1)初手▲7六歩編

 初手▲7六歩は現代将棋の8割以上を占めているのではないか。ちなみに私が先手の場合は100%▲7六歩である。理由は明快で、得意戦法は全て▲7六歩としなければできないからである。さらにいうと、▲2六歩とする指し方は全く知らない。知らなくて大丈夫かというと、大丈夫なのである。(ホントはよくないけどね)では具体的に後手の応手を見ていく。

A)▲7六歩-3四歩型

B)▲7六歩-8四歩型

 

 Aの形は現代将棋で最も出現率が高いのではないかと思う。というのは現代プロ棋界の大半を占める「四間飛車」と「横歩取り」の戦法の出だしだからである。
 Bの後手8四歩は基本的には「私は居飛車(飛車を右翼で使う)で行きますよ」という意思を表示している。基本的にと留保をつけたのは、居飛車で行くと見せかけて振り飛車に組む「陽動振り飛車」という戦い方があるからである。

 

<Aの3手目>

A-1)3手目▲2六歩型
 この▲2六歩で先手は「居飛車で行きますよ」という意思を明確に表示した。次の後手の応手で戦いの形が決まる。次の手は多岐に渡るが以下の戦いになる可能性が高い。
▽8四歩-横歩取り
▽4四歩-後手振り飛車
▽5四歩-ゴキゲン中飛車(5筋位取り中飛車)
▽3五歩-後手升田式石田流

4手目以降を見る

 

   

A-2)3手目▲6六歩型
 
▲6六歩は角道を止めた手。この手で先手は、@「振り飛車で行きますよ。」また少数ではあるがA「矢倉に組みたいので角道を止めますよ」という意思を表している。ほとんどの場合は@である。Aも無いわけではないが、後手が飛車を右から4筋目に振る「右四間飛車」に組まれると対応が難しくなるので、好ましい狙いではない。以下は進展可能性の一例。
▽8四歩-先手振り飛車
▽3二飛-相振り飛車(向かい飛車VS三間飛車)
 

4手目以降を見る

 

   

A-3)3手目▲7五歩型
 ▲7五歩と突く戦い方がある。角道を止めないで三間飛車に組む「升田式石田流」という戦法である。石田流といえば、飛車を7六に持っていく戦法だが、自分から角道を止めないで振り飛車に組む力強い戦法である。
以下の進展可能性
▽8四歩-後手居飛車
▽4二玉-先手7八飛の瞬間後手から角交換を迫り乱戦を狙う。
▽3五歩-相振り飛車(相三間飛車)

4手目はこちら(製作中)

 

   

A-4)3手目▲4八銀型
 ▲4八銀と上がる手は居飛車でいくという作戦を明示したほかに、後手が振り飛車できた場合に、▲2六歩を省略して駒組みを進めようという意味合いがある。ただ、私としては次に後手から▽8四歩とされた時に、駒組みが制限されている(角道を止めないと駒組みを進められない)のが気に入らないので、相手が振り飛車で来ることがある程度予想できる時に指すべきかと思う。やや亜流の指し方であろう。

主に見られるのは
▲居飛車VS▽四間飛車の戦いにおいてである。
 

実戦例(居飛車右四間飛車VS後手四間飛車)(製作中)

 

<Bの3手目>

<B-1>3手目▲6八銀(矢倉へ)
 
ここで▲6八銀と指すと、この将棋は矢倉模様に進展する。以下▽3四歩に対しては▲6六歩と角道を止めるか、▲7七銀と上がるかになる。いずれも一長一短があり一局の将棋になる。矢倉を指したいなら、この手順は必ず覚えてほしい。
   
<B-2>3手目▲2六歩(角換わり・横歩取り)
 ▽8四歩に対して、▲2六歩と突くと、角換わりや横歩取りの将棋に進展する。「先手が角換わりの注文を出す」ともいう。以下▽3二金と上がれば角換わり、▽3四歩と突けば横歩取りの将棋になる。
   
<B-3>3手目▲6六歩(▲振り飛車VS▽居飛車)
 先手が角道を止めた場合、先手は振り飛車に組む。以下後手が▽8五歩と突けば、7七角と受ける。▽3四歩ならば、次の先手の手で飛車をどこに振るか、ある程度の方向性が見えてくる。
 ▲6八飛なら四間飛車・▲7八飛なら三間飛車・▲5六歩から▲5八飛とする中飛車・▲7七角と上がって▲8八飛とする向かい飛車などが考えられる。

  こうしてみると、後手が▽8四歩とついた場合は、3手である程度作戦が決まる。これは、▽8四歩は「後手は居飛車ですよ」という態度を示しているからである。逆にいうと、角道を開ける手は、居飛車・振り飛車どちらにも進める幅が広いので、互いの角道が開いたときは、なかなか神経を使う展開になるといえる。何しろ、たった2手で駒が敵陣に効くのだから当然といえば当然である。