Last Modified : 8 JANUARY 2004
From Dulcinea's diary Part.1 "The Mother Dulcet Wind".
久しぶりに、赤魔道士にジョブチェンジする。しばらくレベルの高いシーフでプレイしていたから、そっちの感覚が残っている。つまり、赤魔道士では分不相応の場所に、ついつい足を踏み入れそうになってしまうのである。緊張を忘れてはならない。
とはいえ、赤魔道士のレベルは5だ。まだ強めの敵と戦えるレベル帯にある。レベル11のシーフでは「楽」な敵と戦って経験値を稼ぐ。その上、「丁度いい」敵では負けないにしてもHPを削られ過ぎて、戦闘後の回復に時間が掛かる。効率が悪い。これに対して現在の赤魔道士なら「同じくらいの強さ」の敵とも戦える。魔法で攻撃、回復できるのはとても大きい。
草刈り場所でまず足を向ける高台には、危険なヤグードはいない。手を出さなければ絡まれないハチやウサギばかりだ。とはいえハチの方は「強い」ので、まかり間違って手を出すとあの世行き確定なのだが。すぐそばをブーンと羽音を立てて通り過ぎるハチに冷や冷やしながら、草を刈るドルシネアである。
さて、高台での草刈りを終えたドル猫。何気なく辺りを見回したら、崖下の平原に採集ポイントを発見した。しかしこの崖下は、ヤグがぽつぽつと立つ危険な地域。この時も少し離れた位置に、「同じくらいの強さ」のヤグが二匹ほど見受けられた。危険だ、危険すぎる……でも……でも、あの草が私を呼んでいる……ッ!
意を決して飛び降りて、そっと草の元へ歩み寄る。気付くな、こっちに気付くな……心臓をバクバクさせながら草を刈る。一刈りしては180度見回して安全を確認、また一刈り。こ、こんな冒険は初めてかもしれない……草ごときが私をここまで突き動かすのかッ!? とか言ってたら後方にヤグがポップ! は、挟まれたッ!
前後のヤグが非常に微妙な位置にあり、安心して草を刈れない。刈ってる間に攻撃を受けるのはヤバイのだ。同じ強さで防御力の高いヤグに勝つには、最初に相手を麻痺させる白魔法・パライズを掛けられるかどうかが重要だ。パライズは呪文詠唱に必要な時間が長いので、戦闘中に掛ける手間は省きたい。殴られて詠唱を止められかねない。正に先手必勝。安心のある収穫のため……まずヤグを狩るッ!
後方のヤグにパライズ! そして幾つかの弱体魔法を飛ばしてから接近戦。ボロボロになりながらなんとか勝利。終盤に相手が「ウォークライ」という攻撃力倍増状態に入って、かなりヤバかった。MPが切れて、体力の回復にポーションを使わざるを得なかった。しゃがんで回復してから草刈りを再開。一番欲しかった毒消しの材料が出て、嬉しかった。
この日は夕方と夜の二回、草刈りに出た。お陰でかなりの収穫があり大満足。いよいよ草刈りにハマりそうである。赤魔道士のレベルは7になった。
翌日はシーフにチェンジして釣りの後で草刈りに。毎日あんな生死を賭けた草刈りはしていられない。
草刈り地帯に入る辺りで、一人の冒険者が私のバザーから「野兎のグリル」を買っていった。グリルが売れることはまず無い。いつも商品を自分で食いつぶしているのだ。珍しいこともあるものだなぁと、買った方を確認する。武器を装備していないのを見ると、殴りが得意なモンクのようだ。さくさくと走って、丘の向こうに姿を消した。
買ってくれた方には、Tellでいつも挨拶をする。「メルシー!どうもありがとーう」と言ってから彼の後を追うように刈り場に走ると、その彼が真ピクミンことマンドラゴラと戦っていた。……瀕死になりながら勝っていた。ヒューム男のモンク、無茶な戦いと、なかなかパワフルな印象だ。その彼がたたたとこちらに帰ってくる。すれ違い、ドルシネアの後ろまで走り……ばたりと倒れた。し、死んだ!? 毒だ、毒に違いない! すぐにホームポイントに戻ったらしく、彼の身体は姿を消した。
あー、なんだ。グリルじゃなくて、毒消しを買っていればよかったのに……とか思っていたら、彼から「こちらこそどうもー」というTellが帰ってきた。死んでからの返事とは、何と律儀な。「でも、死んじゃいました?」と聞くと、「まあ。毒で…w」。更に「毒消しも買っとけばよかったかな?w」と私と同じことを言いながら、彼がすぐそこに姿を現した。町に戻ったんじゃあないのか?と驚いたが、どうやらすぐそばのアウトポスト(NPCが配置された前哨基地)にホームポイントを設定しておいたらしい。用意周到なんだか、そうでもないんだか。
「今ならお安くしましょうか?」「おお!ありがたい」というやり取りで、彼に毒消しを半値で一つ売った。「ありがとです!」と礼を残して、彼はまた夜の草原を駆けていった。あんまり無茶するなよ……と思いながら、ドルシネアは敬礼で彼の背中を見送った。