B.「ホームページから見た情報公開度」を検証する
 

週刊東洋経済02.12.28-03.01.04合併号の、「ホームページから見た全国698都市の情報公開度ランキング」で、武蔵野市は第2位となりました。この中身を検証します。

同誌の調査は説明責任・行財政改革・市民参加の3つの視点を重視し、「議会議事録の閲覧・検索は可能か」「パブリックコメントの募集・回答はHPで行っているか」「市長交際費はHPで公開しているか」など20項目をポイント化して集計したというものです。勿論、限られた期間・マンパワーで、698もの都市を調査したわけですから、各項目の中身の調査には限界があります。

また同誌の設定した20項目の内で「市の概要」や「くらしの情報」などはどこでもやっているので、同誌自身が述べている通り、比較してもあまり意味がありません(情報の呈示の仕方に優劣はありますが)。


そこで私は、主として「予算・決算」「議会議事録」「市長交際費」「入札」それに独自に「ページの見やすさ」を加え、これらの項目を中心に、ランキング上位のいくつかの都市や近隣の市・区、それに武蔵野市のHPを見てみます。主観が混じることをご容赦願います。

またこの調査には、見落としや誤認なども有り得ます。情報提供やご批判など頂けると有り難いと思います。

なお市長交際費については、別のページ(市長交際費を考える)で詳しく論じていますのでそちらもご覧下さい。

 

 

 横須賀市 (東洋経済ランキング第1位)

1)予算・決算 2)議会議事録 3)市長交際費

4)入札

5)ページの見やすさ

1)H15年度予算、H13年度決算の概要が出ている。

 2)キーワードで検索できないのがマイナスです。H9年分から掲載。

 3)交際費については毎月、項目別に件数と金額、累計を明記してあるだけのシンプルなもの。総支出額は少な目。

4)国の優遇措置を受けて何年も前に始めたということでもあり、充実度は他を圧する。

5)トップページは凝っていて面白いが、慣れないと分かりにくいかも。市長のページへの入口や財政のデータなど見つけづらかった。

 

 

 市川市 (東洋経済ランキング第2位)

1)予算・決算 2)議会議事録 3)市長交際費

4)入札

5)ページの見やすさ

 

1)H9年度予算、H10年度決算から概要が見られる。

 2)独自のソフト?。キーワードで検索できるがやや見づらい。H11年分から掲載。

 3)市長ばかりでなく、市議会議長、教育長などの交際費についても掲載。累計はないが、内容は具体的で支出先も明記。但し、市長、市議会議長からの総支出額は多い。

4)電子入札はやっていないが、入札情報はよく整理されている。H14年分から公開。

5)シンプルだが見通しがよく、目的のページを見つけやすい。

 

 

 岡山市 (東洋経済ランキング第4位)

1)予算・決算 2)議会議事録 3)市長交際費

4)入札

5)ページの見やすさ

 

1)H12年度から財政状況をかなり詳しく報告しています。

 2)本会議のみだが、H7年分以降をキーワードで検索できる。

 3)月別に具体的に記述。累計もあって分かり易い。百歳以上の高齢者の葬儀お供が大部分。固有名詞も明記。総支出額は少ない。

4)H13年分から入札情報を公開。H14年から郵便入札を取り入れ。

5)トップは見やすく、目的を探しやすい。面白く見せる工夫が感じられる。民間シンクタンクの21世紀政策研究所による全国2924の市区町村のホームページランクでも第2位になり、アクセスも非常に多い。しかし以前はサッパリで、評判も悪かったときいている。

 

 

 三鷹市 (東洋経済ランキング第95位)

1)予算・決算 2)議会議事録 3)市長交際費

4)入札

5)ページの見やすさ

×

 

1)H12年度からの予算、H11年度からの決算がかなり詳しくPDFファイルで見られる。

 2)本会議のみだが、H7年分以降をキーワードで検索できる。

 3)HPでは公開していない。

4)H14年分の入札情報を公開。

5)トップ画面はそれなりに整理してあるが、どうもさがし物を見つけにくい。現実のサービスは悪くないが、HPは今一つという感じ。

 

 

 杉並区 (東洋経済ランキング第46位)

1)予算・決算 2)議会議事録 3)市長交際費

4)入札

5)ページの見やすさ

×

×

 

1)H12年度からの予算がかなり詳しくPDFファイルで見られる。職員給与を別に詳しく報告しているのが目新しい。

 2)議事録はHPでは公開していない。

 3)HPでは公開していない。

4)H14年分から入札結果を公開。

5)トップ画面はプルダウンメニューを駆使してスッキリしているが、反面さがし物を見つけにくい。審議会・委員会などの議事録は充実している。

 

 

 武蔵野市(東洋経済ランキング第2位)

1)予算・決算 2)議会議事録 3)市長交際費

4)入札

5)ページの見やすさ

×

 

1)H13年度からの予算、H12年度からの決算がPDFファイルで見られる。ほとんどは市報に載ったものと同じ。バランスシートもある。

 2)H2年8月以降の本会議、常任・特別委員会の議事録がキーワードで検索できる。

 3)入口が判りづらく、資金前渡分・伝票分に分かれて累計もないので把握しにくい。総支出額は非常に多い(特に祝い金)。

4)HPに入札に関する情報はほとんどない。

5)トップ画面の背景は青系統の暗い色で、字も小さく見づらい。全体の見通しも悪い。また市議会のトップページの背景は原色のオレンジ色で、ずっと見ていると目が痛くなる。議事録は充実しているだけに惜しい。

審議会・委員会などの議事録、例規類、各種統計のページのデータはかなり揃っている。特に選挙管理委員会のページには、戦後殆ど全ての武蔵野市に関係する各レベルの選挙結果があり、興味がある人には面白い。例えば戦後各回の都知事選にどんな人が立候補していたか、これを見れば一目瞭然。その他「ムネオハウス」で有名になった佐々木憲昭氏がH5年に東京7区から立候補したことがあることなどもわかる。ついでに旧参議院全国区の選挙結果も載せていただきたい。

 
 

まとめ

   項目を設定して、自治体のホームページを機械的に採点したランキングは一つの目安にはなりますが、これだけが全てではありません。

   まして、「ホームページから見た情報公開度」と「実際の情報公開度(トップや職員の姿勢はどうか、HPでの取組みは遅れていても窓口では進んでいるか、マイナス情報はどこまで公開しているか、形成過程情報の公開度はどうか、など)」の間には距離があるので、ランキング上位とされた自治体が、「ホームページから見た」という前提を抜きに、「情報公開度第○位」というふうにPRすることは誤解を招きやすく、避けてほしいと思います。

   自治体のホームページは、まだ試行錯誤の段階にあるようです。
多様化しているユーザー(市内の人、市外の人、年令、性別、職業・・等々)からどういうニーズがあるのか、現にどういうページにアクセスしているのか、アンケートなり、幅広く市民に参加を求めるなりして、さらに突き詰めて模索して頂きたい。

   目玉となるようなページを作って、ただアクセスを増やせばよいというものではないが、多くの人たちにアクセスしてもらう工夫は必要。

   セキュリティーを確保しながら、投票や入札など、どんどん電子化を進めるという流れがある。一方でこの流れから取り残される人たちをどう救済するのか。

 ありきたりの結論かも知れませんが、「市民と情報を共有する」という不変のテーマを踏まえて、もっと先を行く外国の例などを参考にしながら、より高いレベルを目指してほしいと思います。