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第5章 鉄炭化物気泡の内部構造の形成


5.1節 鉄炭化物気泡の生態系による進化
5.1.a 選択的に消滅させることを伴う生成による膜の進化
  気泡を形成する方法が同じであれば、できる気泡もその配列も似たものになります。
炭酸水に鉄粉を混ぜると気泡が生成されますが、 最初は生れた気泡はすぐに消滅します。しかし、数時間も経過すると、水面に浮遊物や気泡が残るようになります。 気泡が水面に残るようになるまでに時間がかかるのは、安定な泡の膜を作るために必要な分子が合成されるまでに時間がかかると考えられます。 気泡の膜は液体と相違した分子で作られています。水中の気泡の膜は気体と液体の境界であり、分子を2次元的に組織する構造を持っています。 その場所に分散して溶け込んだ分子が2次元的に並んで結びついて膜を構成します。 壊れにくい気泡は外界の変化にも適応した反応をする膜によって壊れにくい気泡が作られます。
 気泡は浮上するにつれて受ける水圧が減少するので、膨長します。気泡の膨張は膜の広さの拡大を伴います。 気泡がその変化に対応できても、水面で泡の膜が大気に触れるので、その大きな変化で初期の気泡は壊れます。 気泡が崩壊する際に気泡で形成された膜の分子の組織もバラバラになります。 時間をかけて安定な泡が作られるようになる事実は、発生と破壊を繰り返すうちに、壊れにくい膜を作る分子 が多く存在することが必要です。

5.1.b 気泡を含むようにして形成された気泡
  盛んに気泡が発生すれば気泡が相互に接触することが起ります。気泡が他の気泡に含見込まれることも起こり、内部に気泡をもつ構造の気泡ができます。一つの膜に包まれて合体した場合には一つの気泡に様々な物質が含まれます。その物質が泡の内部で再配置されます。それぞれの分子の化学的な結合の適応性と 、泡の膜における位置の再配列により、新たな分子が合成されます。 そのような組織である気泡が適者生存という結果を生む自然淘汰の試練を受けてます。泡や膜の分子の進化が生成と消滅が繰り返されることによって進められます。

   
  (a) 2時間43分 経過               (b) 3時間21分 経過
  図28 炭酸水(50cc)に卵殻(CaCO3:5g)と鉄粉(Fe:5g)を入れ密封してできた複雑な気泡

 図28に炭酸水(50cc)に卵殻(CaCO3:5g)と鉄粉(Fe:5g)を入れ密封してできた内部に気泡を持つ構造の気泡を示します。図28の気泡はカルシュウムの存在によってアセチレンが生成され、その分子によって壊れにくい膜ができ、複雑な気泡ができたと考えています。なお、図30(c), 図30(d)に示す場合には、水面に浮遊する鉄炭化物も気泡を作っており、気泡の内部の鉄炭化物が気泡を作ったニ重構造の気泡であると考えられます。




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