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マネジメントチーム&スタッフ・マネジメントパートナーを目指して


 教育改革の一連の流れから、都立高校や県立高校の校長に民間人を採用し始めたし、公立中学校でもその動きがで始めた。その様な中、学校を指定した公立小学校長の公募が報道された。学校を指定した公立小学校校長の公募は、全国でも初めてである。選考には、PTAや評議員、保護者等で構成する選抜委員会が当たり、書類選考と小論文「これからの公立小学校長としての私の学校経営」・「自己アピール文」が課題とされている。書類選考の後、合格者は上記の選考委員会の面接を受け、採用となる。ちなみに、指定された小学校は、文部科学省「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究校」指定校である。
ところで、現在、地方分権、行財政改革、市民参加の流れの中で、学校経営を地域や特定団体に任せようという研究が進んでいる。いわゆるコミュニティスクール論である。
  学校経営・教育活動に競争原理を導入し、経営競争の中から違いを強調し、特色を打ち出し、児童・生徒や保護者に学校を選択させようということも「学校の活性化・学校改革・改善」の一つの手法であることに異論はないし、硬直化した現状維持をよしとする学校経営の体質(教員の体質とも言える)に刺激を与え、保護者や地域社会の声を反映させた学校づくりを積極的に進めることになるということにも異論はない。しかし、「柔軟な発想や企画力」を持つ人材を民間人から求めねければ、教職出身・教職経験の校長では、柔軟な発想も企画もできないし、改革・改善の見通しも持てない。実態として経営者としての資質・能力もないとの評価であるとするならば、何とも情けない状況である。
 「柔軟で弾力的な発想」や「創造性溢れる企画力と実践力」を持つ人材が、教職出身の校長にいないわけではない。よく、「教育は人なり」といわれるように、「校長もまた人なり」である。「民間人を校長として迎えなければ、特色のある学校経営も特色ある教育活動も、現在の校長ではできない。」と言われないように、日々研鑽に励んで欲しい。そのためにも、校長会・教頭会という組織の中で、お互いが切磋琢磨する中から、校長・教頭としての、経営者としての資質・能力を高めていって欲しい。そのためには、仲間を募り、経営学を学ぶ時間を自ら持たなければ、校長・教頭としての資質の向上は期待できないし、責任ある学校経営の推進も期待できない。事例は、学校の中に山ほどある。
 学校経営上の問題(児童・生徒への指導上の問題、教職員の服務監督の問題、部活動のあり方の問題)について、「教育長に直接話を聞いて欲しい。」と、保護者の方が庁舎を訪れられることがある。一般的には、それぞれの学校で、校長・教頭が責任を持って対応し、解決しなければならないことが殆どであるが、時として教育委員会が対応しなければならないこともある。その殆どが、校長への不信や不満であり、「校長に話しても何も解決しない。何もやってくれない。」という不信感から始まっている。庁舎に見えても、教員の指導上や服務上の問題であれば、理事(指導課長)、指導主事等が会って話を聞くし、就学関係の問題や給食・健康安全の問題であれば、学務課長や課長補佐等が話を聞くことになる。一般的施設・設備の問題であれば庶務課長や施設担当課長補佐等が対応する。これらの中で、物や設備等の問題であれば、ある程度市の財政状況や不確定であっても今後の方向について誠意を持って説明すれば、ある程度納得して帰っていただける。しかし、児童・生徒への指導上の問題や教師としての適格性の問題、経営責任者としての校長の資質・能力の問題となると、保護者や地域の方はなかなか納得されず、まして、子どもにその影響が出ていようものなら、一歩も後には引かず、すぐに何らかの措置をするよう約束や文書での回答を迫られることになる。それは、一人の親として当然のことであり、たとえ一方的解釈や誤解の上であったとしてもその時点では同様である。「誠意と責任ある対応を示し、信頼関係を確かなものにする。」ということは、保護者や地域の方に、誤解に基づく行為をさせないようにという配慮でもある。一旦問題が拗れると、これまで協力的であった人でも一歩身を引くことになるし、悪くすればそれで縁が切れることもある。そうならないような気配りをすることも、校長・教頭の大事な職務である。
 学校側に問題があると思われているときほど、神経質なまでに言葉や行動に目を光らせ、執着し、問題ありと指摘されることが多い。そんなこともまた当たり前のことであり、保護者や地域の方に限らず、教員もまた同様である。担任に、「一日1回は、必ずどの子にも声を掛けるように。」ということと同じように、校長・教頭は、不断から教職員と一日1回は必ず声を交わし、子どもの指導上のこと、教職員自身のこと、職務上のことなど、考えや悩みを聞く姿勢と機会を持つことが必要である。特に保護者や地域との間にトラブルを抱えているときには、教員の不安は計り知れないものがある。不安を取り除いてやるのも管理職の大事な職務である。ましてや、学校の責任で子どもに影響が出ているときには、まずその問題を解決することが校長・教頭の緊急且つ、最大の職務であり、校長・教頭の姿勢を見て教職員もついてくるし、保護者や地域も納得してくれるものである。
地域との関わりが増せば増すほど、「校長は地域社会に責任がある」時代であり、「学校も地域社会に貢献することを求められる時代になってきた」という自覚を持ち、地域社会と関わっていかなければ、学校の存在も厳しくなる。学校が地域行事に関わる姿勢に感謝し、地域の有志で子どもたちのための週末活動を企画し、多彩で多様ねメニューを準備することにより、子どもと地域の大人の交流が始まった地域も出始めている。正に、校長の姿勢と経営手腕が、地域の方々と子どもたちの関わりを創り出し始めているのである。
 教育委員会と組織体である校長会・一校の責任者である校長は、子どもへの教育サービスの質的改善と向上を目指し、教育の内容を保証し、共通の教育課題を解決し、実現するために様々な課題を追求するチームであり、パートナーである。
 校長は教育行政の最前線で、児童・生徒への高度で専門的な、限りのない教育サービスを提供する極めて責任の重い職務を分担している現場の最高責任者であるという、経営者としての自覚と自分自身が子どもたちへの豊かで、質の高い教育を企画・提供し、保証する最終責任者であるという、子どもへの教育愛に支えられた教育者としての誇りが、特色ある学校経営や特色ある教育活動を創造していく原動力となる。教育委員会と校長会役員会、校長会との連携を一層進め、教育委員会と組織体としての校長会は同一の目的(教育委員会の教育目標の実現)を共有するマネジメントチームとそのスタッフであり、教育委員会と一校を預かる校長は、同一の目的(それぞれの学校の教育目標の実現)を共有するマネジメントパートナーであるという発想に立ち、小平の教育の向上、それぞれの学校の経営・教育目標実現に向け、一緒に責任を果たしていきたい。

(明治図書:学校運営研究 平成15年2月号 元原稿)


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坂井 やすのり

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