「これから論文を書く若者のために」
出版後の進行状況

若手研究者のお経
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1/31(金)の進歩 憤激と苦悶 変なメール が送られてきて Eudora がおかしくなってしまった。そのメールをゴミ箱に捨てようとクリックした瞬間に突然終了してしまう。そうっとクリックしても駄目であった (当たり前か)。復旧のために三十分も無駄になった。腹立つ。それにしても、訳の分からない商業メールが毎日送られてきて憤然だ。送りつける連中の人生を 台無しにしてやりたい。
 ヒラガが、モデルの計算について相談に来た。私が昨日から苦悶していた部分で、解決策が見いだせなかったところだ。ヒラガとの会談をうやむやの内に終わ らせ、一人で一所懸命考えたのだけれど、未だに解決できない。これは、相当の力業をはっきしないといけないかも。
 モリナガが、ショウジョウバカマに戦力外通告を出した(<-- も、ショウジョウバカマの研究はしない)。そのかわり、ヒメシャガなどを補強し大幅戦力アップを図るらしい。期待しているよ。
 今日は、くにっちが論文の構想をまとめてくる日。昼過ぎても現れないので、「おのれ、臆したか」と思ったら、夕方に話をしに来た。ただし、「都合によ り、最終報告ではなく中間報告」であった。
1/30(木)の進歩 向学心あるねえ 明日までに論文 の方針を打ち出す約束のくにっちが、データ解析で悩んでいた。ここは一つ指導教官らしく、相談にのってあげよう。で、わかんなかった。で も、暁子が良い解析方法を提示してくれて、指導教官としての面目が保たれた(のか?)。それにしてもくにっち、「そうなる理由を理解したいんですけど」な んて、向学心あるねえ。
 しいちゃんの論文にコメントした。この冬中に仕上げちゃおうね。
 ヒラガのモデルについて思案中。どうすればうまく解くことができるのか。こういうことを考えるのは楽しい。
1/29(水)の進歩 吹雪 強い冬型で、仙台でも時々 吹雪いている。この前の大雪のときと違い、湿り気の無い粉雪だ。これぞ私が好きな気圧配置と いう感じで、まさに一服の清涼剤と言える。蔵王に泊まりがけでスキーに行っている人々はどうなっているのだろう。
 私たちも、今週末にスキーに行ってみようかとたくらんでいる。先日、産まれて始めてスキーをした暁子(1/5 の進歩参照)が、スキーを気に入ってしまい、私自身も羨ましく思ったのだ。スキーに行くとすると、私は実に中学時代以来だ。果たしてまともに滑れ るのか?やっぱ、学生を拉致してコーチになって貰うかねえ(<-- 交通費・食費・リフト代出すよ)。

参考:私の中でうまい順番。他者との比較ではなく、あくまでも私の中での相対的比較。
1. スケート(実はけっこううまい。小学一年のとき、スケートで足を骨折したほどの実力) 
2. サッカー(中高とサッカー部だった。ただし補欠) 
3. 卓球(小学校のとき卓球部だった。なんとキャプテンだった。ただし実力ではなく、人格の誉れ高さと学業成績の優秀さで選ばれた) 
4. テニス(二度ほどしたことがある。ラケットを振るのが大変なのですぐに引退した)
5. ゴルフ(したことがない。したいとも思わない) 
順位付け保留:スキー(3 - 5 のどこかに入るものと予想中)

 イ・タポンが、投稿論文の原稿を久しぶりに持ってきた。しんすけに読んで貰っていろいろ改訂していたのを、そろそろ仕上げようかという段階だ。 で、コメントした。もう投稿間近と思う。しいちゃんの論文も読み出した(しばらく前に預かっていたのに、修論に追われて目を通していなかったもの)。こち らは、まずは、考察の構成について意見を書いておいた。
1/28(火)の進歩 修論提出を終えてもの思ふ 【本 日の第一段落は、珍しく真面目に書いているのでご注意下さい】 植物生態(酒井研三人と広瀬研二人)は、全員が無事に修論を提出したようだ。このうち、が んちゃんとフッキーは、そのまま投稿論文になるように英語で書いた。そして二人とも立派に書き上げた(他の人ももちろん立派に書き上げたけど、ここでは英 語論文組に話を集中しております)。二人の姿を見て改めて思うのは、投稿論文(英語論文)を書き上げるには強い意志がいかに大切かということだ。締め切り 日までに書き上げるために、二人は持てる時間のすべてを費やして英作文に取り組んだ。まさに英語論文一色の日々であったと思う。逆に言うならば、強い意志 を持って全精力で取り組めば、みんなきっと投稿論文を書くことができるということだ。修論を終えたけれど、それを投稿論文に出来ないと嘆いている(怒って いる;ときには威張っている)人が居るならば、どうか、「修論時の強い熱意」で投稿論文に取り組んでいるのか自問してみて欲しい。もう一つ思うのは、指導 者の強い熱意も不可欠だということ。修論提出に向けて、たいていの指導者は論文指導第一の日々を送ると思う。学生と指導者の双方が「修論時の強い熱意」を 持たないと、投稿論文はなかなか仕上がらないのかもしれない。
 Plant Ecology の編集委員の仕事を一つ。草原において、どんな種類の種子がどれくらい散布されているのかを調べる方法論の論文。私の専門とはまったく関係がない。確 かに私は、種子に関する研究をしているけど、「種子」という研究対象が同じというだけで、研究の中身は全然違う。じゅりを飼っているからという理由で獣医 学の論文の編集委員をやらされるようなものだ。
1/27(月)の進歩 お通  昨日、テレビで「宮本武 蔵」を見ていて突然思った。じゅりの妹を飼うとしたら、名前は「お通」にしよう。論文が「通る」の「お通」だ。しかし、犬に似合わない名前だな。
 今日は修論提出日。フッキーも無事に提出した模様。お疲れさまでした。広瀬研の二人は、最終日の闘いで残留か降格かが決まるみたいだ。
 くにっちのデータについて相談。今月末までに論文の構想を練り上げることになっているので、その途上での相談だ。データは、明るく面白く見るようにと励 ましておいた。
 ベガルタ仙台は、今日から本格始動。あいにくの天気(雪か雨かよくわからないものが降っている)の中、全体練習が始まったはずだ。かのファビアーノ(鹿 島から移籍)も、泉パークタウン(仙台の練習場)に出現したことだろう。今日は、サポが何人くらい練習を見に行ったかな?去年の始動日は千人ものサポが集 まり選手を驚かせたけれど、今年はこの天気だからなあ。
1/26(日)の進歩 じゅり、樹氷と なる フッキーの修論を見るため今日も休日出勤。コメントを終えて、じゅりを散歩に連れて行った。キャンパスは青葉山にあるので、 すぐ裏手は雑木林。今日は、雪に埋もれた雑木林に突入だ。踏み跡のない雑木林の中をじゅりと共に歩く。じゅりは、体が半分雪に埋もれながら、ウサギのよう に、でもウサギよりは不器用にぴょこぴょこ飛びながら付いてくる。その内、じゅりの毛に雪玉が発達してきた。どういう仕組みか、雪の中を歩くと毛に雪がま とわりついて玉になり、それがどんどん生長していくのだ。それが面白くて私は、雪の中をさらに進んでいった。やがてじゅりの体には、こぶし大からピンポン 玉大の雪玉が数十個出来上がった。犬の樹氷だ。もっと発達させようと、奥へと踏み進む私。ところが突然、じゅりが動かなくなった。枝にでも 雪玉が絡み付いて動けなくなったのかと思いきや、そうではない。雪玉の重さで(ほんとか?)、根本的に走行不能に陥ったらしい。やむなく、じゅりを抱っこ して雑木林から脱出した。研究室に戻ると、雪玉満載のじゅりにみんな大喜びだった。ひとしきり楽しんだ後、三人がかりで雪玉の除去にかかった。しかしこれ が大変でなかなか取れない。最後は、流しに入れて湯沸かし器のお湯をおなかにかけ、どうにか取り去ったのであった。二十分かかった。

じゅりの体表に発達した雪玉。ある重さ以上に発達すると、走行不能に陥ると思われる。

雪玉の最大直径は 9 cm。大小合わせ約 40 個の雪玉が発達していた。

復旧後のじゅり。どうしても上を見つめてしまうのであった。

追伸:フッキーの修論も無事に完成した。おめでとう。<-- じゅりの雪玉にすっかり心を奪われ追伸扱い。
1/25(土)の進歩 ドキュメント:フッキー修論提出日前々日  修論の提出日は明後日。今日はドキュメント風にまとめてみよう。なお、「修論提出「日」前々日」とあるのは、提出日が明後日であることは事実だけれども、 フッキーが提出するかどうかは保証されていないという科学的慎重さを現している。

注:フッキーとは、「これ論」の表紙の左端の選手です。ち なみにがんちゃんは右から五人目。信太郎は欠場。

10:03 研究室に到着。フッキーの修正原稿は来ていなかった。サッカー関係のページを読んでニュース収集。アマゾン等で、「これ論」の売上状況 を確かめる。
10:57 フッキー来室。修正内容について相談を受ける。
11:21 何時頃に修正原稿が完成するのかをフッキーに訊ねる。街にラーメンを食べに行きたかったので、あと一時間くらいはかかるように 誘導する。
11:29 ラーメンを食べに行く。雑誌で見つけた目当ての店は、「土曜日休み」というやる気のなさであった。やむなく他の店に行った。その店は、「有料 駐車場に駐車しました」と言うと、証明証が無くても二百円引いてくれた。
12:25 研究室帰室。修正原稿はまだ来ていない。ベガルタ仙台関係のページを読む。
12:38 修正原稿到着。暁子と二人がかりで読む。コメントをつけたそばからフッキーのところへ行き、こう直すようにと指示する。全文にコメントし終え てからフッキーに渡すなどという余裕はない。つーか、一瞬たりともフッキーを休ませたくないという思いがたぎる。
13:20 ブランメル生態のサッカーの練習中止の報が入る。私の進むべき道が絶たれた。
15:11 結果の章までのコメントを終え、考察の章を読む。一番の気がかりだった考察が良く書けていることにほっとする。するとなぜか、今日の日記 (1/25(土)の進歩)を書き出す。ちなみに暁子は、浦和レッズについて議論する ページを読んでいた。夫婦だねえ。
15:45 考察のコメント再開。
16:20 コメント中断。日記執筆再開。
16:21 考察のコメント再開。
16:27 コメント終了。「ばんざーい、終わったー」と言いながらフッキーに渡す。ただし、フッキーにとってはちっとも終わっていない。
16:36 じゅりを散歩に連れていき、生物棟前の広場で遊ばす。広場は雪に埋まっていて、じゅりの体は半分くらい埋もれる。じゅりは楽しそうに、ずっぽ ずっぽとジャンプして走っていた。広場で友蔵と遭遇。じゅりは嬉しそうにじゃれる。
17:23 研究室帰室。フッキーが、表のことで暁子に相談していた。
18:09 フッキーが再修正原稿を持って来たので、さっそくではなく、ちょっとネットで遊んでから原稿を読み始める。
19:02 コメント完了。明日までに再修正して、さらには要約を作っておくように申し渡す。そんでもって私は、帰ってビールを飲むのだ。だって、修論生 じゃないもん。

1/24(金)の進歩 納得している暇はない フッキー がついに、修論の全貌を見せてくれた。提出日(27日)まであと四日。頭を使わずに反射的に、「コメント --> 修正 --> コメント --> 修正」を繰り返すしかない。私のコメントに納得している暇は無いのだ。でも、研究の中身はしっかりしているから自信を持っていいぞ。
 三年生の藤岡君と後藤君が研究室の見学に来た。二月上旬までに卒業研究の配属を決めなくてはいけないので、三年生はこうして研究室を訪ね歩いているの だ。研究棟の屋上に出て仙台市内を一望しながら、「ここからの眺めは最高でしょ」と、研究室の特徴をアピールしておいた。
1/23(木)の進歩 続々入稿 がんちゃんの修論にも OK を出した。お疲れさま、よく頑張りました。残るはフッキー。この日記に自分の修論のことが出てこないのを気にしているらしいけど、それはもっぱら、暁子が 指導していたから。私は影からひっそり見守っていたのだ。ま、明日には、修論の全貌を見せてくれるであろう。
 モリナガの論文セミナー。花を部分的に切り取ってしまった方が種子生産量が上がるという論文。では何で、その切り取った部分が無い花が進化しなかったの だろう? 訳がわからない。
 ひさしの講座セミナー。八甲田で去年一年間頑張った成果を発表してくれた。高山植物の性投資に関して新しい見方を提出してくれたと思う。よくやりまし た。来年以降の発展も楽しみだ。
1/22(水)の進歩 締め切り間際の編集部 修論の提 出を 27 日に控え、締め切り間際の編集部という感じになってきた。私がデスクで修論生が記者という役回り。記者が原稿を書いてバタバタと持ってくると、デスクがそ れを修正して記者の机に届ける。それに従ってまた修正して ………。信太郎は完成。がんちゃんは、ここに来て少々の変更を加えたけれど、かえって良くなった。フッキーは、明後日当たり全貌を見せてくれるであろう。
 ヒラガのモデルについて議論。だいぶ見通しが見えてきたように思う。で、Excel とかを使ってシミュレーションをしようということになった。友蔵師匠に相談したいのだけど、気配を察してか姿を見せない。
 このところ、自分にとっては一文にもならないのに、人様には何千何万文にもなることをやっている。しかし、これは大変な作業だよ。
 本日の大ウケ:「ベガルタ祭りNO.11」(J リーグ誕生前夜の物語)。音が出るページなので、学生が昼食に出払った隙を見て観賞(<-- 指導教官がこういうのを見ているのがばれたら、頑張っている修論生に申し訳が立たない)。可笑しくてしばらく動けなくなった。
1/21(火)の進歩 苦悶の一日 ヒラガのモデルにつ いて苦悶。雄性先熟植物(先に花粉を放出してから雌蘂が熟す植物)の性投資を解析しているのだけど、なんかよくわからなくなってしまった。最初の方に咲く 花は花粉が無駄になり(他の花の雌蘂がまだ熟していないから)、最後の方に咲く花は胚珠が無駄になる(他の花はもう花粉を放出し終わっているから)。この ことを出発点にあれこれ考えると、何で雌雄異株にならないのかとか疑問がもたげてしまうのだ。はあーー。
 がんちゃんと信太郎の修論にコメント。二人とも、もう仕上げの段階だ。
 ベガルタ仙台が、エディ(19歳 FW)とマルケン(19歳 DF)という二人の若手ブラジル人を採った。これで外国人は五人体制。近頃の J リーグクラブでは珍しい(試合出場可能な外国人枠は三人なので、外国人選手は三人以下というクラブがほとんど)。きっと将来有望な選手なのだろうし、レ ギュラー外国人が欠場したときには試合出場出来るのだから、これは楽しみだ。日本が気に入ったら、帰化しちゃって日本代表入りを狙うのもいい。ジーコ監督 も推奨していることだし。
1/20(月)の進歩 ベガルタ仙台、来期の陣容決定  ベガルタ仙台の来期の陣容がほぼ決定した。ここに来て、鹿島からファビアーノ、浦和から石井俊也の移籍が決定。即戦力が欲しいところだっただけに、ああ良 かったという感じだ。特にファビアーノは、鹿島のレギュラーセンターバックとして三年間活躍しただけに期待できる。他の J リーグクラブの堂々レギュラーが移籍してくるのは山下以来じゃないか? 一方の石井は、浦和サポの評価はなんか低いみたい。でも、清水再生向上できっと飛躍してくれるだろう。
 布陣はこんなかな?

   マルコス 山下
岩本        シルビーニョ
    福永 森保 
根本 小村 ファビアーノ 中田
     高桑

あるいは、シルビーニョと福永の位置を入れ替えるか? または、福永の位置に阿部や石井が入るか?ああ、早く試合が見たい!
 信太郎の修論にコメント。もうほぼ完成でしょう。
1/19(日)の進歩 これ論のゆかい な受験王国 大学 入試センター試験の監督の二日目。今日も愉快な受験生を密かに楽しんだ。

・国語の試験なのに、英文入りの服を自主的に裏返して着る受験生。裏返すことの目的を掴めていない。
・熱冷まシートをおでこに貼って試験に臨む受験生。
・複数科目から選択する教科(たとえば、化学 1A, 1B, 地学 1A, 1B から一科目選択)では必ず、問題を見てから科目を決める賭博師的受験生。
・ティッシュを箱ごと持ってきて、なんと大袈裟なと思わせながらも、それをもの凄い勢いで消費して、確かにポケットティッシュでは不足だと納得させる受験 生。
・問題用紙にナスカの地上絵のような絵を描くことに専念した挙げ句に、試験開始後 30 分で爆睡。「あと 10 分で試験終了です」の声に飛び起き、地上絵を仕上げた受験生。
・試験終了後、まだ皆が静粛にしている最中に、突然おにぎりを食べ出す受験生。
・最後は監督官編。教室内を巡回する姿は不正防止に務めているように見えるけれど、実は、何か面白いことはないかと探している監督官。さらには、試験中に 真面目な顔をして書き込んでいる内容が、上記のネタだったりする。

試験終了時に、「解答やめ、鉛筆を置いて下さい」と言うのだけど、「解答やめ、鉛筆を置かないで下さい」と言って反応を見たい衝動を抑えながら、無 事に監督を終えたのだった。
1/18(土)の進歩 大学入試センター試験監督 大学 入試センター試験の監督をした。監督中は、時間が経つのをひたすら待つしかない(内職禁止)ので、ほんに辛かった。何かはでやかな出来事があれば楽しめた のに。たとえば、「べらんめーっ! こんな問題解けるかっ!」とちゃぶ台(じゃなくて机か)をひっくり返す受験生とか。その隣で、「父ちゃん、お百姓さん(<-- 出題者のこと)に済まないよ」と嘆く受験生がいるとさらによい。ま、でも、それなりに楽しめる受験生はいた(以下は、別の部屋で監督した暁子から聞いた話 も含む)。

・試験開始前、問題用紙を前にして空手のような精神統一をはかる受験生。さらには、壇上で説明している監督官を睨みつけ闘志を燃やす。敵 は監督官ではないのだが。
・眼から高さ 15 cm 位離して眼薬を注し、見事に的中させている受験生。試験開始前に必ずやるのだけれど、一滴たりとも眼を外さない。
・外国語の試験の時は、「英語の印刷された服を着ている受験生は裏返しで着させるように」と指示されていた。で、「裏にして」と言ったら、いきなり脱いで 服の裏を見せる受験生。そりゃ、「裏見せて」だ。
・一科目選択なのに、「二科目選択したい」と言って監督官を困らせる受験生。
・「地理歴史」の時間、地図の等高線の間を鉛筆で塗りつぶして遊んでいる受験生。
・試験監督に唐突に、「まわりの人からティッシュを貰ってきて下さい」と頼む受験生。
・試験終了間際、うつろな眼差しで、一本の鉛筆をいつまでもいつまでも(三分くらい)削り続ける受験生。

さて、明日はどうなるかな。明日も試験監督でげんなりなのだ。
1/17(金)の進歩 祝、アクセプト!  Evolutionary Ecology Research に投稿していた暁子の論文が受理された。受理通知がいつまで経っても来ないので気に病んでいたら、雑誌のウェブページの Forthcoming Papers にいきなり掲載だ。やったーー! それにしても、担当の編集委員さん、あまりに対応が遅かったよ。「すぐ読む」=「三ヶ月後に読む」なんだから、やになってしまった。
 しいちゃんが覚悟を決めたようだ。今年のデータの結論は、小さな花序は理想の人。小さな花序の悪いところを探そうとしたけれど、完璧な人格で欠点が見つ からないという感じ。「でもそんな人はかえって信用できない」と思っている ……… と私は思う。
 がんちゃんの修論にコメント。ああー、引き出物が決まらない(苦悶)。
 ひさしのデータ解析の相談にちょっと乗った。もうすぐセミナーで発表するので、今年のデータをまとめているところだ。
 今度はア マゾンにも、「これ論」の中古が出品されてしまった。連日の立腹だ。これからの季節、修論や卒論を書き終え、非研究職に就職という人が古本屋に売 りに出すのであろう。かたや、このところ東北大理薬生協でよく売れていること(一週間で 4-5 冊売れた)から察するに、修論や卒論をようやく書き出した人も少なくないようだ。人間とは、ほんに様々である。
1/16(木)の進歩 インターネットの古本屋で売るなっつーの  「これ論」が、インターネットの古本 屋で売られていた。がーーん。「新品同様。折り癖、書き込み等一切ありません」だって。つまり、読んでいないのね? そして、1000 円で売れちゃったみたい。安すぎる。元々は 2500 円だぞ。なお、売った犯人は文系の人のようである(他の出品目録からの推察)。たしかに、文系だと役に立たない分野もあるだろう。そのためやむなく売った ということで情状酌量しよう。
 信太郎が、修論の全貌を持ってきた(今までは、部分部分しか見ていなかった)。さっそく、読んでコメントした。総合考察をどうするかが最後の課題だ。恋 愛になぞらえるなら、親と同居するかどうか揉めている段階である。がんちゃんの修論にもコメントした。あと少しで完成なんだけど、引 き出物が決まらなくて困っている段階だ。
 しいちゃんの論文セミナー。ミゾホウズキは、柱頭が二つに割れていて、虫が触れると二秒ほどで閉じてしまうらしい。閉じてしまったらもう受粉はできな い。閉じることの適応的意義は何なのかを調べた論文であった。
 生協で、「豚トロ」という名の付いたメニューを発見した。ただし、メニュー自体は以前からあったと思う。豚のバラ肉を揚げたもので、「脂身ばっかり」と 非難されていたやつだ。「豚トロ」とは上手く名付けたというか、開き直ったというか、ともかく私は食べないであろう。
1/15(水)の進歩 祝、仮アクセプト!  American Journal of Botany に投稿していたモリナガの論文が仮アクセプトになった。少々直せば正式アクセプトだ。おめでとう。一回目の審査でいきなり仮アクセプトというのはかなりす ごいと思う(普通は、「審査 --> 修正 --> 再審査」と繰り返して仮アクセプトを頂戴する)。初論文が American Journal of Botany に載るなんて、輝かしいスタートだ。
 思い起こすと私の場合、初論文は好評価をいただいた(ただし、改訂は大変だったけど)。この勢いで良い論文を書き続けることが理想であったけど、初論文 を頂点に、その後はガラガラと崩れ落ちるばかりであった。この苦労があったから「これ論」を書けたのかも知れないけれど。ともかく、モリナガには登り上が るばかりの人生を送って欲しい。頑張ってね。
 信太郎とがんちゃんの修論にコメントした。信太郎の方は(読んだ部分は)もうOK。がんちゃんのも、考察の最後の一節を片づければ完了だ。昨日の恋愛の 話しになぞらえるなら、式場のことで揉めている段階である。
 がんちゃんに、「引用文献の著者の性別はどうするとわかるのですか?」と聞かれた。その論文を紹介するのに、"She" か "He" か困ってしまうからだ。英語圏の著者なら、名前を見ればわかるでしょう。ただし、名字を見てもわからないから注意が必要だ。なお、恋愛になぞらえるなら、相 手の両親を何と呼ぶか気になりだした段階である。
1/14(火)の進歩 どこまで進んでいるの? 信太郎 とがんちゃんが修論を持ってきた。がんちゃんが俯きがちに、「先生は今、どこまで進んでいると思っていますか?」と聞く。「もう最終段階だと思うけど」と 答えると、ぱっと顔が輝き「僕もそう思います」と声がはずんだ。こういう種類の会話、どこかで見聞きした覚えがある。そう、「私たち、どこまで進んでいる の?」「今度、両親に会って欲しい」という類のあれだ。
 しいちゃんのデータ解析の相談に乗った。こちらもそろそろ煮詰まってきたかな。「小さい花序が有利、大きな花序には何も良いことありません。もうみん な、徹底的に小さくなっちゃいましょう」という結論も面白いと思う。
 ウバユリの維持呼吸の論文をとうとう投稿した。どうかうまく行きますように。それにしても、論文の投稿の仕方はずいぶんと楽になった。電子メールでさっ と済んでしまうのだからね。
 このところの暖かさはいったい何なのだ(怒)。まるで三月のような気温に私はやる気を喪失している。11 - 12 月は寒くて今年の冬は期待できると思ったのに、これでは騙されたも同然だ。 真冬らしくびしびし寒くなりたまえっつーの。
1/13(月)の進歩 巌左さんを囲んでセミナー 動物 生態・植物生態合同で、巌佐さんを囲んでのセミナーをした。発表者は西野さん・暁子・理一の三人。三人とも、巌佐さんにいろいろ指摘していただいて勉強に なったようだ。ちなみに暁子は、発表の準備に没頭して、帰宅したのが朝の8時。それから三時間ほど寝て大学に戻ってきたのであった。暁子のモデルは、巌佐 さんに合格のお墨付きをもらった。よかったよかった。
1/12(日)の進歩 生態学会東北地区会 生態学会の 東北地区会があった。地区会での学会発表というものは、昔は意義があったのかもしれないが、今となってはその意義も薄れ、というよりほとんど意義が無いと 思う。学生だって、どうせ学会発表するのなら、全国大会で大勢の人に聴いて貰いたいと思っている。だから撲滅しようと思っているのだけれど、一朝一夕には 行かないみたい。ちなみに今回は一般発表は無しにして、巌佐さんの招待講演だけにした。無理して一般発表を募集するよりよっぽど意義があったと思う。わざ わざお越し下さった巌佐さん、どうもありがとうございました。
 夜は、巌佐さんを囲んで懇親会。生態学会会長の巌佐さんに話しかけられた学生は、緊張と喜びを胸に自分の研究の説明をしていた。
1/11(土)の進歩 三度目の重版決定! 「これ論」 の重版が決定した。昨年の五月に出版して以来はや三度目の重版で、第八刷りとなる。お買い上げ下さった皆様、どうもありがとうございます。
 午後は久しぶりにサッカーをした。エコカップ2003(生態学会のフットサル大会)も迫っているのでそろそろ練習に打ち込まなくてはいけないのだ。今度 は、去年のような成績(予選敗退)ではすまされない。何としても優勝だ(私の出るチームではなく、ブランメル生態の最強チームが)。
 NewDaySchool で論文の英文校閲をした。このウェブページを見て英文校閲を頼んできた人が 2-3 人いたそうで、感謝されてしまった。どういたしまして。
1/10(金)の進歩 本気らしい 池ちゃんのイヌ嫌い は本気らしい。知らなかったとは言わない。なぜなら知っていたからだ。で、今日判明したのだけれど、イヌハラで危うく訴えられるところであった(02/12/27 の進歩参照)。こんな可愛いじゅりを訴えるの? ……… じゃなくて私か、ごめんよーー。
 信太郎の修論にコメントした。今更だけど、こういうシミュレーションをしてみてはどうだろうと思った。シミュレーションを新たにするのに一週間。修論提 出まであと17日。7/17 をシミュレーションに費やすのは勇気がいるが、突撃するのみだ。
 がんちゃんの修論にコメントした。考察をもう少し練る必要があるかな。
 月初めの談話会。修論生は、先月の内容も今月の予定も修論あるのみ。すっきりしている。他の学生も、新たなデータが出る時期ではないので簡単に終わっ た。
 「ずっ と彼氏がいないあなたへ」だって。恋愛も本で勉強する時代なのかねえ?
1/9(木)の進歩 今からでも遅くないからね 東北大 理薬生協で、「これ論」が昨日今日と続けて売れた。修論や卒論を早くも書き終えて、それを投稿論文にするために参考にするのかな? それとも素直に考えると、ようやく修論・卒論を書き出そうというのかな? うーーん、後者の場合、今からでも遅くはないと思う。「これ論」片手に二週間で書き上げよう!
 三年生のための研究室紹介をした。始める前、なぜそこまでと自分で呆れるくらい緊張していた。今年の三年生は講義のウケが悪かったし、何人聴きに来るの やらという感じだった。しかしまあ、思ったよりは人が居た。来聴感謝。ただ、藤吉が居なかったのが気になる。ベガルタ仙台をクビになったからか? (<-- 内輪ウケのネタ)。
 くにっちの論文セミナー。親の大きさと雌適応度の関係の論文。しょせん大したことの無いデータだった。くにっちのデータの方がはるかに素晴らしい。とい うわけで、自分のデータを冬中に論文にするように申し渡した。まさかこんな展開になるとは思わなかっただろうねえ。「ええっと、ちょっと待って下さい よー。ええっとですね」とか言っているので、信太郎を、「四の五の言わせない係」に任命した。
 順次産卵の論文をどう改訂すべきか思案中。それにしても面倒くさくてかなわんわ。
1/8(水)の進歩 抑えながらも祝 三条地区の土地を お借りして友蔵の実験用テントを建てる話し、胸のつかえがおりた。同じ場所に寮を建てる予算申請をしていて、予算が通ったら友蔵テントはダメになるところ だった。しかし予算は通らなかったそうだ。すいません、大変不謹慎ながら、私どもとしては助かりました。寮を建てて貰えない学生の分も実験頑張ります。 せっかくだから、これら学生さん達に実験を手伝って貰うか。
 信太郎が、樹形のシミュレーションの部分の修論原稿を持ってきた。で、今日は一日、原稿を見ながら思案を巡らせた。どうして、短い枝をたくさん着けるこ との有利さが出ないんだろう、うーん。
 ベガルタ仙台の年間チケットの新規購入申込者(昨年からの継続購入とは別枠)に対する当選発表があったらしい。仙台のチケットは入手困難で、年間チケッ トの新規購入も大変な競争なのだ。で、やはりダニは混じっていた。当選した年間チケットを早々にヤッフーの競売に出しているダニだ。このダニ連中、始めか らチケットの転売が目的であったことは間違いない(<-- 重複して当選してしまった場合のチケット交換掲示板はちゃんとあるのだ)。チケットが欲しいと純粋に思っていて抽選に敗れた人達のことを思うと怒り心頭 だ。
1/7(火)の進歩 自己嫌悪 の一日であった。
1/6(月)の進歩 あんマーガリン入り黒糖パン がん ちゃんの味覚がついに菓子パン業界を動かした。その名も、あんマーガリン入り黒糖パンだ。シラ イシパンという会社にこういうパンを食べたいと投書したら、いきなり商品化されてしまった。というわけで、シライシパンからがんちゃんへ、パン一週間分の お礼が送られてきたのであった。ちなみにシライシパンは、地球にやさしいエコロジー運動に取り組ん でいる。「パンは捨てるところがない食品です」という言葉が印象的だ。
 順次産卵の論文に関するレフリーコメントを解読中。そんなに厳しいコメントは無い感じ。しかし、中身をどばーっと削る必要はありそうだ。共同研究者の原 田さんがアメリカ出張中なので、すぐに相談できないのが残念。
 三年生(四年に上がったら研究室配属となる)のための研究室紹介の準備をした。研究室の魅力を訴えるべく頑張ろう。
 昨夜、じゅりがふとんにお漏らししてしまった。もう一年くらいお漏らしはなかったので安心していたのに。このところ、屋外に出さないとトイレをしない感 じになってきていて、室内のトイレを使ってくれない。室内に居て我慢できなくなったら、トイレでしてくれればいいのに、昨日はなぜかふとん上。どなたか、 室内のトイレをきちっと使わせる方法をメールでお教 え下さいませ。
1/5(日)の進歩 そんな風呂で喜ぶ でない WOWOW でフレンズ(アメリカのコメディードラマ)を見た。日 本のコメディーと違い、センスある笑いが満載なのでお気に入りの番組なのだ。今回のネタは、風呂に浸かってくつろぐというもの。しかしその風呂というのが 例によって西洋の風呂で、側にトイレはあるは洗面台はあるは、湯船は石鹸の泡だらけになっているは。よくもまあ、こんな風呂で楽しめるね、アメリカ人は。 その神経、理解不能。湯の国日本に来て、本当の風呂というものを知って貰いたいもんだ。
 風呂というと、暁子が二泊三日で温泉旅行に行ってしまった。白神山の調査隊の打ち上げだって。調査に参加したことがない私はじゅりと留守番。ちっ。
 信太郎にシミュレーションの結果を見せて貰った。葉柄の意義をどう示すか。このシミュレーションを元に修論の残りの部分を書いていこう。
 がんちゃんの修論にコメント。考察にもう一声欲しいところだ。隣り合う集団間で花の大きさの変異が見つかったことの生態学的意義をどんと強調しよう。
 昨日、Evolution に投稿していた順次産卵の論文が返ってきた。判定は非リジェクト。ま、よかった。しかし直すのが面倒くさい。
1/4(土)の進歩 久々に出勤 研究室に久々にやって きた。居た学生は数人。修論生は全員出勤だ。で、信太郎の修論にコメントして、フッキーの修論の結果と考察の方針を議論した。昨日の進歩をたくさん書きす ぎたので、今日はこれでお終い。
12/31-1/3(金)の進歩 山本昌邦備忘録 - トルシエジャパンの 1369 日 横浜の実家に帰省していた。この間のことを書くのも面倒なので、読んだ本を一冊紹介したい。日本代表のコーチとしてトルシエ監 督を支えた山本昌邦さんが、トルシエ日本のことを書き記した「山本昌邦備忘録」(講談社)だ。素晴らしく面白い本なので、みなさんもぜひ読んで欲しい。
 本書は、ある意味ですごい「暴露本」である。トルシエが、W 杯における日本代表の敗北を「自分なりのロジック」で語っているのを見て、「私が恐れたのは、トルシエが語ることだけが日本代表の物語として流布すること だった」(p. 343) と思ったことが執筆動機なのだ。そして本書では、トルシエがいかにめちゃくちゃな監督だったかということが冷静に語られている。「日本代表、よくぞご無事 で」というのが私の読後感である。
 トルシエのめちゃくちゃぶりを二つ紹介しよう。

海外で行われたある大切な国際試合の当日の出来事:
 この日の予定は、午前に 30 分の散歩をし、昼食後に休憩して、試合前に試合食を摂るというものだった。ところがトルシエは、散歩の予定を、炎天下での二時間の猛練習(試合当日に!) に変えてしまう。疲れ果てて、ようやくにして時間遅れの昼食の席に着いた選手達。しかし選手は、疲れと、試合食(おにぎりと味噌汁)のことが頭にあったた め、あまり昼食を食べなかった。日本を離れて久しいので、日本の味が楽しみだったのだ。ところが、昼食を食べ終わってからトルシエが急に言い出した。「昼 食がこんなに遅くなったのだから、試合食はもういらないな」。著者が、「試合食を抜かしたら、きついことになる」「選手は、この味噌汁とおにぎりを楽しみ にしている」と訴えても無駄だった。「だから日本人はダメなんだ」「試合食はコーンフレークだけにしろ!」。試合前に中田浩二がぼやいた。「腹減って、な んか眠いッス」。トルシエは、「選手の気持ちを、ささくれだったものにしただけでなく、現実問題としてコンディションを最低にした」(p. 51)。99 年ワールドユース決勝で、スペインに惨敗した日の出来事である。

2002 W 杯ベルギー戦後のミーティング:
 ベルギー戦の二失点の原因は、フラット 3 がラインを上げた裏をつかれたためであることは明白だった。フラット 3 のライン操作はトルシエ戦術の代名詞と言えるもの。しかしトルシエは、「自分の戦術が悪い、とは一言も言わなかった」(p. 242)。悪いのは選手で、「自分の言うとおりに、もっとさらに徹底してラインプレッシャーをかけないからダメなんだという結論だった」(p. 242)。トルシエは、失点場面のビデオを繰り返し流しながら、一時間半も演説をぶったという。ベルギー戦の後、選手は決意したらしい。「自分たちの力で 「道」を見つけるしかないと」(p. 243)。そして、トルシエの指示は適当に聞き流して、ラインを下げるという選択をしたのだった。

著者は他にもたくさん、トルシエのめちゃくちゃぶりを紹介している。トルシエのお気に入りの台詞「500 ページの教科書」というのは実は「5ページの間違いではないか」とか。他は、読者の楽しみにとっておこう。
 さてロシア戦。日本守備陣は、選手独自の判断でラインを下げて闘った。ハーフタイムにトルシエは「ラインを上げろ」と怒ったけれど、選手達は「素直に聞 く振りをした」(p. 261)。そしてついに、日本に歴史的勝利をもたらしたのである。
 しかし、トルシエとの闘いはこれでは終わらなかった。決勝トーナメント一回戦対トルコ戦を控えてのこと。トルシエが、間接的な表現ながら一つの意志を示 した。「ヒデを次の試合で外したい」(p. 308)。それは、戦術的な理由ではなかった。「スター・システムを大義名分に中田英寿を外してそうとしていることが」著者ははっきりとわかったという (p. 311)。メディアが中田を大きく取り上げることが気に入らないのだ。著者は、「なんとか阻止しなければ」と決意した(p. 311)。結局中田は先発したけれども、試合中にもトルシエは中田を変えようと機会を窺っていたという。そしてもう一つ、選手もスタッフも絶句することを した。西澤をワントップ、三都主をやや下がり目の FW に起用したのだ。「病み上がりの選手(注;西澤)をいきなり先発で使うなど思いもよらない」と著者は驚く(p. 314)。三都主とて、「やや下がり目の FW なんて彼は代表でも清水でもやったことがない」(p. 318)。確かに柳沢は怪我で使えなかった。「しかし、鈴木は使えた」し、(雨の試合なので)「パワーのある選手(注;鈴木)を使うのがセオリー」 (p. 318) 。
 著者は憤慨する。「トルシエは自分の評価を上げるために、(中略)自分の戦術変更が良かったのだと誇示するつもりなのか」(p. 315)。「選手が頑張って、選手が考えて、中田英寿がリーダーシップを発揮して、チームは勝ち進んでいる」と評価するメディアに「思い知らせてやらない といけない」と考えたのか (p. 315)。------ トルコ戦の結果はご存じのとおりである。
 著者は、「トルシエに「信」を置いていなかった」と明言する (p. 337)。口汚い言葉で選手を侮辱し、通訳が耐えかねて訳すのを止めると英語でののしり始めるトルシエ。「モンキー」などと聞くに耐えない英単語だけが響 きわたった (p. 336)。------ たしかに、こんな人間に信を置けるはずがない。
 しかし著者は、トルシエの悪口を言うために本書を書いたのではない。日本サッカーの将来のため、自分の視点から見た事実を書き記そうとしたのだ。トルシ エ日本の時代を「美談」として語り継ぐだけでは、この時代は将来の礎とはなりえない。この時代を踏み台に将来の飛躍を語るためには、良い面悪い面をすべて 残しておくことだ。本書を貫くのは、日本サッカーへの著者の深い愛情である。