1. 番長方面
  2. Dulcet Wind
  3. ドルシネア・ダイアリィ 第三部・目次

Last Modified : 10 JANUARY 2004


終わりの足音

お金を貯めるため、そしてドルシネアやヌナイの倉庫に空きを作るため、取っておいた装備を売ることにした。いつか別のジョブで使うかも……と、シーフで使い古した装備を幾つも残してあったのだが、なんだかもう他のジョブをする気になれない。シーフ一筋に落ち着いた感じである。

それはやはり、「天国への階段」こと「とんずら」の存在が大きい。今のドルシネアにはシーフをメインジョブに付けないと、このとんずらは使えない。他のジョブが50を超えていてサポートジョブにシーフを付ければ話は別だが、そんなことはもう有り得ない。そしてこのとんずらがなければ、離れた場所でモンスターに襲われている人を助けることが出来ないのだ。それを思うと、シーフ以外のジョブをメインにする気にはなれなかった。

シーフしかもうやらないのであれば、他のジョブ用に取っておいた装備は必要ない。そして今、憧れの武器を買うためにお金が欲しかった。思い出の染み込んだ武器や防具を売るのは寂しかったが、彼等にとっても倉庫に眠っているより使われる方が本望だろう。

短い間だったが世話になった白魔道士の装備。クエストの報酬のビートルピアス。長い間使い込んだバトルグローブは特に名残惜しかった。出品した装備達がぞくぞくと売れていく。これらの代金は思った以上に多く、ドルシネアの所持金は更に増えていった。

増えた所持金で「コカトリスの肉」を初めてダースで購入する。これはミスラ風山の幸串焼きの最も高価な素材である。一切れ大体1,300ギルもする。もし調理に失敗してこれを失うことになったら卒倒しかねない程の物だ。これまでは一切れ一切れ大事に買っていたのだが、競売価格が微妙に落ちているのを見て思い切って一ダース買ってみたのだった。

他に必要な素材は栽培などで入手している。早速串焼きを焼き上げる。期待した調理スキルのアップこそ無かったものの失敗は無し、ホッとする。出来た串焼きは知り合いと競売へ。肉を買ったお陰で一時50,000ギルを超えた所持金は40,000ギルを切ってしまった。早く串焼きが売れて欲しいものだ。そしてまた、ユグホトの岩屋に採掘しに行かなければならないかなと思う。

早くお金を貯めて、早く憧れの武器を手に入れなければと思う。最近その様な焦りが微かにある。「終わり」の時が近付いてきている……その様な焦燥感が少しずつ膨らんできている。8月か、9月……その辺りになると思う。

何処で終わろう、どう終わろう。少しでも悔いのない形に持っていくために、まずはあの「二つの武器」を手に入れなければならないのだ……。


Stand up to the Victory

チョコボを駆ってシャクラミの地下迷宮へ。中に入っていつもの場所に赴くも、対戦相手であるサソリの姿はそこにない。どうやら誰かに倒されてしまった後のようだ。少し待てばまた出現する筈である。それまで周辺のゴブリンを倒してTP貯めをする事にした。戦闘直後に必殺技であるウェポンスキルを叩き込むためだ。

TPが最高値である300ほどまで貯まる頃、高台の上にサソリが出現した。強さを調べる。「同じくらいの強さ」と出て驚く。今までで最も強い個体ではないか。これまでの相手とだって絶対回避を使っての厳しい戦いだったのに、更に強い相手となると危ないのではないか。そう考えて躊躇する。今日のところは挑戦せずに、後日もう少し弱いヤツと戦う方が安全だ。

だが……一段階強いといっても、これまでのより段違いに強い訳ではあるまい。あくまで一段階だけに違いない。これまでの相手に勝てたのだ、一段階程度なら何とかなるのではないか。……何よりここで退くのは悔しい。やはり戦うことにした。

カバンにはメロンジュースが二本、TPはほぼ300、HP、MPともに満タンで絶対回避も使用可能。ベストである。高台に上り剣を抜き、麻痺の弱体魔法・パライズの詠唱で戦いの幕を開けた。接近してくるサソリに防御力を奪う弱体魔法・ディア、動作を遅くする弱体魔法・スロウを放つ。メロンジュースを飲みMPの回復を開始。TPがすぐに300になる、ウェポンスキル・バーニングブレード発射!

一連の動作を終えるとそこからは持久戦だ。受けたダメージは回復魔法・ケアルIIで回復。相手に掛けたディアやパライズが切れたら即掛け直し。やはりサソリは強い。絶対回避を使って30秒間攻撃を避けるが、それでも双方同じくらいのペースで体力を消耗していく。メロンジュースの効果が切れた。なんて長丁場だ! 二本目を用意しておいて良かった、すぐ飲む。

画像・VSサソリ。
おなつよサソリとの激戦。

プレイヤーキャラにウェポンスキルがあるように、モンスターにもTPを貯めて放ってくる特殊攻撃が存在する。サソリの放つそれはどうやら周囲にいるキャラ全員にダメージを与える範囲攻撃のようだ。威力は大きいが致命的ではない。……だが、何しろサソリである。あの尻尾を使った特殊攻撃をまだ見ていない。きっとあるに違いない。それは相当ヤバイものなんじゃないか? そういう不安を抱いて戦いを続ける。「シャープストライク」という特殊行動をサソリが起こした。それにより攻撃力の増したサソリが大きいダメージを与えてくる。ドルシネアは高い回避能力でそれを避けつつ、着実にサソリの体力を減らしていった。

サソリの体力があと一割程度となったとき、その攻撃はやって来た。サソリが身構える。ログウィンドウに表示されたその攻撃の名前のヤバさにゾッとする。思わずバーニングブレードを放つがサソリの体力は僅かに残った。イカン! やめろッ! それはきっとスゴイだろッ!? なんだその「デスシザース」ってのはーッ!!

ドガーンッ!! デスシザースがドルシネアを襲う。すっと目線を画面右下へ移す。そこにはドルシネアのHP、MPゲージがあるが……その二本がどちらも真っ黒になっていた。……やられた。ドルシネアに視線を戻すと、丁度呻き声と共に倒れるところだった。敗北である。しかも何かがしぼむような効果音と共に、ドルシネアのレベルが27に下がった。ログを見返すと、デスシザースの一発でドルシネアは313ものダメージを受けていた。全体力の三分の二以上を一発で奪われていることになる。

丁度リンクパールを通じて話していたGzさんに死亡を伝える。Gzさんはドル猫の死を悲しんでくれたが、しかしその時私の言った「清々しさ」についても同意してくれた。そう、この時私は以前モルボルに倒されたときのような清々しさをまた感じていたのだ。前回は圧倒された快感であったが、今回はやることは全てやった上での敗北の気持ち良さである。

ホームポイント、ウィンダスへ移動してドル猫蘇生。サソリとはまた後日、再戦となるだろう。今度は負けない、待っていろよ。


Memory for You

私がその夜にウィンダス港の防具屋まで駆けつけたとき、そこにはいつものメインキャラクターのミスラではなく、サブキャラクターの姿をしたRnさんが立っていた。丸く小さなタルタルの姿は、その時のRnさんの萎縮した心を表しているかのようで、私には少し痛々しくすら見えた。

画像・ウィンダス港の二人。
ドルシネアとRnさんのタルタル。

異変は偶然察知していた。数日前に送った焼きリンゴが今日になっても、RnさんとTkさんの二人に受け取られていなかったからだ。数日もログインしていないなんて珍しい。しかも二人ともだ。何かあったのではないか。いや、単に仕事なりなんなりで忙しく、FFXIをする暇がないだけじゃないか。二人一緒なのは、まぁ偶然で。

だが……残念なことに……心配の方が正解だった。Tkさんのメッセージが届いていて、それに「ここ数日落ち込んでいましたが」という一節があったのだ。二人に何があった? リンクシェルのリーダーであり、Rnさん、Tkさんとは以前のゲームからの付き合いであるFlさんに確認を取った。Flさんも知らないとのことだった。Tkさんに直接尋ねても、「思い出すと悲しくなる」と話して貰えなかった。

そして夜、Rnさんはログインしていた。しかしいつものミスラではなくサブキャラのタルタルで、サルタバルタに一人でいるようだった。リンクシェルのメンバーが集まってどこそこに行こうとワイワイ話をしている中、いつも元気なRnさんの声がそこに混ざることはない。いても立ってもいられず呪符デジョンを使い、滞在していたバストゥークからウィンダスへと移動した。

言葉少ないRnさんを前に、Rnさんの心を開こうと買ってきた花火を披露する。

画像・花火。
ドラゴン花火を二人で眺める。

やがてRnさんが語り始めたのは、先日のレベル上げパーティで受けた冷たい態度、心無い言葉のことだった。同じパーティにいた経験豊富な冒険者に、モンスターの釣り技術などについて酷く扱われたらしい。RnさんとTkさんは仲がいい。恐らく一緒にそのパーティにいて同じ体験をしたのだろう。私は自分の、最後に組んでいたパーティのことを思い出していた。私は成果を出せなかっただけだ、別に酷いことを言われた訳ではない。私の時よりずっと辛い思いを味わったに違いない。

Rnさんはメインキャラでのレベル上げを止め、サブキャラでのレベル上げを始めるという。パーティで前衛を努める自信を無くし、後衛として進むのだと。Rnさんはメインキャラで暗黒騎士をやっていた。暗黒騎士に憧れ、これを取得し、楽しそうにレベルを上げていたRnさんを私は知っている。それだけに胸を締め付けられる思いだった。

Rnさんに、作ってきたオレンジジュースを渡した。Rnさんを元気づけるために、先程モグハウスの中で作ってきた物だ。Rnさんのためにと合成を開始し、シュパシュパシュパーンと派手な光を発したとき、私は「まさか」と息を呑んだ。ハイクオリティー(HQ)品のオレンジジュースが出来たからだ。Rnさんの初めてのジュノ上京を祝うとき、乾杯のため私はジュノでオレンジジュースを作った。Rnさんのためにと合成を開始した時、やはりハイクオリティなオレンジジュースが出来たのだ。……これもまた運命なのか。

ウィンダス港の防具屋の前で、二人してオレンジジュースを飲んだ。レベル上げを止めた私ではあまり出来ることはないけれど、だからこそRnさんの元にはいつだって来よう。そういうとRnさんは、「いてくれるだけで嬉しいのです」と言った。それは私がリンクパールを外して一人彷徨っていたときに、「おやすみー^^」と一言TellをくれたRnさんへの感謝の思いと同じものだろうか。

タルタルの姿でもRnさんはRnさんだ。だが私はやはりいつか、元気なミスラの暗黒騎士を見たいと思う。


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