菊は古来より日本人に鑑賞用として親しまれた花です。描かれた大輪の菊は 茎が勢いよく伸びて花弁が沢山行儀良く並んでいます。葉は薄絹のような葉表に濃淡の形状、繊細な描写で曲線を描く茎の構成に植物の生命力を感じます。
この作品以外でも共通している事は、画面構成です。自然に在る以上に美しい構図として作者が構成する事で洗練された美しい作品とし表現されています。
菊の花には清麗な高貴があり、 愛でる風習は古来から有るようです。菊には稔りの秋を象徴する文化的な意味合いを感じます。
皇室の御紋章も菊花で勲章も菊花章が最高の勲位だそうです。
作品を創造するのが作家ですが、作品が作家の手を離れたら、その時から作品は作品の運命を歩みます。
「ありのまま」では芸術作品にはなりません、自然を芸術的感覚で再構成して作品にしています。 素顔に化粧して「美しい顔」となるのです。芸術とは、「写生」ではなく「写実」で、花が華と咲く事に花の願いと祝福があります。
喜びにも悲しみにも美は我々の不断の友ある。美は我々の生涯に栄光を斎(モタラ)し永遠の光を知らしむるものである。美の教養は先ず物を見ることである。物が見えることである。その眼を養うことである。眼が物の内なる性格に触れることで、眼が物を食べるように見えてくるのである。見る眼を養うと云うは、諸事を学ぶにつれて謙譲となる事。謙譲な無私は美意を成就するに至り、そこに知性の豊かな稔が身に付くのである。