平成2年。1口。高16cm。口径14cm。底径8cm。
菊の茎から左右に生えた葉端の葉脈を強く濃い線で描き先端に大きな花弁を際立たせて判然と描写しています。菊花の秋に清水を讃えた水指は一碗の茶を味わう茶室の風雅な状景として置きたいものです。
現代の家庭生活はテーブルに椅子が普通ですが、畳を敷いた座敷に座ると いう事は稀な事でしょう。点茶して戴く時は矢張り端座(正座)すると 一味違うものです,心が沈静する風味が有ります。美味しく戴くには処と時を
得たいものです。薄明かりの静かな部屋で独り又は数人で会話して 戴く茶に無上の時を得る有り難いものです。
悲しみが知識を得るのです。決して知識が悲しみを生むものではありません。
茶は、大自然と人間の調和した姿です。静寂の中にはっきりと自分を自覚するものです。其処には善悪も、増減もない、心安らかな一時の今を得るのです。
文学を読み、話を知る事が文学性ではありません。文学を読んで味わい、文学の中に人間の善意に満ちた、祈りと願いが、動作になって現れる(感動)事、これが文学性です。
自然の中に一つの心が生まれ、和があって、そこに自然に生まれて来るものが「民芸」だと思います。
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