ジレラ サトゥルノ レイシング
ミニミニエンジン編 2006
このページはApe(エイプ)ベースのエンジンの改造について、2005年の経験を生かし更なるモディファイをするための 考え方の記録をまとめるようにしました。

*内容は淡々と書くためにできるだけ「である」調としました。気を悪くしないで下さい。
尚、本人は偉そうに書いておりますが、結構思い違いがあります。内容の誤り等がありましたら遠慮なく指摘してください。
また、記載の内容は編集者の独断で予告なしに改変する場合があります。

記載の内容は再現性を確認できる最低限の表現としました。あまりにも常識な事は書いておりませんし、 表現しきれない感覚的な部分、ノウハウなどもあり、書いてある事を試しても全ての人が同じような性能を得られるとは限りません。 また、改造に伴うエンジンの損傷や傷害発生についてShin-Gは関知しません。自ら安全性の確認、作り込み、動作確認を行って 頂きたいと思います。


ミニミニ★エンジン編2006 
でも今年は抽選にモレてDE耐には参加できないんですよね〜(2006.3.26)

2005年の反省  
DE耐の特性とエンジンに要求される特性(再び)  
エンジンの目標仕様  
   
クランク  
コンロッド  
ピストン  
シリンダ  
点火系  
キャブレター  
マフラー
クランクケース
カムシャフト 再び
シリンダヘッド 再び

パーツリスト

2005年の反省   

 2005年のDE耐に参戦しては見たものの、様々な問題点が明らかになってきました。 チーム体制、運営、車体造りの問題を除いた場合は以下のような問題が見えてました。

(1) 結果からの反省
 ・設定が最後まで決まらなかった
  走行機会が少ない等あるが、公式練習中に絞れなかったのはマズイ。
  新機軸、ギミック、笑いに凝りすぎ、必要な項目のテストができていなかった。
  新機軸では得るものがあった。(冷却系と空力問題)
 ・100ccでは燃費が悪い
  カムの設定ミスが殆どなのだが、ペースアップするため回転を上げた分だけ燃費は悪化する。
  回転を下げ、フリクションを減らしつつ、パワーを確保する方向でなければ活路は見えにくい。
  時間当たりに消費できる燃料は限られている
 ・遅い
  これはライダーの問題、車体の設定の問題もある。エンジンは排気量の割に速いエンジンである。

(2) エンジンそれ自体の問題 ほか
 ・全体
  フリクションが大きい
 ・冷却系・潤滑系
  もともと8ps前後のエンジン設計であるため、ピストン、ヘッドの冷却能力が低い
  コンロッドスモールエンドの冷却、潤滑が悪くなりやすい(多くは書きません)
 ・ クランクまわり
  クランクベアリングが大きい→XR80用クランクベアリングで解決
  クランクピン径が太い(26mm) 丈夫だがフリクション大 対策を考えるべき
  コンロッドはスモールエンドの強度が不足、ブッシュレスのためカジリ易い(多くは書きません)
  ピストンピンは純正では強度不足(ピストンを交換するから問題は無い)
 ・ヘッド
  DE耐には純正+α程度の流量で充分のようだ
  潤滑・冷却機構が弱いため強化が必要→油冷kit、表面処理で解決可能
 ・キャブレター
  最後は安全牌に落ち着いた
  途中の検証からレース用ではないバイクへの応用ヒントを得ることが出来た
  
 ・点火系
  2005年は時間と労力の都合で取り組めなかった 



DE耐の特性とエンジンに要求される特性(再び)   

要求特性に入る前におさらいをしておきましょう。

燃費の改善
(1) エンジンテクノロジー第35号「二輪エンジンの技術展望」
  この文献をを読むと、

 燃費の改善には、
  ・熱効率の向上(圧縮比UP:11-12程度)
  ・車体の軽量化 
  ・フリクションの低減
 が必要であり、特にフリクションの低減が非常に大きな要素である。  一般にエンジンのフリクションは回転速度の自乗に比例することが知られている。


 と記されています。
 エンジン回転数を低減することでフリクションを低減し、軽い(強度の低い)部品を使い
 パワーと高燃費を確保する、というのが主流になってきているようです。

(2) SUZUKI TECHNICAL REVIEW Vol.24(1988) 「吸気ポート形状とエンジン諸元の最適化による燃費向上」
  同排気量のエンジンにおいて
  全開時では
  ・吸気ポート特性(3−5%)
  ・ピストン頭頂部形状(10%)

 ECE40モード燃費(部分負荷)で比較した場合に  各諸元の燃費への寄与率は、
  ・A/F最適化(28%)
  ・バルブタイミング(18%)
  ・吸気ポート特性(16%)
  ・圧縮比(13%)
  ・ピストン頭頂部形状(10%)
  ・燃焼室スキッシュ(10%)
  ・長時間放電イグニッション(3%)

 となっています。これは100%全開走行時の条件ではないので一概には言えませんが、参考にすることが出来ると思います。


以上を踏まえて仕様を決めていきたいと思います。

要求仕様と加工
項目 数値 備考
ボア あとで決定
ストローク あとで決定
排気量 あとで決定
クランクシャフト径 細く
バルブ INバルブ径  
EXバルブ径  
バルブリフト IN  
EX  
バルブ角 IN(BTDC/ABDC)  
EX(ATDC/BBDC)  
圧縮比 10−11  
冷却系   空油冷
オイル全量オイルクーラー冷却
出力 12hp
@8500rpm
回転数は下げる方向
燃費 34km/リットル
以上
 

クランクシャフト   

クランクシャフトはフリクションに関係するため、使用する条件に合わせた選定をしなければならないと思っています。
使用回転数の上限を10,000rpmと13,000rpmでは必要とされる強度、フリクションのバランスが異なります。今回は比較的回転数が低いため それなりに細めのクランクが使えると考えています。では、どの程度細くできるのでしょうか?

ホンダの二輪レース用機関の出力特性−機関諸元の選定−による計算でギリギリのクランク軸径を求めることが出来ます。 参考にしたエンジンは2RC181です。
このクランクを作成することが出来るのか、耐久性は果たしてどうなのか、 他の実施例(モトメンテRTチームドリーム110など)はどのような耐久性があるのか、 十分チェックが必要です。

クランクバランスは往復部に対して100% 50%付近になるようにしようかと思います。これは振動の出方とベアリングの耐久性に効いてくるので 数パターン作成が必要かもしれません。でも費用が心配ですね。
クランクバランスの計算表を作りましたが自分用です。説明の図が必要なのですが、面倒なので作っていません。
(2006.3.13 計算式修正)


クランクウェブ形状ですが、巷では、円形、三角オムスビ、半円形などありますが、スロットルが開け易く、 トータルのエネルギーロスが少ない形は何でしょうか。
 ヒント:12,000rpmで回転する外径100mmのクランクウェブの周速度は62.8m/s=226km/hです。
     空気抵抗=前面投影面積/2×Cd値×速度の2乗×空気の密度

空気抵抗を考えると、少なくとも単純なオムスビ形ではなさそうですね。前面投影面積かCdを小さく、速度も小さく、 必要な慣性モ−メントは確保する、というクランクにしておかなければならないでしょう。

項目 記号 数値 単位 算出部分 質量値 単位
クランクの比重 ρ g/mm3 *実測で求める必要有
0.0072〜0.00785
   
クランクストローク Ls [mm]      
クランクウェブ
外径
Dweb [mm] (1)クランクウェイト [g]
ウェイト部厚さ Depw [mm]
ウェイト部内側
肉抜き半径
Rwn [mm]
クランクピン穴径 Dcp [mm] (2)クランクピン周辺部 [g]
クランクピン固定
周囲径
Dcpn [mm]
クランクピン固定
周囲厚さ
Depcpn [mm]
クランクピン長 Lcp [mm]
クランクピン中央部長 Lcpc [mm]
その他の肉抜き容積 Vetc [cc] (3)ピン側肉抜き [g]
クランクピン質量 Mcp [g] (4)コンロッド大端部
  +クランクピン
[g]
大端ベアリング質量 Mbe [g]
コンロッド大端質量 Mcbend [g]
  回転部分(1)〜(4)
クランクピン上の質量
[g]
コンロッド小端質量 Mcsend [g] 往復部分の質量 [g]
ピストン質量 Mpiston [g]
ピストンピン質量 Mppin [g]
   バランス率(%)
回転部/往復部
[%] 



クランクストロークとピストン位置 (2006.5.20)
クランクのストローク長の変化によって、クランク角に対するピストン位置がどのように変化するか、 また、シリンダ容積はどのように変化するかを考えてみます。

クランク角Θとピストン位置P(Θ)、クランク半径rc、コンロッド長Lcの関係の図
piston_position

式でP(Θ)を式で書くとこのようになります。
piston_position_ex

この式を使って、ショートストロークの場合とロングストロークの場合の、 シリンダ全容積に対する行程容積変化をクランク角を横軸にグラフ化してみると・・・・
 条件は
 ・上死点の位置は変えない(ロングストロークのときはコンロッドが短い)
 ・排気量差は極力無くす

piston_position_graph1
(ショートストローク:CV1、ロングストローク:CV2)
・・・・よく判りませんね。
クランク角180度から240度まで拡大してみます。
piston_position_graph2

ショートストローク(=ロングコンロッド)のCV1の容積変化はロングストローク(ショートコンロッド)CV2より工程中の容積が小さいですね。 容積の差は流入ガスの速度の差となること、 また、ショートコンロッドはコンロッドとシリンダ壁とのなす角度が大きくなり、全体のフリクションが増える方向になります。
フリクションが多いということは高回転では不利ということです。 低回転ではショートコンロッドのメリットを生かすことが出来るかもしれませんが、 排気量が小さく制限された場合どうなるでしょうか・・・・

コンロッド   

コンロッドやベアリング、クランクピンは出来るだけ流用して済ませようと思いましたが、寸法がどうしても合いません。
1本試しに作ってみましょうか? 費用見込みは10万円+αです。
発注先は内緒ですよ。出来上がったら耐久性のテストで半年位酷使する必要があります。

次の表はホンダのある機種用のクランクピンとベアリングのクリアランスの関係を示します。
ベアリング寸法の差分は実測値です。
詳しい説明は省きます。赤色ベアリングはクリアランスが狭いようです。

上:ロッド−ピン差分
中:ベアリング差分
下:トータル隙間
ピン径の誤差範囲 単位[mm]

-0.002〜0.001

0.001〜0.004

0.004〜0.007

0.007〜0.010

0.010〜0.013











-0.002〜0.001
-0.003〜0.003
-0.013
0.010〜0.016
-0.006〜0.000
-0.017
0.010〜0.017
     

0.001〜0.004
0.000〜0.006
-0.005
0.005〜0.011
-0.003〜0.003
-0.013
0.010〜0.016
-0.006〜0.000
-0.017
0.010〜0.017
   

0.004〜0.007
  0.000〜0.006
-0.005
0.005〜0.011
-0.003〜0.003
-0.013
0.010〜0.016
-0.006〜0.000
-0.017
0.010〜0.017
 

0.007〜0.010
    0.000〜0.006
-0.005
0.005〜0.011
-0.003〜0.003
-0.013
0.010〜0.016
-0.006〜0.000
-0.017
0.010〜0.017

0.010〜0.013
      0.000〜0.006
-0.005
0.005〜0.011
-0.003〜0.003
-0.013
0.010〜0.016

また別の、あるメーカのある純正部品ベアリングの寸法差分は、-0.015mmだった。 ローラーベアリングタイプの大端のクリアランスはこの程度なのだろうか?

web上で漁ってみたところ、出てきました。NTNのコネクティングロッド用保持器付針状ころ(pdf:260KB)です。大体そんな数値のようですね。


ピストン   

ピストンはφ57mmのもので、KまたはT社のものが入手が容易ですね。シリンダーも豊富です。
ピストンの熱変形とシリンダの磨耗が心配ですが・・・・・


シリンダ   

シリンダはオールアルミか鋳鉄なら丈夫なスリーブを使いたいですね。
間違っても安売りシリンダは買えません。良い話を聞いたことがありませんね。
では何を使うか?国産ではないのは確かです。自分で調べてみてください。
・・・・と豪語するも、安さと入手性に惹かれて購入してしまいました。OTL

カムチェーンテンショナも接触面積が多く抵抗になりそうです。ここも一工夫、二工夫して見直さなければならないでしょう。

クランクケース   

クランクケースはヤフオクで入手したエイプ50のものを使います。
基本的には2005年のものと同じですが、ブリーザ部分は手をつけずにワンウェイ部分は外部に追い出します。
ピストンクーラは必須装備です。安心・安全をモットーとする私としてはこれは外せません。



カムシャフト 再び   

新たなカムを入れて再度掲載します。
カム タイミング
IN:開/閉,リフト
タイミング
EX:開/閉,リフト
トルク低下
回転数[rpm]
備考
1 Ape100 10/35,6.0
(CL102.5°)
40/5,5.8
(CL107.5°)
6500〜7000 オールマイティー
8/37,38/7でバッチリ
2 XR80 8/40,6.2
(CL?°)
40/8,6.0
(CL?°)
9000〜9500 これさえあれば他は要らない!
身と免許の危険を感じるカム
4 ヨシムラst1 9/39,6.4
(CL105°)
-規定値で実測-
7/37,6.3
(CL107°)
41/11,6.5
(CL105°)
-規定値で実測-
41/11,6.45
(CL104.5°)
9500〜10000 リフトで流量を稼ぐ方向、ノーマルヘッドには不向き
IN側クリアランスを狭くすると良いタイミングになる
5 武川s-stage 10/45
2005カタログでは
10/45,6.5
(CL?°)
45/10
2005カタログでは
47/7,6.5
(CL?°)
9500〜10000  
6 KITACO
ハイカム
10/40,?
(CL?°)
40/10,?
(CL?°)
9000〜9500 カタログ記載値、XR80とほぼ同じ
7 KITACO
SPLカム
8/42,6.9
2006カタログでは
12/40,?
(CL?°)
33/8,6.7
2006カタログでは
42/10,?
(CL?°)
9500〜10000? EX側開きランプ角度が大(>30°)1mmリフトでは判らない。
40°相当か?
8 DAYTONA
ハイカム
8/40,6.1
(CL106°)
40/8,5.9
(CL106°)
9000〜9500 XR80と全く同じ
シャフトのスプロケットねじ加工付近にバリあり要修正

排気量でトルク低下回転数は変わるので参考です。

カムのリフトカーブを測定しました。測定方法により変化するため、あくまでも参考値です。
cam_lift1

このリフトカーブを回転角(=時間)で2回微分するとバルブの往復運動時の加速度になります。
バルブスプリングの決定には、この加速度がどのくらいになるか判っている必要があります。 バルブスプリングの張力(k)と動弁系の各パラメーターとの関係は大まかに下のような関係になると思います。
リフト(L)と加速度(a)、動弁系質量(m)、動弁系摩擦抵抗(Fd)として

   スプリング張力 F=k・L・・・・・(1)式
   力と加速度の関係 F=m・a・・・・・(2)式

スプリングの張力が生み出せる加速度(1)式はカムの加速度(2)式以上である必要があるから リフト中にバルブジャンプしない条件は

   k・L>m・a ・・・・・・・(3-1)式

実際には摩擦力Fdがあり、スプリングの力を奪うため、(3-1)式は次のようになります。
   k・L−Fd>m・a ・・・・・・・(3-2)式

更に整理すると
   (k・L−Fd)/m>a ・・・・・・・(4)式

下のグラフは(4)式の左の項である張力とリフトからなる許容加速度(ピンクと青)、バルブリフトカーブからの加速度(薄い青、黄色)です。 加速度が許容加速度以内であれば問題は発生しませんが、超えるようならバルブジャンプを起こしますね。
超えないように各パラメータを決定していきます。

スプリングの選定もさることながら、プリロード張力も重要になってきます。 あまりプリロード下げるとバルブジャンプが起きたときにバルブシートと衝突したバルブが跳ねてしまったり、 摩擦力Fdが無視できない部分では許容加速度が小さくなるため、カムの加速度との間の余裕が減少します。

cam_accel1

さて、どのようにしましょうか?
少なくとも、ノーマル並みの耐久力を持たせる必要があります。 ノーマルヘッドに武川s-stageを入れるとカムホルダ、カムジャーナルがカジってガタガタになってしまいます。 ヨシムラST-1ではカジらないので、材質・表面処理も含めてある一線がそこに存在しているようです。

バルブ周りの質量測定

電子天秤を購入したので真面目にバルブ周りの質量を測定します。個人の趣味でこんな物持っている人は廃人級の馬鹿です。
要素 項目 質量(単体)
[g]
等価質量
[g]
組合せ
ノーマル
組合せ
備考
1 リテーナ ノーマル 6.7 6.7    
2 チタン 5.0 5.0    
3 コッター ノーマル 1.2 1.2  
4 バルブ
(IN)
ノーマル 22.0 22.0    
5 KITACO 20.0 20.0    
6 バルブ
(EX)
ノーマル 21.0 21.0      
7 KITACO 20.0 20.0      
8 スプリング
(IN)
ノーマル 12.4 4.1    
9 12.4 4.1    
10 スプリング
(OUT)
ノーマル 21.2 7.1    
11 21.2 7.1    
12 ロッカーアーム ノーマル 38.7 15    
13 KITACO 30.6 11    
14 アジャストナット ノーマル 1.5 1.5    
15 KITACO 0.6 0.6    
16 アジャストスクリュー ノーマル 2.2 2.2    
17 KITACO 2.2 2.2    
18 61.8 51.2  


元々の等価質量が小さいので劇的な変化は期待できませんがとにかく軽い部品を使って組む事で軽量化を図ります。 6gで10%の軽量化になるようです。
軽量化はバルブスプリングの張力を落とせること、カムのリフト加速度に伴うカム軸受け荷重の減少の両方に効いてきます。


ヘッドの流れ易さについてカムとヘッドの違いを見る 2007.7.9

記事として半年以上遅れました。これだけは残しておきたいと思います。
だいたいカムのリフトも測定したところで、今度はヘッドのインテーク側流量、 カムを替えたときのヘッドの流れ易さについて考えてみましょう。

クランク角に対するカムリフト量とバルブリフトに対するヘッドの流量グラフを重ねて、 クランク角に対するヘッドの流量のグラフを作成します。
ヘッドは前に測定した、ノーマルヘッド、改造ヘッド1のウェストバルブ版、改造ヘッド1のノーマルバルブ版、 改造ヘッド2のウェストバルブ版です。流量のグラフは下のグラフを使います。(値は多少異なります)
image/mini/ape_flow_head2.jpg

まずはノーマルヘッド
ape_cam_flow_normal.gif

改造ヘッド1 ノーマルバルブ(ヘッドのグラフではseat_CB)
ape_cam_flow_head1_normal.gif

改造ヘッド1 ウェストバルブ(ヘッドのグラフではseat_weist)
ape_cam_flow_head1_weist.gif

改造ヘッド2 ウェストバルブ(ヘッドのグラフではhead2_weist)
ape_cam_flow_head2_weist.gif

ノーマルヘッド以外は微妙な差ですね。head2のほうが高リフト時の流量の低下が無くなりますが、 キタコのSPLカム以外では影響なしです。
ピーク流量よりも流れる時間に着目が必要です。カムの特性は大まかに以下のように分けることができます。
(1)XR80系(XR30/ヨシムラst1/デイトナst1)
(2)タケガワSStage
(3)キタコSPL

キタコSPLは開き始めのリフトが大きいですが、 この時期は流量が小さいためにこのヘッドでは開くだけ無駄ということもあります。
XR80系はノーマルヘッドでは開閉タイミングがほぼ一緒なので差はありません。 高リフト時の流量があるhead1,2で違いが少し出るか出ないかの程度です。
タケガワSSsageは開いている時間が長い(閉じタイミングが遅い)のとリフト量があるので ノーマルヘッドでもhead1,2でも違いが出ます。 閉じタイミングが遅いと高回転での充填効率が良くなる傾向がありますが、低中回転では実効圧縮比が小さくなる分 トルクが痩せる傾向があります。

これからチューニングメニューを考えると、
 街乗り:断然XR80系カム、ヘッドに対する負担が小さい割にそこそこパンチあり
 改造ヘッド使用:タケガワSStage、リフトが大きいのでバルブスプリングの見直しや軽量化が必要
          スプリングは張力を上げるばかりが能ではないです。
 バルブ径が大きなヘッド:キタコSPLや専用カム、専用パーツか「それなり」に考えています
          100%安全ではありません。
のように思います。

シリンダヘッド 再び 2007.10.29   

前回(2005年度)ではフローベンチを使ってポート加工をしていましたが、フローデータとパワーとの関係について考えたいと思います。

フローベンチの流量とパワーはある関係が確認されています。ただし、すべての場合において成立するわけではなく、 適正なポート容積(=ポート内流速)が保たれていることが前提と思われます。
では、どんな関係でしょうか。
http://www.highperformancepontiac.com/tech/0210hpp_cylinder_head_flow_testing/index.html PONTIACのチューニングでフローベンチ関連のページ にあるグラフをもと、排気量・測定圧力を入力すれば回転数-フロー量の関係、さらに回転数と後輪出力パワーの関係が得られるようにに整理しました。 ヘッドが出すのはピストン出力パワーのため、後輪パワーを算出するにあたり損失馬力をある想定の値にして計算しています。 次に上げるグラフは排気量したを100ccと125ccにしたものです。

測定条件は20℃、1気圧、流量測定圧力は5000[Pa](=20.1インチ)です。

(1)100ccの場合
power_N_flow_100cc.gif
power_N_power_100cc.gif

(2)125ccの場合
power_N_flow_125cc.gif
power_N_power_125cc.gif

ヘッド流量と書いていますが、ヘッド+キャブ合わせた流量です。
Q=√{(ヘッド流量)−2+(キャブ流量)−2−1

ヘッド流量=50〜55[CFM]、キャブ流量=74[CFM]とした場合、Q=41〜44[CFM]です。
100ccの場合、流量に対応する回転数は10000rpmちょい手前、その回転数の出力は10-11psです。
実測では、どうでしょうか。

ape_power1_s

125ccの場合、流量に対応する回転数は8000rpmちょい手前、その回転数の出力は11-11.5psです。
実測では、どうでしょうか。
image/mini/power_ape124_0709

100cc、125ccともにドンピシャです。・・・・・・・当然です。そうなるようにロス馬力を計算させているからです。
グラフのパワーが合うことが重要ではなくて、同じヘッドで、同じピストン出力でありながら後輪出力では1ps近い差が出ている、ということです。
原因は言うまでも無くフリクションです。フリクションは回転数の2乗で増加するので回転数を下げることができれば後輪出力は増加します。


追記 2007.11.6
エンジン出力は「ほぼ」、ヘッドとキャブレターの合成した空気の流量で決まるといえます。「ほぼ」と書いたのは、これ以外にも燃焼速度や点火時期などの要素があるためです。
特段の工夫がない限り、燃焼速度は向上しないし点火時期も運転状態に合わせて注意深く設定しなければベストの出力を得ることは難しいのです。
さて、どのくらいのピストンの出力になるのでしょうか。
ピストン出力をPOWER-p(ps)、
排気量をV(cc)、
回転数をN(rpm)、
ヘッドの流量測定圧力をP(in-aq)、
ヘッドの流量をQp(CFM)
としたときのPOWER-p(ps)は、
Power-p(ps)=(25(in-aq)/P(in-aq))1/2・120/440・Qp(CFM)/1.01387  ・・・・・(1)式

また、排気量と回転数によるピストン出力をPOWER-p(ps)は、
Power-p(ps)=120/440・550/10000・V(cc)/1147.1・N(rpm)/1.01387  ・・・・・・(2)式

ヘッドが出せる最大出力は(1)式となるため、排気量を変えたときの最大出力の回転数は、(1)式=(2)式で求めることができる。
(25(in-aq)/P(in-aq))1/2・1147.1・10000/550・Qp(CFM)=V(cc)・N(rpm)  ・・・・・(3)式


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