第45日目 8月19日(日) 晴れ
4時25分起床。ラジオ体操のために集まりて来た小学生が珍しそうに僕のテントの回りに寄 ってきていろいろ話をする。この小学生の中にもひとりくらいは僕のように旅をする子が出るのかも しれないなどと考えていると、とても楽しくなる。
早朝から”バンバン”と遠くから鉄砲のような音が聞こえてくるので尋ねてみると、「田に集まる雀を追い払うためだ」という答が返ってきた。
出発して間もなく”ブチッ”という音とともに、リアのフリー側のスポークが切れた。しかし工具は なく直すこともできないので、ちょっとした都市に入ったら直そうと走り続けた。特にリムの歪みも感じられないので気にせずに走り続けた。
右に日本海、左に鳥海山を見ながら快調にシーサイ ドを走る。10時40分、酒田駅にて少し早目にいつもの食パンで昼を済ませ、スポークの修理をせず に11時50分再び出発した。
酒田から1時間、順調に走っていると鶴岡の手前10kmくらいのところでまた“ブチッ”という音 がした。すると今度はフロントのスポークが切れてしまった。まったく僕はスポークと相性が合わ ないようだ。もうすぐ街に入るので、今度は朝切れたリアと今切れたフロントをまとめて修理する ことを決め走っていると、大きなディスカウントショップを見つけたので買い物をした。自炊用の ガスボンベは北海道で買った時よりも100円くらい安い値が付いていたが、この旅も残り10日間く らいなので1本に止めた。紅茶も25袋入りではたくさん残ってしまうので買わずに抑えた。10 袋入りくらいのものを見付けたら買おうと思う。インスタントみそしるも必要ない、そんなことを 考えながら買い物をしていたら、帰宅の近いことが急に寂しく感じられた。
1時40分、市内の自転車屋でモンキースパナを借りようと思い話したら、「工具は貸さないことにしているんです。」と言われたが、何とか頭を下げて貸してもらった。前後1本づつのスポーク交換におよそ1時間かか り、ちょうどよい休憩になった。2時30分調整を済ませ、再び走り出した。
4時45分、今夜のテント場である小岩川駅に到着。実に久しぶりの無人駅だ。鶴岡まではほぼ平坦な道路だったが、鶴岡からここまではアップ・ダウンがかなり目立ってきた。陸中の危しさと は比較にならないが、久しぶりのアップ・ダウンで多少バテぎみだ。
今日はステーションホテルだ が、蚊のことを考えて駅には入らず、駅の脇にテントを張った。蚊取り線香をどんどん焚き、 蚊を追い払っている。やはり、テントが何よりも落ち着く。毎日天気がよくテントが張れることに 感謝している。明日も村上まではかなりのアップ・ダウンがあるようだ。
山北町から山の中の国道 7号を行くか、海沿いの345号を行くかはまだ分からないが、いずれにしてもちょっと苦しそうだ。
今日は昨日よりも1時間も早くテントを張ったので余裕があって実にいい。まだ7時だから今日は 早く寝られそうだ。今日も夢中で走った。5時前にテント場に着いたのにもかかわらず140km! 走りはベストに近い。とにかく連日続いていた午前中のスランプからどうやら抜け出したようだ。 今日のように早目にテントを張るためには午前中に一生懸命走ることだ。
今日は日曜日だったとい うのに走っていて実感がなかった。今まで北海道では日曜日(平日でさえも)ともなるとどこヘ行 っても観光客で賑わっていたが、ここ東北ではそんなことはひとつも感じなかった。
明日は昼ま でに村上に出て、最終的には新潟まで行きたいものだ。本州に入って今日で3日、サイクリスト、ライダーを問わずツーリストが少ないことが印象的、それだけに時々交わすピースサインが実に新鮮で励みになる。この夏、僕と同じように北海道、東北を走っている先輩は今頃どこを走ってどこで休んでいるのだろうか? 同じ空の下を走っていると思うと楽しい気分になるし、また僕の走った道を先輩が、先輩の走った道を僕が同じように走りているのかもしれないと考えるとますます愉決な気持ちになる。旅って実にいいもんだ。 消灯7時35分
本日の宿泊地 小岩川駅、本日の走行距離 133km (累計 4512km)