金色の龍は、黄昏に鎮魂曲をうたう

02


「帰る方法を教えてあげる」

 朝食のスモモや枇杷、草苺などを食べ終えた後、唐突に那由良にそう告げられてオレは正直驚いた。

「何を驚いているの?」
「え……、いや……」

 口には出さなかったけど、那由良はオレの処遇を決めあぐねている様子だったから、オレはてっきり、もう少し足止めをされると思っていたんだ。

「こっちへ来て。説明するから」

 那由良はそう言ってあばら家のガタついた戸を開け、外へと出て行った。彼女の後を追ってオレも立ち上がり、表へと出た。

 彼女の中でどういう心境の変化があったのかは分からなかったけど、帰る方法を教えてくれるんだったらありがたい。

 あばら家を出ると、夏山の心地良い空気が肌を包み込んだ。太陽は燦々と照りつけていたけれど、暑いという感じはしない。

 振り仰いだあばら家は、想像通り外観もかなりキテいた。いつ幽霊が出てもおかしくないような雰囲気だ。

 そのすぐ目の前にはサラサラと流れる清流があって、大きな岩や石が乱立する透き通った水の中を泳ぐ川魚達の姿を肉眼で確認することが出来た。

 遠くから、滝の音のようなものも聞こえてくる。

 四方を深い緑に囲まれたその場所で川を背に振り返った那由良は静かな瞳をオレに向け、その口を開いた。

「この川に沿って……下流の方まで、ずうっと歩いていくんだ。かなりの距離があるし、足場も良くはないけど、お前くらいの年齢の男なら、日没までにギリギリ外界へ抜けられるだろう」
「この川に沿って歩いていくだけで、元の場所……那由良の言う『外界』に、戻れるのか?」

 オレの言葉に彼女は小さく頷いて、補足説明をした。

「ここと外界を隔てる場所に近付くにつれて、霧は深まり、足を踏み入れようとする者を惑わせる。心を強く持って、川の流れを見失わずに突き進むんだ。そうすれば、抜けられる。決してその道筋から外れないようにね。あとは昨日みたいに獣に襲われたりしなければ大丈夫だろう」

 その最後の台詞を聞いて、オレは一気に青ざめた。

「……。それが、一番心配だったりすんだけど……」

 昨日のことを思い出すと、無意識のうちに身体が震えてくる。

「なぁ、何か、武器みてーなの貸してもらえねーかな。護身用に……」
「……。包丁か鎌くらいしかないけど……」
「じゃあ、包丁を……返すあては正直ないけど、いいか……?」

 そう言いながら那由良の顔色を窺うようにすると、彼女は軽く溜め息をついてあばら家の中に入っていった。

 包丁があったところで気休め程度にしかならないだろうけど、ないよりはマシだ。

 那由良は麻で出来た太目の腰紐のようなものを持って出てきた。ちょっとしたウエストポーチみたいになっていて、中には布でくるまれた包丁が入っている。

 彼女はそれをオレの腰に巻いてくれ、ついでにそこに大きな葉っぱにくるまれたお弁当のようなものをくくりつけてくれた。

「焼いた魚と、果物を入れておいたよ。あたしが出来るのはここまでだ……」

 那由良はそう言ってオレを見上げた。

 よく分からないけど、彼女にも色々と事情ってものがあるんだろう。

 出来れば外界の入口まで送ってもらいたいのが本音だったけど、男のプライドでそこは飲み込んで、オレは彼女にお礼を言った。

「何か、色々……ありがとうな、ホント。オレ、那由良のコト一生忘れないよ。マジで」

 これで―――彼女に会うことは、もう二度とないんだろう。

 いつかふとした時に、夢物語みたいに、この瞬間を思い出す日がくるんだろうか……。

 オレはその時の為に那由良の顔を瞳に焼きつけようと彼女の整った顔をジッと見つめた。そんなオレに彼女はふっと頬を緩めて長い睫毛を伏せ、こう促した。

「行きなよ。日が暮れる前に、頑張ってここを抜けないと……」
「あぁ……じゃあ、行く。マジでありがとう。……元気で!」

 手を振るオレに、那由良はわずかに微笑み返した。

 足早にあばら家から遠ざかっていく途中、一度だけ振り返った。

 長い黒髪を風にそよがせ、那由良がまだこちらを見つめているのが分かった。

 オレはもう一度彼女に手を振り、そして再び歩き出した。

 川のせせらぎに混じって、遠くで滝の音が聞こえていた……。



*



 気温の低い深い山の中とはいえ、真夏の日差しの中を長時間歩き続けていれば、汗が滝のように噴き出してくる。

 太陽が真上に差しかかる頃、さすがにバテてきたオレは少し休憩を取ることにした。

 冷たい川の水で顔を洗い喉を潤してから近くの木陰で那由良に持たせてもらったお弁当を開く。その時になってオレはジーンズのポケットに突っ込んだままになっていたキャラメルの存在を思い出した。

 そっか、ここに入れっぱなしにしていたんだっけ。すっかり忘れていた。

 箱がくしゃくしゃに歪んでいたけど、まだ封を切っていない中身はどうやら無事っぽい。

 ……那由良に食べさせてやればよかったな。

 今更だったけど、そんなことを思った。

 食べさせたら、彼女はどんな反応を見せてくれただろう? 喜んでくれたかな……?

 腹ごしらえを済ませて少し休んだ後、オレは再び外界目指して歩き始めた。

 逸る心とは裏腹に、遅々として思うように距離は進まない。空が茜色に染まり始めても、オレの視界の先には霧のきの字も見えて来なかった。

 やっべぇ……このまま日が暮れちまったら野宿して夜を明すしかなくなる。獣は夜行性のヤツとか多いんじゃないか?

 想像するだに恐ろしいその状況が身に迫っている現状にオレは焦りを覚えつつ、額の汗を拭いながら先を急いだ。
そして夕闇に辺りが包まれる頃、ようやくうっすらと霧が立ちこめる場所までたどり着くことが出来た。

 オレは安堵の吐息を漏らしながら、別れ際の那由良の言葉を思い浮かべた。

『ここと外界を隔てる場所に近付くにつれて、霧は深まり、足を踏み入れようとする者を惑わせる。心を強く持って、川の流れを見失わずに突き進むんだ。そうすれば、抜けられる。決して、その道筋から外れないようにね』

「……心を強く持って、川の流れを見失わずに突き進む、か―――」

 彼女の言葉を反芻する間にも周囲を取り巻く霧はその深さを増していく。日が暮れる時刻と相まって一層視界が悪くなってきた。

『足を踏み入れようとする者を惑わせる』ってのは、深い霧が方向感覚を狂わせるって意味なのかな。

 でも、その後に続く、『心を強く持って』ってのは―――……。

「くそ、その辺をちゃんと聞いてくりゃ良かったな……」

 あの時は単純に川の流れに沿って進んでいけばいいんだと思ったけど、その時が近付くにつれて様々な疑問が湧いてきた。

 視界を覆い尽くす霧が、湧き起こる不安に一層の拍車をかける。

 その時―――白い闇の中に何かが見えたような気がして、オレは足を止めた。

 ……何だ?

 ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。

 気のせいか……?

 白く霞んだ視界に揺らめく、あれは……影(シルエット)?

 いったい、何の―――……。

 不吉な予感が肚(はら)の底からせり上がってくる。知らず、ゴクリと喉が上下した。

 徐々に徐々に、霧の中に浮かび上がる影がその濃さを増していく。

 闇の中で爛々と輝く、複数の瞳―――低い唸り声が耳を打ち、ひたひたと、忍び寄る悪夢の再来がオレの目の前に姿を現した。

『ここと外界を隔てる場所に近付くにつれて、霧は深く、足を踏み入れようとする者を惑わせる』

 那由良の声が、耳に甦る。

 それは、もしかしたらこれが幻覚だっていうコトを暗示しているのか?

 背中を冷たい汗が流れ落ちる。

『心を強く持って、川の流れを見失わずに突き進むんだ』

 オレはそれを見極めようと目を凝らしたが、目の前の狼達は恐ろしいほどにリアルで、冷静に考える猶予を与えてくれそうにない。

 激しい緊張感の中、ガァッ、と唸り声を上げて、一頭が飛びかかってきた。

『心を強く持って―――……』

 ―――無理、だっ……!

 強い決意を持って臨むには、心の傷が生々しすぎた。

 オレは背を翻して、全速力で逃げ出した。

 咆哮を上げながら狼達が後を追ってくる。

 ―――陸上じゃ、逃げ切るのは無理だ!

 そう判断したオレは反射的に川の中に飛び込んでいた。

 腰の辺りまで水に浸かりながら、思った以上に早い水流に流されかけつつ、半分泳ぎながら、半分溺れかけながら、無我夢中で対岸までたどり着いた。

「―――っ……、はぁっ、はぁっ」

 全身の力がごっそりと削ぎ取られてしまったかのような激しい疲労感に苛まれながら、腰から包丁を引っ張り出し背後を振り返ると、犬かきで川を渡ってくる狼達の姿が見えた。

 残る気力を振り絞って立ち上がり、オレは木立の中へと逃げ込んだ。

 くそっ、ここまで来て、死んでたまるかよっ……!

 水を含んだジーンズが死ぬほど重い。

 霧の煙る深い闇の中を疾走しながら、オレは登れそうな木を求めて視線を走らせた。

「あっ……!」

 その時、あろうことか木の根っこに足を引っかけて、オレは派手に転がってしまった。

「―――くっ!」

 急いで身体を起こし、包丁を構えて後ろを振り返ると―――そこにはただ、夜の闇が広がっていた。

「え……」

 いつの間にか辺りを覆っていた深い霧はその姿を消し、追って来ていたはずの狼達はどこにも見当たらなかった。

 オレはしばらく茫然として―――それからへなへなとその場に座り込んだ。

 幻―――だった、のか……。

 そしてふと我に返り、青ざめる。

「―――どこだ、ここ!?」

 夜の森の只中で、包丁を片手に濡れ鼠と化し叫んでいる無様な自分がそこにいた。

『決して、その道筋から外れないようにね』

「…………。どーすんだよ……」

 どこをどう走ってきたのかも分からない。第一、既に漆黒の闇に覆われてしまった森の中では、下手に身動きを取ることも出来ない。

 深い深い溜め息を吐いて―――オレはガックリとうなだれ、それからどうしようもなく星空を振り仰いだ。

 昨日は那由良と二人で見上げていた夜空。まさか今日、こんな状況で、こんな気持ちで、一人見上げるハメになるとは思わなかった。

「はあぁ……」

 止まらない溜め息をとめどなくこぼし、途方に暮れていたオレの目に夜空に上るひと筋の白い煙が映ったのはその時だった。

 煙だ……。

 それに気が付いた瞬間、オレは瞳を輝かせて勢いよく立ち上がった。

 煙が上がってるってコトは、そこに火の気があるってコトで……つまり、誰かがそこにいる可能性が高いってコトだよな!?

 全身びしょ濡れで寒さと恐怖にひと晩震えているよりは、そこを目指して歩いた方が断然いい。

 一瞬のためらいも覚えず、オレはそこに向かって歩き出した。

 たどり着く前に煙が消えてしまわないよう、ただそれだけを祈りながら……。



*



 煙の先には、驚いたことに人が住んでいる場所―――村があった。

 古びて黒ずんだ年代を感じさせる木造の家屋が肩を寄せ合うようにして集まり、それがずっと奥の方まで続いている。

 住人達は皆寝静まってしまったのか、灯りのついている家屋はオレのいるところからはひとつも確認できなかった。さっきまで上がっていた煙も消えて、村はまるで廃墟のようにひっそりと静まり返っている。

 月明りの下、村の入口でその様子を窺っていたオレは、何となく足を踏み入れる勇気を持てないままその場に佇んでいた。

 この地一帯は遥か昔に外界から分断され、時の流れから取り残された場所なのだと那由良は言っていた。

 そこに暮らす人々が現代人のオレの姿を見たら、どんな反応を示すだろう。オレの話をまともに聞いてくれるだろうか。理解して、もらえるだろうか……。

 アォー……ン。

 ためらい、立ち尽くすオレの背中を、どこからか聞こえてきた狼の遠吠えが後押しした。

 反射的に村の中へと足を踏み入れたその瞬間、ピリッ、とした衝撃が全身を突き抜けて、オレは一瞬呼吸を止め、身体を強張らせた。

 ―――っ……何だ? 今の。

 ゆっくりと全身を動かしてみるけど、特に痛むところはない。周囲に目立ったものはなく、辺りには特に変わった様子も見られなかった。

 何だったんだ……?

 一抹の懸念を覚えながらも、オレは灯りのついている家を探して村の中を歩き始めた。

 足を踏み入れてみるとその村は思った以上に規模が大きく、たくさんの家屋があって、オレはそれに軽い驚きを感じながら村の様子を観察して回った。

 家々の外観はかなりキテいたけどそれなりに手入れをされている感があって、道の真ん中は綺麗に草がむしられていたりして、人が暮らしているらしい気配は窺える。

 意外だな……こんな山奥に、こんなに大きな村があったなんて……。

 時折吹きつける風が、濡れた身体を容赦なく冷やしていく。

 自分の身体を腕で抱くようにしながら暗闇の中を歩いていたオレは、その時小さな社(やしろ)のようなものを発見して足を止めた。

 それを見た時、オレが覚えたのは軽い違和感だった。何に対してそれを覚えたのかというと、それは社の建っている場所に対してだった。

 その社は、丁度村の真ん中と言える位置に佇んでいた。

 そこを中心にバツを描くようにして大きな十字路が走り、東西南北の四区画に家が寄せ集まるようにして建っている。そしてその間をいくつもの細い路地が通るようにして、村は形成されていた。

 オレ、こういうのって今まで意識したコトなかったし、よく分かんねーけど……何か、変じゃないか?

 まるで何かの象徴みたいに、社が村の中心に建っているなんて……。

 そんなことを考えながらそれを見つめていたオレは、吹きつけてきた風の冷たさに身をすくませた。

 くそ……さみぃ。耳が痛くなってきやがった……。

 ざっと見渡した限り、灯りのついている家は見当たらない。オレはとりあえずその社の中に身を置かせてもらうことにした。
 村の人には明日の朝になったら改めて事情を説明して、あの川までの道のりを教えてもらおう。

 夜中に突然訪れて起こしてしまうよりは、その方が心象もきっといい。

 そう一人納得して、オレは社の短い木造りの階段を上り、その扉に手をかけた。

 頼む、鍵なんかかかっているなよ。

 願いが通じたのか、扉は軋んだ音を立ててゆっくりと開いた。

 オレはホッとしながらその内側に身を滑り込ませ、静かに扉を閉めた。

 風を凌げるだけでも、ずいぶん違うな。

 すっかり冷たくなってしまった耳に両手を当て温めて痛みを和らげようと努めながら、微かに差し込む月明りを頼りにオレは社内を見渡した。

 へぇ……綺麗にしてあるな。埃っぽくないし、整然としている。

 奥の方に目をやると一段高くなっているスペースがあって、そこには紗織の布が天井から掛けられ、その奥にある御神体の姿を隠していた。

 ひと晩宿を借りるような形になるワケだし、明日のことも含めてお祈りでもしとくか。

 オレは軽い気持ちでそこに歩み寄り、紗織の布をめくった。

 その瞬間、ピリッと、この村に入った時にも感じたアレを再び感じて、オレは息を詰めると同時に、現れた御神体の姿を見て驚いた。

「―――カタナ……?」

 紗織の布の奥に鎮座されていたそれは―――岩に突き刺さったままの、抜き身の刀だった。

 仄かに青みを帯びて輝く刀身―――その刃が放つ神聖とさえ感じられる不思議な引力に引き込まれ、オレは大きく目を見開いて、しばらくの間、バカみたいにただそれを見つめていた。

 刀身の鍔(つば)に近いところに、見たこともない文字が刻まれている。

 何て書いてあるんだ……? これ。

「何かを感じさせるな、お前」

 唐突に、刀からそんな声が響き渡った。

 ―――カッ……カタナが喋った!?

 ぎょっとしてオレはのけぞったのだが、そんなワケがなかった。

 いつの間に現れたのか、ちんまりとした、蒼い炎のように揺らめく身体を持つ、キツネのようなイタチのようなそんな顔つきの、この世には絶対に存在し得ないはずの生物―――ソイツが、御神体に巻きつくような形でオレを見上げ、話しかけていたのだ。

 もっ……もっと有り得ねえぇぇぇ!!!

 オレの脳細胞は狼に襲われた時とは別の意味でパニックに陥った。あまりの衝撃に全身が硬直して、反応することが出来ない。

 驚きのあまり口も利けないオレに向かってソイツはニカッと笑いかけ、ふわりと宙に浮かび上がった。

 額には、小さな二本の角らしきモノ。四肢には小振りながら鋭い爪がついていて、口元には鋭利な牙が見え隠れする。

 尻尾に当たる部分を御神体に巻きつけたまま、伸縮自在らしいそれを伸ばしてオレの目線の高さまで来たソイツは、涼しげな顔をしてこう言った。

「まぁそう驚くな、人間。……お前、どこから来た? 何を持っている? お前に何かを感じて、私(わたし)は目覚めたのだぞ」

 驚くな、と無茶極まりないことを言って、ソイツは何かを嗅ぎ取ろうとするかのようにフンフンとオレに鼻を寄せてきた。

「―――うっ……うわあぁぁ―――ッ!!」

 大絶叫と共にオレは飛び退(すさ)り、その弾みで紗織の布を引きちぎって、けたたましい音を立てながら床の上に転がった。

「バッ、バババッ……バケモノッ! こっち来んじゃねぇッ!!」
「驚くなと言っているだろうが。頭の悪い人間だな」

 呆れ口調でそう呟くと、蒼い炎のように揺らめくソイツは音もなくオレの胸の上に降り立った。

「く、来んなって言ってんだろ! 頭わりぃのはそっちだろーが!」

 叫ぶオレにぐい、と顔を近付けて、その不可思議な生物は猫のような瞳を細めた。

「騒ぐな。やかましい」

 その迫力に何となく逆らえないものを感じて、オレはぐっと押し黙った。

「……それでいい。何も取って喰おうというワケじゃないんだ」
「お、お前……何なんだ、よ……」

 震える声を絞り出したオレの瞳を見つめて、ソイツはひと言、こう言った。

「さぁな」
「……はぁ!?」

 フザけてんのか、コイツ!?

「そう素っ頓狂な声を出すな。お前をおちょくっているワケではない。私は自分が何者なのか、本当に分からんのだ」

 ちんまりとした、小動物と言っていい大きさのその妖(あやかし)は、オレの心の中を見透かしたかのようにそう告げた。

「私には、何か大切な目的があったはずだった。それは、この『蒼影牙(そうえいが)』に関係していたはずなのだ」
「そうえいが……?」
「蒼い影の牙と書く。その刀のことだ……刀身に銘が刻まれているだろう」

 蒼く揺らめく妖は、そう言って岩に突き刺さった状態の御神体を振り返った。

 刀身に刻まれていたあの文字は、カタナの名前だったのか……。読めねーよ、あんなの。

「これを抜く者が現れるのを、私は永い眠りの中でずっと待っていた……だが、その理由が思い出せん。私という者がどこで生まれ、どういう理由で、いつからこの刀と共に在るのか……それが、分からないのだ」

 ……何か、ゲームとかマンガの世界みたいな話だな。

「つまり、お前は……記憶喪失ってコトなのか?」
「まぁ、そういうことだ」

 鷹揚に頷いて、蒼い炎の化身のようなソイツはオレの顔を覗き込んだ。

「そこへ、お前がやってきた……そのお前の何かに反応し、私は目覚めた。お前は、私の目的に関する何かしらの手掛かりを持っているはずなのだ。―――言え。お前はどこから来た?」
「お前達の世界で言う、外界ってトコからだよ……」

 別に隠すことでもなかったので素直にそう伝えると、蒼い妖はふぅむ、とだけ呟いて、くんくんとオレの匂いを嗅ぎ始めた。

「や、やめろ! くすぐった……」
「ジッとしていろ」

 蒼い炎のように見えるその身体は、見た目とは違い熱を伴っていなかった。むしろひんやりとしていて、ドライアイスの煙のような感触に近い。

 オレの首筋から胸元、腰へと徐々にその身体を移動させていった小さな妖は、麻の腰紐のところでピタリとその動きを止めた。

「これか、私に何かを感じさせたモノは……」

 その言葉に、オレは小さく息を飲んだ。

 ―――那由良にもらった……コイツと那由良には、何か関係があるのか?

「人間。これをどこで手に入れた? 外界とやらではないだろう」
「それは―――……」

 言ってもいいものなのか?

 口を開きかけてオレは逡巡し、言い淀んだ。

 コイツは全く得体が知れない。

 もしかしたらオレがそれを言ってしまったことで、那由良に危害が及ぶような事態になってしまうのかもしれない。

 どうしたものかとためらっていたその時、にわかに外が騒がしくなった。

 ハッとするオレの背後で大勢の足音と話し声が聞こえ、ぎぃぃ、と軋んだ音を立てて社の扉が開く。

 騒ぎを聞きつけ、手に手に松明やら鍬やらを持って集まってきた寝巻き姿の村人達が、灯りに映し出されたオレの姿を見て驚愕の声を上げた。

「な、何だコイツは!?」
「妙な格好しとるぞ!」

 彼らの風貌は、おおよその想像通り時代劇の農民風だった。

「紗織の布が引き千切られとる! 蒼影牙は無事か!?」

 や、やべぇ……。

 オレは慌てて居住まいを正し、ざわめく村人達に向き直った。

「あの、皆さんスイマセン、これは……」
「怪しいヤツだ!」
「とりあえずふん縛(じば)れ!」

 荒縄を構えて、村人達が鼻息も荒くオレに詰め寄ってくる。

 ゲッ……。マジで、ヤバくね? この状況。

 顔面蒼白になったオレの背後から、その時蒼い炎の化身のような妖が顔を覗かせ、いきりたつ村人達を一喝した。

「やかましい! 今、大事な話をしているところなのだぞ」

 ちんまりとしたその姿に、村人達の視線が一斉に釘付けとなった。

 一瞬の、沈黙。

「ぎゃああ―――っ!!」
「もっ、物(もの)の怪(け)じゃあ―――ッ!」
「物の怪が出たぁ―――ッ!」

 口々に叫びながら諸手を上げ、転がるようにして社から逃げ出した人々は、少し離れたところで立ち止まると、怖々といった様子で遠巻きにこちらを振り返った。

「な、何じゃ、あの物の怪は……」
「誰か、村長(むらおさ)に知らせて来い!」

 うわわ……何だかスゴい騒ぎになっちまったぞ。

「先程の話の続きだがな、人間……」

 あくまでも話を推し進めようとする蒼い物の怪に、オレは慌てふためきながらこの窮状を訴えた。

「そっ、それどころじゃねーだろーがッ! くそ、どうしたらいいんだよ!?」
「何を慌てている」
「この状況だよ、この状況ッ! オレはただ、ひと晩の宿を借りて、あの川へ行く道を聞きたかっただけなのに……!」
「そうなのか」
「あぁ、そうなんだよッ!」

 癇癪気味に叫んだオレを見て、蒼い炎のように揺らめくその妖はひとつ嘆息した。

「面倒くさいヤツだ、周りが静かでないと話も出来んのか」
「オレはなぁ、お前と違ってデリケートなんだよっ!」
「でりけーと? 何だそれは」
「……。繊細って意味だよ……」

 あぁ、くそ。頭が痛くなってきた……。

 頭を抱え、どうしたものかと考えあぐねるオレに、恐る恐るといった様子の声がかけられたのはその時だった。

「あの……」

 顔を上げると、息を乱した年配の男性がためらいがちにこちらへ歩み寄ってくるところだった。松明や鍬を手にした数人の村人達がその背後に控え、オレ達を油断なく見据えている。

「村長、気を付けて下せぇよ!」
「その妙な着物姿の男と、人の言葉を喋る物の怪、得体が知れねぇ!」

 少し離れた位置では、他の村人達が心配そうに彼らの様子を見守っている。

 よほど急いで走ってきたのか、息の乱れがなかなか治まらない村長は、見慣れぬ格好をしたオレと不可思議な蒼い存在を見やり、緊張した面持ちで口を開いた。

「あ、貴方様方は、いったい……。このようなところに忍び込んで、蒼影牙を、どうにかなさるおつもりなのですか」
「いや、オレは別に―――」
「お前がこの村の長か」

 オレの言葉を遮り、やや不機嫌そうな声で蒼い物の怪が口を開いた。

「お前らが騒ぎ立てて大事な話が出来ん。村の者達を大人しくさせろ」

 村長はこの時、蒼い炎の化身のようなこの妖の尻尾が蒼影牙に絡みついていることに気が付いたようだった。それがどうやら彼の目には、その妖が蒼影牙の中から出て来ているように見えたらしい。

 衝撃に声を震わせて、村長は言った。

「あ、貴方様はまさか、蒼影牙の現身(うつしみ)では……!?」

 その発言に、ざわり、と村人達が揺れる。

 一瞬黙した蒼い物の怪は、もっともらしい口調でこう答えた。

「いかにも」

 ウ……ウソつけ! 絶対に今考えただろ!

 ホントは記憶喪失のクセしやがって!

「分かったら静かにしろ」

 したり顔の物の怪の嘘を真に受けた村長はひどく感動した様子でちんまりとしたその姿を見つめ、両手を合わせた。

「おぉ、やはり……! で、ではこちらの方は……」
「私が外界から呼び寄せた客人だ」
「おぉ……! 何と、外界から……それで、そのように珍しいお召し物を……」
「分かったら静かに―――」
「も、申し訳ございませんでしたっ!」

 蒼い妖の声を打ち消して村長はそう叫ぶと、地に額をこすりつけて土下座し、平謝りした。

「知らぬこととはいえ、大変なご無礼を……どうぞお許し下さい!」

 それを見た村人達が一様に膝を折り、村長に倣(なら)って土下座をする。

「も、申し訳ごぜぇませんでしたっ! まさか、貴方様があの蒼影牙の化身とは……ど、どうかお許し下せぇ!」
「……怒ってはおらん。だから、静かに―――」
「お詫びといっては何ですが、どうぞ我が家にお越し下さい。大したおもてなしは出来ませんが、村の者で誠心誠意、尽くさせていただきますので」

 村長のその申し出にオレは顔を輝かせた。

 やった! これって、布団と飯にありつけるチャンスなんじゃ……!

「蒼影牙様、どうかぜひ! 家は、すぐそこでございますから」
「だから、私はな―――」

 イラッとする自称蒼影牙の化身に、オレはこう囁いた。

「いいじゃねぇか。話ならどこでも出来るだろ。この様子だと、首を縦に振るまで粘られそうだぜ」
「うーむ……」

 低く唸って思案した末、蒼い物の怪は不承不承といった様子で頷いた。

「仕方がないな……」

 それを聞いた村人同様、オレも心の中で諸手を上げて喜んだ。

 よっしゃ! 温かい寝床ゲット!

 密かに小躍りしたい気分のオレに、蒼い妖がこう声をかけた。

「―――おい、せっかくだ。お前、ここを出る前に蒼影牙を抜けるか試してみろ」
「え?」

 するとそれを聞きつけた村長以下、居合わせた全村民が蒼白になってそれを押しとどめた。

「な、何を仰います、蒼影牙様!」
「おやめ下せぇ! そんなことをされたら、オラ達は……!」
「や、やっぱりまだ怒っていらっしゃるんだ!」
「お許し下せぇ〜!!」

 ―――な、何なんだ……!?

 事情が分からず目をしばたたかせるオレの傍らで、蒼い炎の化身のような物の怪は、溜め息混じりにこう呟いた。

「……まぁ、いいか。此奴(こやつ)にこれが抜けるとは、私にも思えぬからな」



*



 村長の家に招かれたオレ達は、村人達の手によって丁重にもてなされた。

「蒼影牙様は、現身であられると可愛らしいお姿なのですね」

 蒼影牙の化身は年寄りから若い者まで、村の女性達に大人気だった。

「こ、これ、無礼を働かぬようにな」

 村長がヒヤヒヤした様子でそんな女達を見守っている。

 蝋燭の灯りがオレンジ色に照らし出す広い客間で、オレは成り行きで偶然ありつくことの出来た温かいお膳に箸を運びながら、比較的冷静にその様子を眺めていた。

 まぁ……落ち着いて見てみると、可愛らしいっちゃ可愛らしい見た目ではあるか。

 キツネのような、イタチのような顔つきに、猫のような蒼い大きな瞳。両の掌に乗りそうなサイズの身体は絶えず蒼い炎のように揺らめいていて、ふわふわとした不可思議な印象を与えている。

 一見無害な小動物っぽいけど、額にある二本の角や四肢の爪、口元から覗く牙なんかはとても鋭利で、その可愛らしい外見を見事に裏切っている。

 上座にうずたかく積み上げられた座布団の上にちんまりと腰を下ろしたその尻尾は、蒼影牙のある社までずっと続いていた。

「どこまで伸びんだよ、お前の尻尾は」
「試したことはないが、おそらく蒼影牙の力の及ぶ範囲内だろう。私はどうやら、蒼影牙からは離れることが出来ないらしい」

 オレは軽く目を瞠って、得体の知れない蒼い物の怪をまじまじと観察した。

「お前、もしかして、マジで蒼影牙の化身だったりするんじゃ……」

 こっそりとそう囁くと、相手はチロリとオレを見下ろしてこう答えた。

「記憶がないのだ、分からん」

 それもそうか。

「……。なぁ、お前のコト、何て呼んだらいいのかな……」
「私には名乗るべき名がない。好きな名で呼ぶがいい」
「……蒼影牙じゃ長ったらしいからなー、言いにくいし。……アオでどうだ?」
「アオ?」

 猫のような瞳が、一瞬鋭い光を帯びた。

「―――な、何だよ……」

 思わず及び腰になると、蒼い物の怪はしばらく無言でオレを見つめ、それからゆるゆると息を吐き出した。

「―――今、一瞬、何かを思い出しかけたような気がしたのだ……。……アオ、か―――それでいい」

 そう言ったアオは、それから初めて気が付いたかのように隣に座るオレを見下ろした。

「そういえば人間、お前の名は何という?」
「さっき村長に名乗ったの、聞いてなかったのかよ。氷上……氷上、彪だ」
「一丁前に苗字があるのか」
「外界ではそれが当たり前なんだよ」

 こそこそと会話を交わすオレ達に、それまで村人達と談笑していた村長が歩み寄ってきてアオに話しかけた。

「蒼影牙様は、本当に何もお召し上がりになりませんので?」
「私はこれで充分だ」

 アオはそう言って目の前の御神酒をペロッとなめた。

「そうですか。氷上様はいかがですか? もっとお召し上がりになりますか?」
「や、もう充分です。ありがとうございます」
「よろしければ出(い)で湯(ゆ)にご案内致しますが、お入りになりますか?」

 村長のその言葉に、オレは目を輝かせた。

「出で湯、って……温泉ですか!?」
「えぇ、別棟になりますが、この地にはありがたい神の湯が沸き出ておりまして、村の者が共同で使っております。無論先程手入れを致しまして、本日は氷上様専用です。いかがなさいますか?」
「は、入ります!」

 声を上ずらせて、オレは立ち上がった。

 やった、温泉だ! スッゲー嬉しい!

「では、そちらまでご案内を……おい、小六(ころく)!」
「は、はい!」

 村長の命を受けて、素朴な顔立ちの小柄な青年がやってきた。

「ご、ご案内致します。どうぞこちらへ……」
「―――コ、コラ彪! お前、いつになったら私と話を―――」
「別に、風呂の後でもいいだろー?」

 がなるアオに背を向けて、オレは小六の後を追って歩き始めた。

 何たって、三日ぶりの風呂だ。このチャンスは逃(のが)せねぇ!

 その温泉は村長の家のすぐ裏手にあった。湯場は周りをぐるりと木材で囲んだだけの簡素な造りで、屋根はなく、露天になっている。

「こちらです。着物はこの篭に脱いでお入り下さい。お着替えは、こちらの篭にご用意させていただきましたので。この使用済みの着物は……村の女達の手で、洗濯させていただいてもよろしいでしょうか」
「え? 洗濯までしてもらえるんですか?」

 驚いてそう尋ねると、小六はやや緊張した面持ちでオレを見つめ、頷いた。

「も、もちろんです! あの蒼影牙様のお客人なのですから……」
「……。蒼影牙って……この村の人達にとって、そんなに大切なモノなんですか?」
「蒼影牙様は、この村の護り神です。何物にも変えがたい、大切な存在です。蒼影牙様のご加護のおかげで、オラ達は生きていられるんですから……」

 へーぇ……。

「氷上様、お背中、流しましょうか?」
「え!? い、いや、いいです!」

 小六の申し出を辞退して湯場に一人になったオレは、有り得ないくらい汚れてしまった衣服を勢いよく脱ぎ捨てた。

「おー、すげぇ……」

 地中から湧き上がる、完全な天然の温泉。無色無臭の透明な泉質だ。夜の闇を照らす篝火が星空の下立ち上る湯気を情緒たっぷりに照らし出している。

 シャンプーや石鹸は……当たり前だけど、ないか。

 備え付けてあった湯桶で熱いお湯を頭からかぶると生き返ったような気がした。洗い場で軽く身体を流し、オレは早速温泉の中に飛び込んだ。

 うぉー、めっちゃ気持ちいー!

 手足の先からお湯の温かさがじんわりとしみこんできて、ここ数日の疲れをゆっくりと癒していってくれるような気がする。

「はー、極楽極楽……」

 仰向けになって湯船に浮かびながら、オレはうっとりと目を閉じた。

 温泉が、こんなにいいものだとは思わなかった。サイコーだぜ……。

「―――おい、彪」

 とん、と胸の上に何かが降り立つような感触があって、目を開けると、目の前に蒼く燃え立つ炎があった。

「―――うわ、お前! 何だよ、こんなトコまで!」

 バシャバシャと音を立てながら温泉の縁(へり)を掴むと、ふわりと宙に浮いたアオは不機嫌そうに猫のような瞳を細めた。

「待つのはもう我慢の限界だ。話をするぞ」
「こんなトコでか? 気の短けーヤツだな……」
「長すぎるくらい待ったわ」

 ピシ、とこめかみに青筋を立てながら、アオは苛々した様子でオレを急きたてた。

「さぁ、話すぞ。―――あの腰紐とその中身を、どこで手に入れた」
「……その前に―――お前、それを聞いてどうするつもりだよ」

 オレのその問いかけにアオはこう答えた。

「さぁな。聞いてみなければ分からん」
「じゃあ―――わりぃけど、話すのはちょっと遠慮させてもらえねーかな」
「はぁ!? 何を今更―――」

 ブチ切れかけるアオに、オレは必死で言い募った。

「だってオレ、お前のコトよく知らねーし、それで知り合いに変な迷惑とかかけたくねーからさ……」
「私は自分のことがよく分からんのだ、その為の手掛かりをお前に求めているのだぞ! 私にも分からないことが他人のお前に分かるワケがないだろうが!」
「じゃあ、あきらめてくれよ! 得体の知れねー相手に、知り合いの情報を流せねーよ!」
「何?」

 すぅ、とアオの瞳が冷たさを帯びる。

「オレがここに迷い込んだのは、事故なんだ。狼に襲われて、死にかけて―――あれは、その時に助けてくれた命の恩人から借りたモンなんだ。お前がどういうヤツなのか分からない以上、その人のコトは話せない」

 たっぷりとした湯に映る自分の顔に視線を落としてオレは言った。

「お前のコトは気の毒だと思うし、手助けしてやれねぇのは申し訳ねーと思う……。けど、今のオレにとっては正直、元の場所に帰るコトの方が重要なんだ。みんなが、オレの帰りを待ってくれているんだよ。……だから、アオにはわりぃけど」
「外界に、帰るつもりなのか」
「あぁ。明日になったら、村の人に、外界へ繋がる川への道程を聞こうと思ってる」

 オレは顔を上げて、アオを見た。

「でも、村を発つ前に蒼影牙を抜けるかどうか試してからいくよ。アレが抜けるのをお前は待っていたんだろ」

 その瞬間―――ボッ、と音を立てて、アオの身体が、オレの身体を突き抜けた。

 ―――え……。

 一瞬の空白―――オレは震える手で自分の胸を押さえた。

「……っ、な―――何、を……」

 傷はない。

 痛みも、ない。

 けれど、自分の身体に何か重大な影響が及ぼされたことを、オレは悟った。

「お前の体内の『水』を私の支配下に置いた」

 燃え盛る氷炎のような瞳を向け、淡々とアオが宣告する。

 その言葉の意味するところに、オレは青ざめた。

 ―――人間って、確か体重の七割くらいが水分って言われてるんじゃ……。

「悪いな。私もこう見えて、必死なんだ」

 ようやく本性を表し始めた、といったところだろうか。

 小動物のような外観にくるまれていたオブラートが溶けて、凍てつくようなこの世に在らざる者の姿が露わになった。

 うっすらと極上の笑みを浮かべて、蒼い物の怪がオレを見下ろす。

「何百年もの時間(とき)の中で、ようやく現れた手掛かりなんだ―――私が納得するまで、彪、お前を手放すつもりはない」
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