昭和56年。1口。高16cm。口径14cm。 
筒状の水指に蘭の細い葉を自在に伸びやかに沢山描写しています。線描の速筆で濃淡の画面にリズム感が在ります。確りした葉元の纏まりも見事です。
陶器は高温で焼成される生成過程を経て釜の中から出される迄器の完成した形状を確乎と認識出来ないものです。炎の中を潜り抜ける制作過程の試練を経た陶器には強靭な生命力と独特の感触が在ります。
陶器そのものも経年による風化とも云える変化により雅味が増す事もあります。数年、数百年と経年した器が観る人に更なる美的感動を与える事にも成っています。
我が国では四季の移り変わりが生活に大切な習慣として有ります。四季の変化を五節句として季節感を祝い喜ぶ行事に伝統的な 美意識を感じます。茶を味わい戴く時には季節の移ろいを茶の味わいとしています。節句には観たり聴いたりする時と侘しさ寂しさを意識する処を得たいものです。
紀貫之が女性の気持ちになって「土佐日記」を書いた事は、女性の優しさが美を表現するものだと思います。美しい事は優しい心です。
川の流れの表面は静かでも、川底は複雑に渦巻いています。芸術もその底に触れないと 深いものが理解出来ません。
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