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  3. ドルシネア・ダイアリィ 第一部・目次

Last Modified : 8 JANUARY 2004


冒険者のファッション

ドルシネアはモグハウスに目を覚ますなり、ポストの中を覗き込む。はたしてそこには、競売所から送られてきた配達物が入っていた。はやる気持ちを落ち着かせながら中身を確認する。100ギル。前日出品した、「風のクリスタル」の代金だった。100ギルという「大金」。自力で稼いだ達成感。他のユーザが買ってくれたという、繋がった感覚。様々な喜びが身体を駆け抜ける。

嬉々としてモグハウスを飛び出し、東サルタバルタの草原へと駆け出した。もちろん、シグネットを掛けてもらうのを忘れない。ウサギを中心に狩りを始めた。新たに見るアイテムが次々に出る。「野兎の毛皮」。「土のクリスタル」。

レベルが上がって、4になった。これを見越して持ってきておいた、頭部に装備する防具となる「風切り帽子」を装備した。……ちょいと変かな、見た目。目が隠れそうなほどに深く被る帽子は、全体的に軽装なドルシネアにはそこだけ重装備に見える。見た目の全体的なバランスが悪いような印象。とはいえ、これを身に付けることで防御力は確実に上がるのだ。少しくらい我慢しよう……贅沢は言えない、駆け出しの冒険者なのだから。この東サルタバルタはひゅうひゅうと少し強い風が吹いている。「対風+1」の修正があるこの帽子は、正に土地柄の品なのだ。

ヴァナ・ディール時間の朝6時、シグネットの効果が切れた。それを区切りとして、町へ戻ることにした。走って森の区への門に近付いたとき、また帽子が気になってきた。……ちょっと恥ずかしい。帽子を取って町に入った。

画像・風切り帽子のドル猫。
共に装備の変わったFlさんと。「格好悪い」「エロい」と罵り合う。

移りゆく目的

競売所で、自分の持っているアイテムの相場を細かくチェックした。競売所で得られる重要な情報に、売買の記録がある。各アイテムについて、過去10回分の落札日と落札価格を見ることが出来るのだ(売った人と買った人の名前も見ることが出来る)。これから、そのアイテムの相場と需要の割合を知ることが出来る。また、各アイテムが出品されている数も確認すれば、供給が適切であるか過剰であるかの分析も出来る。

アイテムによっては、単品売りと1ダースのまとめ売りの、二通りの出品方法を選ぶことが出来る。多くの場合、単品で売った方が利益率は高いが、競売に掛けられるアイテムの数は限られているので、早くまとまったお金を得たい場合はダース売りの方が結局効率がいい。実際、そのアイテムを多く必要とする人は、ダース単位で買っていくものだ。一応、単品とダース単位双方の売買価格をメモっておく。

どのアイテムを現在どれだけ持っているか、あとどれだけ集めれば1ダースになるかを書き出して、再び草原に出た。既に戦いの目的は、経験値を得るためでは無くなっていた。アイテムを得るため、それを売ってお金を得るため。より豊かな生活を求めての戦いが、始まっていた。


東サルタバルタ動物事情

東サルタバルタの、森の区に通じる門の側には、ハチ、ピクミン、そしてウサギがうろついている。この一帯が低レベル冒険者の狩り場だ。その範囲は山によって道が二手に分かれる辺りまでだと、なんとなく把握している。そこから先は少し敵のレベルが上がる。新たな敵も現れる。

見た目の醜悪なイモムシ。黄色い身体から黒い角が幾つも突き出している。いかにも毒を持っていそうだ。最初の死があんなだっただけに、毒に対する安心を手にするまでは迂闊に手を出す訳にはいかない。

ばどんばどんと大きな羽ばたきの音を響かせる、トリもいる。イモムシといいトリといい、これまでの敵よりも身体のサイズが一回り大きい。それが彼等の強さを物語っている。しかし、そんな彼等よりも更に強いプレッシャーを、恐怖を伴って我々低レベル冒険者に与える存在がいる。黒い羽根に覆われた身体。草むらの中に悠然と立つ二本の足。そして赤い顔から向けられる鋭い視線。カラスマン、ヤツの名は獣人「ヤグード」。

今日はそのヤグによる犠牲者が多かった。逃げるタルタルにトドメを刺すヤグ。力及ばず倒れるヒュームを見下ろすヤグ。それを遠くから、畏怖の念と共に見届けるドルシネアだった。まぁしかし、私は安全第一だし。石橋を叩いて渡るだし。私がヤグにあそこまで近付く訳がない。別世界の光景としても眺めていた。


「絶対」に「回避」すること

ある時前述の、道が二手に分かれるところにやって来た。ウサギとトリを狩るため、そこから私の目に映る、敵のレベルが上がる点線の境界を越えて、先に進み行った。その辺はドルシネアの身長を超える岩が点在し、視界が悪い。ウサギの姿を求めて足を運び、きょろきょろと視線を岩陰へと飛ばした。

その時、「ぎゃお」という獣の鳴き声が聞こえた。続いて突然、ドルシネアの回避スキルが上がった。ん?と思う間もなく、次に5のダメージを受けた。は? また回避スキルが上がる。またダメージ。……え!? 攻撃を食らっている!? 「ぎゃお」の発生源と思われる、左側を見た。今通り過ぎた岩陰に、カラスマンがいた。怒っていた。

ドカーン!とロケットのように勢いよく、地面を蹴って今来た道を引き返した。油断した! ミスッた! 見えるのは後ろへ流れていく草原。しかしどんどん上がっていく回避スキルとぐんぐん減っていくHPが、ヤグの追跡を語っている。あのタルタルの時のように……今、ドルシネアの後ろを、カラスマンが追っているに違いないのだ。

長い数秒を走り続け、衝撃が絶望に変わりかける頃、脳裏を過ぎる思い出があった。それは別にドルシネアの人生ではない。幾つかのFF日記に幾つも記されていた光景……それはモンスターに襲われた者が、逃げ込んだ先の冒険者がいる中に飛び込んで、結果多くの犠牲者が生まれてしまう惨事だった。今、ドルシネアは「点線の境界」を越えて、初心者の狩り場を走っている。それは無意識の行動だったが、人があまりいない山沿いを逃げているため、人影は見受けられない。しかし、万が一助かるにせよ、十中八九殺されるにしろ、ヤグはこの場に残ってしまう……。

いけない、それは絶対にいけない。それは絶対に避けなければ。足を止めて立ち止まった。FF日記では、もう一つ学んでいる。シーフの取るべき行動……それはシーフの切り札、ジョブアビリティ「絶対回避」の使用だ。それは30秒間の回避率100パーセントという効果をもたらすが、以降現実時間で二時間使えなくなるという代償を背負う。しかしこれを使えば30秒、時間を稼ぐことが出来るのだ。30秒あれば、「点線の境界」の向こうへと戻ることが出来るだろう。

ボコボコと殴られながら、メニューからジョブアビリティを選ぼうと慌てていると、唐突にドルシネアへの攻撃が止んだ。それまでドルシネアとヤグの名が並んでいたログに、見知らぬ名前が加わっている。顔を上げ、それが一人の冒険者であるのを確認するのと、その冒険者がヤグを叩き伏せたのは、ほぼ同時だった。……「絶対回避」を行わずに済んだ。死なずに済んだ。

剣を収め、町へと走っていく冒険者に、慌てて礼を言った。「ありがとうございます!助かりました」。その言葉に、「いえいえww」という答えが返ってきた。その姿が消えるまで見送っても、しばらく興奮は収まらなかった。

本日のまとめ

画像・パーティプレイ。
Flさんとお話し中、突如隣にヤグが登場。恐怖で凍るドル猫。

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