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〈1〉 被害を最小にするために 現在武蔵野市の防災センター建設計画が進行しています。私も3月市議会で「防災センター建設と市の防災施策の方向性について」と題する一般質問を行いました。この時、時間の制約などで使えなかったデータや、その後判ったことなども用いて、武蔵野市の防災への備えはどうなっているか、どこに問題があるのか、主として地震災害を念頭にまとめてみたいと思います。 |
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[1] 頻繁に起こる大地震 阪神淡路大震災以後に限っても、国内各地で大きな地震が起こっています。
このほか2003年7月26日にも宮城県北部ではM:5.6、一部地域で震度6弱を記録した地震がありました。また2002年 3月31日には台湾北東部でM6.8の大地震が発生しています。 大地震はこのところ毎年のように起きています。人や家屋が比較的に疎らな地域で起きたため、多数の死者・不明者が出なかったと言えそうです。 首都圏では大正12年(1923年)の関東大震災以来80年巨大地震は起こっていませんが、それだけに却って不気味なことは確かです。個人でも国や自治体でも備えは必要です。 |
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[2] 被害想定について 一定の条件のもとに大地震のシミュレーションをして、被害想定をすることは重要です。予測と実際の間にはズレがあるのは避けられないので、想定にはある程度の幅を持たせる必要もあります。倒壊棟数、出火件数、死傷者数などがどうなるかによって、避難所の数や食料の備蓄など、準備計画も変わってきます。同時にハザードマップ(危険区域予測図)も作成して、危険度の高い地域から優先的に防災政策を進めることも当然考えられるべきです。 |
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[3] 東京都の被害想定 平成9年8月に東京都から「直下地震の被害想定に関する調査報告書」が発表されました(調査報告書のページはこちら)。都内23区の自治体ではほとんどが東京都の被害想定を採用しています。 想定の基本方針では「東京の高度に発達した都市的状況を十分反映するとともに、より危険の度合が高いケースを選択して想定する」とあり、東京都の直下でM7.2の地震が発生するケースについて、震源4ヶ所想定してそれぞれシミュレーションをしています。どのケースの場合も、最大震度は6強としています。多摩地区の場合、大部分が比較的古い地層である武蔵野台地の上にあるため、揺れはやや少な目で、液状化する地盤も殆どないという予測になるようです。 多くの項目にわたって結果をまとめてありますが、いくつかの分かりやすい項目をピックアップして表にまとめました。こちらです。多摩地区については多摩直下を、区部については都庁直下を震源とした場合の被害想定を取り出しました。 これを見ると、多摩地区は都心ほどではありませんが、死傷者にしても建物にしても、各地で多くの被害が想定されています。 |
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[4] 武蔵野市の場合 1)都の被害想定結果と市独自の結果の大きな違い ・・・木造建物の全壊は、市の結果では2,500棟以上、東京都の結果では160棟 ところで武蔵野市には、市独自に被害想定調査があります。この結果を見ると、木造建物の全半壊数の想定数字の違いが目立ちます。
建物総数に対する全半壊棟数の割合は、都の被害想定では3.1%なのに対し、武蔵野市独自のものでは22.5%となっていて、(都の調査で)最も被害の多いとされる江東区の14.6%に比べても突出しています。 武蔵野市の想定で建物被害が大きいのは、阪神大震災における宝塚市の被害を参考にしていることが大きい理由と考えられます。専門家の見解も聞いたところ、宝塚市と武蔵野市を比べると地盤の条件は武蔵野市の方がかなり良いこともわかりました。 (宝塚市は野島断層に近く、かつて地盤が乱されことがあるのがハッキリしている上に、北側に六甲山系の固い地盤があり、東と南側には武庫川が運んだ比較的柔らかい平地が広がっていて、条件は武蔵野市よりかなり悪いのではないかということです) 2)市独自の想定結果の後に市が手を打ったことは? 武蔵野市が独自の想定に固執する理由は、H9年に都の調査報告書が出る前年のH8年に、約1,100万円かけて(約4,000万円としていたものは誤りでしたので訂正します。メルマガ第2号に書いた数字も同様です。武蔵野市開発公社がH9年に実施した耐震調査の費用と混同していました)民間会社に依頼して被害想定を行ったからだと思われます。H6年に都が調査に着手したことはわかっていたはずで、無駄な投資とも言えるのではないのでしょうか? 建物の被害被害想定が変わると、避難計画や備蓄計画も大きく変わります。市の説明では、被害の数字が大きく出ると、より安全な施策を採ることになるので問題ないとしていますが、他の自治体と歩調を合わせて、広範な項目について詳細な数字を積み上げた東京都の被害想定を採用すべきだと思います。 そして何よりもここで問題なのは、このように市独自の調査をやり、報告書で多大な危険性を指摘されながら、市は木造住宅の耐震化施策など、具体的にはほとんど手を打ってこなかったことです。被害想定調査は本来地域の地域の危険度を予め把握し、まちづくり施策に生かすためのものです。報告を受けてもそれをそのまま本にまとめるだけでは、1,100万円の調査費用を生かしたことにはならないのではないでしょうか。 |
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[5] ハザードマップはどうなっているか 武蔵野市ではハザードマップ(危険区域予測図)を発行していません。理由はこのような地図を出したら、市民がパニックを起こすのでは、あるいは危険度が高い地域とされれば、不動産の評価が下がることに強い反発が出るのでは、ということでしょうか。しかし横浜市や板橋区・新宿区・三鷹市のように、公開、発行している自治体は増加しています。新宿区のものなどはネット上でも見られます。市民の知る権利に応えるためにも、個人や団体が防災計画を立てるためにも公開するべきです。ここでも、武蔵野市独自の想定で建物の被害想定が過大なことが障害になっているのでしょうか。
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[6] 人的被害を少なくするためには 阪神・淡路大震災では、8割以上が圧死・窒息死だったという調査結果が発表されています(兵庫県警などの調べ)。つまり家の部材や家具の下敷きになって死んだ人、救出を待つ間にこと切れた人、あるいは脱出できずに火事の延焼で亡くなった人など、家屋や家具の倒壊が原因で亡くなった人が圧倒的に多かったということを物語っています。 住宅やビルが倒壊すると、人命が損なわれることに加えて、道路をふさいで緊急車両が通れない、電気やガス、水道といったライフラインが破断して、火事や爆発などの二次災害を誘発することも大きな問題です。 以上のことから人命を守るためにも、二次災害を防止するためにも、住宅やビルの耐震性を強化して地震で壊れないようにすることが急務であることは明かです。国もそのことの重要性はハッキリ意識していて、最近では内閣府中央防災会議の「住宅における地震被害軽減方策検討委員会」を中心に検討が進んでいます。(資料A) |
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[7] 耐震化を促す行政を また、上記の委員会(内閣府中央防災会議の住宅における地震被害軽減方策検討委員会)では住宅の耐震改修があまり進んでいない現状を踏まえ、居住者が耐震改修を受けやすくするための環境の整備を訴えています(資料B)。資金助成だけではなく、耐震診断・改修の実施や助言ができる人材の育成や登録など、一貫した仕組みや制度が求められています。中野区や三鷹市などではそういった取組みが始まっています。
武蔵野市にも「民間住宅耐震診断助成」「耐震改修助成」という制度がありますが、年に数件しか利用されていません。ところがH14年度から始まった「無料簡易耐震診断」は年間約50件ほど利用されいて、希望者が多く当初の枠を拡げた程です。住宅改修の助成に対しては、市長や与党側の市議らは未だに「私有財産に公的な補助はできない」などと助成に反対の意見を主張しています。しかし、現在、耐震改修助成は、横浜市、静岡県、長野県、愛知県などかなりの数の自治体で実施されていて、横浜市では最高450万円まで補助金が出ます。また国会でも「被災者生活支援法」がつい最近成立し、金額はまだ僅かですが全半壊した住宅の補修のために、補助金が支給されることになりました。耐震改修は、地域全体の防災力を高めることにつながることは明かです。改修助成施策に前向きな自治体が増えている流れを踏まえ、武蔵野市としても一歩踏み出すべきではないでしょうか。 |
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[8] 近隣自治体とも幅広く連携を [4]-2でも述べましたが、H8年に被害想定が出て以来、武蔵野市の防災施策が特に進んだ形跡はありません。市民の防災意識が高まったとも思えません。横浜や静岡の取組みについて市長の見解を訊くと、「東海地震対策とは切迫度が違う」というような答弁でした。言うまでもなく地震はいつどこで起こるかわかりません。武蔵野市としても、安全なまちづくりのためにもっとスピードを上げるべきです。 また当然のことながら地震の被害は広域にわたります。市単独の防災計画など有り得ません。ライフラインや人の避難など、近隣自治体との連携を強化し、情報を共有する必要があります。 |