Last Modified : 8 JANUARY 2004
From Dulcinea's diary Part.1 "The Mother Dulcet Wind".
ジュノのレンタルハウスに起床。まずはポストから、チョコボクエスト用のアイテムを回収する。チョコボの免許証を取得するためのクエストには、とあるアイテムが四つ必要。前日まだドルシネアがバストゥークにいる時に二つ、そしてウィンダスにてヌナイで二つ、それぞれ購入しておいた。それらをドルシネア宛に配送しておいたのだ。こうすれば、その四つのアイテムをドルシネアが持ち歩いたり、倉庫に入れておかなくても済む。ポストに置きっぱなしにして、アイテム欄を節約していたという訳だ。それを聞いた時のFlさん、Mhさんの「ずるいー」とか言う驚き様は面白かった。
ジュノ上層のチョコボ厩舎で、クエストを開始する。このチョコボクエスト、内容はチョコボに餌を与えることで親しくなるというもので、難易度自体はとても低い。ただ、時間を要するのが難点だ。もっとも短く済ませても、現実時間で五時間近く掛かると聞いた。その間にやることは、数十分に一回餌を与えることだけ。その間は、やることがない。
待ち時間の間、取りあえずジュノ観光をすることにした。
ジュノという国は、二つの大陸の「間」に存在する。サンドリアとバストゥークのあるクォン大陸。ウィンダスのあるミンダルシア大陸。その二つの大陸を「ヘヴンズブリッジ」という巨大な橋が結んでいて、その橋の上に国が築かれているのだ。途方もない話である。「ヘヴンズブリッジ」は太古の遺跡という話だ。遺跡の上に石造りの国が出来てしまっているというのだ。
それ故、ジュノは細長く伸びる構造となっている。そしてそれが、何層にも積み重なっている。最下層に港があり、その上に下層、更に上に上層、そして一番上に政治の機関が存在する「ル・ルデの庭」が乗っている。ジュノ港からは眼下に海を見ることが出来るが、最上層のル・ルデの庭から下を覗くと、そこは霞の上となる。えらい上にあるということが実感できる。
それにしても、話に聞いていたとおりジュノは人が多い。それほど広くないということもあるけれど、冒険者が集う場所であるということが実感できる。特に人の集まる競売所の前などは、人が多すぎてキャラクターがなかなか表示されない。頭上の名前だけがネオンのように、白やら青やらで表示される有様だ。これ程に冒険者が集中してしまうのは、ジュノの周辺に狩り場が集中しているからということらしい。試しにサーチを掛けてみると、一つの層に300人弱も人がいたりする。それほど広くない場所にそれだけの人が集まるのだ。それは混雑すること請け合いじゃのう。
また、町中によくShoutが放たれる。パーティに入れてくれと請う、自分の売り込みだ。自分のジョブ、レベル等を叫んでいる。FFXIにおいて効率的にレベルを上げるには、パーティを組むことが必要だ。そして現状では様々な要因のために、パーティを組むのが困難な場合がある。人気ジョブ、不可欠なジョブの不足。不人気ジョブの存在。数時間待ってもパーティに誘われないとか、パーティを組むのに数十分も掛かることはざらだそうだ。売り込む方も必死なのだろう。
モグハウスでのんびりしていたら、Tellでパーティに誘われた。数時間参加するのが通例となっているパーティ。正直、私のプレイスタイルには合わない。チョコボクエストの途中であることを理由に、お誘いを断った。早くパーティが組めるといいねと思う。不本意だが誘われないように、「/anon」コマンドを使ってドルシネアのレベル、ジョブを隠す。チョコボに数回目の餌をあげた後でログアウト。時間つぶしも兼ねて、外へ買物をしに行った。
ジュノの町中で、Mhさんにばったり会った。ちょいと立ち話。Mhさんはいずれシーフを目指すという。元々シーフもやりたかったが、辻ケアルの魅力が勝って白魔道士を選んだとのこと。気持ちはよく分かる。でも白魔道士のMhさんにしか会っていないから、剣を持っている姿は何となく違和感を感じそうだなぁとか思う。
無事にクエストを終え、チョコボ乗り免許証を貰うことが出来た。面倒だったけれど、クエストを通してチョコボに親近感を持つことが出来た。悪いクエストではないなと思う。面倒だけれど。面倒だけれどね。
さて、ジュノも一通り廻ってみたし、レベル上げをする気も特にない。ジュノの周りは、一人で出歩くには危険過ぎる。もうここにいる理由は何もない。……帰るとしましょう。
ウィンダスへの最短距離は、ジュノ港からチョコボに乗って「ソロムグ原野」に出るルートだ。しかし私は例によって、これ以上新しい場所を見たくない。よって帰りも、ロランベリーからパシュハウを通るルートを選んだ。ソロムグ原野に出ればそのままミンダルシア大陸を縦断して、陸地を走るだけで帰ることが出来るんだけどね……でも、やっぱり駄目なのよ。
ジュノ上層のチョコボ厩舎でチョコボを借りる。609ギルも掛かる。高い! とはいえチョコボに乗らないとまたあの決死行が必要な訳で。それに初チョコボだしね。ぽーんと払う。ドルシネアがチョコボに乗り、チョコボのテーマが流れると共に厩舎を出ていくデモが流れた。画面暗転。
画面が明るくなると、そこは既にロランベリー耕地だった。チョコボに乗ったドルシネアがいる。思い切って走り出した。
どっどっどっ……と力強く地面を蹴って、チョコボが駆けていく。チョコボに乗ったドルシネアからは、いつもより高い位置から景色が見える。それが勢いよく過ぎていく。こ、これは気持ちいいなぁ!
ロランベリーを縦断する道に沿ってチョコボを走らせると、気分はレースゲームである。なんかこう、速度を落とさないとアウトに膨らんでしまうような気がしてくる。視点の高さから飛んでいるような気分にもなり、キーイイィィン!というジェット機の音を脳内で流してみたりする。
ロランベリーを抜け、パシュハウ沼へ。チョコボに乗っている間はこちらからの攻撃は出来なくなるが、一切の敵に襲われない。だもんで、来るときは正に恐怖の対象だったモンスターにも、目一杯近寄ることが出来る。
改めて見ると、モルボルって不気味だなぁ。どーもくんは見れば見るほど可愛いけれど。まぁ、今30分経過しちゃったりしてチョコボに置いてかれたりすると、あっという間にあの世行きなんだけれど。と、のんびりしてたら本当に30分経っちゃう。この後コンシュタットとバルクルム砂丘を通り抜けなければならないのだ。急がないと!
パシュハウを抜けてからは本気モード。最短距離を急いでセルビナまで一直線。セルビナ入り口でチョコボを降りる。初チョコボは、とても気持ちのいい体験だった。
セルビナから船に乗る。周りの冒険者が釣りを始める中、階段に立って空と海を眺めるドルシネア。一人で釣りをして、強いモンスターを釣り上げてしまうと具合が悪い。そういえば、ジュノ行きの際に船に乗ったときは釣りをしたのだった。初めての海釣りで初めてヒットし、初めてモンスターを釣り上げたのだった。その時はFlさん、Mhさん、そしてドルシネアの三人で何とか撃退できた。なかなか楽しい経験だった。
その日はやけにモンスターが釣れる日だったのだが、ある時同時にサカナが二匹、シーモンク(蛸のような強い敵)が二匹、計四匹が同時に釣れてしまった。甲板で派手に戦闘が始まったのだが、その様子を階段から見ていて、一人の冒険者が苦戦しているのに気が付いた。体力がみるみる減っていく。サーチを掛けるとレベル14の白魔道士だった。いわんこっちゃない!
階段上からその冒険者にケアルを飛ばす。他の冒険者も気が付いていたのか、ほぼ同時にケアル、ケアルIIが飛んでいく。全てのモンスターが力尽きたとき、その冒険者は無事に生き残っていた。甲板に、冒険者からの感謝の言葉が流れていた。
マウラに到着。新たなクエストが起こらないかとNPCをチェックしていると、小さなマウラ全域に届くShoutが流れた。「すいません〜 サポクエのひとってどこにいるんですか?」
サポートジョブ習得用のクエストは、マウラとセルビナで受けられることは以前にも書いた。私はセルビナで受けてクリアした。恐らくこのShoutを発した方は、マウラのクエストをクリアのためのアイテムは揃っていて、後はクエストを受け、クリアするだけなのだろう。
マウラの町を走る。私はそのクエストのNPCを知っていた。ただ、そのNPCがいる場所を知らせるには、地図上の正確な座標を調べなければならない。すぐその場所に辿り着いて、メニューからマウラのマップを表示させる。座標は分かった。後はこれを、先程Shoutを発した方に知らせるだけだ。
さて、どうやって知らせよう。同じようにShoutで知らせる手もあるし、名前を指定してTellで知らせる手もあるな。どっちにしよう。えーっと……。とか思っていたら、ドルシネアのそばに一人の冒険者が走ってきた。立ち止まったかと思うと、すぐに彼はShoutを発した。「○○にいますよ〜^^」
ぎゃあ、先を越されたっ! でも、私と同様に行動した彼に親近感を持った。「む、先に言われたっ」とSay、感情表現コマンド・/grinで彼ににやりと笑って見せてからその場を離れた。階段を上ったところで、ふと思うところがあり立ち止まる。
先程の彼がNPCの名前も続いてShoutしたのに対して、「ありがとうございます〜」というShout。少しして、一人のタルタルがこちらに駆けてきた。ターゲットして名前を確認……うむ、最初のShoutの発信者だ。そのタルタルはドルシネアの横を駆け抜けると、先にある階段を上ろうとした。それを見てEnterキーを押し、あらかじめ入力しておいた言葉をドルシネアに喋らせる。
「ここの階段下ですよ」
タルタルの足がピタリと止まり、上りかけた階段を下りてくる。前を通り過ぎながら、「ありがとう〜」とドルシネアに返してタルタルは階段を下りていった。更に階段下にいた釣り人タルタルにも礼を告げている。恐らくあの釣り人は、Tellで直接教えていたのだろうと思う。
青く輝くクリスタルの元へ走り、ホームポイントを設定する。これで万が一ブブリム半島でゴブリンに倒されても、海の向こうに飛んでしまうことはない。一息付いていると、再びShoutが流れた。
「無事取れました〜 ありがとうございました〜」
「おめでとう〜」と最初にShoutで返したのは、あの釣り人タルタルだ。続いて私も同様にShout。更にマウラの各所から、お祝いのShoutや拍手の感情表現がタルタルに飛ぶ。それに対して何度も何度も、感謝の言葉とお辞儀を返すタルタル。
はたと気付く。そういえば、今のが私が初めて発したヴァナ・ディールでのShoutだった。何よりこんなShoutの飛び交う場にいられたのは、なんとも楽しい体験じゃないか。
暖かな気持ちを胸にして、マウラを後にした。
ブブリム半島からタロンギ大峡谷へ。切り立った崖に挟まれた細い道を駆け上がると、やがて広い峡谷に出る。そこを左へ、南へと曲がると、サルタバルタへ通じる山脈に向かうことが出来る。しかしこの時、ドルシネアは右へ進路を取った。岩場を駆け下りていくと、やがて前方に巨大な物体が現れる。空高くそびえ立つ、謎の白い建造物・メアの岩だ。
崖を下り、メアの岩のすぐそばまで駆けていく。ゲートクリスタルを入手できるテレポイントを回り込むと、その陰に立つエルヴァーンのNPCがいた。そしてその横にはチョコボが。ここでもチョコボを借りることが出来るのだ。
本来ここからウィンダスに帰るのに、わざわざチョコボを借りる必要はない。短い距離だ。確かにチョコボを借りた方が早いが、チョコボ代の方がむしろ高く付く。チョコボ代はその時々で変動するが、この時は511ギルだった。正直、高い。だがそれでも、今日はチョコボで帰ることに意義があった。今日の帰郷はこれまでのものとは訳が違う。これは「凱旋」なのだから。
丘を越え、崖の間を縫うようにチョコボを走らせ、タロンギを南下する。そして画面切替え。
草原が眼前に広がった。東サルタバルタ。BGMが静かに流れ始める。今までに何度も聞いたその曲が、この時はとりわけ胸に染み込んだ。ドラマやアニメの終盤に流れる主題歌のように、その曲は私の気分を盛り上げた。
ドルシネアに、両親はいない。ドルシネアだけではない。ヴァナ・ディールの全ての冒険者に、家族は用意されていない。あるとすればそれは、プレイヤーが想像の中で作り出したものだろう。だが、画面の中にそのキャラクターは現れない(NPCを家族として設定するなら話は別だが)。
ガルカは性別がない特殊な種族であり、転生によって生まれ変わることで種を繋いでいく。ミスラは今のところ、ゲームの中では女性しか登場しない。好奇心の旺盛な女性だけが世界に広く旅立ち、男性のミスラは故郷に閉じこもっているのだという。とはいえドルシネアには両親が存在する筈なのだが、私にはそれが想像できないでいる。それは何故かというと、別に「母」を感じているからだ。
ドルシネアの「母」は、このサルタバルタの草原なのだ……そう感じている。レベル1の冒険者として生まれたのが、去年の11月末日。あれからもう現実時間で二ヶ月以上が経った。その間ドルシネアはこのサルタバルタで冒険者としての幼少期を過ごし、成長して、友人を得てこの先へと旅立っていった。それをいつも見守り、ここまで育ててくれたのは、他ならぬサルタバルタなのだと強く思う。
いつも細い両脚で駆けていた草原を、今初めてチョコボで駆けている。想像の中でドルシネアは、手綱から放した手を大きく広げた。
「見てよ! 遠くにあるジュノっていう都会まで行って来たよ! チョコボにも乗れるようになったんだよ! 立派になって帰ってきたよ!」
……サルタバルタは、どんな風にドルシネアを迎えてくれるのだろうか。まだまだ子供だよと苦笑するだろうか。それとも私自身の帰郷と同様に、満面の笑みで手を振って、母は迎えてくれるのだろうか。
二ヶ月前、初めて冒険に出た門の前で、ドルシネアはゆっくりとチョコボを降りた。