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雀之図 すずめのず


KISEI  YUKARIHANA    MUSEUM  OF  ART  
  


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紙本木版淡彩色紙。 昭和57年。 1葉。 縦27cm 横24cm。


















紅葉の枝に止る一羽の雀が下を窺っています。小さな確りとした足で枝を掴んでいる雀の描写は見事です。 紅葉の枝、薄く透明感のある墨色の葉並びが軽快に配され自然な雀と紅葉が美しい調和と共生の姿として構成された心穏やかな光景です。
作者は茶室の天窓に群がって遊び戯れる雀の姿を観上げる事が好きでした。無邪気で元気な生命に満ちた一時が昨日も明日ない仕合せな住時を偲ばれます。墨画の雀は気の向くまま半紙(b4サイズ)に描いた「筆すさび」の一枚です。角に押印しある描画は作者の認定したものです。



生死無常感こそ矛盾です。この矛盾を、人間的愛情による調和の上に処理する事が知性だと思うのです。「源氏物語」はこの精神に貫かれています。人は死という事によって、生を強く知る事が出来ます。幸福である時に、不幸にならないように祈り、不幸である時に幸福を願うのです。この時に無常という事を知る事が出来ます。

どうして人生を生きるのか解らない時、その矛盾の中にはっきりと自己を自覚する事が 悟りであり、その場所が彼岸です 。

美は理屈では解りません。花は美しいから美しいのではありません。ただ美しいのです、無目的無心に美しいのです。無邪気さです。これがカント美学の本質です、感覚で美を観る事です。