A.武蔵野市の情報公開について

 

昨年雑誌の調査で武蔵野市は全国698都市の中で、情報公開度第2位に選ばれました(週刊東洋経済02.12.28-03.01.04合併号)。このこと自体は喜ばしいことです。ただこれは「ホームページから見た」というキャプションがついている通り、自治体のホームページについて、20項目を機械的に採点した結果です。市長や与党議員が、この「ホームページから見た」という部分を抜きに「情報公開度第2位」と盛んに宣伝していますが、誤解を与えかねない表現です(この「ホームページから見た情報公開度」については、こちらで検証しました)。

実際の武蔵野市の情報公開がどうなっているのか、今までの体験と見聞からレポートします。

 

 

1)マイナス情報も市民と共有する姿勢を

  市にとっていいニュースは、市の持つメディア(市報やCATVなど)ばかりでなく、新聞や雑誌でも積極的に発表されています。しかし私たち市民がが知りたいのは、マイナス情報も含めた行政に関する情報です。 

  例えば前回の市長選直後(1999年)に判明した、市職員による公金横領事件については、突き上げを受けて、一応市報で報告・謝罪はしたものの、不可解な部分も多く残っていて、とても全容が明らかにされたとは言えません。また昨夏(2002年夏)明らかになった市内農家で採れたきゅうりの残留農薬の問題は、都の記者発表が新聞記事になっただけで、その後市民への説明はありませんでした。もちろん、直接打撃を受ける、生産農家に対する配慮は十分にしなければなりませんが、一方で知らずに食べている、市民の健康への影響を軽視してほしくありません。 

  先日のスペースシャトルの事故で、NASAの報道官は全てを正直に話してくれたということで評価が高まりました。逆に雪印の、自社の事件への対応は最低でした。たびたび例に挙げて恐縮ですが、三鷹市では「三鷹を考える論点データ集」という冊子で、あえて市の長所・短所も含めて、近隣4市と比較したデータをを提供しています。今の時代、政府や自治体、学校、警察、病院、銀行などは大変厳しい目で見られています。不利なデータや、市に都合の悪い情報も隠さず公開してこそ、市民の信頼が増すのではないでしょうか。 

 

2)全てが決まってからでは遅すぎる

  武蔵野市情報公開条例第5条には

 「市は、行政文書の開示並びに市が保有する情報の公表及び提供を行い、市政に関する正確で分かりやすい情報を市民が迅速かつ容易に得られるよう、情報公開の総合的な推進に努めるものとする。」 

とありますが、この条文が十分に生かされているとは言えません。 最近市内では、市の保有地や企業の社宅跡地などに、大規模工事の着工や計画発表が相次いでいます。しかし付近の住民への説明は、建築が認可され工事が本決まりになるまで殆どないことが多く、トラブルが続発しています。これはその一例です。マンションなどの建設には「宅地開発等に関する指導要綱」というのがあって、事前に事業主は市長に十分説明し、付近住民に計画を公開しなければならないのに、これが全く出来ていないようです。市はトラブルの仲裁をするどころか、殆ど業者と一体だとの声もあります。かつて後藤喜八郎の時代、熱心のあまり、市の指導を無視した業者のマンションの水道を止めたりしたことが裁判で争われて、敗訴したということがありました。それがトラウマになっているのでしょうか。
  だからと言って、「形式が整っていれば、認めるほかない」として何もしないことは許されません。市や市長には、乱開発を防ぎ、住民の生活を守る意志があるのかどうかが問われています。

 

3) 破綻した「CIM」という発想

武蔵野市情報公開条例では、第6条の(3)で市民として知るべき最小限の情報、及び公表等をすることが適当と認められる情報を公表又は提供しなければならない」とあります。これは「CIM=Civil Information Minimum」と呼ばれていますが、1989年(平成元年)の制定に当たり、一部の委員の発案で取り入れられた概念です。

市民が知るべき情報を、市が選んで提供するとなると、市に不利な情報は公表されそうにありません。何より、市民一人一人が自分の知るべき情報をお上に決めてほしいなどと思うでしょうか。当初は善意から出てきたアイデアかも知れませんが、単なるお節介にすぎません。市では相当熱心にこの言葉をPRしてきたにもかかわらず、他の自治体には全く波及していません。市の「情報公開委員会」(14年3月)でも、「市の職員もCIMのことをほとんど知らない」「インターネットの時代に、紙で発信することにどれだけの意味があるのか」という、もっともな発言が出ています。市報でCIMとして紹介するテーマにも苦労しているようです。

 

 

4) 市長の問題発言

3月16日武蔵野公会堂で行われた、次期市長選立候補予定者、土屋正忠現市長氏とむらかみ守正氏との公開討論会の席上、土屋市長は情報公開について見解を述べた中で、次のような発言をしました。

「市は様々な情報を山のように持っている。個人の資産に関すること、出身地、性別、図書館の貸出情報などなど・・・これらを全て公開しろと言うんですか。私はプライバシーを守りつつ、適正に情報公開を進めます。」

図書館の貸出情報については、返却と同時に貸出記録が自動的に消去される仕組みだそうで、実際は市に記録が残っているということではないそうです。

それは抜きにしても、市長はその発言で、意識的かどうか分かりませんが、情報公開のことと個人情報をどうするかということを混同しています。個人情報を無原則に公開してはならないことは自明であり、行政にはしっかり守っていただきたいものです。小泉内閣が提出した「個人情報保護法」が総スカンを食い、廃案になった原因の一つは、民間には厳しい罰則規定を設けながら、役所が知った情報を公務員が勝手に見ても漏らしても、殆どお咎めなしという内容の法案だったからです。

それにしても、図書館の貸出記録保存の仕組みを含めて、何でもよくご存じの市長が、何故こんな発言をされたのでしょうか。もしかしたら「市は個人の情報をこんなに握って居るんだぞ。」と、密かに誇示したかったのでしょうか。

 

 

5) 結論

その他、これは私の主観が入りますが、開示請求する市民に対して、市の職員は非常に警戒的に見えます。自分たちの仕事を、あれこれ批判されたくないということでしょうか。
全体として、武蔵野市の実際の情報公開度はまだまだ低いと言うほかありません。

都内23区と6市の市長交際費等の情報公開度について調査した記事が発表されました(2003.4.2読売新聞)。武蔵野市はやはり評価が低いです。