第29日目 8月3日(金) 晴れ向かい風強し
4時半起床。体調は7割くらい回復している。決して好調とはいかないが何とか走れそうだ。
7時出発。猿払にて7月16日に北湯沢で会った岩手の人に再会、18日ぶりのことだ。彼は僕とは逆回 り、僕の北上に対し彼は南下、しばらく自転車を止めて話をする。彼は今日までほとんど雨に降ら れていないそうだ。
午前11時、日本最北端の地”宗谷岬”に到着。稚内市に入ったあたりからかなりキツイ登り坂に なり、向かい風も強かった。体調のせいもありかなり苦しかったが、そのおかげで到着したときの 喜びは最高だ。
しかし国道沿いのこの地は、絵に描いたような観光地で、民宿、食堂、土産物屋の 立ち並ぶ様子は決して最北端の”涯”という印象はなく、人のいない知床岬、尻羽岬や霧多布岬のよう な、寂しい、静かな印象とはまるで違う。とは言っても遠くサハリンを望む海岸に立つと、かなり 感動する。北上を続けること29日、これ以上は北上できないのだ。茨城の家から比ベて緯度で10度 も高いわけだ。近くのスピーカーからは”宗谷岬”の歌が繰り返し繰り返し流れてくる。
流氷とけて 春風吹いて 幸せ求め 最果ての地に
ハマナス咲いて カモメも啼いて それぞれ人は 明日を祈る
遥か沖ゆく 外国船の 波もピリカの 子守のように
煙もうれし 宗谷の岬 思い出残る 宗谷の岬
流氷とけて 春風吹いて 流氷とけて 春風吹いて
ハマナス揺れる 宗谷の岬 ハマナス揺れる 宗谷の岬
稚内で買い物を済ませ、礼文島に渡るためのフェリーの時間を調べ、4時15分、今度は、ノシャップ 岬に来る。ここには水族館などがあるがちょっと寂しく、この方が最北端という雰囲気だ。何しろ初めこの岬が分からず通り過ぎてしまったくらいだ。日没を待って写真をとるためにもう2時 間も待っている。あと30分くらいで日没、次から次へと観光客がたくさん来て、車を止めて、ただ写 真を1枚とって帰りてゆく。それをさっきからずっと眺めているが、そんな旅で何が楽しいのだ ろうか、どんな意味があってこの地を訪れるのだろうか、そんなことを考えながら日没を待つの であった。
明日は礼文に渡るので是非晴れてほしいものだ。
テント場に着いたのが7時20分、今までで一番遅いのではないだろうか。夕食は一風変ってなす 入りのカラーメンだ。味、ボリューム共にとてもグー。加えて先日から今日まで食ベたくてずっと 我慢していたビスケットを初めて買ったので紅茶を飲みながらたくさん食べた。これからは食事に 気を使いたいものだ。そろそろ旅の折り返し点、お金には余裕があるので、体のためにもうまい物 をどんどん食べよう。昨日は浜頓別でダウンして、宗谷を目前にして帰らざるを得ないとも考えた が、こうして知床とともに最北端の岬を征服した今、気分は最高だ。しかし、ここに来ても旅の折り返し点という気がしないのはなぜだろうか?
明日はフェリーに乗れるように早目に乗り場に並ばなければならない。何しろ小さな船だから。
テントから顔を出すと外は満天の星、ここは稚内の市街だというのに夏の銀河が驚ろくほど美しく見える。北海道はどこへ行っても星空が美しい。きっ と光・公害が少ないからだろう。それにしても最北の地、北極星の高度が実に高い。首がいたくな るくらいだ。天気が続くようだったら、礼文だけでなく、利尻にも渡ってみたいものだ。 消灯9時半。
本日の宿泊地 ノシャップ、本日の走行距離 82km (累計 2835km)