第37日目 8月11日(土) 晴れ時々曇り
4時半起床。朝方とても怖い夢を見てうなされ目を覚ます。草原で遊んでいると牛になってし まい1年間人間に戻らずに、発見された時に見せられた鏡に映る自分の顔が牛の顔になっており、 とても怖かった。どうしてこんな夢を見たのだろうか? 毎日牛を見ているせいだろうか? 今 日も暑くなりそうな気がする。
富良野ですぐに貯金を下さなければ生活できない。そうなったら大変だ。
今日は一日渡辺さんと一緒だ。彼にとっては今日が旅の最終日、2人で走るのだから最終日に相応しい日にしてあげたいものだ。
7時50分、富良野に到着。まだ郵便局が開かないので先に北海道の中心標“へそ”の見学を済ませた。
9時、郵便局が開くと同時にすぐに窓口に立つ。すると局員さんの冷やかな声が「お客さん、今日は第2土曜日だから金融機関はすベてお休みだよ」、ああ... 僕は一瞬目の前が真暗になったが、すぐに笑いでごまかし、明るく振る舞った。
郵便局の外に出てすぐに財布の中を見ると、1000円札1枚と100円玉が数個が笑っていた...
気をとり直して走り出したが急にペダルが重くなったような気がした。いつもお金を下ろす時、記念になるようにと局名に拘ったり、残りがすっかり空になってから... というのが常だが、これからは余裕をもって下ろすようにしよう。とは言っても、もうそれほど下ろす必要もないとは思うが。そんなことをあれこれ考えながら、芦別に到着。少し早い時間だが昼を食ベることになった。
渡辺さんは旅の最終日ということもあり食堂に行くことになったのだが、僕は例によって食パンだ。近くに生協があったので買いに行くと、1個132円の食パンが4日前の製造なので、何と50円引き、実に82円の食パンだ。6枚切のものを2つ164円で買った。昨日買っておいたきゅうりとマヨネーズがあったのでいつもの中山流サンドウィッチにして食ベた。昼食の食パンはもう随分続 いて、すっかり定着したようだ。実に安上がりで、貧しい僕にとっては最適の食事だ。
渡辺さんが戻ってきたので何を食ベたのかと問いてみたら、「カツ丼」という答が帰ってきた。僕は自分のサンドウィッチを横目に生つばを呑んだ。
12時、僕らは出発した。滝川経由で砂川に出ると遠回りになるので、僕の提案で歌志内から砂川に出ることにした。
地図で見ると10kmくらい距離が短縮できる勘定だが小さな山があるのだ。大したことはないだろうと行ってみると... 僕らは地獄をみた。とても急な登り坂が長く続き、道路が狭いわりにダンプカーばかりが通るのだ。
1時35分に砂川に着いたときには2人ともすっかり疲れきっていた。しぱらく木かげで一服した。
渡辺さんはここからなら7時頃には家に帰れるらしく余裕が感じられた。
日本一長い直線道路を走り、3時35分、休けいのため峰延駅に入る。とても暑い午後である。走っている時は風を切るのであまり暑さを感じないのだが、一度止まると体中から汗が吹き出すのだ。暑いというより苦しいという感じ。このところ毎日晴れていて、近年まれにみる猛暑らしい。ここ北海道でさえ毎日30℃を越える日が続いている。
近くに峰延公園というのがあるらしいので、僕は今夜ここでテントを張ることにした。お金があれば渡辺さんについて江別あたりまで行ってもいいのだが。札幌に近づいてもお金がなくては何もできない。僕はそのことを伝え、渡辺さんと別れた。渡辺さんは夕暮れの道を家に向かって走り去った。
さっきまで2人だったのが急にひとりになったので寂しく感じられる。ここはテント場としては最適な静かな(公園というより)空地だ。
夕食は先日買い込んでおいたあんこと切り餅で念願のおしるこを作った。疲れているせいもあり、甘いおしるこは実にうまく、お袋を思い出してしまった。
夕方、タバコを買い久しぶりに家に電話をしたら、現在財布の中味が1001円になってしまった。明日は楽しみにしていた札幌入りだが、これでは何もできない。午前中に着くから、午後はお土産物の値段調べをして月曜日に備えよう。誰に何を買うかをリスト化して値段を調べておこう。そして札幌の街をいろいろ見て、写真を写して、月曜日の朝にすぐお金を下ろし、土産を宅配便で送ってその日のうちに小樽くらいまで行きたいものだ。
これで明日も昼食に食パンを食ベるのは決まったも同然だ。せめて汗を流し札幌に着いたら、ビールだけでも飲みたいものだ。1001円あれば明日一日はカンビールくらい飲んでもなんとかなるだろう。食事は買い置きが十分あるので自炊できるから心配はない。すすき野のラーメン横丁に行きたいが、渡辺さんの話ではみそラーメンが、600円くらいするそうだ。そうなると昼にビールを飲んでしまうのは危険だ。まったく困ったものだ。いずれにしてもここから札幌まで50kmくらいなので、ゆっくり行って、のんびりしよう。考え方を変えれぱ、お金がないため足止めをくらってかえってのんびりできるのが幸いかもしれない。
今まではのんびり休養をとることなく走り続けてきたのだから... それに札幌に行ったらのんびりすると決めていたことだし... まあ明日も晴れることを期待して、カセッ卜でも聞きながらゆっくり寝るとしよう。
あと1週間もすれば北海道とお別れだと思うととても残念。しかし最後の難所である積丹が待っているので楽しみだ。金に余裕があれぱすすき野で銭湯にでも入ろうと思っていたのだが...。 それも今では夢となってしまった。 消灯8時40分。
本日の宿泊地 峰延公園、本日の走行距離 101km (累計 3564km)