの低い黒魔道士では、街を出るとそこはすぐに危険に満ちた場所なのである。気を引き締める。

調べて「丁度よい強さ」と出たカメ獣人・クゥダフにケンカを仕掛ける。種類の少ない習得済みの魔法を駆使して戦闘、体力を半分まで減らされたが勝つことが出来た。経験値・50をゲット。シーフの時と比べると多いが、このレベル帯では物足りない数値の筈。もっと強い敵と戦わなければ。

魔法リストを眺めていて、「バインド」に目が留まる。これを使うべきなのだろうか。バインドとは標的の足を封じて、その場に釘付けとする魔法だ。相手が魔法や遠隔攻撃を使えないモンスターなら、近づかなければ相手の攻撃を受けずに済む。黒魔道士の近接攻撃能力はあまりにも頼りないため、攻撃は事実上黒魔法だけだ。戦う際にモンスターから離れていても問題はない。むしろ紙のような防御力を考えると、離れた場所から一方的に攻撃できるのがベストな筈だ。

次のカメには離れた場所からまずバインドを打ち込んでみる……掛かった! 身動きのとれないカメに黒魔法を叩き込む。カメはまだ動けない。更に黒魔法。まだこっちに向かってこない。黒魔法……やがてカメは力尽き倒れる。死ぬまでカメはその場を動くことは出来なかった。即ちドルシネアは無傷で勝利だ。これだ! これなんだな!

グスタベルグの山を登ったり、涸れ谷方面に足を伸ばしたりしてモンスターを駆逐する。最初の頃は取得経験値50〜72辺りの相手をターゲットにしていたが、慣れてくると100の経験値を貰える「同じくらいの強さ」の相手をも安定して狩ることが出来るようになった。レベルアップ! 黒魔道士のレベルは9になった。

しかし現実時間の明け方、少々ボケた頭で「強い」ボム系のモンスター・Shrapnelに攻撃を仕掛けて、殺されちゃったりする。いくら一定時間MPを消費しなくなる二時間ジョブアビリティ・魔力の泉を使ったところで、短い時間に大ダメージを与えて相手を倒しきらなければ、黒魔道士の防御力と体力では相手の攻撃を受けきれないということである。それと……バインドもたまには失敗するということである。

そろそろグスタベルグでは物足りなくなってきた。明日からは先のエリア、コンシュタット高地に出向くことになるだろう。グスタベルグでの教訓を肝に銘じて、頑張ってまいりましょう!


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