紙本水墨画。 昭和55年。 1葉。 縦24cm 横33cm。
色紙の菖蒲は花弁、茎、葉の色彩は絵具に必ず墨を混ぜ、筆の穂先にも濃淡を含ませ、 筆速を変えて描いています。細長く自在に伸びた葉の細い面に数本の葉脈を真っ直ぐ下から上に鮮やか
的確に線描しています。
水墨画は鮮やかな筆勢と筆致が伺える優美な菖蒲の水墨画です。画面の下部から上部に描いた剣状の葉っぱが左右の中空に伸長した造花の神秘的な構成力を観じます。鮮やかな紫の薄く広がった花弁に瑞々しさが有り、小さく尖った蕾が愛しく在ります。
草地に自生する瑞々しい菖蒲の花弁が照り輝く陽光に透かされ見える様です。薄い透明感ある薄い藍色の花弁には梅雨時に心慰める潤いを感じます。
梅雨時の雨空に開花する菖蒲を束ねて端午の節句の頃に軒先に吊され邪気を祓う縁起が昔から行われている事は珍しい風習です。
作者は何時も描画や揮毫する時は筆の末端を軽く持って画面に垂直に肘を操作していました。姿勢は正座で常時背筋を伸ばし,歩行する時も軽快で健脚でした。
今咲きかけようとしている、この菖蒲の花の中には、やがて咲いて枯れゆく花の哀れさがあります。
彼岸とは永遠の生命を得る事、大往生、大安楽の境地です。生きているこの世の彼岸なのです。
知識が知恵になり、知恵が魂を得る、これが真実だと思います。
実朝の歌は、情緒的で深い人間性、弱い人間が表現されています。天才的な歌人ですね。 実朝の運命は現在にあっても、そのまま解ります。自分の姿を美の中に照らして暮らしていたのでしょう。
「貴方は若いですね」と云われて喜んでいては駄目です。若者に対して決して云わない言葉です。年寄に対して労る言葉なのです。