紙本水墨。 昭和46年。 1幅。 縦135cm 横33.5cm
竹の幹が地面から天空に向かって勢い良く伸びている姿を画面の下から上に向かって筆を伸ばして描写しています。節の個所では筆を止め次の節まで勢い良く筆を運んでいる筆速が画面に表現されています。笹の部分も勢い良く描かれています、構成も密でなく微風を感じる構成で纏められています。画面は薄い墨色の濃淡で清潔感があります。竹には古来から日本人が好んできた風雅の精神と単純で素朴な形態を求めた宗教画の趣があるようです。
竹の図柄の水墨画を描く時には、同じ寸法の和紙に何枚も描きます、形を変えたり墨の濃淡を違えたりして描き、其の内で一番能いと認めた一枚を完成作品として残します。
しかし他の作品は決して劣る作品ではではないのです、故にこうして描かれて残された作品が数点残っています。同じような作品が現存するのはこうした制作課程に因るものです。
下壇の二曲屏風は若竹の清純な高貴さを象徴した描画です。中平先生宅の襖絵を屏風に仕立てた作品です。
作品を創造するのが作家ですが、作品が作家の手を離れたら、その時から作品は作品の運命を歩みます。
竹は線を一息で描かなければなりません。腹の底に力を入れて、決して手先だけでは描けません。
美は理屈では解りません。花は美しいから美しいのではありません。ただ美しいのです、無目的無心に美しいのです。無邪気さです、感覚で美を押える事です。
立派な天才の才能と自分を比べて悲観してはいけません。自分の宿命を自覚し真実の姿(個性)を掴むのです。