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3.2 節 水中における炭素と鉄の電極反応
3.2.a 鉄の電極と炭素の電極を炭酸水に入れてできる電池の特性
 図17(a),(b)にi示すように,炭酸水を電解液に用い,チールウールと備長炭を電極とすると,鉄が陰極で炭素が陽極とする起電力が発生します。これは鉄の原子が炭酸水の酸素で酸化されるので炭酸水の中では酸素イオンが鉄の電極に流れるこみ、外部の電気回路では鉄電極から炭素電極に電子が移動して電流が流れる現象です。
 最初は図17(a)の如く電池の開放電圧は (0.3V)、短絡電流は0.17mAでしたが、鉄の生成物の酸化物が滞留して電極の周りを覆うので開放電圧は低下し短絡電流も減少します。数時間後には図17(b)の如くに変化して、電池の開放電圧は (0.1V)、短絡電流は0.05mAという状態になりました。

        
  (a) 設定直後(0.17mA, 0.3V)  (b) 5時間後 (0.05mA, 0.1V)
図17 電解液に炭酸水,鉄の陰極にスチールウール,備炭極に備長炭を用いた電池


3.2.b 電界を印加して炭酸水中を動くイオン
  水素結合によって水中の水素原子は移動が容易です。水素原子が電子を放出すると電子を持たない原子核だけの陽子(プロトン)となり外部電界によって容易に移動します 。炭酸は弱酸であり、水素イオンが溶液中に多く存在します。炭酸水中では負イオンである水酸基イオンOH-1は移動が容易な水素イオンが結びつくので、炭素電極を用いて電流を流すと主にプロトンが陰極に移動します。陰極から電子を得たプロトンは水素ガスとなって図18に示すように泡を発生します。
 紫外線を照射しながら、24Vで40時間にわたり、電流を流すと陽極は図18に示すように黒くなります。陽極に炭素が付着したのは炭酸イオンが陽極に接し、それが紫外線からエネルギーを受けて炭素電極に炭素が付着したものと考えられます。この電極反応では炭素原子が負イオンとして反応すると考えられます。

        
図18 炭酸水に炭素電極を用いた通電処理による水素ガスの発生 



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