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〈2〉 防災センターはどうあるべきか ここで、現在建前では検討の段階ですが、建設することがもう固まっている、武蔵野市の防災センターについて考えてみます。現在でも防災安全課があり、平常時・災害時の防災の窓口となっていますが、防災活動の拠点として情報の収集・発信を迅速化・一元化すること、食糧・水などの備蓄を強化すること、などの目的のために、防災センターを造ることにはそれなりの意味があると考えます。都内23区・26市の内、すでに12区4市に防災センターがあります。防災センターのために庁舎を新増築した所(複合施設を含む)は、予定を含め4区1市となっています(H16年1月現在)。 しかし、武蔵野市が現在進行中の防災センター計画には下記のようにいくつも問題があると感じています。 |
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[1] 20億円の建設費は適切か 庁内の検討委員会から次の3つの案が出されました。 T案---防災センターを本庁舎内に設置するもので費用は4億5千万円。 U案---市役所本庁舎に隣接する西庁舎を増築して設置するもので20億円。 V案---西庁舎を改築して設置するもので35億円かかる。 それぞれ費用は概算ということです。V案はU案を安く見せかけるためのダミーと考えてよ いかと思います。T案ではなぜ駄目なのか、市長以下が力説した理由は @ 防災センターを設置予定のスペースは、既に不在者投票などのために使うなどし ていて、庁舎全体のことを考えると必要面積が確保できない。 A 1980(S55)年に完成した現在の庁舎自体耐震性に問題があり、補強が必要とな る(T案の費用は主にこのため)。その場合室内に新たに壁を造ることになるの で、有効スペースがずっと狭くなる。また工事中の業務はどうするか。 というようなことでした。 @についてはある程度わかりますが、3/8の市議会総務委員会で出された概念図(こちら)を見ると、増築される3階〜8階の内、(3階は免震装置を設置するため使えないようです) 防災とは無関係の会議室が2層分もあります。また防災業務の関係でも「放送室」とか「夜間防災連絡室」など、本当に単独で必要なのかという部屋もあります。 市役所内に会議室が足りないという声があるのは事実かも知れませんが、民間企業では会議を減らすために随分努力しています。日産のゴーン社長も会議減らしの号令を発しています。蕨市のように会議の配布資料の簡略化や形式的な報告を省略するなど、具体的に取り組んでいる自治体も増えているようです。実は武蔵野市でもH11年の3月に新世紀委員会「武蔵野市 新世紀の市役所の組織・経営を考える(新しい仕事のやり方)委員会」が、会議のあり方の見直しを取り上げて次のような提言をしています。 「業務執行の上で貴重な時間やエネルギーを無駄遣いさせられる原因として、長々とした説明、延々と続く会議、たたき台を出さない打ち合せ、形式主義に基づく細かすぎる手続き、相手の都合を考えない突然の来訪者(電話)などといったことが経営改善の世界ではよく言われています。時間=賃金は、最大のコストであることを常に意識し、市役所でもこうした傾向がないか常に点検し、無駄だと思われる点は改善していくため、『庁内業務効率点検委員会』などの設置に取り組むべきです。」 「庁内業務効率点検委員会」が設立されたかどうか定かではありませんが、せっかくの提言を具体的に生かすためにも、安易な会議室増設には大いに疑問があります。 Aの説明にも新たな矛盾が出てきました。伊勢丹などがテナントとして入居している,吉祥寺のエフエフビルの改修工事との比較で分かったことです。エフエフは民と官の共同出資による、いわゆる第三セクターのエフエフショッピングセンターという会社が運営していましたが、最近武蔵野市開発公社に吸収されました。この建物でも今耐震補強の計画が進行しています。三月市議会の予算特別委員会で市長は、全部で約10億円かかるというエフエフビルの耐震補強工事について「商業ビルなので、売り場面積を最大限確保する考えである」と説明していました。つまり建物外側に鉄骨ブレース(筋かい)を設置するなどの方法で、売場スペースを極力犠牲にしないで耐震補強するという説明です。 前述のT案の説明では、「市の本庁舎を分厚い耐震壁で補強工事をしなければならないので庁舎のスペースが狭くなる」と言ってT案を退けました。市庁舎は構造的に外側から補強することは不可能なのでしょうか。そんなことはないと思います。どうもその時その時の都合で、建築にはシロウトの市議などに対して適当な説明をしているのではと勘ぐらざるを得ません。 U案について一般質問で、私が「20億円も掛けるビッグプロジェクト」と言ったところ、市長の答弁は「市にとって20億円事業はビッグプロジェクトではない」というものでした。600億円からの予算を操る立場からすればそうかも知れませんが、市民の感覚からは随分ずれているように思いました。 今ではU案の20億円で行くという流れが決定的になっていて、動かない状況です。そこでせめても、会議室を沢山設けるのなら、市民も利用できるようにするなど、一部の施設を普段から市民に開放することを求めたいと思います(例えば北区では大会議室を市民に開放しています)。 |
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[2] 設備や機能にムダはないか 新たな施設は、スリムで利用効率の高いものにすべきです。実際に6ヶ所以上を視察・見学しましたが、例えば都の防災センターをはじめ、大画面モニターや豪華な机・椅子・什器備品が揃っているところが何ヶ所もありました。しかし、こういった施設のほとんどが普段は全く利用されず、宝の持ち腐れではという印象を受けました。一方、民間企業(東京ガス)やいくつかの自治体では、大画面モニターではなく、壁面にプロジェクターで画像を投影させるというやり方でコストを抑えたり、災害対策本部には折り畳み椅子を使い、職員用シャワー室なし、宿泊施設なし、プレスルームなしとなっています。特に最近こういうやり方が増えているようです。非常時の施設ですから、設備はなるべくシンプルにするのが当然だと思います。 |
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[3] 検討のプロセスはこれでよいか 防災センター計画は市の「庁内検討委員会」で進められてきました。文字通り助役以下庁内の15名の役職者が集まった委員会です。審議経過を書いた資料を見ると、約4ヶ月の間に10日間が審議に割かれていますが、その内7日間は都内と兵庫県の施設の視察です。 白熱した議論の結果というよりも、他の自治体を比較して要領よく報告書をまとめたと言ったら言い過ぎでしょうか。また3/11の議員日記にも書きましたが、3/8の市議会総務委員会の質疑の中で、市役所本庁舎を設計した日建設計が早くから協力してきたことが明らかになりました。建物の素案も日建設計主導で作られたと考えるのが自然です。 防災センターに限らず、大きなプロジェクトを計画する場合、市役所内外の専門家や熱心な市民が集まって、徹底的な議論を戦わせた上で方向性を決めるというプロセスが必要だと強く主張します。また途中で何度か市民の声を聞き、批判にさらしてフィードバックするということも重要です。閉じた輪の中だけの議論だけでは、どうしても先行例の真似や、市民感覚からずれたプロジェクトになりがちではないでしょうか。 |
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[4] 防災センターを生かすために 阪神淡路大震災では神戸市の旧庁舎の途中階1階分が潰れ、大きな支障をきたしました。 災害発生時時市役所には、被災者、安否を尋ねる人、ボランティアの人達など大勢がやって来るはずです。それらの人たちに応えるためにも、防災センターの建物が被害を受けず、チャンと機能することは当たり前ですが大事なことです。 しかし市民の住宅やマンションが多数壊れ、大勢の被災者が出る中で、市庁舎や防災センターが残ってそびえ立つというのでは話がアベコベです。被災者を出来るだけ出さないために、住宅改修など防災行政を進めると共に、不幸にも被災者となった人達を最大限サポートするというための防災センターであってほしいと思います。 |