「や缶」のフロントエンドになる V/F 変換器の部分などを考えました。
型番 mfg pkg supply voltage Vin Fout Vref Topr 価格の目安 ------------------------------------------------------------------------------- AD654JN AD DIL8 5 to 18V (4.5 to 36V) 1.00 500.0 - -40 to 85 ¥1,500 AD654JR AD SOIC8 5 to 18V (5 to 36V) 1.00 500.0 - -40 to 85 ¥1,420 TC9401CPD TEL DIL14 4 to 7.5V (8 to 15V) - 100.0 - 0 to 70 ¥2,200 TC9400CPD TEL DIL14 4 to 7.5V (8 to 15V) - 100.0 - 0 to 70 ¥1,120 TC9402CPD TEL DIL14 4 to 7.5V (8 to 15V) - 100.0 - 0 to 70 ¥585 LM331N NSC DIL8 5V (max) (40V max) 10.00 100.0 - - ¥1,110 MM74C922N NSC DIL18 (3 to 15V) - - - -40 to 85 ¥1,600 VFC32KP BB DIL14 11 to 20V 10.00 500.0 - -25 to 85 ¥2,240 ADVFC32KN AD DIL14 9 to 18V (6 to 8V) 10.00 500.0 - -25 to 85 ¥2,380 ・ ・ ・ ------------------------------------------------------------------------------- Vin := Volt, Fout := kHz, Vref := internal reference voltege output.
なるほど、低価格の IC には内部基準電圧出力がありません。 今回の用途には便利に使えるのですが。 もう少し投資すると、基準電圧出力がある IC が手に入ります。
まあ、価格と直線性・ドリフト、入手性を考えて決めるしかないでしょう。 未確認ですが、LM331 と MM74C922 は、設計がやや古いのではないかと思います。 AD 社の ADVFC32 は BB 社のセカンドソース品でしょう。 低電圧電源でも動作するようにした改良品かもしれません。 (ところで、BB 社は現在では TI の一部門になったそうです。)
単一電源動作のことは後回しにして、正負電源での構成を考えます。
用途を限定すれば、例えば温度計測とかストレインゲージなどと決めてしまえば、単一電源動作でも充分です。 しかし、通常のバイポーラ (正負) 小信号入力について、上記のようなの V/F 変換器の入力に接続するにはプリアンプが必要です。 本格的な 3 OP-Amp の計測用増幅器は敬遠するとしても、OP-Amp 一個と負の基準電圧くらいは必要です。 ただし、入力電圧が 0 〜 1V 程度で、条件が厳しくなければ、OP-Amp を省略して V/F 変換器に直接入力することもできます。
なるべく簡単な構成案を作りました。 正負の入力電圧に対応していますが、微小電圧 (フルスケール ±100mV 以下) の計測には不向きでしょう。
なぜフォトカップラーでなしにトランスを使うのか
オプトアイソレーター(フォトカップラー)は小型軽量ですが、受信側に電源が必要です。 波形整形回路もつけたくなります。 トランスなら受信側の電源は不要であるばかりでなく、巻き線比の性質をうまく利用できることがあります。 但し入手容易な小型の低周波トランスは、絶縁耐圧が低いといううらみはありますが。 絶縁耐圧を重視するなら、電源トランスとして販売されている製品を使う方法があります。 けっこう小型のものもあります。
トランスを使いたくない場合は
受信側に電源を設ければ何も問題はありません。 フォトカップラーの応答時間には注意が必要です。 使い方によっては、フォトトランジスタの蓄積時間+ターンオフ時間が 40μs に達する場合があります。
今回いろいろ部品を調べているうちに、MOS FET ドライブ用のフォトカップラーが入手できそうなことがわかりました。 これなら受信側を無電源でも動作させられます。 出力短絡電流 40μA 程度が得られますから、5kΩ 負荷に対して 200mV (p-p) が期待できます。 但し速度は遅くて、パルス応答で 1ms とかの値です。 完全に OFF させないアナログ変調時の応答速度は不明です。
今回の用途にはフォトダイオードを直列接続した構造は不要だから、 普通のベース電極つきフォトトランジスタ出力のフォトカップラーを使ったらどうか、とも考えました。 こちらも想定外使用のため、メーカーから規格値の発表はありません。 実測してみるよりほかはありません。
もう少し、VFC IC に投資しようと思ったら、こんなのも見つけました。
Generic Architecture No. of Channels Fout Max INL @ Fout Max Input Impedance Power Supply (V) IDD Max (mA) Price 100-499 pcs ($) Packages
AD7740 Synchronous 1 Single-ended 0.9 MHz 0.012% FS Buffered Single +3.3/+5 1.5 0.90 8-Lead MicroSOIC & 8-Lead SOT-23
AD7741 Synchronous 1 Single-ended 2.76 MHz 0.024% FS Buffered Single +5 8 2.05 8-Lead SOIC & 8-Pin PDIP
AD7742 Synchronous 2 Differential 2.76 MHz 0.012% FS Buffered Single +5 8 2.5 16-Pin PDIP & 16-Lead SOIC
or 3 Pseudo-Differential
AD7741/7742 を考えます。 安いです。 ほんとに入手できるかは、後のおたのしみ。
V/F 変換器とは要するに FM 変調器です。 AM 変調や PM 変調は使えないだろうか、と考えました。
AM 変調は、変調器に FET スイッチ等を利用すればかなりの精度が期待できます。 しかし振幅性のノイズには弱く、復調時に絶縁トランスや PC オーディオ入力の性能がそのまま現れてしまいます。 搬送波を 2 〜 3 使って改善する方法は考えられます。
PM 変調は、まず PC オーディオ入力の 1ch のみを使用する方向で考えます。 直線性のよい PM 変調器もやっかいですし、伝送系の位相特性の変化がそのまま出力に現れてしまいそうです。 伝送系を模擬した回路を作ってフィードバックさせる方法もありますが、簡単便利にはならないでしょう。
ほかの変調方法もあります。 PWM 変調です。 直線性のよい三角波または鋸波を発生できれば、復調は FFT を持ち出すこともなく可能です。 この方法は A/D 変換技術開発の初期に試され、結局生き残らなかった方式です。 分解能・直線性をやかましく言わなければ、やってみる価値はあります。
PWM フロントエンド (1) PWM フロントエンド (2)
「や缶」のほうから、PC オーディオ出力で V/F 変換器の入力マルチプレクサーを制御したいとの要望がありました。 できることなら高調波ノイズをまき散らさない、周波数変調の正弦波出力がよいでしょう。 簡単に済ませるなら、絶縁トランス → LPF → 整流 → 電圧比較 → 論理回路、という流れで 2 ビットを復調します。 電圧比較後の論理回路には、正式には EXOR と priority encoder を使うのですが、もっと簡略化します。 3 状態をデコードするなら、比較器は 2 個で足ります。 なんと、論理回路は不要になりました。比較器にヒステリシスはつけましょう。 もう少し部品を減らせないかな、とは思いますが。
トーンバーストを整形したパルスをカウンターのクロック端子に入力する方法を思いつきました。 トーンの途切れ目をカウントしたほうが、ノイズに強いかもしれません。 部品が少し減りました。 この方法は PC 側からアナログ入力マルチプレクサーの状態を読み出せることを前提としています。
中心となるべき「アナログ信号の V/F 変換」を除いた部分です。
アナログ入力マルチプレクサーの状態を読み出すために、専用の V/F 変換器を使用します。 この出力信号を「制御リードアウト信号」と呼び、これに外部デジタル信号を乗せることができます。 AD7741/42 のクロックを 1.6MHz 程度、最大出力周波数は約 720kHz とします。 これを 256 分周すると約 2.8kHz になり、その 1/64 周波数偏移は 44Hz 相当ですから、補間を行わなくても弁別可能でしょう。
元来の目的である「アナログ信号の V/F 変換」で使用する帯域を 9kHz 以上にすれば、制御リードアウト信号 2.8kHz の第三次高調波は無視できます。 (補間処理は低レベルの隣接周波数成分にも敏感です。) "FO" にアナログ信号の V/F 変換器分周後出力を接続します。 2.8kHz 信号の出力振幅は控えめにしてハイカットフィルターを入れました。
その後、V/F 変換器を使わない制御リードアウト信号回路を思いつきました。
制御リードアウト信号の影響は?
アナログ信号の V/F 変換+周波数分析処理にとって、制御リードアウト信号の存在は邪魔です。 前項では振幅を小さくし、周波数帯域を分ける方法で対処しようとしましたが、それでも第五次以上の高調波は無視できません。 出力波形の正弦波近似はできますが、ちょっと大げさになってしまいます。 アナログ信号 V/F 変換器が使用できる下限周波数は 2 〜 3kHz が望ましいでしょう。
そこで、制御リードアウト信号の使用周波数を思い切って低くします。 制御リードアウト信号を出力しない状態を作り出すことも考えたのですが、悪い副作用が多すぎるようです。 320Hz のトーンバーストを制御リードアウト目的に使用します。 2kHz 以上の周波数帯域に対して相対振幅は 1/3、方形波の 7 次高調波だから 1/7、1 次ローパスフィルターで 1/7、合計 1/150 くらいの減衰量が見積もれます。
実世界の信号を周波数分析してみました
OP アンプで方形波発振器を作成し、「や缶」のプログラムで発振周波数の様子を調べました。 思ったより安定しています。 電源を入れて時間が経つと、発振周波数がドリフトしていくのが観察できました。 (1e-5 程度)
その他、現在使用しているノート PC のマイク入力は Left 端子の信号が L にも R にも現れること (どうやら入力アンプは L/R 別になっているらしい)、入力は 10mV p-p くらいがよさそうだということ、出力 150mV p-p は期待できそうだということが確認できました。
(つづく)