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最涯を求めて 


第46日目 8月20日(月) 晴れ

 4時35分起床。現在の自分の体力を考えると山道は避けるのが適当だ。今日は今まで走ってきた 7号線と別れて山北町から海沿いの345号線を走り新潟に出ようと思う。

 9時20分やっとの思いで村上に到着、山北町で345号入ろうと思っていたら道が分からず、いつ の間にか7号線を進んでいたのだ。気付いた時には山の中で小さな峠を2つも越えるはめになって いた。長い登坂車線を上っていて体力の限界をもろに感じさせられた。好調の時は何でもないよう な峠なのに、今の僕には地獄の上り坂に感じられた。
 信州の乗鞍をあきらめて三国街道から帰ろう かと散々考えたがどうしても諦めることはできない。とりあえずこのまま7号線で新発田 まで走り調子をみて結論を出すことにする。(しかし、この時既にだんだん日本海から離れてゆく 自分自身を止める勇気がなくなってきていた。)9時45分、重い自転車をひきずるように再び走り 出した。

 11時40分、あれから35km、精神的にも肉体的にも限界を感じながら、やっと新発田にたどり着いた。
 信州の乗鞍まで行くと家に戻れないような不安にかられている。自分の根性のなさがよく分かる。情けないことだと思うが挫折である。とりあえず三国街道で沼田まで行って、その先はその時考えることにする。帰宅した時に「乗鞍も行けばよかった。」と後悔するかもしれないが、これが現在の偽らざる心境である。情けないと思ったら笑ってくれ、でもこの先走り続ける自信が今の自分には残念ながらないのである。可笑しければ笑ってくれ。僕は格好付けや見栄で走っているのではない。また、友人や先輩のために走っているのでもない。もちろん両親や片思いの彼女のためでもなく、自分自身のために走っているのだ。自分で出したこの結論に二言はない。
 いつ ものように食パンで昼食を済ませ、1時40分走り出す。
 あとは家に向かうだけだ。そう思うと一層ペダルが重く感じられた。

 3時10分新津に着く。もう一歩も動きたくない気分だ。ちょっと早いが4時にテント場を見付けのんびりした。なんだか自分がますます情けなくなってきた。今ならまだ新潟に戻ることができる距離だが、もうその元気は ない。一度出した結論だ。戻ることは考えないようにしなければ。そしてせめて残り少ない旅を有 意義に過ごすように心がけよう。
 2年前に福島に行ったときと同じように家が近づくと(ここは新 津なのでそれほど近い距離ではないが)家のことしか目に入らなくなり、帰りたいという気持が加 速度的に増加する。
 函館で家に電話したきりでこのところしていないのでそろそろしなくてはなら ない。何しろ母はとても心配性で、旅立ちの朝には「毎日電話しなさい。」と言っていたくらいなのだ。
 今はテントの中でなく外のベンチでこの日記を書いている。まだ6時過ぎで外は明るい。さきほど洗濯したTシャツが滑り台の横で風に揺られている。
 今、改めて地図を見てみたら、当初の計画通り日本海を富山まで下り、それから乗鞍に登るのではあと10日以上かかるような気がする。まだ帰宅したわけでもないのに反省めいたことを書くのは可笑しいが、ちょっと予定(計画)がきつかったようだ。
 北海道は充実していたがちょうと走り過ぎたような気もする。それにこの夏はどこに行っても異常な暑さで、体力の消耗が著しかった。

 夕食の後片付けをしていたら地元の人が犬の散歩の途中で、僕のことをいろいろ聞いてきたので、 インタビューに答えるヒーローのような気持ちで例によって話をしていた。するとその30分くらい 後にまた同じ人が公園に現われ、僕に「妻に君のことを話したら是非家に泊まってくれと言ってい る、家は子どもがいないのでちょうどいい、家に泊まりに来てくれ。」と言われ、嬉しいような照 れ臭いような気持で、親切に甘えることにした。
 7時15分、公園で声をかけられ今夜は泊めてもらうことになった。今回のツーリングでは46日目にして初めてのことであるが、それほど嬉しくもない。
 この小林さんの親切は実に嬉しいのだ が、残り少ない野宿生活を満喫したいという気持ちもあったからなのだ。シャワーを使わせても らい、さっぱりとしたところで、ご主人と奥さんと3人で飲み始めた。奥さんの手料理がまるでお袋 の料理のように思えて、こうしてテレビを見ているとまるで家に帰ったような気になった。そして 偶然にも今日は新津の祭りと重なっていたので、ご主人と僕は祭りを見に出かけたり、いろいろ 美味しい物を頂いた。
 今夜はこの旅で一番夜更かしをしている。只今11時15分、余りにものん びりしてしまうと明日から走るのが億劫になってしまう。こうして小林さんに声をかけられた のも信州をあきらめて新津に来たからなのだ。そう考えるとまったく出会いとは実に不思議なもの である。小林さんも話の中で縁を大切にしたいと言っていた。いろいろ話をしたがその中で一言、 「あんたみたいな人は普通の会社じゃ勤まらないんじゃないか?」と言われ、ドキッとした。
 そ の他たくさんの話をしてとても勉強になった。出会いは実に不思議なものだ。奥さんは先ほど「明 日はゆっくり寝ていなさい。」、「朝食は作ってあげるから家で食ベていきなさい。」、「昼はおにぎりを作 ってあげるから持っていきなさい。」とまで言ってくれた。この際だから甘えてしまおうと思う。帰 ったらきちんとお礼をしよう。それにしても見知らぬ僕のような旅人を家に泊めてくれるなんて、 とても嬉しいことだ。また、それだけ信用してもらえたことが何よりも嬉しい。今日はもう寝る。 ふとんで寝るのは46日ぶりである。これで、ますます里心が付いてしまった。いよいよ家に帰りた くなった。まるで2年前のツーリングの途中、会津若松(福島県)で親切にされた時と同じ心境で ある。 消灯12時。


 本日の宿泊地 新津(小林さん宅)、本日の走行距離 112km (累計 4624km)



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