紙本水墨淡彩色紙。 昭和56年。 1葉。 縦27cm 横24cm。
画面の蘭は地面より細長く書かれた葉の流麗な曲線と花弁には優雅で無心な品格があります。自然な山野に人知れず咲いている蘭は姿が優美な草花です。蘭、梅、菊、竹が四君と称えられ水墨画の画題として古来より数多く描かれています。山野に生息する蘭の葉は細長く、小さく花弁も可愛く愛しいものです。四君子は古来より数多くの作品が残されていますが、現存する優品は少ないようです。 作者も他の画題を描く場合にも先ず蘭を描いて自分の腕の調子を整える事がありました。
作品を創造するのが作家ですが、作品が作家の手を離れたら、その時から作品は作品の運命を歩みます。 生死無常の情感こそ矛盾です。この矛盾を、人間的愛情による調和の上に処理する事こそ知性だと思うのです。人は死という事によって、生を強く知る事が出来ます。仕合(シアワセ)である時に、不仕合にならないように祈り、不仕合である時に仕合を願うのです。この時に無常という事を知る事が出来ます。
優れた芸術的作品は余程周囲の理解がないと育つものではありません。
学問を学び修めて、次に自ずから出るものが知性です。
人生で不幸である人が幸福な真実を自覚する事があります。不幸を知らない人は幸福も自覚出来ません。不幸を知らない人は不幸です。