私の好きなこと

自転車ツーリング
 東日本を1周しました
   <最涯を求めて>
 自転車を担いだ富士登山!

オートバイツーリング
 日本中を走りました
 タンデムも楽しみました
 最近、バイク乗りを復活しました

登山・キャンプ
 山も登りました
 キャンプが大好きです


 乗るのもいじるのも好きです


 我が家の猫たちです

日曜大工
 ものを作るのが好きです

プロフィール

サイトマップ


ホームページをご覧いただきありがとうございます。

ご意見、ご感想などは、こちらからお寄せください。


最涯を求めて 


第24日目 7月29日(日) 晴れ

 3時半起床。たった2日間ではあるが、生死を共にしたので、別れが惜しくみんなで早起きをした。
 とにかく知床の朝は早い。3時には東の空がうっすらと白み始める。

 知床の旅はこれで終わるが、また別の旅が始まろうとしている。今日も早朝から快晴。昨夜は暑くてよく眠れなかった。
 ”地の涯”でウンコをした。「これはそうそうできるものでもないので貴重な経験だ!」と4人で笑い合った。
 ここにも、アブが多く、止まったと思ったらいきなり刺すので手足を何ケ所も刺されて、とてもかゆい。
 この2日間はエキノコクスのことをあまり気にせず生水を飲んでしまった。とにかく人間、何は無くとも水が無ければ生きられないということを実感した。これからは今まで以上に水を大切にしながら旅を続けよう。
 今日も天気がいいので、もう一夜キャンプをしたいとも思うが、食料が底をついているし3人の大学生とはここでお別れなので仕方がない。
 また、自転車は民家に預けてはきたものの潮風に当たって錆が生えているに違いない。早く相泊に戻って愛車を可愛がってやりたい。もうすぐ生きて戻れるんだ。最高に嬉しい。
 3人に見送られ、ひとり”赤岩”に向かった。

 9時50分、”赤岩”に着く。
 予約しておいた船が出るのは12時だ。裸で体を焼きながら、”赤岩川”の冷たい水に足を入れ、フランスパンをかじり、暑さのために溶けたチョコレートを川の水で冷やして固めて食ベる。そんなことが現実の生活の中にあるだろうか? 
 遥か国後島を、岬の草原を、青空を眺めながらこんなすぱらしい経験ができるのも今まで苦労してきたからだ。知床岬に行ってみて大自然の恐ろしさや素晴らしさ、そして旅の魅力を再発見、再確認することができた。
 あと1時間もすれば船で相泊に戻ることができる。最高の天気そして友達に恵まれた岬ヘの旅もそろそろ終ろうとしているわけだが、何よりも今は、このような経験をする機会を与えてくれた両親(僕が知床岬に来ているとは夢にも思わないだろうが)、そして日頃から激励をしてくれた良き友人や先輩ヘの感謝の気持ちで一杯だ。ほんとうにありがとう。

 12時15分、僕を乗せた小さな船は静かに”赤岩”を離れた。波しぶきをいっぱい上げながらかなりの速さで進んでいく。この船の速さが僕には悲しく思えた。2日間かけて少しずつ歩いてきたそれぞれの岩場や滝が現れては消えてゆく。あっという間に途中のテント場(三浦さんの番屋)まで来てしまった。苦労して歩いてきたところをこうして船から改めて眺めてみると、ほんとうに険しい道のりであったことに驚いた。知床の山々にはところどころに万年雪が、そして沖には国後島が とても美しい景色だった。

 1時5分、船は無事に相泊の港に到着する。漁師さんにお礼を述ベ、2000円を払い船を下りた。歩いて2日間を要した道のりも船ではほんの50分。あまりにもあっさりと戻ってしまったととに少々抵抗があったが、自分の歩んだ道を沖から2000円で振り返ることができたと考えれぱ決して高い金だとも思わないし、後悔はない。
 それにしても、何の苦労もせずにお金を積むことで岬に行くことも可能なのだから... 何だか世の中の特徴をあらわしているように感じた。そうしたことも含めて、この旅で様々なことを考えさせられ、とても勉強になった。
 船の上でとても残念なやりとりを見てしまった。岸から離れてしぱらくすると、みかん箱くらいの大きさの段ボール箱を3つ海に捨てたのだ。その箱の中味は、釣りやキャンプで出たゴミなのだ。都会生活では自然が極めて少ないために大切にしようという考えが生まれるが、このような大自然の中で暮らしている人はそれほど自然に対して気を使わないのだろうか? 人間とはほんとうに大切なものの存在をその物が無くなった時に初めて気付く動物なのであろうか? 僕はいつでもゴミ袋をぶらさ げて旅を続けているので、その漁師さん達の行為がたいへん残念に思えてならなかった。

 1時35分、港から歩いて自転車を預けておいた民家に着く。やはり潮風にさらされたため至るところに錆が生えてしまっている。オイルを差し、荷物を入れて出発できるまでの準備を終えたのち、温泉に入り汗を流した。
 3日前の夕方は、この同じ温泉に緊張と不安な心持ちで入っていたが、今はやるベきことを終えたという充実感でゆっくりと湯に漬かっている。ほんとうに無事に帰ることができてよかった。
 3時20分相泊をあとに、羅臼のキャンプ場に向かった。

 5時30分、生きて、またこのキャンプ場に戻れたことが嬉しい。ここまでの道を3日前は雨の中、死を覚悟して泣きながら走ったということがウソのようだ。それどころか、3日ぶりに乗った自転車は歩くことに比ベたら、とてもスピードの出る快適な乗り物なのだと思えたものだ。
 キャンプ場では予定通りに”かにの家”以来10日ぶりに西胤さんと会うことができ、知床の報告をしながら、酒をごちそうになった。西胤さんは3日後友人4、5人と知床岬に向かうそうだ。しばらく話をしていたが今夜は大勢で騒ぐよりもひとりになりたくて、自分のテントに戻った。
 3日間フランスパンばかりの食事だったので夕食は久しぶりにピーマンとソーセージをしょうゆで焼いて、炊きたてのごはんを食ベた。何と言っても米の飯が最高だ。食ベてるそばから腹の中で力に変わりていくような気がするから不思議だ。
 明日は、知床峠を越えてカムイワッカの滝にでも行くか、骨休みのためにここに連泊するかまだ決めていない。いずれにしても金は3日分くらいあるので安心だ。のんびりしたい気もするが礼文島にも渡ってみたいし、最後には信州の乗鞍へも登ってみたいのだ。明日起きたら考えることにしよう。ここはキャンプ場で水場の心配がないので、コッヘルの後片付けも明朝やることにする。昨夜は興奮して眠れなかったため、今日はとても疲れた。
 もうすぐ8月、どうやら北海道も天気が安定してきたようだ。明日からはまた自転車による旅が始まる。これからは岩場やヒグマを心配することはないが、それ以上に恐ろしい交通事故には十分気を付けて、より慎重に走っていこう。
 今夜は今だにTシャツ一枚、陸中や道南を走っていた頃の寒かった夜がまるでウソのようだ。 消灯10時40分


 本日の宿泊地 羅臼キャンプ場、本日の歩行距離5km、走行距離30km (累計走行 2291km)




←TOPへ] [自転車ツーリングへ] [前日に戻る] [翌日に進む