1. 番長方面
  2. Dulcet Wind
  3. ドルシネア・ダイアリィ 第三部・目次

Last Modified : 10 JANUARY 2004


奈落のヴァナ・ディール

前日の夜、ドルシネアがRnさんのタルタルと会って花火を楽しんでいたときのこと。我々は奇妙な現象が起きていることに気が付き始めていた。自分の発した言葉、そしてリンクパールを通じて世界各所から届く筈の言葉がすぐに届かない。かと思えば一度にどっとまとめて届く。更に自分達の動きがどことなくぎこちない。

そして決定的な事態に陥る。ドルシネアがRnさんの足下へぽーんと投げた花火は火花を発することなく消えた。いや、花火だけではない。ドルシネアも、Rnさんも、そしてヴァナ・ディールさえも消えた。画面は真っ黒になり、そこにエラーメッセージが表示された。ゲームサーバとの接続が切断されたのだ。

Rnさんとの大事な話をするために来たばかりだった私はとても慌てた。まだ本題に入っていないのだ。何だってこんな時に! だが幾ら再接続を試みてもドルシネアでの復帰は成されなかった。「エリアサーバに接続できない」といった内容のメッセージが表示されるばかりである。

「エリア」という言葉に何となく感じるものがあった私は、ウィンダス港にいるドルシネアではなく別のエリアにいるサブキャラクターでログインを試みた。その結果、ウィンダス・森の区のモグハウスにいたヌナイで何とかログインを果たしたのである。

リンクシェルのメンバーは、ラテーヌ高原にいたCcさん以外はまだログインできないようであった。二人で何が起きたかを話し合う。Ccさん達リンクシェルの一行は、オークの本拠地であるダボイにいて、そこから転移魔法でラテーヌへと移動していたところであるという。全世界サーチを掛けてみると、ダボイはサーチに引っかからなかった。恐らくエリアが落ちたまま復旧していないのだろう。そしてそこにいるプレイヤーもまた、ログインすることが出来ないでいるに違いない。試しにウィンダスをサーチしてみると、サーチに引っかかる冒険者の所在は森の区と水の区だけであった。石の区とドルシネアのいるウィンダス港はまだ落ちているようだ。

しばらくしてMhさんが復帰した。私は試しに、水の区にいるトパーズトパーズに代わってみる。やはりちゃんとログインできた。だが未だドルシネアでは入ることが出来ない。Nmさん、Stさん、Lxさん、Rbさん、Tkさん、そしてRmさん。リンクシェルのメンバーが次々に復帰する。ダボイも復旧したようだ。

この様な事態が発生した場合、恐ろしいのがサーバ側でモンスターに襲われてしまうことである。接続が途切れた状態でモンスターに襲われ、知らぬ内に殺されてしまう……シビアな狩り場では特にその様な惨劇が起こってしまう。オンラインゲームでその様な不測の事態になった場合、対処としてキャラクターデータの時間をトラブル前まで巻き戻したりするということだ。

やがてウィンダス港のエリアが復帰した。急いでドルシネアでログインし直す。カバンの中身を確認すると、投げた筈の花火はまだそこに残っていた。この自体を楽しむ仲間の声がリンクパールを通して聞こえる。彼等と一緒に笑い合いながら、私は帰ってくるRnさんを防具屋の前で待っていた。思いがけない天変地異は、こうして幕を下ろしたのである。


メロンジュースで突き抜けろ!

画像・キュスマラソン。
灯台目指して走る走る!

グスタベルグの灯台とバストゥーク・商業区の老婆の家を往復する、俗に「キュスマラソン」と呼ばれるお金稼ぎがある。キュスという魚を灯台のある場所で使うとモンスターが現れ、これを倒すとアイテムが出る。それを老婆に渡すことでクエストクリア、報酬が貰える。これを繰り返すのだ。……五往復で飽きた。

メロンを買い込んでダングルフの涸れ谷へ行く。以前からこの涸れ谷の「向こう側」に行きたかった。そこで水を汲んでくるクエストと、セルビナの村長に頼まれた石碑の型を取ってくるクエストの二つがクリアできる筈なのだ。だがその周辺のゴブリンは強く、なかなか踏ん切りがつかなかった。しかしレベル28ともなれば、そしてメロンジュースの力を借りれば、恐らくゴブリンの壁も突破できよう。

ところがサソリに殺されて、レベルは27になっていた。レベルアップに必要な経験値は、あとはたったの39。涸れ谷のゴブリンやトカゲを倒してレベルを28に戻してから、いよいよ本格的に突撃を開始した。ゴブリンを倒し、奥の道に足を進める。……そこは深い谷の底だった。

画像・谷底にて。
谷底に真っ黒な川が流れる。目的地はこの先に!

こここそ、北グスタベルグを東西に分断する深い深い谷の底だった。真ん中に川が流れ、その両脇に人が数人並べるほどしかない幅の道が伸びている。この道を先に行けば、いつも橋の上から眺める雄大な「臥竜の滝」がある筈だ。そこが目的地、そこに到達しなければならない。だがそこに至るまでの細い道には、ゴブリンが何匹も徘徊していた。

強いゴブリンだ、戦えばそれなりにダメージを受けるだろう。だがそれを回復するために一々しゃがんでヒーリングしていては時間が掛かる。下手を打つと前からやってくるゴブリンと後ろで復活したゴブリンの挟み撃ちに遭うかもしれない。それを避けるためには……一気に駆け抜ける! 体力は魔法で回復する。消費するMPはメロンジュースを飲みまくって回復させる。電撃作戦だ!

メロンジュースを作ってから、ドルシネアは夜の谷底を駆け出した。ゴブリンを倒し、メロンジュースを飲み、道を間違え引き返し、橋を渡って対岸へ。

画像・橋の下。
いつも渡っている橋が頭上に見えた。もうすぐだ。

次々と襲いかかるゴブリンを倒してはメロンジュースを作り直す。メロン、足りるのだろうか。少し不安になってきた。だがやがて夜が明けて太陽の光が谷底を照らす頃、遂にドルシネアは臥竜の滝へと到達した。

画像・滝の元にて。
滝の流れ落ちる轟音がしばし疲れを吹き飛ばす。

どおどおと激しい滝の音を耳に一休み。滝の水を汲み、石碑の型を取ってドルシネアは帰途に付いた。帰り道、メロンジュースを切らした状態でゴブリンのリンクに遭い、危うく死にかけたのはご愛敬である。


ドル猫、警備隊員になる

再びシャクラミの地下迷宮に足を向ける。今回は長い間倉庫の中にしまってあった、「チャクラム」という飛び道具を持っていった。結構前にMmさんから頂いていた物である。サソリと戦う前にTPを貯めなければならない。ゴブリンを相手にチャクラムを放ってみる。

画像・チャクラムを投げる。
ドーナツのように丸い形が特徴的なチャクラム。

今日のサソリは「丁度良い強さ」。絶対回避を使うのを忘れて危うく死にかけたりしたが、まぁ勝利。収穫は「大サソリの甲羅」……また針は出ず終い。シーフとしてのアイテム収集能力に疑問が湧いてくるが仕方ない。また次回だ。

シャクラミを出たところには巨大な生物の骨が横たわっている。タロンギ大峡谷の数カ所にあるその様な場所には、夜になるとアンデッド系のモンスターが出現する。丁度夜だったこの時も、周囲にはゴーストやホネといったモンスターが出現していた。何気なくゴーストの強さを調べると、物理攻撃が効きにくいことを差し引いてもどうやら一人でも戦えそうである。「呪い」を掛けられて動作が遅くなる危険性はあるが、こいつ等には随分怖がらせられたものだ。ここは一つ、復讐をしようではないか。剣を抜いて後ろから忍び寄った。

画像・VSゴースト。
ふわふわと浮く不気味な黒い影、ゴースト。こちらの体調を悪くする攻撃をよくやってくる。

物理攻撃は効かないと聞いていたが、戦ってみればそれほど極端なものでもない。戦況に不安を抱くこともなく退治できた。ゴーストは何故か木綿布を落とした。ゴーストも怖い相手ではなくなった。タロンギにおいて怖い敵は、後は天候に合わせて出現する各種エレメンタルくらいか。ドルシネアの成長を嬉しく思うと同時に、少し寂しくも感じる。

マウラから船に乗り、海を渡ってセルビナへ。セルビナの村長に石碑の型を取った粘土を持っていく必要があったのだ。報酬に3,000ギルを貰う。結構大きい金額だ、とてもおいしい。北グスタベルグの谷の底で死にかけた甲斐があったというものだ。用事を終えたのでセルビナを出て、サンドリアかバストゥークに行くことにする。

セルビナを出るなり、次々と飛び込んでくる冒険者達とすれ違う。見るとぺたんぺたんと音を立てながらオモチ(ヒル)が冒険者を追いかけている。更にその後ろからはゴブリンとゴースト系の強敵・ボギーまでがやってくる。こりゃ修羅場。

ゴブリンならともかく、ボギーにはドルシネアも到底敵わない。逃げる冒険者を見過ごして、ボギー達に絡まれないように隠れて様子を見守る。セルビナの門のところには、殺されてしまったであろう冒険者の死体が横たわっていた。高レベルの白魔道士が近寄って、蘇生魔法・レイズを掛ける。セルビナ方面を見ると獲物を失ったボギー達がこちらへ戻ってくるのが見えた。Sayで蘇生した冒険者達に警告を発する。やがてボギー達は門を出て、海の方へと砂丘を戻っていった。

バルクルム砂丘、特にセルビナの周辺は、レベル10台中盤から後半の冒険者達にとって格好の狩り場である。セルビナに集まりパーティを組んで、東西の海岸線でカニやらゴブリンやらと戦い、やがてジュノへと旅立っていく。我々がそうだったように、サポートジョブ習得クエストに必要なアイテム集めもこの辺で行われる。FFXIのパーティプレイ初心者は、この場で多くの知識と経験を積むことになるのだ。

砂丘には狩りに適さない強力なモンスターも多い。ゴブリンにもレベルの高い者がいるし、何より夜はボギーが出現する。それらに絡まれた場合、逃げ延びるため冒険者はセルビナを目指すのだ。セルビナ出口にてその様な阿鼻叫喚の大騒ぎが展開されることはよくある。セルビナ名物と言ってもいい。

この夜、ボギーをやり過ごしたドルシネアの前には、すぐにまた別の逃亡者がゴブリンを引き連れて現れた。ドルシネアにも倒せるゴブリンだ。『天国への階段(Stairway to Heaven)!!』……とんずらを発動させてその場に駆けつけ、ゴブリンを退治して救助する。

ゴブリンを倒し、ヒーリングで回復も済ませたが、何か引っかかるものがある。セルビナの門の前で立ち、しばし周囲を警戒していると、一分も経たずにまたゴブリンに追われる逃亡者が駆けてきた。これもまた助ける。間髪置かずまたゴブリンだ、今度は二匹もいる。一体はドルシネアが倒し、もう一体はセルビナ出口にいた冒険者達が力を合わせて退治した。

FFXIがサービスを開始して、もう一年以上経つ。その一年以上前から、このセルビナの出口に立って逃げてくる冒険者を助ける者達がいたという。その時その時で別の者が務めたであろうその任務を、巷では「セルビナ警備隊」と呼んだりしていたようである。

図らずもこの夜は、ドルシネアが警備を務めたようだ。逃亡者が現れないことを確認して、感謝の声を受けながらドルシネアはセルビナを後にした。


ミスラのツルギ

サンドリアにある食料品店でメープルシュガーを購入し、バブルチョコを作る。バブルチョコはふわふわと宙に浮くチョコレートだそうである。作ったそれを仲間にばらまいて、ドルシネア自身も食べてみる。

チョコボに乗ってジュノへ。リンクシェルのメンバー数人がジュノに集まってパーティを組むそうだ。ちょいと顔を出しておこう。

ジュノに着き、競売所を覗く。憧れの武器が出品されていた。相場から見て、今の所持金では足りないかと思うも、取りあえず最新の落札価格より少し低めで入札してみる。……落札できてしまった。落札価格は50,000ギル。かつてこれ程のお金を使ったことはない。

その名を「ミスランシミター」という。ユグホトの岩屋で採掘をしてお金を貯めていたのは、この高額な剣を買うためだった。ミスラの名を冠されたこの剣は、素早さ(DEX)を向上させるステータスボーナスが付いている。DEXの数値は不意打ちのダメージ量に直結する。シーフにもってこいの剣であるし、基本的な性能も高い。それでいて入手先はノートリアスモンスターに限られているため、高額で取り引きされているという訳だ。

ジュノ港の辺境行き飛空挺乗り場へと駆けつけると、そこにはRnさんのミスラがいた。ミスラの方に会えて嬉しいと伝えると、Rnさんも微笑んだ。ミスランシミターを披露する。50,000ギルもしたと言うと、Rnさんはとても驚いた。これこそ、ドルシネアの最後の武器である。先日のウィンダス港での話し合いの際、初めてRnさんに私が「終わり」を目指していると話していた。だからこそ私は、Rnさんにミスランシミターを見せたくなったのかもしれない。

カザムへと向かう一行を見送り、ドルシネアはサンドリアへと向かう。残金は2,158ギル……一気に貧乏になってしまった。

南サンドリアの競売所の前で、数人の冒険者達が花火を連発していた。

画像・サンドリアの花火。
夜の空に次々と光の花が咲く。

花火は決して安い物ではない。それを惜しげもなく、次々と花咲かせていく。ちょうど時間が夜ということもあり、その花火の美しさがドルシネアだけではなく多くの冒険者の足を止めた。

「これで最後!」という言葉と共に打ち上げられた花火で、その者達が開いた花火大会は幕を閉じた。ごく自然に、周りの見物客からは拍手が沸き起こった。この様な、その場に居合わせた者達の交流を見るのは、ヴァナ・ディールでは余りない。ちょうどその場にいられることが出来て私は幸運であると、ドルシネアに拍手をさせながら思った。

手に入れたい憧れの武器はもう一つ。取りあえず、お金をまた貯めなければならない。サンドリアのレンタルハウスでパイ生地をこねながら、明日からミスランシミターと共に旅をすることを楽しみに思っていた。


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