Last Modified : 8 JANUARY 2004
From Dulcinea's diary Part.1 "The Mother Dulcet Wind".
アイテム集めの戦いが続く。感覚的に、経験値が入るのは「おまけ」だ。レベルアップよりもお金なのである。蜂蜜があと二つ、風クリ(風のクリスタル)があと二つ、炎クリ(ほのくり=炎のクリスタル)があと四つ……そんな勘定を呟きながら、がんがん敵を狩っていく。
草原の端に、イモムシに殺されレベルダウンするタルタルを見た。タルタルの姿が消えてから、仇討ちとばかりにイモムシを討つ。「円石」を出した。クエストに必要なアイテムだった。早速それを持って、ウィンダスの水の区へ向かう。
東サルタバルタと水の区の距離は遠い。用を終えた(クエストは終わっていない)が、またあそこまで戻るのは面倒だ。そこで気分転換に、こちらにある門から外に出た。そこは西サルタバルタ。草原に木と岩が立つ、東と同じような風景だ。しかし決定的に違うことがある。……静かなのだ。
東サルタバルタは賑やかだ。低レベル冒険者が狩りをする中、レベルの高い者達がより遠くの狩り場へと走り抜けていく。また、更に遠方へと旅する者や逆に旅をしてきた者達が、巨大なトリ・チョコボに乗って行き来する幹線ともなっているようだ。そういった要素がまるで抜け落ちているのが、この西サルタバルタらしい。敵は少しいるものの、それを狩る冒険者の姿がほとんど無い。ただ駆け抜けていく風が、草を揺らすだけだ。夜に来たこともあって、とても寂しい。
ところでこちらにあの獣人・ヤグードはいない。代わりに別の獣人がいる。つぶらな瞳、背に大きなリュックサック。不気味なヤグとは違う、ある意味可愛らしさを備えたモンスター、ゴブリンだ。
最初に見掛けたゴブリンを「調べる」と、「楽な相手」と出た。楽、楽ねぇ……本当かなぁ。巷のFF日記において、彼等の「爆発力」のことを知っていた。大丈夫だろうか。まぁ、試してみないことには始まらない。誰か他の冒険者が戦う様子を観察するにも、ここらにいるのはドルシネアだけだ。仕方ない、行ってみよう。剣を抜いて、戦いを挑む。
確かに「楽な相手」だ。短剣でサクサク切れていく。問題なく勝てる筈だ。初めて戦うゴブリンを余裕を持ってじっくり観察していると、死が近付いた彼は不振な挙動を見せた。「黒い球」を取り出したのだ。来たっ! 思わず身構える。噂のあれだ、「爆弾投げ」だ!
振りかぶり、彼はそれをドル猫に投げた。ひゅーん……山なりに飛ぶ爆弾を目で追う。落ちてきて、着弾。ボガーン! 二桁のダメージ! んぎゃーッ! 何してくれてんだーッ!!(ズババーンッ)→ゴブリン死亡。とはいえ、爆発でドル猫の顔と白髪が、真っ黒にすすけているような気がするよ。気分悪ーい。
まぁ、体力に充分余裕があるので死ぬことはないが、確かに比較的大きなダメージだ。強いゴブならそれだけ強力な爆弾を放つのだろう。それは驚異になる筈だ。しかもこの爆弾は範囲攻撃、近くにいる冒険者全員にダメージを与える。……もっともここにいるのは、例によってドルシネアだけだけど。
周りを見回すが、夜の草原には誰もいない。ウサギが時折ひょこひょこと、背の高い草葉から顔を出すくらい。さ、寂しい……。温もりを求め、町へと帰った。
競売で売れない出品物の相場が落ちていくのにやきもきしつつ、東サルタバルタに戻ってきた。なんだか今日も、モンスターに追われる冒険者を多く見る。ウサギに追われる黒魔道士のタル。彼は無事逃げ切った。ヤグに追われている人を発見し、今日も追ったがやはり届かない。別の戦士がジョブスキルである「挑発」を放ち、ヤグのターゲットを引き寄せた。救われた冒険者と救った戦士。彼等の感謝と誇りを纏う会話のやり取りを、しょんぼり見つめるシーフ・ドルシネア。同じようなエピソード、何処かのサイトで読んだなぁ。
前方で、メインジョブに黒魔道士、サポートジョブに白魔道士を付けた人が「魚」と戦っていた。双方のHPの減り方を少しの間見守ると、問題なく勝てそうだ。てくてくと隣を駆け抜けようとしたとき、「うっ」という呻き声が聞こえた。えっ?と思う間もなくログにはその冒険者の死を告げるメッセージが。思わず目を疑った。MPでも切れたのだろうか。別のタルタルの魔道士は、ケアルが一瞬遅く、ハチのクリティカルに倒された。
「円石」を求めてイモムシを戦う中、そんな光景を見続けてきた。シビアだなぁ、実にシビアな世界だ、ここは。なんて感傷に耽っていたら、何匹目かのイモムシに毒を食らった。イモムシには問題なく勝利。毒によってHPが減っていく。何度経験しても、気分の悪い感覚だ。
なんとなく心細さがあるのか、いつしか門へと足が向いていた。減っていくHP。ハラハラ。でも大丈夫、私には毒消しがあるのです。更に減るHP、残り20を切った。門の前、タルタルの少女の横に何となく立つ。早く毒が切れないかなぁと、ハラハラしながらHPゲージを見守る。毒消しは高価だから、出来ることなら使いたくない。早く毒が切れないかなぁ。
いよいよHPが10を切った。もう使った方がいいかな、と思う。いやいや、もう少し待ってみよう。なんか胸がバクバクしてきた。死の恐怖だ。大丈夫、毒消しがあるのだから。既に毒消しを使う準備は整っている。あとはボタンを一押しするだけだ。HPが……5になった! もう限界だ! 毒消し発動ッ!!(ピッ)
「毒消しの効果は発動しなかった。」
……は?
思いもかけない出来事に、画面の中でドルシネアの、そして画面の前で私の時間が止まる。しかし二人以外の時間は、お構いなしに時を刻む。3、2、1、0。時は動き出す。
「ん……んなアホにゃ……ッ! うっ……」(どさぁっ)
隣のタルの女の子、驚かせちゃったかなぁ……。二回目の強制送還の中、そんなことを考えていた。