前のページへ
次のページへ
1.2.b 炭酸水に鉄粉を混ぜて生成される気泡の膜内の物質の移動
気泡の膜に捕らえられた固形物は移動します。
図6(a)と
図6(b)を比較するとで中央右よりの固形物が下方に移動しています。この写真は13秒間で起こった変化を示しています。
大きな気泡の上部に透明な部分がありますが、重い固形物が気泡の下部に移動した結果であると考えられます。大きな気泡にはニ重になった膜が見られ、複雑な構造になっています。
また、
図6(a)と
図6(b)の大きな気泡の周辺を比較すると、周辺の気泡が移動したり、合体しています。
(a) 4時間42分36秒後 (b) 4時間42分49秒後 [(a)より13秒後]
図6 気泡の膜内における固形物の移動 [炭酸水に鉄粉を混ぜて生成された気泡]
1.2.c 鉄粉を入れた炭酸水から気泡が発生するしくみ
底に沈んだ鉄粉から気泡が発生して上昇しますが、気泡は水面に到達すると膨長して壊れます。気泡が破裂すると気泡に付着していた固形物が下降します。
上昇する気泡と下降する物体が頻繁に移動していて、そのうちに、ゴツゴツした固形物で覆われた気泡が水面に現れるようになります。水面の固形物にはそれを囲むような物質も見えます。
水面に残った気泡に新たに上昇してきた気泡が付着し、合体して大きな気泡ができます。
水面が浮遊物て覆われるようになると水面に留まり残っている気泡の量が増加します。
[ここをクリックすると動画を見ることができます。] この反応が起こる理由は、炭素が水素と比較して電気陰性度が大きいことによります。つまり、鉄が炭酸水で酸化される時に、鉄の原子と炭素原子と結びついた酸素が結合します。酸化鉄の反応で自由になった炭素原子は電気陰性度が水素原子より小さい鉄原子に結合します。
そこで Fe
3C, 等の鉄炭化物が作り出されて、その鉄炭化物が水と反応します。鉄炭化物は酸化鉄および水素ガスと有機物を生みだすので気泡を作り金属炭化物を伴って水面に浮上します。気泡の膜は2次元的な構造で分子を組織します。水面で急激に気圧が少ななるので多くの気泡は破裂します。しかし、鉄炭化物
により覆われた気泡は破裂せずに水面に残ります。水面の鉄炭化物も気泡も残り、それが新たに浮上してきた気泡の破裂を抑えます。こうして気泡が次々と作られている期間中は気泡が観察できます。
第1章のまとめ
炭酸水に鉄粉を混ぜると気泡が浮上します。その気泡には固体性の粒を伴っています。無機物質から有機物質が作られる証拠の一つとして、ガラス容器のガラス壁には膜が形成されます。
第1章の文献
[2] 唐澤信司、"二酸化炭素を多量に含む海水から鉄による脱酸素反応で生成される有機分子の膜における連鎖反応の組織化"、アストロバイオロジーワークショップ2008,pp.23-24,
2008
-1.4-
目次へ