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1998年7月13日               竜星戦二次予選 
黒)林海峯九段 対 白)下地玄昭六段
     第三譜 (完)                      
1図(1-2) 
  第三譜 (黒1~白92まで)

黒1コスミは後に下辺への削減に役立つので
小さくないが、上辺白2は25~30目の現ナマ。

そこに回れて嬉しかったです。

黒は作戦の岐路。

参考図1   
  参考図1

黒1の手入れなら白2で囲い合い勝負となる。

黒3~白6が相場でしょうか。

細かそうに見えます。
 
2図(3- )   
  黒3ツケで削減に来られました。

前の黒1を活用するための仕掛けで当然と言えます。

ここで参考図2
参考図2   
  白1下ハネは黒2が名調子。

下に地を作りにいくと黒▲を動き出されるのが心配です。

3図(4-15)  
  白10は捨て石。一子差し上げますから「黒三子動かないで。」とのメッセージ。

しかし黒15までの進行は下辺を易々と破られ辛かった。

他に良い打ち方はなかったものか。

黒15は実戦的好手。ポン抜きよりも白地を作りにくくしています。
4図(16-18)   
   白16打ち込みは必死の突入。

下辺のお返しせねばを勝負にならない。

他にも候補があるが左上を荒らすために活用と考えていました。

土足で踏み込まれたので黒17は当然。


参考図3   
  参考図3

黒1遮りにどうするか当時ヨンでいたはず。

今なら白2や4を組み合わせ白6と打ちそう。

これは一例ですがどこかは手にはなると思います。

左辺を凝視していたら・・・
5図(19-21)   
  黒21。

10人いたら10人は白18に何か対応されるはず。

そこを放置して左下の白へ食いつく手です。

【手抜きして相手に手を渡し委ねる】 その発想に超一流の懐の広さを体感しました。

参考図4  
  参考図4

気合の白1連打は黒2で白△一団を攻められます。

白aは自然死になるでしょう。
6図(22- )   
  なので隅のハイを選びました。

黒が受けるのは参考図5;
参考図5   
  白2と手入れして万全にします。

黒3に今度は白4、6と手をつける。

これは黒嫌でしょう。
 7図(23-31)  
  黒23は急所。受けに困るきつい手です。

黒31までの結果を判断します。

黒の主張:左下から辺の黒が固まって白16を完全に取り切った姿と黒23からの断点狙いが残り満足と主張しています。

白の主張:先手で左下の白を生きて左辺削減に回れるのでやれる。

つまりこのワカレは『両者とも自信あり』。
皆さんはどちらの主張に賛同するでしょうか。

さて先手を握った白ですが・・・

参考図6  
  参考図6

白1、3と軽くキカシて白5と戻すぐらいでどうでしょう。

地合いは≪黒地≫は大きい順に左下25目、左上は白a、黒bと見て12目、右下と右上足して18目、下辺から上は8目、合計63目くらい。

≪白地≫右上から中は約40目、右下13目、左下7目、合計60目。
ただし×の借金が白マイナス5目くらいあると考えます。

この図は良い勝負ですが。少し白持ちかもしれない。

8図(32-42)   
  白32~黒35は味を無くし分断も消えていないので悪い。

頑張らねばとの白36ツケ。

黒39は冷静な一手。

白42に対し参考図7:
参考図7  
  黒1の分断が良かったと思います。

白△を助けたいが、白aは黒bとされ白イに黒cで駄目。

白イ、黒ロ、白ハの筋も黒aと抵抗されうまくいきません。

隅を生きても白△をまるまる取られたら失敗でした。

9図(43-46)   
  黒43オサエには白44、46の筋があります。

白の意図は・・・参考図8:
参考図8  
  黒1、3と二子を捨てて白4連絡がヨミ筋。

イとロが見合いで白△を助けながら生きています。
10図(47-51 )   
   林先生は黒47と連絡を拒否されたのですが隅に味があります。

黒51のノビたときに参考図9:
 参考図  
  白1が本手。

黒aは利きません。

黒2切りなら白4子は捨てて白5~7とはみ出し左辺の黒地が痛む。

今は黒2と切りにくい。
11図(52-63)   
   白52に「許さん。」と黒53~59の反撃。当然です。

白60と頑張ってみたものの黒63とされ上下の分断が見合い。

無理を咎められました。


12図(64-69)   
   白66と戻すしかなく結果69まで白大損。

ここで気を取り直して・・・
参考図10   
   参考図10:

左上白5の手入れぐらい。

黒8まで少し黒良いと思うが、一応ヨセ勝負です。
13図(70- )   
   白70は本来敗着になるべき手。
参考図11   
  参考図11

黒1ツケで眼を奪う手が成立したと思います。

白2~8と広げても黒9で中手。

白aには黒b外しで連絡出来ない。

黒一団が眼が無くなって攻め合いになれば別ですが・・・・黒イが詰まり白ロが必要なら黒ハ連絡が生じます。

黒は今がチャンスでした。
14図(71-72)   
   左上黒71と林先生が打った場面をうっすらと覚えています。

残り1分の秒読みに追われて慌てて打たれました。

白72が用意の筋で・・・

参考図12   
   参考図12

黒1は白2でコウになるが白のコウ立てが多いので無理。
15図(73-76)   
  白74と生きて助かりました。

それでも形勢は黒わずかに良いと思います。



白76と受けたとき、参考図13:

参考図13   
  黒1から全部平易にヨセて黒17が最後の
大ヨセ。

微細だと思います。
16図(77-80)   
  黒77は鋭いヨセです。

白78受けは仕方ない。

白80に対し参考図14:
 参考図14  
  あっさり黒1、白2を決めて黒3のヨセは如何。

白4は仕方なく黒5、7の手順で連絡します。

白8、黒9から白10が最大。

この図も微細。
17図(81-86)   
  黒81は先手で中をヨセようというものですが
敗着かもしれません。

白82、84は先手。少し得しました。

そこで白86が勝着。白四子奪還を見ています。

参考図15   
  参考図15

黒1なら白△確保だが白2~6までぴったり。

これでは黒×が持ち込みになり黒負け。
18図(87- )   
  黒87は勝負手。

対し参考図16:
参考図16   
  白1と受けたら黒2と戻され白3~7と応じると黒8で参ります。

▲が効いていますね。
 19図(88-90)  
  白88、黒89は損なしと考え白90。

この手を打った映像と「勝ったかも・・・」と感じたことは今でも覚えています。


参考図17   
  参考図17

黒1切りは白2まで。白△が効いています。
20図(91-92)   
  白92と奪還した利益は20目。

中の白地が破れた損はそこまで至りません。

◎この後、42手ヨセたところで林先生が投了されました。

とても嬉しかったです。


第三譜はここまで。


最後までお付き合い下さり有難うございました。

参考にしたい方は手順のみですが総譜をご覧になって下さい。



総譜(黒1-白216まで)   棋譜KiinEditor
   
白216手まで  白・中押し勝ち


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