翡翠 かわせみ之図 茶碗
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KISEI  YUKARIHANA    MUSEUM  OF  ART    ;


表紙
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精選作品目録 絵付け陶器作品目録 編者  











昭和50年。 1口。 高8cm。 口径13cm 底径5.5cm







優れた才能ある画家が茶器である茶碗の側面に水墨画の技法で描写しています。素焼きの陶器は吸取紙の様に瞬時に水分を吸い上げます、素早い筆勢でないと描けない難しい技です。 茶碗の側面の僅かな空間に流水の波線、翡翠の形態、岸辺に生える葦の曲線が見事に描写されています。翡翠は作者が描き慣れた画材です、流麗にして軽妙な筆致です。
描写されている翡翠は宝石のような綺麗な青緑の羽色、長く鋭い嘴(クチバシ)、鋭い眼光で水辺の葦の茎止まり川面を見詰めている姿です。葦の茎に止まる小鳥と川波に軽快な微風を感じる筆勢です。翡翠の群れず孤独に生息する姿は孤高に人生を思考する作者の心境に通じるものでしょう。
茶器は土佐藩に江戸時代から伝承された尾土焼の陶器です。地肌が黄土色で描画に適した素材でした。絵付けをする事は、筆に含ませた呉須(藍色の顔料、上薬) で素焼きに描写します。素焼き茶器は吸い取り紙のように呉須を吸い取るので速筆で描写しないと線分が分厚くなり繊細な描写は至難の技能を要します。開示してある茶器には山水、花鳥の水墨画を彷彿さす描写で見処となっています
優れた茶碗で茶を戴くという事は、心身が清められ静寂虚心な至福の時を得るものです。両手で戴く名器の感触は格別です。



「ものに殉ずる心 」この事に徹する事が、芸の心が解るという事です。理屈ではない無私の世界です。

室内の空気が寂(シン)となって緊張しないと茶は点つものではありません。その為には心を統一する訓練をしなくてはなりません。

今日の会席に、私は生命を懸けています。この一時こそが、素晴らしい芸術作品そのもので、形なき夢の本当の現実の一時です。



茶では一期一会と云う事があります。全ての人間が夢の中に生かされていると云う尊さを味はなくてはなりません。